2023/02/10 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/路地」にマーシュさんが現れました。
■マーシュ > 通りがかるもの皆、吐く息が白い。
重く圧し掛かるような鈍色の空からは先ほどからちらちらと雪花が舞い始めるのを、王城へと戻る途上の路地から見上げる。
己もまた余人に漏れず、白い吐息を点しながら、歩を進めていた。
「────少し春に近づいたと思ったら。侭ならないものですね」
暦上の季節は確実に針を進めているのに、実際のそれはまるで足踏みするか、あるいは逆行するかの如くだ。
それでもまだ、己が暮らしていた神都よりは寒さは緩いと──記憶を手繰りながら。
それでも戻って包帯づくりをするには少々難儀しそうな気温であることは間違いない。
この時節特有の憂鬱さを、けれどその程度の悩みしかないこともまた幸いであることを自覚する女は、凍える口許に淡い笑みを刷き。
常と変わらぬ道行の復路を辿る。
流石にもう王都へと出向した直後とは違い、慣れた道であれば迷うこともない。
規則的な靴音が石畳を叩く音が連続していた。
■マーシュ > 静かだが、静謐というわけでもない。
元々閑静な富裕地区と言えど、それゆえの社交場はいくつもあるし、それに付随する商業施設もある。
道を行くのは人だけではなく、馬蹄の音が響きもする。
けれども、雪花はそれらすべてを包み込むように静けさの中に閉ざすようでもあった。
儚く、淡く。そして深々と、冷たさが頬を撫でるのに吐息すると、それらはやはり雪のごとくに白く散る。
「────」
日没よりも早く暗くなり始めた路地を転々と照らす街灯を辿るように、女の歩は休むことなく進められて。
■マーシュ > その歩が、雪に足跡を残す前には、目的の場所へとたどり着くことになっただろう──。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/路地」からマーシュさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/魔法武具店」にソフィアさんが現れました。
■ソフィア > 平民地区と富裕地区の間に位置する場所に立つ小さな店。
看板には掠れた文字で辛うじて魔法武具と書かれたものが軒先に。
そして店内は一見すれば少々装飾の拘ったと言えるような武器や盾などが数点置かれているだけの商品。
そんな店内の奥にいるのは尖った耳をしたエルフの店員だけで。
しかしその店員も店内にお客がいないせいか何処か眠そうな様子をして。
時折に入口に目を向けては店内に目を向けてと繰り返していて。
「もう少しお手軽なものを作るべきしょうか」
視線が向いたのは数少ない商品とその値段、それこそひと月は暮らせそうな値段を見ては目を細め。
滅多に売れないよりももう少しお手軽が良いかもしれない、そう考えては小さくあくびを溢して。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/魔法武具店」にヴァンさんが現れました。
■ヴァン > 黒い軍服に身を包んだ男が店の扉を開けた。
遠慮がちに店内に入り、エルフの女性と目が合うと軽く頭を下げる。
「ここでは魔法の付与というか、武器の強化をしていると聞いたんだが……」
その後に述べたのは時折この店を利用する人物の名前。
とはいえ、その人物は使用人任せで来店したことは1回だけなのだが。
「武器を強化というか、付呪をしてほしいんだが。
他のお店で断られてね。相談に乗ってもらえそうな場所としてこの場所を知った」
来店目的を告げつつ、腰に差した打刀を外す。
相談に乗ってもらえそうなら、カウンターに置くことになるだろう。
■ソフィア > 滅多にお客も来ないので気を抜いていると開く扉。
そしてんりょがちに入ってきた男性に気が付けばたたずまいを直し。
「いらっしゃい。やっていますよ、何処で聞きましたか?」
男性の言葉に小さく頷いては問いかけ、告げられた名前は前に一度来た気がする。
その人物の使用人が時折に来るので辛うじて覚えていたレベルではあるが…。
「武器の材質にもよるけど出来ますよ。
他で断られたというのが気になりますが…どういうのをご希望で?」
告げられた内容に、どういったものかと剣の素材次第と告げては大丈夫と返し。
カウンターに置かれた打刀を手にすると、抜いても?と視線で問いかける。
■ヴァン > カウンターに置かれたのは青黒い鞘をした打刀。許可をとるような視線には右手を出してどうぞ、と。
刀身は黒く、光を反射しない。一目で魔剣・妖刀の類だとわかる代物。
「相談というのはこの打刀だ。魔法の発動体で、なおかつ魔力を貯めておくことができる。
魔力貯蔵量を増やしたいんだが、事情があってこの打刀自体は弄れない。
理由は――そうだな。借り物の家を大家に無断で増築はできないだろう?返す時に元に戻そうにも、痕が残る」
銀髪で髪を後ろに撫でつけた姿、そして服装から兵士・あるいは騎士だと推測はつくだろう。
男は自分の事情がしっかりと伝わっているか、ゆっくりと話しながら目の前の女性と刀を交互に見る。
「着脱が容易なアクセサリーにそういった効果を持たせられないか、という相談だ。
前の所では魔剣が本来持つ貯蔵量を増やすのは可能だと言われたが、どうしても魔剣本体に細工する必要があると言われてね」
そこまで言ってから店主の顔をまじまじと見る。
エルフは外見からは何もわからない。紹介者からは実力はあると言われてはいるものの、さて。
■ソフィア > 男性が右手を出せば打刀を鞘から抜き確認をはじめ。
光を反射しない黒い刀身、そういう金属はなくはないがこれはそうではなく、既に完成された魔剣の一種だと見て取り。
「ここまでの魔剣でしたら十分な能力だと思いますよ。
これの魔力貯蔵量を剣自体を弄らずに増やすですか。
つまりはあなたのものではないと?
