2016/11/04 のログ
ご案内:「富裕地区 図書館」にセリオンさんが現れました。
セリオン >  数多の英知集まる場所、図書館。静寂に包まれて書に耽る理想郷でもある。
 富裕地区の図書館ともなれば、利用層も相応に知的かつ物静かな者が多い――というのが、普段の印象である。
 
 どうにも、違和感のある女が居た。
 
 別に粗野であるような雰囲気は無い――少なくとも見た目には。だが、目つきは凶暴だ。
 修道女のような服を着ているが、その左袖は中身が空で、肩からだらりと垂れ下がっているのみ。
 不便そうに片手で書を捲り、ほとんど睨むような目で中身を読み耽っているのだが――

「……うーむ、理論としては私がやってることの逆ですか……なるほど」

 彼女が真剣に読んでいる書物のタイトルであるが、『房中術』と、すがすがしいまでに分かりやすいものであった。
 この女、服装と雰囲気と行為とが、それぞれちぐはぐなのである。

セリオン >  やがて女は、書物の中に興味深い記述を見つけたらしい。
 ページを捲る手を止め、顔を紙へ近づけ、一文字一文字目で追いかけて行く。

「……主としては男女同士の交わりが研究されているが、擬似的に――ふむ、ふむ」

 ……どうにも、本を読むときに音読してしまう性質らしい。

セリオン > 「……これか。これが今のところ、私に出来る手立てか」

 やがて女は、本のページを閉じた。
 何か得るものがあったのか、いささか凶暴な目つきも和らいで満足げな表情となっている。
 書棚へ本を戻した女は、早足で図書館を抜け出して街へと紛れて行った。

ご案内:「富裕地区 図書館」からセリオンさんが去りました。