2015/12/26 のログ
ご案内:「富裕地区にある貴族の屋敷」にツァリエルさんが現れました。
ツァリエル > 大理石の豪奢なつくりの建物、その大広間には真昼間だというのに
酒の匂いと大勢の人々の笑い声や歓声で満ち溢れている。
ツァリエルはこんなに豪勢な宴があることに慣れず、人の多さにくらくらとめまいを軽く起こし
酒の匂いにむせながらしぶしぶながら隣の貴族の男へと酌をしている。
その姿は薄い化粧を施し、薄物の女のドレスで着飾られており
どうみても少女にしか見えない様相だった。


なぜツァリエルがこのような場所にいるのかといえば
話は少し前にさかのぼる。
彼の所属する教会に大量の寄付を申し出る貴族が現れた。
ただしその条件としてツァリエルを何日か貸してほしいというとんでもない話だったのだ。

司教たちは頭を悩ませた、同胞でもあるツァリエルを奴隷のように売ってしまうなどとそんなことはできないが
さりとて教会は万年資金不足である。今年も年越しのささやかな祝い事すら難しいのではという話だった。

そんな中話を聞いた当のツァリエルは別に自分なら構わないと進んでこの条件を引き受けた。
もちろん、本当は嫌だったが何か教会に恩返しを出来ればとも思ったし
孤児院の子供たちが少なくとも寒い思いもひもじい思いもせず年越しを迎えられるならそれは喜ばしいことだ。

かくして、しぶしぶながら承諾した司祭たちと貴族の男の取引は成立した。
貴族の男は自分の屋敷にツァリエルを招き、綺麗に洗い清め身づくろいをさせる。
だがそれは女としての出で立ちに仕上げられてしまいツァリエルは戸惑った。
文句を言えばもしかしたら彼の機嫌を損ねて寄付を撤回させてしまうかもしれないと思うとなかなか嫌だということも出来なかった。

男がツァリエルにも何やら飲み物を勧める。
酒であったならご容赦を、と辞することができたのだが
無理やり腕を掴まれ盃を口に押し当てられれば拒むことも出来ず
一口二口とむせる様に飲み込んでしまった。
ひどく甘みと苦みが入り混じったおいしくはない代物だった。

ツァリエルが飲み干したのを見ると貴族の男は満足そうに頷き
何か体が変わったことはないかと問いながらツァリエルの体を障りはじめる。
すると体が火照りはじめ、正体不明の疼きがツァリエルを襲い始めた。

みるみるうちにもともと細かった体格がさらに頼りなく丸みを帯び始め、柔らかな胸と腰、尻のふくらみが強調される。
どうやら飲まされたのは性転換の薬らしいと知ったときには手遅れだった。
自分の体が女にされたことにびっくりして目を白黒させた。

ご案内:「富裕地区にある貴族の屋敷」にヴァイルさんが現れました。
ヴァイル > 茶褐色の三つ編みがツァリエルの横を通りすぎて揺れた。
見れば白いキャップと、丈の長いレース細工のエプロンドレスに身を纏う少女がいた。
どうやら酒や料理の補充や給仕を行うメイドのようであった。
歳のころはツァリエルとそう変わらないように見える。

美しいが、どこか乾いた泥のような印象の、青白い顔に二つ戴く紅玉が、
女性へと変貌したツァリエルを無感動に見やった気がした。

ツァリエル > ツァリエルの体がすっかり薬の効力を現したことを確かめると貴族の男は改めてツァリエルをまじまじと眺め
自分の審美眼は確かだったようだと満足そうに頷いた。

もともとどこかお綺麗な顔かたちが今や少女の儚さや華やかさをもって彩られている。
睫は伸び、唇はふっくらと濡れて、褐色の肌はエキゾチックでどこかなまめかしさも感じる。

男の視線から逃れる様に身をかき抱いて顔を背けるが
男はなお一層ツァリエルに近づいてその身を押し倒そうとする。
このまま本当の女にして何番目かの妾にしてやろうと囁いた。
もしも承諾すれば教会には毎年多額の寄付をすることを約束するし
けしてお前に寂しい思いはさせないよと。
男の目には捕食者の猛々しい光が宿っていた。ツァリエルがなんと返答しようと逃がさない心づもりの眼光。

震えて声を押し殺すツァリエルがふと通り過ぎた女中を見やる。
その髪が見知った茶色の三つ編みと青白い顔、赤く鋭いまなざしであることに気づくと
突如としてこんなところを見られては恥ずかしいという気持ちが沸き起こった。

「やめてください!」

男の胸を押し返して突き飛ばそうと必死に腕を伸ばすが女の腕力ではどうともならない。
むしろ戯れとして男はますます燃え上がった。

ヴァイル > メイドは一度はツァリエルを横切って離れ、別の客に粛々とサーヴィスを行っていたが、
再びツァリエルと貴族の男が揉み合う現場を通り過ぎようとし――
男にぶつかって、トレイに乗せていた紅いぶどう酒の杯が傾いて
ぱしゃりと男の仕立ての良い服を汚した。

