2020/09/16 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 王都闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 王都闘技場」からクレス・ローベルクさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 王都闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 王都にも、実は闘技場がある。
ダイラスがあまりに有名過ぎて、陰に隠れていてはいるが。
何せ、こちらのルールは戦闘中・戦闘後問わず性的攻撃や陵辱禁止。
選手としてはこれ以上無いが、観客からすれば物足りない感はあるだろう。
だが、それでも続いているのは、それだけ"純粋な戦闘"を好む者達がいるからである。

そして、それはダイラスの剣闘士とて、例外ではないのだ。

『さあ、それでは王都闘技場公式大会、準決勝A試合。今試合の対戦カードを発表します!』

朗々とした弁士の様な声が、闘技場内に響き渡る。
此処の観客達は、純粋な戦闘を見たいという欲求を持つ者たちである。
勿論、エンターテイメント性のある戦いは歓迎するが、戦闘以外の要素で受けを取る者たちには厳しい。
そんな、観客達の前に現れるのは、

『まずは、Aコーナー!お前、こっちにも出るのかよ!媚薬にもローターにも頼らず、此処の戦闘狂共を満足させられるのか!?
ダイラスの剣闘士、クレス・ローベルクぅ!』

「……散々な言われようだなあ」

そう言って、苦笑いする男。

今回は、何時もと違い、媚薬注入器や淫具を持ち込んでは居ない。
その代わりに、ベルトホルスターにはダガー、そしてウェストポーチには煙玉や低威力の魔石などを詰め込んでいる。
謂わば、何時も以上に"ガチ"な装備である。

そして、メインである二振りの剣の代わりに、同じ長さのモールを装備している。刃を潰した剣よりは、こちらの方が殺さずに戦えるという判断だ。

『そして、Bコーナー!この場違いな来訪者に対するは――』

ご案内:「王都マグメール 富裕地区 王都闘技場」にアリエルさんが現れました。
アリエル > 『そして、Bコーナー!この場違いな来訪者に対するは!
 白銀の淫乱姫、アリエル・ウォールウェンだ!!
 お前もこっちに出るのかよ!
 なぜか場違いな二人の対戦だ!!!』

手を振り、観客に愛想を振りまく少女は、しかし実際はクレスより年上ともいわれる女性剣闘士だ。
もともとクレスと同様アケローンの闘技場に参加していた『男性剣闘士』だった。
その剣の腕を買われて王国将軍になり、陰謀により女性になってしまった彼女は
呪いもあり、本人の気質もあり、淫乱で奔放な女性になっていた。

もっともその剣の腕は良い。腕一本で軍人としてそこそこ成り上がったぐらいだ。
今日は刃をつぶしたバスタードソードを一本手に持っていた。

「やあやあ、クレス君。
 キミをこっちで見るのは珍しいじゃないか。
 今日は卑猥な手は一切禁止だよ? 大丈夫? 我慢できる?
 お姉さんがあとで相手してあげようか?」

そんなことを言いながらからかう彼女。
単に顔なじみをからかっているだけではない。
心理戦の部分もありそんなことを言っているのだ。

防具は胸当てに兜、手甲に足甲だ。
これで攻撃を防いだり受け流しながら、剣と格闘術で戦うのが彼女のスタイルであった。

クレス・ローベルク > 「え、ええ……?」

上から振ってくるアナウンスに、男は困惑した様に眉を寄せた。
彼女は、嘗ての男の同期である。
嘗ては出世街道をひた走っていた筈なのだが、何がどう転んだかTSという形で全力スピンナウト。
今では、女性闘技者もドン引きな程の淫乱剣闘士兼軍人として名を馳せていた。

「基本的に女の子のお誘いは受ける事にしてるけど、君に限ってはお断りしたいなあ。
大体、君の方こそ、試合の後にレイプされるのが生き甲斐としてるくせに。
レイプの次はハードSMにでも目覚めた?」

