2022/12/25 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 とある屋敷会場」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にヴィルアさんが現れました。
ヴィルア > 「―――…」

その日、男はとあるパーティ会場で機嫌よく接待を受けていた
接待と言っても過激なものではなく、今のところはただ貴族やそのお付き、あるいは妻が酒を飲んでいるだけだ

男が上機嫌な理由は、特に不快な押し売りもなく
自分が欲しかったものをいくつか…シェンヤン由来の上等な媚香や塗り薬など
それらの上質な品を安く手に入れられたからだ
それも、販路をほぼ譲られる形で、だ

これでリルアールの裏の仕事もスムーズになりやすい
もちろん、相手は選ぶが…。

「―――ふふ…」

男には珍しく、ビジネスは一度抜きにして
今日は欲望のままに目についた者を買うか、誘うかしてもいい、と思っていて

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にリアさんが現れました。
リア > パーティーが始まってから少し経った頃合いに、母娘連れの来訪。
ともに黒髪で、シェンヤンの血筋を思わせる顔立ちの二人は、客の中では少々異質ではあった。
母親の方はすぐに知人の顔を見つけたのか談笑を始め、一方娘の方はその談笑の輪から離れてグラスを手にし、短い挨拶程度の会話をそこかしこで交わしながらひとところには留まらず移動している。

華やかな装いが多い中では地味と言える部類の黒のロングドレスは、背中から尾てい骨までざっくり空いたデザインで、裾を引きそうに長く、スリットが深く入り、これも王都の主流とは異なった民族風の仕立てだった。

やがて会場を順に巡る娘の足がヴィルアのいるところまで近づく。
小さな笑いを聞きつけた気がして、声を掛けた。

「――ご機嫌そうですね。何か良いことがありまして?」

長くはない髪を頭部にぴったり沿うようまとめた頭が傾いで、百合の花を模した簪から下がる雫のような鉱石が揺れる。

ヴィルア > 会場を眺めていると、この場には合わないともいえる黒のロングドレスを北少女に話しかけられる
目立った貴族は記憶しているため、すぐにその容姿と照らし合わせ
リルアール家と似た生い立ちのマロリー家の娘であると思いいたる
以前より貴族であったが奴隷商売にも手を出すリルアールと、奴隷商からのしあがってきたマロリー家で差異はあるものの

男としても、親近感を感じる家だ
とは言っても今までそれほど密な交流は無く、互いの存在を知っている程度だろうが

「やあ、確か…リア嬢だったかな。良い夜だね
…何、仕事が上手くいっただけさ。君は?今日は………ああ」

子爵家の娘がこのような商談パーティに一人で参加するのは稀だ
親の姿を探せば…丁度その母親が貴族に囲まれて談笑しているところを見つけた
ということはこの少女は、自らコネクションを広げるためか、あるいは年齢相応に暇だからか…それらの理由で男に話しかけてきたことになる

「…母親があれでは退屈だろう。
うん。私も商談が落ち着いたところであるし、少し話をしないか?」

酒は飲めるのかな、と聞いてウェイターからグラスに入った軽めの果実酒を貰い、手渡そうとしつつ
壁際に寄って人の波から外れ、優しく微笑みかける

リア > 奴隷売買に係わる一家、という少しも嬉しくはない共通点で知っている相手だったけれど、そのマーケットが無ければ成り立たないほど労働を奴隷に頼っている現状があり、また、少なくとも昨今のリルアール家の評判は領民からも高いことを知っていたから、笑みを見せ、片足を引いて丁寧に礼をした。
同じ爵位でも一代での成り上がりの家が同等に扱われることはない。

「はい、ヴィルアさまもお変わりなく?
 もうすぐ年も変わりますのに、最後までお仕事に精力的なんですね。
 ヴィルアさまが継がれることを歓迎する声が多いのも頷けます」

彼の視線を追って母親の現在位置を確認した目がわずかに翳る。
コネクションを広げることについて実に積極的なのが遠目にもわかる。
連れて来られた自分の肩にもその期待がかかっているのだが、保護者連れの娘に近づくのはひと時の好奇を満たす目的の者がほとんどである。