「申し訳ございません。
 とんだ粗相を……」

いかにも恐縮した様子で、女使用人は頭を下げる。
しかしよく観察していたならぶどう酒を零した所作は意図的であったことは見て取れたし、
紅い眼差しは蜥蜴のような無機質さで貴族を観察していた。

ツァリエル > 葡萄酒をひっかけられて服に赤い染みがにじんで広がると
男はさっと顔を青ざめて女使用人をねめつけた。

怒気をはらんだ眼光で射すくめ、お前はどこの奴隷だ、ただでは済まさぬぞと怒鳴りつける。
女使用人の冷淡な視線がなおのこと彼の怒りを煽った。
ついに男は立ち上がると女使用人の前に立ってその頬に平手打ちを食らわせようとする。
が、事の成り行きを見ていたツァリエルが慌てて二人の間に割って入る。女使用人をかばうような姿勢。

だが一瞬の遅く人の肌を打つ音が広間に響く。ツァリエルは頬を叩かれ軽い体がそのまま床へとくずおれた。
叩き終えて目標を間違えた男がはっとするが、まだ怒りが収まらぬのか額に青筋を立てたままだった。

ヴァイル > 怒りに猛る貴族の男を前にしてもあくまで冷ややかな彫像として立っていたのだが、
自身を庇い、頬を打たれたツァリエルの姿に、
無感情に思われたメイドは瞠目して、顔に驚きの色を滲ませた。
しかしそれも一瞬のこと。

杯を手にして傾け、僅かに残ったぶどう酒を飲み干し、トレイを卓へと置くと、
再び凪となった貌で貴族へと向き直った。
挑発するように、酒に濡れた唇を舌で舐める。

「まあ、苛烈なお方……。怒りをお鎮めになって。
 どうぞこの端女の身体で良ければ、お好きにしてくださいまし」

いかにも慎ましやかにそう言うと、
しなだれかかるようにして男に抱きつき、妖しげな光の灯る瞳が、上目遣いに男を射た。

「お好きにできるのであれば、で、ございますが」

そうすると、魔の眷属のもっとも好むところである怒りと欲望に囚われた貴族は、
知らぬうちに自分の体躯が形そのままに縮んでいくのを発見する。
そうして虫けらの大きさまでに貶められれば、女使用人の手のうちに収まってしまうだろう。
その周囲の誰も、その一瞬のうちに何が起こったかを理解は出来なかったに違いない。

貴族を文字通りに手中に収めたまま、屈んだ姿勢で、くずおれたツァリエルをちらりと伺った。

ツァリエル > 怒り狂った貴族の男がみるみるうちに女中に縮められその手の中にすっぽり納まってしまうのを
ツァリエルは打たれた頬を押さえながら目を見張ってい見ていた。
人ひとりが消えたというのにこの周囲のだれもが宴に夢中になっていて
気づいていないことがひどく哀れであった。

ちらりとこちらを伺う女中と視線が合うと戸惑いながら何か言葉を出そうと口を動かすが
結局何から話したらいいのかわからず

「あの、ヴァイルさん……?こんなところになぜいらっしゃるのですか?
 ……また助けられてしまいました……」

もじもじと恥じ入るようにそう小さく呟いた。

ヴァイル > 夢のような現象に、奇妙な気配を纏うメイドを訝しむ目で見ない者もいないわけではなかったが、
何食わぬ顔で見つめ返されると、疑うことが恥であったかのように
彼らは目を背けてしまった。

何事か騒いでいる手の中の男をエプロンのポケットに隠してしまうと、
未だへたりこんでいるであろうツァリエルの手を取って、立ち上げさせる。

「いかにもわたくしはグリムの子、ヴァイル・グロットと申します。
 ……助けた? さて、わたくしはその人に見合う姿をしつらえてさし上げただけにすぎません。
 気分が優れないようですが……まだ宴の席に残られますか?
 それとも、どこか落ち着けそうな場所に?」

涼やかな調子でそう口にする。今少し女中のような振る舞いを続けるつもりらしかった。

ツァリエル > ヴァイルの手を借りて立ち上がると、ポケットにしまいこまれた男にことがなぜか気がかりであった。
きっともしかしたらもっとひどい目に合ってしまうのだろうかという心配に顔を曇らせるが
それよりもはやくここを抜け出したかった。

「あのう、ええと……そうですね。別のどこか落ち着ける場所に……」

完全になりきっているヴァイルにあっけにとられて困りながらもそのほっそりした手に手をのせてしっかりと指先を握る。
美しい乙女たちがそっとささやかにその場を去っても誰も咎めることはないだろう。

ヴァイル > ツァリエルの返事に、承知致しましたとヴァイルは頷く。
握られる指に満足そうに微笑して、ツァリエルの手を引いて
緩やかな足取りでその場を去り、広間を抜ける。
そうして喧騒から逃れ、勝手知ったる顔で廊下を歩き、たどり着いたのは
ソファやテーブルなどが用意された小さな客間だった。
無論誰の気配もない。

