2017/05/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2 クラブ」にシャロンさんが現れました。
シャロン > マグメール富裕地区に店を構えるクラブの二階。
弦楽器の音色が響く大広間に、少女の姿はあった。
今夜は知人の令嬢に頼まれた付き添いで、面倒とは思いながらも顔を出している始末。
少女自身、それなりに容姿は整っているからか、貴族の子弟に踊りを申し込まれるも。

「あぁ、すみません。踊りは不調法で。私よりも、もっと素敵な方がきっと居ますので、ご遠慮させてください」

丁寧に、しかし慣れた口調で断ると、近くの給仕を呼び止め、ノンアルコールカクテルを受け取る。
澄んだ緑色の液体が入ったそれは、爽やかな甘みと酸味が味わえる代物。
一口含めば、好みの味に思わず笑みが零れ出す。こく、こく、とつい手が進んでしまうのも無理はない。
現状、付き添い相手は貴族子弟とのダンスに夢中。その間は自由時間だ。
どことなく高級な雰囲気を味わいながら、貴族達の輪から少しだけ離れて、様子を楽しんでいた。

シャロン > 幾度も断りを重ねていれば、その度に別の貴族がやってくる。
彼らにとっては、女性を踊りに誘うことなど、許諾の多寡を競うゲームのようなものなのかもしれない。
断られれば、当然彼らの面子は傷つく。なんなんだあの娘は、というひそひそ話も気づかぬ所に沸いていた。
そんな中、また一人やってくる、気障ったらしい貴族の子弟。
歯も浮くような美辞麗句を並び立てて褒めた後で、大仰な仕草でこちらに手を差し出してくる。
聞けば、そこそこ位の高い貴族のご長男とのことだが――。

「申し訳ありません。私、踊りは不調法なので。貴方の御足を踏んでしまうかもしれません。
 このヒールで踏んでしまいましたら、きっと物凄く痛いので、早々にご辞退させてください」

やんわりと断ると、しかし彼は食い下がる。
それには困惑しながらも、苦笑を浮かべて。

「いえいえ、貴方の様な高貴なご身分の方など、取るに足らない身分の私は気後れしてしまって。
 緊張で上手く体が動かなくなってしまいます。ですので、ご寛恕をお願い致します」

慣れた所作で告げると、そっと一歩引き、彼の調子を崩した。
一度、場を切り抜けてしまえば、苦々しい表情をした貴族子弟は悔しそうに引っ込んでいく。

『この私の誘いを断って、後悔するなよ!』

――よく聞く、典型的な捨て台詞すら残して。