「ふふ、母がそばにいるとあれこれ口うるさいので、この方が気楽です。
 ヴィルアさまがお話相手になってくださるなら、後から叱られることも無さそうなのでありがたいですけれど……」

ほとんど空になっていたグラスを通りすがる給仕の盆の上に置き、代わりにヴィルアの手から飲み物を受け取る。
少し考えるように首を傾げていたが、彼と話をしていれば「ぼんやりしていないで顔を繋げ」などと怒られることもないので実際ありがたい話だったので、最終的にはにっこりした。

「じゃあ、ヴィルアさまに声を掛けたい他の方のお邪魔にならないように、少しだけ」

ヴィルア > 「はは、商人から、その卓越した手腕で貴族の位を手に入れた…マロリー家の息女に言われると嬉しいね
…無事に新たな年を迎えられるのもまた、嬉しいことだが…気を抜くと足を取られるのがこの世界だ。油断はできないよ」

しっかりと貴族としての教育を受けたのであろう少女の丁寧な礼と言葉に口元が少し緩む
勿論同等ではなく、根本には自身の方が上だという意識はあるが
それはそれとして気分は良いままであるから、言葉は軽く

「そういった意味では、母上は余念がないね。
もちろん、私から誘ったのだから他の貴族よりも優先するさ。…それを成果として母上に報告すると良い」

例え世間話で終わったとしても、談笑できたのならそれはそれでコネクションを作る目的としては成功だろう
そこまでは少女の言葉から読み取れば、軽く相手の耳にささやくようにしてから…く、と顎に手を当てて抑え笑い

「そういえば君は…学院に通っているんだったね。どうだい、最近は。楽しいかな?」

注目はある程度していた貴族だからこそその娘がどう過ごしているかくらいは把握している
と言っても息女、子息はあの学院に通うことが多いから詳しいことまでは流石にわからない
雑談を振りながら、何か聞きたいことがあるなら支障のない範囲で答えるし、何もないなら…少しアプローチをかけてもいいかと
優しい目線で少女を見つめながら考えている

リア > 「おかげで父は別のパーティーへ顔を出しに行っておりますし、私まで駆り出される始末です。
 ヴィルアさまのようなお世継ぎがいれば、お家は安泰ですね……」

心無し眩しそうに目を細めた。
「家」をより大きく豊かにする跡継ぎは、貴族家での理想そのものに見えたから。
貴族として正道を行く男と、そこから逃げ出そうと足掻いている自分との距離を感じたせいもある。

自らコネクションになってくれる、という申し出に笑って。

「ヴィルアさまは誰にでもお優しいのですね。それとも、私は対価を聞いておくべきでしょうか」

半ば冗談で返す。

「昨日今日は、寮で冬至の宴があるはずだったんです。……それを逃しました。
 でも来週は泊まりがけで野外実習があって、私、みんなで外で泊まるなんて初めてでとっても楽しみで――」

楽しみにしていた学友とのパーティーが母親のお供の時間に変わってしまったことを根に持っている口ぶりで、唇が尖りかけたけれど。
楽しみを思い出して目が輝く。しかしそれも、友人のように自分のお喋りに付き合わせて良い相手ではなかった、と途中ではっとする。

「ええと、ヴィルアさまはご機嫌そうでしたけれど、何か珍しいものが手に入りまして?」

ヴィルア > 「貴族の位を得たからとあぐらをかくよりはいいと思うけれどね
ただ、君のような可憐な若者の青春を奪っているのは問題か」

権謀術数渦巻く中に居るとは思えない笑みで、少女に笑いかける
それは逆に、少女程度に出し抜かれることはないという自信の表れでもあるが
ただ、誰にでも優しいと聞けばふむ、と唸って

「それは勘違いだよ、リア嬢。私が優しくするのは…私にとって利益がある相手だけさ
君のことはある程度知っているが、そこでつまらない相手だとわかっていれば、こうして話すこともなかっただろう」

例えば…言ったように、貴族の位にあぐらを掻いている者、とか
代価については笑って返す。代価という言葉を使って深いコネクションを得ようとしている…と判断し
その強かさにまた興味が湧いてくる
少女が目を輝かせながら話してくる内容にも理解を示し、何度か頷いて