「それにしても随分と様になっておられる。
 そのままの姿で以後を過ごしてもよろしいのでは?」

からかうような声色。
暖炉の火を起こすと、どこから用意したのか温かいスープに満たされた椀を
二人分卓上に並べた。

ツァリエル > 案内された客間に通されソファに座るとやっと人心地つけた。
足を広げて座ろうとするが、はしたなくスカートが広がってしまうことに気づいて慌てて姿勢を正す。

「そんな……変なことを言わないでください。
 このまま元に戻らなかったら困ります……。
 なんだか股の間がスースーするし、胸が重くて変な感じがするし……。
 そういうヴァイルさんこそ、メイドさんが板についているように見えるんですけど」

もじもじと自分の体を改めて見回しても完璧なまでに女体であった。
このまま元に戻らなかったらどうしようと途方に暮れる。
とりあえず用意されたスープの皿と傍に置かれてスプーンを手に取るとそっと一口すする。
温かく平民が味わえないほどの美味しさに顔をほころばせた。

ヴァイル > 「そうでしょうか。慣れてしまえば、気にならなくなりますよ。
 化ける、というのは単に見た目を弄るだけでは半可となります。
 ……この振る舞いはグリムに仕込まれました。
 倒錯した貴族には、なかなか有用に働くものです」

当然のように、ツァリエルの隣へと親しげに腰を下ろす。
グリムという名を口にした時、ほんの少し懐かしげに目を細めた。
女使用人に化けたヴァイルはただ女物の服を着ているというわけではなく、
丸みを帯びた輪郭から控えめながらある胸の膨らみと、何らかの手段で肉体を弄っていることは明白だった。

顔を緩めるツァリエルを見て、自分もスープに口をつけようとしたところで
何か声がした。先程までは静かにしていたというのに。
エプロンのポケットに手を突っ込んで、声の元、指の長さにも満たない背丈の男をつまんで宙に引っ張りだした。
未だ何事か言っているが、声の内容がツァリエルに聞き取れたかどうかまではわからない。

「どうしよう、これ」

少年のような稚気を笑いに浮かべて、メイドはツァリエルを伺った。

ツァリエル > 「お父様に……?だってヴァイルさんは男の子でしょう?
 どうして女の子の、それもメイドさんなんかの……」

ふつうの父親ならばこんなことを仕込むはずもないとは思うものの
魔族の間ならばこういうことは至って普通なのだろうかと困ったように首を傾げた。
そういえば以前あったときも本当の女の肉体であったことは肌を合わせたときにわかっていた。
つくづくなんでもありな相手に本当は女の子であったならどうしようという気遣いさえ浮かんでしまった。

ポケットから取り出された小さな人形のような男を見る。
ついさきほどまで自分を脅かしていたはずの相手がこんなにも小さく無力になってしまったことに哀れみを覚える。
蚊の鳴くような音で何かをわめいている姿に気の毒になって

「僕が帰った後に元に戻してあげてください。あまりに気の毒だから。
 それまでは……申し訳ないけどここに入っててもらいましょう」

暖炉の上の飾り箱を見つけると、立ち上がってそれをテーブルの上に置く。
中を開けば宝石箱のように柔らかな布地が敷かれており、箱は透かし彫りがなされているから少しの間なら特に不自由はなさそうだった。

ヴァイル > 「永生の者は、人には想像もつかないような手段で無聊を慰めるのでございます」

冷たい肌の魔族にしては温かな口調でそう言って、
ほんのひとときツァリエルとは反対の方を向いて、すぐに戻す。

「まあ、ご自身を苛んでいた者に慈悲を与えるとは、なんとお優しい方……」

縮んでしまった貴族への態度に、感服したように瞑目する。
しかしツァリエルの言葉にはすぐに従わず、立つツァリエルに男を手にしたままそっと寄り添う。

「……けれど、この男がもし元の暮らしに戻って、
 わたくしめのような悪辣な魔族と関係を結んでいるなどと吹聴されれば……
 あなたは暮らしを追われるかもしれませんよ。
 いえ、それで済めばまだ良い方です。あなた自身が悪魔と判断されたなら――」

あたかも気遣うような口調で、不吉な未来を予言する。
男を持たないほうの手が、静かにツァリエルの腰に回される。
男を摘むほうの手は、その惨めな有様をしっかり見えるようにとツァリエルの眼前に。
耳元に唇を近づける。内緒話をするように。しかし男にも聴こえる声量で。

「それにね……。
 もう、こうなってしまえば戻すのは難しいのですよ。
 少し小さくしすぎてしまいました。申し訳ありません」

“戻せない”とは明言しなかった。そう言ってしまえば真実に反するからである。
息がかかるほどの距離。試すような眼差しが、ツァリエルを見つめる。

ツァリエル > ヴァイルの答えはツァリエルには難しすぎたのかさらに謎を深めたまま顔をしかめる。
自分たちとは時の流れが違うというだけで男の子が女の子のふりをして慰められるというのがよくわからなかった。