煽りには煽りで返す男。
観客達は微妙な顔をしているが、此処で言われたい放題を許すと相手が調子づく。
そうしていると、アナウンスが振ってきた。

『奇しくもダイラス剣闘士同士の戦いだが、お互い、死力を尽くした戦いを期待しているぜ?それじゃあ、レディ――ファイトっ!』

カーン!と、試合開始の鐘が鳴る。
男は、両手のモールを体の前でクロスすると、にやり、と笑った。

「ハンディだ。
最初の一撃は、そっちにあげる。何時でもかかってくるといい」

男にとっては何時もの事。
女性相手には、初撃を譲る――それが、男のルールだ。
勿論、それは元男、元同期のアリエルとて変わらない。

アリエル > 「じゃあお言葉に甘えて」

さて、どうしようかと考える。
戦場ならば全力の一撃一手なのだが……
それをしてしまえば、そのまま勝ってしまう確率6割、負ける確率4割ぐらいか。
どちらにしろ一瞬にして終わってしまう。

ここが戦いを貴ぶ場所とはいえそれはつまらなすぎるだろう。
どうせなら無駄に派手な大技でも使ってみるか。

「地の神に捧ぐ。万物の理たる重しの力をもって、敵を打たん!!!」

呪文詠唱。剣に魔力を込める。その効果は、重力増強だ。
そのまま大上段に構えながら、宙に跳ぶ。

「くらえ! 必殺!! 重力断!!!!」

腕力と体のバネ。そして剣の重さに魔法により加速された重力。
すべての力を込めて一気に振り下ろした。

その剣速はすさまじく、防御は困難そうだ。
ただ、大振りゆえ見切るのはそう難しいものではないだろう。

ずずんっ
重い音が響き、振り下ろした場所にはクレーターができる。

クレス・ローベルク > とんでもない超質量の大振りを目の前にしながら、しかし男は慌てない。
どころか、ひゅぅ、と口笛を吹く余裕すらあった。

「(この辺の技の選び方は、流石だな)」

殺し合いと闘技の区別が出来ている。
最初の一撃で試合を印象づけるのは、派手な威力を生み出せるマジックユーザーの特権だ。
その技の選択に敬意を表し、男はそれをくるりと踊るように回ってそれを避ける。
回る身体は、アリエルの身体ギリギリを回り、

「こっちは、大技なんて無いんでね。地味に削らせて貰うよ」

回す身体の遠心力をモールに乗せて、アリエルの頭を薙ぎ倒す。
場合によっては頭蓋を砕くレベルの威力だが、アリエルならば最悪でも受けるだろうと、そういう読みでの打撃だ。

アリエル > 「まったく、地味クレス。だから変態とか裏で言われるんですよ」

大技を華麗に躱しながら流れで反撃してくるクレスの一撃は洗練されたものだが、それゆえ少し地味だった。
もうちょっと派手にやればいいと思うのだが、
彼の使う技はどちらかというと暗殺術とかの系譜なのか。
全体的に大人しい。
実際戦場で出会ったらこれほど厄介な相手はいないが、闘技場的にはいいのだろうか。
いいのか、色事強いし、セックスうまいし。

頭を薙ぐ一撃をぎりぎりでかわす。
ポニーテールに結わえていたリボンがはじけ飛び、長い銀髪がきらきらと舞う。

「行きますよ! 双飛燕!!」

そのままボディを狙うのは面白くない。
殴るモールの柄を左手でつかみ、そのまま支点にして逆上がりの要領で回る。狙いはその顎だ、そこを狙って蹴りあげる。
そうしてそのまま躱され様と受け止められようと、
宙を舞い、ひねりながら今度は脳天を狙った踵落としを繰り出すだろう。

双飛燕。蹴上げと踵落としを連続して繰り出す足技だ。

クレス・ローベルク > 「うっさいな!自覚はあるんだよ!自覚は!」

ローベルクの剣の基礎は、魔物殺し。
一部の異形相手の技以外は、効率的でシンプルである事こそ求められる。
だからこそ、媚薬や愛撫を使って、戦闘以外の部分に点数をつけてもらうわけだが。
今回は、違う。生のままの技で、試合を行う。

「――!」

まるで、体重など無いかのように、少女の身体がモールを支店にぐるりと回る。
殴りつけるモールを回避するばかりか、それを逆手に取る。
当然、反応など出来る訳がない。
もろに顎に喰らう。

