2016/01/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/貴族の邸宅」にヴァイルさんが現れました。
ヴァイル > 戦争が続いていようが明けようが、
それこそが貴族の仕事と言わんばかりに行われるのが夜会である。

ヴァイルは給仕をするメイドの少女に姿をやっしてそこに潜り込んでいた。
情報収集の一環である。街の酒場で聞き耳を立てるばかりでは得られない情報もあるのだ。
いつぞや修道士の少年を助けたときもそのような理由だった。
姿は変えれど茶褐色の三つ編みと青白い肌はそのままになっているために、
ヴァイルを知る人物であれば勘付けるだろう。

特に荒事や粗相もなく、現在のところはつつがなく
給仕の業務を済ませている。
ヴァイルの放つどこか異彩な雰囲気に
好色な貴族たちも彼には手を伸ばさずにいた。

(滞りないのはいいのだが、退屈だな……)

口の中で小さく呟く。

ヴァイル > 実際のところ、単に贅沢趣味というだけではない。
金のない貴族が形だけでもメイドを雇うように、
こうして夜会を開くことで自身の財をアピールしつづけるのは
実際に貴族の仕事と言えた。

淡々と料理の給仕を行う視界の端、比較的見目の良い給仕が
貴族の男に手を引かれどこかへ消えていくのが見える。
それも仕事のうちなのだろう。

自分を狙う物好きもそういないだろうが、
いたらいたらで犯し返してやればいいか、そんなことを考える。

現在の一番ホットな話題はオリアーブ島の再統治と復興の状況だろうか。
マグメールを取り巻く情勢を知ることも重要であったが、
ヴァイルにとって使いみちのある人材がふらりと顔を見せていないか、
それを探すのも夜会へと忍び込んだ目的だった。
今のところそのような人物はひとりとして見つかってはいないが。

ヴァイル > 飽きてきてしまった。
仕事が減ったのを見計らって、会場である邸宅の広間を抜けて
庭へと抜け出る。
月光の照らす下、冷えた風が三つ編みを揺らした。

もう少し媚びた仕草を見せてやってもよかったかとは思ったが、
名目上はただの女使用人であるが故に、
そこまでやってやるつもりもなかった。
やってやってもいいと思える相手もいなかったのだ。

従者の装いというのは嫌いではないどころかむしろなじむものだったが、
それも良い主人のいてこそだ。

ヴァイル > おとなしくしてばかりでも健康に悪い。
暴れるか食うか、どちらかをしたほうがよかった。
余り成果の芳しくない『釣り』を懲りずにやるべきかもしれない。

庭の木々をすり抜けて、そのままどこかへ行ってしまう。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区/貴族の邸宅」からヴァイルさんが去りました。