2023/03/10 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区と平民地区の狭間 隠れ家系食事処」にメイラ・ダンタリオさんが現れました。
メイラ・ダンタリオ >
王都の中で狭間と呼ばれる場所がある。
有名な場所ではコクマー・ラジエル学院がそうだろう。
富裕民と平民の区分けされた場所の狭間に建てることで、身分の違いを混ぜ合うようにさせた場所。

その狭間の場所は他にも幾つも存在し、表立って存在していないものもある。
下手な宣伝も看板も出さず、扉を空けなければ食事と酒精が提供される場所だとは気づかない
そんな隠れ家的な場所。

治安が維持された空間で隠れ潜むだけに、一見で見つけるよりも紹介が多いだろう
座している客は疎らなもので、隠れ家的なだけに愛用している者以外は見つけられず
そしてその者達は特定の者以外に教える気もきっとない。
せっかく見つけている行きつけの空間を他者が埋め尽くして入れない
または満員御礼というのは、人によっては入る気すら失せるものだ。

其処のテーブル席の一つに、メイラがいた。
戦場帰りなのだろう いつものように頬や首筋には白い傷跡を隠すもので覆われている
普段使いの手袋丈しかない、鋭い黒鉄色のガントレットを身に着けたまま
手元の霞仕上げのグラスの中には、ジュワゴワと炭酸気泡を浮かばせる黒い液体。
錬金術仕上げの値の張るコーラと呼ばれるものをガブガブとギザ歯の奥に流し込んでいた。


        「ん。」


炭酸水の源泉か、はたまた錬金術で手間暇のかかるこれを造ってから味付けしたもの
ジャンキーで中毒性のある味を手元にボトルで置きながら、友人の勧めで入ったらしい
手元には珍しくくず肉を寄せ集めて造る、貴族には余り食されることがないハンバーグプレート
油茹でされたポテトや野菜が普通なら添えられるものを、メイラはそれを排除させている。

メイラ・ダンタリオ >
腸詰と同じで、くず肉を集めて上手に調理した者とされるだけに
普段貴族に勧められる品ではないハンバーグ
しかしメイラからしてみれば、肉は肉。
細かい事柄もプライドも刺激されることはない。

寧ろ余計な筋や脂身がべっとりとついた野趣あふれるような野性肉よりも
こちらのほうがストレスというものがない。
脂身を細かく混ぜているから肉汁もたっぷりだろう
ナイフを軽く入れるだけで簡単に割れたそれは、表面の焼きで崩れることもなく
メイラのギザ歯の中に押し込まれ、モシャモシャと気兼ねなく咀嚼していった。


        「(ごくん) あら。」


悪くない むしろヒレのような純粋な肉の塊を好むメイラからすれば相性がいい。
普段食べるハンマー・ステーキよりは若干肉を食べているという実感が薄れるくらいだろう。
一人で食べに来ているだけに、純粋な食が目的だったものの、手元の手間のかかっているドリンク
それと合わせればむしろ新鮮な感覚だろうか。

赤い瞳もギザ歯も、笑みを浮かべ、機嫌良くグラスの中のコーラを流し込み
胃の中で一定の圧を掛けて押し出される空気も、行儀よく音無しで済ませるだろうか。
甘口な田舎ワインや柑橘リキュールとも相性がいいだろう
今度はそちらも試そうと思いながら、四分の一に切り取ったそれを再び
ハンマー・ステーキを食らうときのようにガモッと咀嚼していく。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区と平民地区の狭間 隠れ家系食事処」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。