2020/12/27 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にシチューさんが現れました。
■シチュー > 「ふぅー!久しぶりにお城に入ったから緊張したー!
……ご主人さまの友達にちゃんとお届け物渡せてよかったー」
富裕地区。よく整備された広い石畳の夜道をゆっくりと下っていく小さな人影。王城に滞在している自分の主の友人宛に小包を預かっていたのだ。なんとか粗相もなくお使いをこなせて、ほっと安堵の帰り道である。
「んーと。帰ってからやるお仕事は無かったかな。
よーし!ちょっと時間かかるけど、夜道お散歩しながら帰ろう。ちょっと寒いけどー。夜空きれい!星ぴっかぴかー!」
メイドとしてのお勤めが残っていない事を頭の中で確かめて。暗い夜道はぴかぴかの、夜空の星を見て帰ろ。
人通りも絶える時間帯、黒尻尾を揺らしながら一人、夜のおさんぽ中。あの星この星、と冬空に星座を指さして繋げたりしながら足音弾ませ。
■シチュー > 息を吐くと白いもやが空に消えてく。
寝静まった屋敷立ち並ぶ一角で平民区とは違って煌々と明るい街灯で立ち止まると、吐く息白い選手権をひとりで開催する。
ちなみに、できるだけ長く白いもやを発生されたら勝ちである。
他にも誰も見てない事を良いことに、野良猫の鳴き真似を響かせては屋敷内で夜仕事をしているだろうお手伝いさんの集中力を削ぐ遊びをしてみたり、オリジナルの歌をでたらめな音程で作ってみたり。黒い尻尾は夜にまぎれていき――。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からシチューさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にヴィルアさんが現れました。
■ヴィルア > [待ち合わせ]
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にファリエルさんが現れました。
■ヴィルア > 「ふぅ………」
富裕地区の、ある邸宅。
リルアール子爵家の本邸だ。
その一室であるヴィルアの執務室。
邸宅の2階にあり、最も見晴らしのいい部屋で…ペンを走らせる音が響き、やがて止まる。
様々な報告を持ってくる護衛や調査員の話を聞き、それをまとめる作業を行っていた彼が一息吐く。
一先ず喫緊の作業は終わり、今日の業務も同時に終わりというところだ。
ただ、ここから眠るというわけではない。
今日はまだ…新しく入ってきたメイドと話をする約束をしていた。
しかしメイドと言っても、いつものようにスカウトしたり奴隷として買ったわけではなく。
とある恩人の孫を、引き取ったのだ。
その恩人の貴族は、些細なミスが大きく連鎖して…この乱れた国の情勢もあり、没落を余儀無くされ。
ヴィルアがその報を聞いたときには家名を失う寸前だった。
運が悪かった、と言わざるを得ないような転落ぶり。
しかも、その家には年頃の娘…件の孫が居り。
そのままでは奴隷として売られて行く事は間違いなく。
これが全く関わりのない貴族家ならヴィルアはその孫を一目見て…有用そうであれば奴隷として迎え入れ、調教しただろう。
ただ…自分が幼少の頃、恩人には、父とは違う考え方で商いの幅広い知識を与えてもらったことがある。
今となってはどうしてそんなことを恩人がしてくれたのかはわからないが…少なくとも、ヴィルアは…大っぴらには公表などしないものの、深い感謝を覚えている。
あのまま、父の教えだけを受けていれば…優秀にはなっただろうが、様々な考え方がある、という柔軟性を得ることは出来なかった。
思考の柔らかさ、多様性を与えてくれた相手には…恩返しをしなければと思い。
周囲の貴族達に意見を通し、没落や家族離散は免れないが…庇護下に置くため、その孫娘を強引に引き取ったのだ。
そして、傍から見れば同じだろうが…無理に身体を開かせることなく。
熟練のメイド長の下につけ、多少厳しく屋敷内…ひいては自分の身の回りについての仕事を覚えさせている。
掃除、作法、調理、応対などなど。奴隷として生きるのであれば必要なさそうなものだ。
ただ…これから娘がどうなっていくにしろ、教養と仕事についての知識を得れば。
例え自分の元を離れてもそれなりにまともな生き方ができるだろうという考えていて。
教養については問題無さそうである。
彼女は自分に宛がわれた部屋に本を持ち込んでいるというから、様々な知識は得られることだろう。
もちろん給金も出す予定であるため、今後は彼女が自分自身で好きなものを購入することも可能だ。
そんな生活を続けている間に…貴族達の、彼女を求めようとする熱が醒めるまで時間が経てば、彼女が再び奴隷として狙われる可能性も薄い。
この情勢であれば貴族が没落し、その娘が売りに出されることなど珍しくも無い。
(重要なのは、本人の意思、か)
これからどうするにせよ、自分は彼女に無理強いをする気はあまりない。