「パーティは残念だったが…そうか、野外実習の時期か。
貴族は中々外に出る機会も少ない。存分に楽しむといい。

…ん?ああ、シェンヤンからの珍しい香炉や薬を手に入れてね
今後、良い商品になりそうだから顔に出てしまった。恥ずかしいことだよ」

ふふ、とまた柔らかな笑みを見せて緊張を解そうとする
コネクションを得ようとしながらも少女らしい姿を見せる相手にご褒美として情報を伝える
と言っても…特に密談というわけでもなかったため、母親も同じ情報を得ている可能性は高いが
母親と同じ情報を手に入れられた、という点ではポイントは高いだろう

リア > 「満足することを知らないのは、それはそれで……幸せなことではないと思いますが、何の実績も無い私がそんなことを言ったところで、どなたの心にも響かないでしょうね。学校生活が許されているだけで良しとすべきなんでしょう」

目の前の相手はどことなく父と似ている、という印象を持った。
聞こえてくる評判は有能で領民思い、おまけに見目麗しい――というものだけれど、それを頭の中で少し修正する。
グラスに唇だけつけて微笑み。

「母親のおまけの小娘にまで、利を見出してくださるのがヴィルアさまの優しさです。
 次があれば退屈させないお話をできれば良いのですが。
 シェンヤンの品にご興味がおありなら、何かお役に立てるかしら。家にあるのは女物のドレスや装飾品ばかりですが」

香炉、薬、と言うのに、確かにどちらも王都で人気と需要の高い品ではある、とさして深く考えず頷いた。
と、ホールの向こう、母親が誰ぞを伴って移動するのに目をとめて。

「……ああ、母の今夜のお相手が決まったみたい。私はこれでお役御免です。
 まだヒールに慣れないもので、今夜はお暇させていただきますね。
 またお話させてくださいな、ヴィルアさま」

どこかの貴族と別室へ消えていく母親の背中。そこで行われるのが商談なのか別のものなのかは考えないことにする。

ヴィルア > 「…何の実績もないというなら。母親の行動に引きずられずに居てもいいのではないか?
先ほどから気になっていたが…君は、どちらかといえば貴族と言うものに辟易しているように見えるよ」

言葉の端々…というより貴族の話をしている時と学院の話をしている時の差が引っかかり
なるほど、こうして話しているのは親のためというよりは自分のためか、とも予想を付ける

既にパーティも酔った貴族たちによる自慢話大会となり始めている
いい商談も出来た事だし、これ以上ここにいる意味も薄いだろう

「…君さえよければ、相談に乗ろう。
貴族という縛りから逃れたいのなら…
この後でも、いつでも。…私の屋敷に来ると良い。この会話で…君が紹介してくれるシェンヤンの品や…君自身にも、興味が出た

ああ、彼女にしばらくついてやってくれ。慣れないヒールらしいからな。
…私の方は他の護衛でいい。」

くす、と笑って。
会場の端に控えていた護衛を一人呼べば彼女に付けておこう
少女が望むなら、誰の邪魔も入ることなく次期当主と話せる機会が得られるだろう――

リア > 「これも学校に通わせてもらう条件なので……でも、今夜は苦手な方がいたもので、お優しいヴィルアさまに甘えてしまいました。申し訳ありません」

貴族の催すパーティーは、退屈できるならましな方で、下手に好色な上位貴族の気を引いてしまおうものなら角を立てずにやり過ごすのに一晩中緊張していなければならない。
今夜はそうはならなかった、とあまり申し訳なくなさそうな口調で少しほっとしたように笑う。

続く言葉に、辞するための礼をして。

「魅力的なお申し出ですね……ヴィルアさまのご用意くださる鳥籠は、父のそれより快適でしょうか。
 行くあてが無くなりそうなときには、頼らせてください。
 お仕事はほどほどに、たまにはお休みくださいませ」

では、またいずれ、と宛がわれた護衛を馬車までで辞退したのは、馬車の中でとっととヒールを脱ぐためである。

物腰は柔らかくて優しい、でも取引には厳しそうで何となく怖い――
馬車の中でヴィルアの印象を思い返しながら、まだ底知れないような気がして、家に着くまでずっと考え込むことになる。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からリアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からヴィルアさんが去りました。