ヴァイルがそっと不吉な予言をささやき自身の体へ密着するように腰へ手を回せばたじろいでしまう。
一、二歩後ろへ後ずさるとかくりとソファに尻もちをついた。
男がぶら下げられている様子とヴァイルの顔を何度も見比べると
ジワリと掌に嫌な汗をかいてしまった。

「そ、それでも……この人にはきっと心配する家族がいらっしゃるのでしょう?
 だったら元に戻してあげないと誰かが悲しんでしまうと思うのです。
 僕は……別に、悲しむ相手もそうはいませんから……もしも悪魔として罵られても仕方のないことですし
 その時は教会を去って……どこかで働いてひっそり暮らします。

 助けてくれたのだから、ヴァイルさんに迷惑をかけるのも違うでしょう?
 ねぇ、どうしたらその人は助かりますか?元に戻るのに何か必要であれば僕がお手伝いしますから……おねがい」

胸に手を当てて祈るように縋るようにヴァイルに頼み込み。

ヴァイル > 「………………」

ツァリエルの言葉に耳を傾けたメイドは……
なんとも言えない、寂寞とした様子で瞼を伏せたが――
それはごく一瞬のことで、気のせいとして片付けられかねないものだった。

「……教わりませんでしたか。
 魔の者に頼み事をしてはならない、と」

目を見開き、悪寒の走るような冷たい視線をツァリエルに向ける。
ぶら下げていた男を、ひょいと口の中に放り込んでしまう。

ツァリエルがそれに何か反応する前に、すみやかに彼、
いや彼女をソファの上に覆いかぶさって押し倒す。
影がツァリエルを覆う。顔が近づく。瑞々しい唇が触れ合う。
味を確かめるようにして舌が唇をなぞると、その間に分け入って中へと侵入する。
そうして送られるのは、熱い肉に乗せられた唾液と、――ちいさな人の形をしたものだった。

ツァリエル > わずかの間瞼を伏せたヴァイルに気遣うような顔を向けるが
すぐに自分へと冷たい目をして男を口に放り込んでしまうと
ああ!と悲鳴のように声を上げた。
すぐに吐き出してという前にヴァイルが自分を押し倒せば
恐怖にひきつって身をすくませた。

彼(彼女?)の唇が自分の唇をなぞり、舌が触れるとひぃとその生々しい感触におびえる。
が、お互いの口が重なり口内を押し開かれるとびっくりして目を見開いた。
このままではあの男を呑み込んでしまいかねないことに恐れて
必死にヴァイルを押し返して離れようと試みるがそれは無駄なことだった。

「~~~っ!……!ぁっ……!!」

口の中で蠢くそれと人の形をした、おそらくあの男が歯にぶつかったりして怪我をしては大変だと動けずにいる。
結局抵抗もろくにできないままいいように口内を蹂躙され、そのうちにヴァイルの唾液が染み渡ると
思考が溶けて、体が火照りはじめる。いけないと思いつつ、ツァリエルの手が、体がゆるゆると力が抜けて落ちてしまった。

ヴァイル > ツァリエルの口に含まれた虫けらのような男が溺れたり潰されたりする可能性を気にした様子もなく、
遠慮なしに頬の裏や舌を舐り、その味を楽しむ。

もちろん重なるのは唇ばかりではない。
二人の柔らかい双丘同士も互いに触れ合って、圧力をかけられてぐにぐにと形を歪める。
押し倒すヴァイルの手が腰や腹、尻へと伸び淫靡な手つきで愛撫する。

女使用人の両脚の間には――女子の身体であれば無いはずの硬いものがあり、
それがぐりぐりとツァリエルの秘部に着衣ごしにマッサージでもするように押し当てられる。
いささか優しさに欠けた、どこか苛立ったような振る舞いであり、
それは魔族としての醜悪な本性の発露であったのかもしれない。

一度唇を放す。ツァリエルが口中の男を吐き出す機会が生まれた。
自らの作り出す影の中、征服者の凶暴な笑みをたたえたヴァイルは、
再び耳元に唇を近づけ、刑吏の斧の刃のような冷たい声で囁く。

「――どうした、今更。
 最初に遭った時の、あの消えた人攫い。
 おまえはそいつを、どうしてしまったと思う?」

そう告げると、ツァリエルの耳朶を甘く噛んだ。

ツァリエル > 深いキスと自分の体をいいように弄ぶヴァイルの手から逃れる様にもがくが、
そうすることで余計に体が火照り、尚更離れがたくなってしまう。
自分と相手の柔らかな胸が押しつぶされ、股の間の自分の知らない箇所がヴァイルの昂ぶった何かに押し付けられれば
いつのまにかそこがしっとりと濡れはじめ身もだえするほどの快楽になる。
乱暴にされればされるほど、顔は恐ろしげにヴァイルを見つめるが体は抵抗を失っていった。

