2016/11/04 のログ
ご案内:「富裕地区 図書館」にセリオンさんが現れました。
■セリオン > 数多の英知集まる場所、図書館。静寂に包まれて書に耽る理想郷でもある。
富裕地区の図書館ともなれば、利用層も相応に知的かつ物静かな者が多い――というのが、普段の印象である。
どうにも、違和感のある女が居た。
別に粗野であるような雰囲気は無い――少なくとも見た目には。だが、目つきは凶暴だ。
修道女のような服を着ているが、その左袖は中身が空で、肩からだらりと垂れ下がっているのみ。
不便そうに片手で書を捲り、ほとんど睨むような目で中身を読み耽っているのだが――
「……うーむ、理論としては私がやってることの逆ですか……なるほど」
彼女が真剣に読んでいる書物のタイトルであるが、『房中術』と、すがすがしいまでに分かりやすいものであった。
この女、服装と雰囲気と行為とが、それぞれちぐはぐなのである。
■セリオン > やがて女は、書物の中に興味深い記述を見つけたらしい。
ページを捲る手を止め、顔を紙へ近づけ、一文字一文字目で追いかけて行く。
「……主としては男女同士の交わりが研究されているが、擬似的に――ふむ、ふむ」
……どうにも、本を読むときに音読してしまう性質らしい。
■セリオン > 「……これか。これが今のところ、私に出来る手立てか」
やがて女は、本のページを閉じた。
何か得るものがあったのか、いささか凶暴な目つきも和らいで満足げな表情となっている。
書棚へ本を戻した女は、早足で図書館を抜け出して街へと紛れて行った。
ご案内:「富裕地区 図書館」からセリオンさんが去りました。