男性の言葉に打刀から視線を向けてその姿を確認し。
服装から王国の騎士あたり、冒険者ではないと見ればこの剣は借りているものと考え。
「脱着が容易な……魔剣本体に細工をせずに。
つまりはこの剣に手を加えずにですね。
一つお聞きしますが、鞘は変わっても問題はありません?」
男性の言葉に鞘から抜いたままの打刀をカウンターに置いて鞘を手にし。
男性の希望に沿うものは用意できなくはないが貯蔵量をどこまで増やせるかは未知数。
ならば鞘をその効果を持つものに交換してしまえばと考えては考えを説明をして。
■ヴァン > 貴方の物ではないのか、という質問を投げかけられた途端、決まりが悪そうな表情になる。
この男、何事かを隠している。初対面の相手にどこまで伝えるべきか悩んでいるようだ。
続いた言葉で決心がついたようだ。いや、と首を振って。
「正直に言おう。この刀には知性がある。鞘をはじめ、今貴女が手に持っているもの全てで一個の存在だと考えてほしい。
なので、鞘を分けたりはできないんだ。ここにつける……ストラップのようなものとか、そういった類で増やせないかな、と」
装飾の欠片もない鞘と刀身。何かを増やすとしても布を巻きつけたりする程度か。
男自身、無理なことを言っているという自覚はあるらしい。
口許に視線をやり、期待と不安がないまぜになった視線で、紡がれる言葉を待つ。
「万愛節ってことで、日頃のお礼をと思ってね」
魔剣そのものへのプレゼント、として考えているようだ。
■ソフィア > 問いかけに橋上が変わったことに目を細める。
借り物ならいいがもし盗品などであった場合、迂闊に希望に沿っても良いものかと。
それを問うかどうしようかと視線は打刀に戻して鞘にしまって。
「知性を?そういうたぐいの剣なんですね。剣から鞘までで一つ。
ストラップのようなもので……中々に難しいですね、それは」
男性の説明を希望を聞けば考え込むようにして。
この剣は全てが一つとなれば出来る事は本当に限られてしまう。
どういうのが良いかと頭の中で考えを巡らせ。
「幾つか方法はありますよ。
鞘の外に巻くように魔力貯蔵の呪を編んだ布を巻く、鍔の部分に同じようなものを刻んだ被せといえばいいのかな、そういうのを付ける。
後は、握り手のところにミスリルの糸で編んだカバーを付ける。
この辺りが比較的簡単にできますよ」
そういうのはどうですか?と案を並べては大事にされている打刀を軽く撫でて。
■ヴァン > 回答に対し、顎に手をあてて考える。
しばらく男は黙っていた。何度か首を傾げたり、頷いたりした後にようやく口を開く。
「ふむ……鞘の外に巻くのをお願いしたい。ちなみに、いくらくらいかかる?」
一度店内に視線をやり、陳列されているものの値段をみやる。
値段に動揺の色がないのは表に出ないだけなのか、本当に感じていないのか。
紹介者からこの店の存在を聞いた時点で、それなりの出費は覚悟しているのだろう。
「話は変わるが……腕輪とか指輪で、所有者本人に影響を与える類のものも作れるのかい?