ようやく互いの口が離れれば慌てて掌に男だったものを吐き出す。
唾液まみれでもはや虫の息だが辛うじて生きているようだ。
ヴァイルから遠ざける様に両手でつぶさない様にしっかりと抱え込むと
ヴァイルの声が囁く。彼の唇が、歯が冷たく耳朶を噛んだ。

とうに瞳は潤み、顔は紅潮し、息を切らせながら顔を背ける。
しばらくすすり泣くようにして震えていたが
問われるまでもなくツァリエルには判っていたのだ。

たぶん最初の男ももしかしたら無事ではいないだろう。
そしてこの間の奉仕活動と称した売春の神殿でもすっかり人がいなくなってしまったことを噂では知っていた。
すべてこのヴァイルがやったのだ。自分をなぜか助けて。

一際目の前にいる魔族のことが分からなくなった。
理解がつかぬものに恐怖が沸くのは当然で
どうして自分などを助けるのだろうかとという疑問ばかりが思い浮かぶ。
しかし自分のために手を汚さねばならないヴァイルのこともまた、哀れで気の毒に思えてくるのだ。
すべて自分が悪いのではなかろうか。そう思うと情けなくて涙がひっきりなしに零れ落ちた。

「で、でも……それでも、だめです。
 消しちゃったら、だめ……。
 ヴァイルさん、だって、いやでしょ……?
 ぼ、僕なんかのために……そんなことするの……。
 だから、しちゃだめ……」

必死に掌の男を守るように包み込んでぶるぶると首を振った。

ヴァイル > 「…………!」

またしても、目が見開かれる。
ツァリエルが涙を零す故が、陵辱の目に遭う恐ろしさからではないことは明らかだったからだ。
氷の美貌が、怒りに悪鬼のように歪んだ。

「……わたしはヴァイル・グロット。真なる闇の王グリム・グロットの子なり。
 すべての悪の化身にして、暗がりに這いずり、人を嘲弄し、夜の秩序を保つ騎士である。
 女の股から生まれし者よ。生まれながらにして罪を背負う者よ。わたしを愚弄するか。
 わたしの行いは、すべて、ツァラ……ツァリエル。
 世の清冽をいまだ信ずるおまえを堕落せしめんためにある。
 そのこと、過たないことだ」

地獄の谷底を駆ける風のような声で、長広舌を一息に吐き出す。
あまりの激怒に、ヴァイルの眼窩は虚となり、そこに代わりに燃え盛る炉が据えられる。
茶褐色だった髪は今や地獄の真紅となり、燃え立つように揺らめく。
ツァリエルの身体に触れる肌はもはや灼けた鉄のようになり、ツァリエルを苛む。

「何度も言わせるな。
 おまえの信仰や、善良ぶる心など――
 何の価値もない!」

両の眼窩が凶星のように一際強く輝くと、男を庇うツァリエルの手にひとりでに力が込められる。
邪眼に対抗しうる強靭な精神力なくば――あっというまにツァリエルの手はそれを握りつぶし、赤を指の間から溢れさせるだろう。

ツァリエル > ヴァイルの形相が一変しまさしく鬼のように変貌して
ツァリエルは恐ろしさからもはや自分の命はこれまでであろうことを悟りはじめた。
何がそんなに彼を怒らせているのかは鈍い自分ではとうにわからなかった。
彼が触れている箇所が火を押し付けられたように熱くなり鋭い痛みに悲鳴を上げて逃げようとするが
恐怖が体を自由にはしてくれなかった。

ヴァイルの邪眼がきらめくとそれに魅入られた様にツァリエルの両手に力がこもる。
一瞬何が起こったのかと青ざめるが、その後に何が起こりうるであろうかを悟ると慌てて手を引き離そうともがいた。

「いや!いやっ!やめて!ヴァイルさん!やめてっ!!!」

はたから見ればツァリエル一人きりが男を押しつぶしているように見えるのに
頭を振って悲鳴じみた懇願をヴァイルに叫んでいる。
ついにその手がぴったりとくっつき合わさり隙間もないほど指が握られようとしたその時、
ツァリエルが最後の抵抗で自分の手指にがぶりと噛みついた。
必死に痛みをこらえて己の歯を食いしばり手指をはがそうと試みる。
やがて噛みついた部分から血が滴り、そのぬめりに乗って男が手の隙間からソファに置いてあったクッションへと滑り落ちて行った。

涙をためた目でそれを確認するとほっとして口を離す。
そうしてばちんと両手が閉じられた。そのまま二度と離れることが無いようにしっかりと握られた手に歯型と血の筋がいくつも流れた。

ヴァイル > 「………………」

小さな男がツァリエルの手からこぼれ落ちるのを見た。
彼がこのやりとりで何を思い、どんな顔をしたかはヴァイルの興味のいたるところではない。
あるいはとっくに気絶しているやもしれなかった。

