2022/10/02 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 文房具店」にエファさんが現れました。
■エファ > 昼下がり。
天気が良い日の日差しはまだまだ強く、富裕地区の大通りを往く人々の姿は薄着がほとんどだ。
とはいえ真夏よりもずっと過ごしやすくなった季節を謳歌しようとするかのように、通りは老若男女、燦々と降る陽射しのなか様々な表情で行き交っている。
そんな通りに面した大きな文房具店。
大きなガラス張りのショーウィンドウは、流行りらしい柄のノートやら筆記具やら、はたまた最新の技術を使っているらしい机やらデスクライトやら、そこらの洋服店であればちょっと顔負けするくらいの賑やかさ。
店内は親子連れが多かったが、富裕地区という土地柄か文房具店という店柄か、騒めきなどほとんどなく
店内に流れる音楽と、ひとびとが紙をめくる音や店員とやり取りする声とが交じり合って満ちていた。
そんな店内の片隅
様々な紙を取りそろえた棚が並んだ場所に、ぽつねんと立っている灰色のローブ姿。富裕地区には少し似つかわしくない地味な装いで、店員なども近寄ってこない。
「――――…」
(思ったより、高くなってる…)
ローブ姿の女がためつすがめつしているのは長尺の用紙。
ペンを走らせるのになめらかで、罫線が圧してあって、図面を引くのにぴったりなのだが…
(楽しみに、してたのに)
それこそ給料をにぎりしめてやって来たのに、見付けたそのときより値上がりしてしまっていた。
待ちに待っていただけに、ショックもひとしお。
店員が近寄ってこない事をいいことに、ためつすがめつして存分に現実の厳しさを味わっている。
■エファ > はあーとか、ふうーとか
そうこうしている間に少し外から差し込む陽が翳っているのに、足元に落ちる陽の光の色が変わっていて気づく。
ついさっきまで、よく磨かれた板張りの床をしろっぽく照らしていた光は、今すこし朱く色づいて来ていた。
「!――――…」
(いけない、早く帰らなきゃ)
一番星が天に輝く前に戻って、準備をしないと観察が間に合わない。
女は硝子越しのそとを見て改めて陽の高さを確認すると、手にした紙に最後の一瞥をしてそおっと元の棚に戻す。
じっと見上げた瞳には、来月は今度こそ、という決意をこめて口元をきゅっと結んで踵をかえす。
棚に背を向けてしまえばもう、女の頭の中は今宵の星空の事でいっぱいだ。
ひとつ観察している間に、他の幾つかの予想を立ててまたその観察記録をつける予定を立てる。
(スケジュール帳を確認しないと)
扉に付けられた鈴を鳴らして店から出ると、もう少し冷たい風がローブを揺らして去っていく。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 文房具店」からエファさんが去りました。