ほら、身に着けたら筋力が上がる指輪とかがあるだろう?そういったものさ」
本題の話がまとまりそうになったからか、雑談とばかりに言葉を並べる。
少し口許が緩み、笑っているように見えるのは余裕ができたからだろう。
■ソフィア > 「外に巻くのですね。どういう素材がいいです?」
上質の絹やミスリルの糸を編んだもの、安い布地だと安くなるので素材で値段が変わると説明し。
店内に置かれた少ない商品の値段はどれもこれもが高価なもの。
日頃のお礼ならと自分としてはミスリルの糸を編んだ物、結構な値段を勧めて。
「出来ますよ。腕輪に指輪、後は……ブーツでもできますよ。
どういった効果の物が欲しいのですか?」
男性の告げた別の話題、それに関しても大丈夫と小さく頷き。
基本的にはそういう効果を発する呪を刻めば作れるので媒体の大きさと効果で値段が変わるだけ。
どういったのを望むのかとメモを取り出して聞く姿勢となって。
■ヴァン > 素材によって値段が変わることは理解していたものの、違いには驚いたようだ。
贈る相手ともいえる魔剣が目の前にある状態で安価な物を選べる男というものはそういないだろう。
例に漏れず、目の前の男も見栄を張る生き物の一人だった。2秒と経たずにミスリル製を、と告げる。
「腕輪かな。着脱が容易なもので、指輪ほど無くしにくくない。効果は…………
外からの刺激への耐久力、定まった体勢を長時間維持できる持久力、病気への抵抗力も大事だな。
あとは一回り長く太くなれば言う事ないな」
いつの間にか男の右手は握られており、人差し指と中指の間から親指が覗く。
目を向けたことを確認すると、親指を出したり引っ込めたりしてみせた。
にや、と笑ってみせる。先程までの端正な顔立ちが嘘のようだ。揶揄っているらしい。
とはいえ厄介なのは、実際に製作可能であれば男がその話に乗ってきそうでもあるところだ。
■ソフィア > 高価な素材ほど男性が望む効果も高くなっていく。
しかしあくまで勧めるだけで強制などはしない、そういうのは趣味ではないので。
しかし直ぐにミスリル製と聞けばメモし、魔力の貯蔵量だけなら3日、装飾にこだわるならもう少し拘ることを告げて。
「脱着が容易なのは使わないときに外しやすいですよね。
外からの刺激の耐久力、定まった姿勢でで長時間維持できる持久力、病気への耐性」
男性の要望を書き上げてはどの程度の腕輪が良いかと頭の中で組み立てていき。
そして一回り長く太くと聞けば顔を上げ、男性が右手を握り、人差し指と中指の間から親指を見せているのを目にし。
それが出したり引っ込めたりとするしぐさ、そして笑っている顔を見ては視線をメモに落とし。
「後は量の増大と体力回復を付けて……腕輪の大きさはあそこの棚にあるぐらい。
値段は……これぐらいになりますよ」
揶揄われた事に少しだけ眉が動けば更に効果を勝手に追加をしてしまい。
そのうえで店内に置かれていたどう見ても高価と言える腕輪を指で刺し、そして告げた価格は一月は確実に豪遊できる値段であって。
■ヴァン > 装飾について聞かれると首を傾げた。
質実剛健を絵にかいたような飾り気のない鞘だ。過度な装飾は合わないだろう。
この鞘に似合う落ち着いた装飾を、と抽象的な依頼に留める。男もそこまでイメージができないのだろう。
「そうそう、使う時だけ身に着けられればいい。……って、体力回復は要らないよ?自分で使えるからね。
逆に考えると、これだけ値段をかければできるのか……寿命が長いエルフのお嬢さん、お姉さん? には理解しがたいことかもしれんが。
人間の男ってのは十数年しないうちに衰えてしまうんだ。
腕輪の素材は壊れなければ高くなくてよくて――サイズアップだけだといくらになる?」
エルフは外見からは歳経ているのか見た目通り若いのかわからない。お嬢さん、と言ってから言いなおした。
一か月は豪遊できる金額に唸りつつも、オプションを外していけば値段も落ちる筈と一番大事な要素だけを残して値段を問う。
冷やかしなのか、本気なのか。男は目を細めて笑みを絶やさず、告げられる金額を待っている。
刀への装飾品に対する反応から、ただの騎士ではなさそうだ。見た目によらず金回りがいいらしい。
■ソフィア > 装飾を問えば鞘に似合う音付いたものという言葉。
それならばシンプルな装飾が良いだろうとメモに書き足し。
「常に着けたがる依頼人も時々にいるんですよ。自分で使えるならいらないですね。
お金に糸目をつけなければ大体の効果は付けれるよ、大きくなりますけど。
……これでもお嬢さん、人間がそうなるのは知ってますよ、だからそういうのを求める人もいますから。
素材の強度は最低限、サイズアップだけだと……これになります」
少なくとも男性に比べれば年上だが、エルフで見ればお嬢さんな年齢。
最初に色々と注文を付けながらに最低限に変更をする言葉に少し呆れた顔をみせ。
それならと魔力で補強した木の腕輪に望みの効果で高級ワイン一本分程度の値段を告げ。
冷やかしでも本気でも買えなくはない値段は大した作業でない表れ。
ただそれなりにお金は持っているようには見える、そうでなければ打刀へのあのような依頼はしないのだからと。