ツァリエル自身に作られた傷を眺めていると、瞬間の怒りは潮の引くようにして消えていった。
それと共に、恐ろしく変貌していたヴァイルの姿は戻っていく。
そして自分が道理も知らぬ子供相手に、確かな敗北を舐めたことを、屈辱とともに確認した。
一騎当千の力も、変幻自在の魔性も、毛の先ほどにも意味をなさない。
ツァリエルの手で罪を犯させることはできなかったのだ。
これ以上あがいて、ヴァイル自身に穿たれた傷を拡げることは――避けねばならなかった。

血を流す傷に触れようと手を伸ばして――躊躇いの末にやめた。

「……」

無言のうちに立ち上がる。
先ほどツァリエルが見出した飾り箱を、彼に押し付ける。
邪視による肉体への干渉はとうに効力を失っていた。

その箱に小人をしまうなりなんなりすれば、
ツァリエルを担いで、寝るには少し窮屈なソファから
大きいベッドへと運び、大切そうに横たえさせた。

「……なぜだ。
 おまえには憎しみはないのか?」

エプロンドレス姿の怪物はベッドに腰掛け、
理解し得ない人間に背を向けたままそう問うた。
先程までに比べれば弱々しいとすら言える声であった。

ツァリエル > じくじくと自分で噛んだ傷が痛みすんすんと泣いていると
ヴァイルから飾り箱を押し付けられた。
見ればヴァイルの姿はすっかり普通の女中に戻っておりひどく疲れたような表情をしていた。
体が自由になっていることに気が付くと、痛む手でそっと小人の男をすくいあげ
大事に飾り箱の中に横たえてきっちり蓋を閉める。
すぐにヴァイルから遠ざける様に端にやると、自分の体が彼に運ばれてベッドに横たえられた。

急にしおれた様に自分へと優しくするヴァイルへ不信感を抱きながら問いかけに困ったように考え込む。

「……わかんないです。
 ……に、憎しみを抱くほどの何かが僕にはきっと、何にもないのかも……」

己の内に傷つけられたら怒り狂うだけの確固たる何かがもし存在しているのならば
たぶんツァリエルだって自分を攫った男も無体を働いた人々も許さず憎むことができたのかもしれない。
だけど自分はそれほど特別でないことを知っているし、
なによりも悪事を働く人々、他人を虐げる人々は心がひどく貧しいのだとなんとなくわかるのだ。
それを思えば憎しみよりも憐みのほうが強く湧き上がってしまう。

そして、それは目の前のヴァイル相手にもそうだった。
いつもより小さく見えるその背に、スカートの端で血を拭った手をそっと置く。
背筋をなぜながら優しくいたわった。

ヴァイル > 沈黙がつかの間、場を支配した。
暖炉の炎が薪を舐める、パチパチとした音ばかりが響く。
怒りも屈辱も心の奥底に融けていき、灰色に変わった。

「……そうですね。
 人として大切なものが、あなたには欠如しているのでしょう」

ヴァイルは瞑目して、ツァリエルから失われてしまっているものを想像しようとした。
たとえ子供であったとしても、自らの尊厳や命が脅かされれば、怒り抵抗するはずだ。
しかしこの人間は、それを貫けない。貫けるのは――他人がそうされた時だけだ。

ほんとうは彼は、自らに似た亡者なのかもしれない。
ヴァイルがツァリエルに真の勝利をおさめるためには、
欠けたものを与えてやらなければならないのかもしれない。
だが、それは無理な相談である、とヴァイルは思った。
魔物とは奪うばかりが役目であり、与えることに関しては門外漢であった。

「……あの哀れな男は、のちに戻して差し上げましょう。
 あなたの今後に関しては、保証しかねますが……」

約定の重みを知っている《夜歩く者》は下手な誤魔化しなどはしないが、
それをツァリエルが信じるかどうかまではわからない。
ツァリエルが必死に庇う小人を見ていると、何やら不可解な感情が湧き上がったが、
それは自らの裡に封ずることとする。

背を労るように撫でるのにも、常であれば激昂したことであろう。
しかし今はそんな精力もない。
そうする代わりに、その手から逃れるようにして
ツァリエルの傍、ベッドにごろりと横たわる。

「……お喜びを。勝者は敗者を自由にするのがならわしです。
 ……今日だけは、あなたの願いを、わたくしはなんでも聞きいれましょう、ツァリエルさま」

寝そべったまま、色のある視線がツァリエルを伺う。
表面に糊塗されただけではない貞淑さが、その姿にはあった。

ツァリエル > 「勝者って……別に僕はなんにも、喧嘩も勝負もしていないのに」

自分の眼の前で横たわるヴァイルにたじろいだ。
何でも聞き入れると突然言われたところで何をお願いしたらいいのか皆目見当がつかない。
困ったように眉を下げてしばらく悩んでいると
そっと手を差し出して

「あの、自分でやったのが悪いんだけど手の傷を治せますか?
 それから、ええと……今日は意地悪なことをしないでほしいのと……
 あと、僕も後で元に戻してほしいのと……それと……」

指折り数えながらお願い事を読み上げ
色のある視線が自分を射抜けばびくりと背筋を震わせる。

ふいにさっきまで忘れかけていた情欲が体をむずむずと走り回り
はぁはぁと犬のようにだらしなく口を開き始める。
たまらないように体をよじらせもじもじと内股を摺り寄せ自然とヴァイルに体を押し付けた。

