2020/09/19 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にドリスさんが現れました。
ドリス > 侯爵家の紋章を冠した黒塗りの馬車が、夜更けの街を駆ける。
特に口が堅く腕の良い御者が、一人で駆る其の馬車には、乗客はただ一人。

後ろ手に縛られ、目隠しを施されてシートに押し込められている、
其の状態を『乗客』であると称して良いものならば、であるが。

ゴトゴト、ゴトゴト、規則正しい振動は馬車が綺麗に舗装された道を辿っている証拠、
恐らく行先は何処かの貴族の邸宅か、あるいは彼らが集う会員制の店か。
何処へ行くものか、其れ以上の推測は叶わないが、何をするのかは知っている。
特に語られた訳では無いけれど、夫の考えることなど決まっていた。

何処へ連れていかれたとしても、其処で己は辱めを受ける。誰とも知れぬ男に、あるいは男たちに、
―――――彼らが手配した魔導機械で嬲られる、ということもあるかも知れない。
其処まで考えて、『乗客』である己は、暗澹たる思いでそっと息を吐いた。

此の馬車がいっそ、何処までも駆けて行ってくれれば良い。
停まる時には、そして馬車の扉が開かれる時には、――――己にとっての、地獄の始まりなのだから。

ドリス > 今宵、馬車が入って行ったのはとある貴族の屋敷だった。
正面玄関に面した車寄せでは無く、敢えて裏手に停められた馬車から、
御者の手で担ぎ出され、屋敷の中へ。

其の先で待つのは、侯爵夫人にとっては『いつもの』夜。
空が白み始める頃まで、馬車は其の場に留まっていたという―――――。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からドリスさんが去りました。