娘一人、淫乱な娼婦として調教するのも容易いが…どちらかといえば、ヴィルアは守りたいと考えている。
引き取ってから一週間。仕事をさせてはみたが、さて彼女自身はどう思っているか。
物思いに耽っていれば、そろそろ、約束の時間だ。
ノックがあれば、入室を許そう。
■ファリエル > 夕食の後―――
かつてであれば、湯浴みをして部屋で寛いでいた時間なのだけれど。
一介の使用人となった今ではやるべきことは山積している。
それも見習いという身分であれば、仕事を覚えるというところから。
厨房での皿洗い終えて、リネン室へと走り、今度は浴室へと。
年配のメイド長から飛んでくる指示に、短く返事をするので精一杯。
どうにか時間ぎりぎりに仕事を終わらせられたのは僥倖と言って良いかもしれない。
『――まだまだ指摘しないといけないところはたくさんありますが、
今夜はお館様から呼ばれているということですから、ここまでに致しましょう。』
どうにか仕事は終えたものの、厳しい上司の及第点には届かなかったらしい。
それでも残業は免除してもらえたので、丁寧にお礼を述べてその場を辞する。
この屋敷で働き始めてまだ数日。
借金取りが大挙してやって来た日から数えても、まだひと月も経ってはいない。
自身を取り巻く情勢は目まぐるしく変わるばかりで、ついていくのもやっとのこと。
それでも、ようやく落ち着けたと言えるかもしれない。
普段ならばこのまま自室へ戻ってぱたりと硬いベッドに倒れこんでしまうところなのだけれど、今日ばかりはこの後にも約束が控えている。
少し落ち着けた今だからこそ、改めてお礼を言いたくて、見習いの身分では不相応な願いを聞き届けて貰ったのだから、遅れるわけにはいかない。
「ファリエルです。お茶をお持ちしました。」
一度厨房に立ち寄ってお茶の準備を済ませると、ワゴンを押して館の主の部屋と向かう。
控えめなノックに続いて、鈴の鳴るような声が静かな廊下に響く。
入室の許可と告げられれば、扉を開いて教えられたとおりに頭を下げる。
自身が習ったものとは所々で違う礼儀作法は、使用人としてのもの。
ワゴンを部屋の片隅へと運び入れると、温められたカップへとお茶を注ぐ。
まだ慣れないためにややぎこちないけれど、所作自体は洗練されている。
それを邪魔にならないように執務机の脇へとそっと置いて―――
「お時間をとっていただき、ありがとうございます。
改めて、助けていただいたことに心から感謝いたします、ヴィルアさま」
用があって来たのだとしても、使用人から話しかけるのは不作法
とはいえ、この時ばかりは貴族令嬢としての礼儀作法で膝を折り。
■ヴィルア > 話をする、という以外には約束していないにも関わらず、部屋の外…廊下を通ってくる音は、ワゴンの音が混じっている。
どうやら教育は行き届いているようだ。
この時間に、自分が仕事を終了させ、茶を飲むことも教えられているということだ。
メイド長からの報告では、やはり習熟はすぐにできるものではないが、意欲はあり…新人としては優秀、とのことだった。
彼女にかけられる厳しい言葉は、期待の裏返しのようだ。
「ああ、入ってくれ」
短い言葉と共に入室を許せば、まだ着られている感がある衣装だが…丁寧な所作によってそれは気にならない。
まだ茶を淹れるのも、他のメイドたちに比べれば遅いものの、やはり所作は綺麗と思えるものだ。
ここで、無礼講を言い渡すこともできたが、彼女なりのプライドを尊重し、茶を受け取る。
厳しく言われているのか、香りや味は損なわれていないそれを一口飲んでから。
「…どちらの礼も受け取りはするが、私は私の自己満足を果たしただけだ。
あのご令嬢が、下衆の慰み者になるのは、耐えられなかったものでね」
そう、彼女とは一度会った事がある。
恩師と会った時に…まだ小さかった彼女と挨拶を交わし、軽く話をした覚えがある。
その時から既に可憐で、優しい容姿だった彼女…恩師の孫である彼女がこの都市の闇に飲まれるのは避けたかった。
ただそれだけの、自己満足だ。
「今日はもう仕事は終わりだろう。私が許すから、少し楽にしなさい。ただ茶をこちらにも持ってきてくれるかな?
君の分も淹れるといい」
執務室には…客人の対応も含んでいるからか、革張りの椅子が対面になるように2つ置かれている。
その間には高級なガラスのテーブルもあり、主にそこで大事な商談なども行われている場所だ。
立ち上がり、その椅子の1つへ腰かけて。
流石に自分で茶を淹れるわけにはいかないからこそ、彼女に自分の分も淹れるよう言ってから対面の席へと着席を促そう。
「さて、改めてだが…一週間、ここにきてどうかな。
君には色々教えた方がいいと思い、厳しく作法などを教えるようメイド長には言っているが。
不安などがあれば、言ってくれて構わない。…今は、昔の関係のまま話そうじゃないか」
緊張を強いてしまうかもしれないが、一先ずは素直な感想を聞きたいと。
昔に出会ったきりではあるが、彼女のことを聞いてみたいと思っていて。
気さくに笑いながら、昔のまま、話しかけよう。