「あの……か、体熱いの……とめて……女の子の……しかたわかんないから……」

初々しさを秘めた少女が情欲の炎に焦がされるように、媚びる様にヴァイルにお願いする。

ヴァイル > 「お安い御用で」

願いを一つ一つ聞き入れていく。
差し出された傷ついた手を取り、そっと撫ぜると嘘のように傷は消えてなくなった。
治癒の術は本来ヴァイルの得手とするところではないが、これは変身の業の応用であった。

「……ふふ。それは姦淫のお誘いと受け取ってよろしいのですね?」

唇に指先をあてて、小悪魔のような笑みを浮かべる。
身体を押し付けるツァリエルの背を、愛おしげに指先でなぞる。
そして身体の上で手が踊ると、たちまちのうちにツァリエルの纏う薄布のドレスは
解けるようにして脱がせられ、その肌を露わとする。

「わたくしも脱いだほうがよろしいでしょうか?」

口の端を吊り上げてあえて問う。この程度は意地悪のうちには入らないという風。
悪戯っぽい手つきで、お腹や胸をつついた。

ツァリエル > あっという間に手の傷がふさがると痛みもとれる。
本当に魔法のような所業にびっくりするが
「ありがとう」と感謝の言葉を述べてここにきて初めての屈託のない笑顔を見せる。
花が綻ぶような無垢な笑みであった。

「か、姦淫だなんて……そうじゃないけど、でも他に方法がないから……」

恥ずかしそうに身を縮めて体をヴァイルに預ける。
褐色の肢体は少年のものではなく、少女の緩やかな柔らかい体つきであり
胸はつつましやかながらこの年頃の娘相応の豊かさを見せた。
つんと尖った桃色の乳首がふるふると緊張に震える。

「……うん、あの……脱いでくれたら嬉しいです……」

ヴァイルもおそらく女の体なのだろうと思うと
その体がどんなものなのかどきどきと胸を高鳴らせて気になってしまう。
いやらしいお願い事を頼んでいるようで気が引けるが興味のほうが今は勝った。

体をつつかれるたびに甘い声を上げながら身をくねらせる。

「あの、ヴァイルさん……僕も……
 なにか……お願い事とかありますか……?
 ぼく、いつも助けられているのに、お礼ちゃんと……してないから……」

はぁと甘ったるい吐息を零しながらじっとヴァイルを見つめる。

ヴァイル > 無垢な感謝の言葉に、ヴァイルは少しだけ表情を固くして
自分の指の先をぎゅっと握って、そして離した。
ツァリエルが願いを口にすれば、笑みのまま、素直にエプロンを外し、
その下のワンピースを、焦らすようにゆっくりと脱いでいく。

そうすると、それに隠されていた清冽とも言える、暗い色の肌着を帯びた白い裸体が晒される。
血の通った柔らかい陶器の像などというものがあれば、きっとこれがそうなのだろう。
ツァリエルの褐色の肌と重なれば、不思議なコントラストとなった。

「いかがですか、わたくしの身体は……」

甘く囁くようにしてこの一糸まとわない姿に関しての感想を伺う。
やはり、くびれてなだらかで流麗な曲線を描く少女の身体であったのだが、
下の肌着はくっきりと女性にはありえない膨らみが浮かび上がっている。
どうやらそれだけは男性のままであるらしかった。

「さて、わたくしはあなたを助けた覚えなどなく、
 不愉快なものを排除し続けていただけですが……」

願い事、と言われればツァリエルの身体に腕を回しゆるく抱いたまま、しばし考え。

「では、わたくしのことはヴァイル……と、そう呼び捨てになさってください」

そう答えると、じゃれるように首筋に幾度かキスを落とす。

ツァリエル > ヴァイルが衣服を脱ぎ捨て肌を露わにしたその白い肢体に食い入るように見つめる。
その不思議な肌の色と美しさに思わずそっと腹のあたりを手でなぞった。

「えっと……うんと……すごい、綺麗……。
 あの、きっと両性具有の神様がいたらこんな感じじゃないかなって思う気が、します……」

恥ずかしそうに、しかし決して目をそらさずヴァイルの肌に掌を滑らせていく。
意図してよこしま動きではなく、ただ不思議な美しさに感嘆して無心になぜるだけ。
やがてヴァイルに抱かれ、首筋にキスを落とされればもはや今まで我慢していたものが噴出するように
ぐいと自分からヴァイルの頭を引き寄せて同じようにキスをしてゆく。
首筋や顎、額に落としてついに奪うように相手の唇に到達すると
自分から強請るようにヴァイルの口内で舌を絡めあう。

