2022/12/10 のログ
紫霞妖仙 > 「ほお」

つまらない。その一点につきるため帰り支度をしようとしていた紫霞の眼に、
ふと一人酒をする女の姿が止まる。やたらめったら長くのばされた髪。だが、手入れをされていないわけではない。
むしろ逆だ。自身のそれに勝るとも劣らぬほどしなやかであることは見て取れる。

(……ふむ、魔の類かえ。マグメール王都にいけしゃあしゃあと姿を現すとは。
 力に自身があるのか、あるいは無謀か。それともマグメールという国の腐敗の表れか。
 とはいえ……おもしろし……)

おもちゃを見つけた、と威風にくっく、と笑みを漏らしあなたの隣に席に無遠慮に腰を下ろすだろう。

「それは混ぜ物をしておるからよ。マグメールでは麦や葡萄、蜂蜜などから酒を造るが、
 東では米や芋から酒を造るのじゃ」

そういって、いつのまにやら瓢箪からあなたの飲んでいたグラスに酒を注ぐ。

「くっくっくっ、そなたの気があまりにも気になったでな。少々、おせっかいをさせてもろうた」

これは紫霞秘蔵の酒だ。飲めば、低級な存在であればひどく酔ったように意識を失うだろう。

キルノー > 女は振り返らず、その言葉を聞いていた。話しかける仙の髪と同じく艶やかだがそれは境目が見えない程で
繊維というよりも皮膜のようであった。

「あら、そうなのね……ココは王国だわ、東国ともなると随分と離れているし…ココはココなりに
工夫を凝らしているのでしょう。」

笑う女の顔を見る事も無く、淡々とそう答えた。女の声は吐息のようだがハッキリと聞こえる透き通った物だった。
そして酒を勧められれば女はココで初めて仙の方に振り替える。
仙と同じく真っ白な肌に王国とも帝国とも取れないが、非常に整った…精巧な人形のような美しい顔立ちの女だった
女は勧められる酒を見る前に、狐目から僅かに見える。世界の果てのように暗い瞳で仙の顔とその身体
容姿を視線で一舐めした。

しかし、すぐに愛想よく笑いかけると、注がれ差し出されたグラスを受け取り普通に飲み干す。

「ありがとう…アナタは随分長い事、この文化に触れているようね。」
仙の酒は飲み干した、それも一口で。女は普通に好意を受け取った者として振舞っている。
そしてしげしげと彼女の身体を眺めていると、ぬるりとその黒髪を揺らしながらゆっくり近づく。

紫霞妖仙 > 「ふふ、わらわの酒を飲んで潰れぬとはな……これは『遊びがいのある』玩具に出会えたの」

グラスを飲み干してなお、全く酔う様子がないキルノーを見て紫霞は獰猛に笑った。
目の前の女は確実に人間ではない。これはそこらにいるただの『変わり者』であればすぐさま真の姿をさらけ出すほど
酔って潰れる毒酒なのだ。しかし、そうではないという事は、それなりに霊的に、あるいは魔的に『強い』存在である。

――『弄んで、壊してやりたい』

紫霞は、下腹部に性的な興奮すらも感じながら目の前の存在をおのれの手で壊して、その有様を愛でてやりたいと思った。

「お主も、どうやらわらわに『興味がある』ようじゃなあ?
 これから一戦……交えたいとそのすました顔の奥にありありと出ておるわ。
 よかろ。とはいえここでは少々やりずらいのも事実……」

ぺろり、と挑発的に視線を返し唇を舌で舐め、濡らす。

「場所を変えるとしようぞ?」

キルノー > 女はその態度を見ると、グンっと顔を近づけ。彼女の下腹部を撫でる。
「どうぞ?」
伴われるままに女はついていくハズ

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」から紫霞妖仙さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からキルノーさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にテンドンさんが現れました。
テンドン > 「うおおおお…!ボクは臨時収入をゲットしたので折角なら泡銭を使って良い防寒着が欲しいなと思って富裕地区にへと足を運んで来たのであった…!!」

王都マグメールの富裕地区、昼間の通り道に降り注ぐ陽射しの元に今も忙しなく雑踏や馬車などが行き来しているのが窺える、
晴天ながらに冷たい風が荒れる中で首を竦めながら、がつんがつん綺麗に舗装された石畳の道を蹴り付けるようにして闊歩中。