「はぁっ……ヴァイルさ……!ヴァイルっ、ヴァイル!おねがい、すきにして……!
 おなかのおく、あついの……ああ、ヴァイル……!」

ちゅくちゅくと水音を立てて口を吸い、それまでの奥手さをかなぐり捨てる様に必死に相手の体を貪ろうとする。

ヴァイル > 「……感謝を。
 神などと、ずいぶんと恐れを知らぬ言葉。
 所詮は、好きなように変じられる身体でしかありません」

ツァリエルの賞賛に、目を伏せて控えめな様子で答える。
本来のものではない美貌を忌々しくこそ思わないにしても、
自分ではそれほど価値のあるものだとは考えていなかった。

「んっ……!」

思いの外に積極的な動きでツァリエルが求めてくることに驚いた。
窘めたり皮肉や意地悪を言う間もなく唇を奪われてしまう。
侵入するツァリエルの舌に、歓迎するように自分の舌で愛撫していると、
火の投げ入れられることのない炉であったヴァイルの肉体がほんのりと熱を帯び始め、
あたかも人と同じ情感を持つかのように反応し、くねり、ベッドを軋ませる。

「はいっ……。ツァリエルさまっ……!」

まるで恋人にねだるような声に、唇を離し、身を起こす。銀の橋がその間にできた。
とっくにヴァイルの男性自身は、肌着の下で強く主張していた。
覆う布をずらして、少女の身体には似合わない、逞しく屹立し先走りを垂らすそれを手で支え、
ツァリエルにもよく見えるように誇示する。

そうして少し間を置いてから、ツァリエルの脚を持ち上げ、
ツァリエルの女性の部分へと、一思いに突き入れた。

ツァリエル > 精一杯のつたない讃辞に控えめに応じるヴァイルにどこか調子を崩されつつも
それをなぜか嬉しいと感じて顔をほころばせながら抱きしめる。

自分の起こした行動で相手が甘い悲鳴をあげることにどこか満足を得ながら
必死になれない女の体をさぐりあって快楽を得ようとする。
徐々に温かくなるヴァイルの肉体に自分の火照りきった熱が移るような錯覚を覚えて、それだけで頭の芯がじんと痺れるような快感を得た。

「はぁ……おねがい、ぼくもツァーリってよんで……」

すっかり淫蕩に染まりきった表情でぺろりとお互いの唾液が混じったものを舐める。
そうしてヴァイルがずり下げた下着の中、さして珍しくもない男性の印を食い入るように見つめる。

「すごい……」

はぁと溜息のようにうっとりと目を細める。自分の未熟な体についていたものとは全く違う逞しさに、心は男性自身だったはずなのに蕩けるようなものを感じてぞくりと腹の奥が疼いた。

ヴァイルが自分の足を持ち上げるのに合わせてやりやすいように股を広げて腰を持ち上げる。
男と女の交接がどのようなものかはわからないが、本能としてこうするべきだというものが勝った。

しっとりと濡れそぼったそこにヴァイルのそれが突き入れられる。
まだ誰も分け入ったことがない内側にずるりと固く熱いものが侵入してくる。

「っあ、いっ、く、~~~~!!」

ぎゅうと相手にしがみつき突きこまれた衝撃にがくんと背筋を丸める。
とたん、入れられただけだというのにびくんと体が痙攣して頭が真っ白になる。
女特有の達し方を初めて経験して、じんじんと上り詰めてなかなか降りられない感覚にはくはくと息を吐いた。

ぬめる襞と狭くきつい内側でヴァイル自身をぎゅうぎゅうと締め付ける。

「あ、あぁ……ぼく、ぼくっ……へん、おんなのこじゃないのに……
 お、おんなのこになっちゃう……こわい……」

涙と涎を零しながらヴァイルに甘えるように縋りつく。
だがまだ足りない様子で相手のものをしっかりと咥えこんでいた。

ヴァイル > ツァリエルに抱きしめられればどこか恥ずかしそうにうつむく。
なぜ誇りと思っているわけでもない自身の身体の感想を、ツァリエルに尋ねたのか。
それは実のところヴァイル自身でも正確には把握できていなかった。

「ぐぅっ……ツァリ……ツァーリのなか、熱い……っ」

油断すれば端ない喘ぎの声が出そうなのを、懸命に歯を噛みしめて堪える。
誰も迎え入れたことのない肉壷の締め付けはきつく、
しかし柔らかくヴァイルのものを愛撫した。
負けじとヴァイルも、彼女の腕を手綱を持つように引いて、腰を振って肉の竿を行き来させる。
内壁を先端の膨らみでなぞり上げ、奥へとじっくりと進ませる。

「ふうん……なら、女の子から戻れなくしてあげようか? ツァーリ」

ツァリエルに比べれば幾分か余裕のある態度で薄く笑う。
すがりつく彼女へ、のしかかるようにして身体を倒す。
二人の敏感な双丘の先端同士が柔らかく触れ合った。
くにくにとそれを弄ぶように押し付けて、こね合わせる。

「男同士のはずなのに、今は女同士って、へんだよねえ。
 けど、気持ちいい、でしょ……?」

見れば、ツァリエルを貫く少女すらも淫蕩の熱に浮かされた緩んだ笑いとなっていた。