「ってぐらいに気合入れないと立ち入りにくい…ボク浮いてるよね、プカプカフライテンドンだよ…テンドンなだけに…うわわ、寒い!」

周囲の威圧的なまでの立派な建物に見下ろされて委縮気味に尻尾を股の間に挟んできょろきょろ、姿恰好装いは配達業のまま。
殊更に強く吹き付けて来る木枯らしに慌てて揺れる髪の毛を手で抑える。

テンドン > 「すっごい清掃行き届いてるよね。実際ここらへんを配達するときめちゃくちゃ走り易いし。プライベートの目で見るとまた見え方が違うね、貧民地区とは大違い…うーん、お金持ってるってことは良い環境で住めるって事なんだなあ」

でも歩いている内に少しずつ慣れて来て尻尾がゆっくりと降りて来る。
ばさっ、ばさっ、と、毛帚みたいなふさふさのついた先っぽで路面を掃いても他の場所みたいに著しく汚れがついてこない感動。
でも、出来るだけ通りのど真ん中を占拠せずに端っこの方を選んで軒並みに連なっている富裕地区のお店の方をちょいちょい覗き込んでいる。

「うーん、うーん、服飾店があるって聞いたのはここらへんかな…」

テンドン > 「ってあったあった、ここ、ここ。失礼しまーす!」

見回して目で調べている中でお店発見!こほんと咳払いをして軽く身形を整えた後に堂々と手でドアを押して中にへと足を踏み込む。
中の内装は富裕層向けに煌びやかな様相。思わずうわっという声が漏れて立ち入った一歩から怯んでたじろぐらいには。

「…お金持ちの店って感じ」

周囲の客の視線をちらっと感じるが雑音程度なのだろう、直ぐに気にされずに目線はよけられる。そのまま店の中にへと立ち入り、展示品の一つ一つの吟味を開始した。

テンドン > 「あ、これ色彩いいな…染色とかどうやってるんだろ。これも意匠とか凄い綺麗…うわあ、熟練の技術の賜物って感じ…や、安かろう悪かろうのお店とは全然質が違う…!」

手に取る、のは怒られそうなので少し距離を取って目線で確認して回り。
てこてこと緩やかな歩調で店内を歩き回る。土落としをしていない尻尾も意識して浮かせて床面につけて汚してしまわぬように。
一着一着が住む世界の違う衣類の数々に何度も嘆息が零れ出ては体が震え上がる。

「あ、万年この恰好一張羅みたいなものだし、やっぱり普段着も欲しいかな。お金があると欲しいものが次々頭の中に浮かんで来て困っちゃうな~!」

配達中でも普段中でもずっと同じのを着ている自分の衣服の上着をちょいちょい指で摘まんで。
何度も懐にあるのを確かめるように肩掛け鞄の中に押し込んでいる金袋をちゃりちゃり手で弄って重みを確認!

テンドン > 「…値段…ってゲッ」

見て回る程度の買い物を楽しんでいたが、しかしそこに付属している値札を見た瞬間にギョッと背筋がぴんっと真っすぐになった。
桃源郷に迷い込んだ夢見る目つきがあっという間に冷や水を浴びせかけられたかのような素の面持ちにスン、と、色をなくして。

「たっっっっっっかっっっっっっっ!!!予想よりも高っっっっ!服一着ならまだしも帽子とかマフラーとかだけでこの値段…!!?これだけでボクのフルセットをもう1セット準備出来ちゃうジャン…!」

テンドン > 「ブランド価格ぅ…っ?ほ、滅びよ…人類……」

周辺の気に入った衣装の数々の値段を改めて確認し、余り手の届かないお値段であることを認めて瞬く間に表情は蒼褪め。
そして貧血を起こしたみたいにふらふらと足は後ろにへとよろめくように後退。
実際に眩暈を催した額にへと手を当てて、すーはーと深呼吸に肩を揺らし。

「だめだめ、富裕層の世界を甘く見積もってた。とってもスイートに。まだボクにはレベル不足…!此処は魔境…!!寧ろ魔王城…!!」

テンドン > はあああああああああああああああああ、と、長い溜息を押し流して肩の輪郭をゆったりと下げ降ろす。
諦めた眼差しで目の前の品々を振り切って回れ右に身を翻し。

「また、将来じゃんじゃんばりばり稼いでゴルドの詰まった浴槽に入れるようになったらまた来ま~す。背伸びしたのがイイネ、いやヨクナイネ。近所の古着屋を引っ繰り返して掘り出し物をさがそーね、ボク」

そして自分に言い聞かせるように呟きながら店を出る足運びは、とぼとぼお金持ちの世界から退去していく事になるのであった!

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からテンドンさんが去りました。