「ガッ……!」

顎に食らった打撃は、音こそ軽いが深刻だ。
頭蓋の中で脳が揺れる――だが、空中に居る少女に対し、男は正確無比に肘打ちを放つ。
その狙いは、脚――正確には足首。
跳ね上げる様に叩きつける肘は、少女の蹴りの勢いと衝突し――それに挟まれた足首を破壊するという技だ。

「(くっそ、頭クラクラする。あの野郎、マジ容赦ねえんだから……!)」

視界は揺れる。だが、此処で踵落としまでを喰らう訳にもいかない。
身体に刻んだ動きを全力で再現し、敵の攻撃を迎撃する。

アリエル > 「うぎっ!?」

クレスの剣が魔物殺しなら、アリエルの剣は人殺しの剣だ。
人殺しだからこそ、幻惑させるための派手な技も多いのだ。
双飛燕も上下両方合わさった時、頭をぐしゃっとつぶせるほどの威力を有する。
もちろん今回は殺し合いではないのでそこまで力を込めていない。
せいぜい気絶するか、というぐらいで蹴とばすつもりだった。

その上からの脚の足首を思いっきり迎撃されてしまう。
めきっ、と変な音が足首からする。
鎧をつけていたが、それでも防ぎきれない衝撃が彼女の振り下ろした右足首を砕いた。

「うっせー!!! 地味クレス! 変態! ド変態!! ボクの初めて奪ったくせに!!」

そのまま宙を舞い左足で着地する。
余裕がなくなって罵声が子供じみたものになる。
今の戦闘スタイルは身軽さを生かした戦法である。
足をやられると正直かなりつらいのだが……

「地の神に捧ぐ。万物の理たる重しの力をもって、地を離れん!」

重力魔法を使って左脚だけで飛ぶ。
かなり軽くなっているためふわり、と羽のように舞う。

「いくよっ! 飛燕三連脚!」

そのまま空中で左右の回し蹴りを三連発。右、左、右と高さを変えてそれぞれ頭、腰、膝を狙って繰り出す。
足首はやられているが、鎧で固定されているため蹴るには支障がない。とてつもなく痛いが。

重力で軽くなっているために踵落としなどの重さを利用する蹴りが使えないための苦肉の策である。

クレス・ローベルク > 「つ――」

くぎぃ、と嫌な音が肘から聞こえた。
鉄を思い切り殴ったのだから、無理もない。
身体全身で衝撃を流したので、砕けてはいないし、折れてもいないが――それでも、相当のダメージを肘に受けてしまった。

「っ、ノーマルな性癖の奴が、剣闘士なんか……くそ、まだ駄目か」

先程は上手く攻撃を躱したが、やはり脳震盪が深刻だ。
少しずつ収まりつつあるものの、未だ視界が戻らない。
その中で、再び銀の髪の少女が跳ぶ。
今度は、重力魔法を使用した蹴りの連打だ。

「させる……かっ!」

幸い、こちらはモールが二つある。
全身は動かせずとも、相手とタイミングを合わせて両のモールで脚を受け止めれば、何とかガードは可能だ。
相手が回し蹴りの連打を選んだのも幸いだった――回し蹴りはその性質上、二回同じ技を繰り出せない。右の回し蹴りを撃てば、今度は左を繰り出すしか無いのだ。

「だけど……これは……まずいっ……!」

最後の左を受け止めた瞬間、男のモールが一本、後ろに飛んでいった。
脳震盪で握力が不確かな時に、更に三連撃を受け止めたのだ。
二回の打撃を受けた右は、流石にその限界を迎えたのだ。

「一旦、距離を――」

素早く後ろにステップする。
だが、そのステップと同時に、空いた左で腰に保持していたダガーを一本、アリエルに向けて投擲する。
形勢不利で退避したと見せかけての、さりげない一撃。
その狙いは足首を砕いていない、もう一本の脚の太腿。

「恨むなら、わざわざ色事抜きの戦いにレオタードなんて着てる自分を恨め……!」

アリエル > 「ぎっ!!」

ダガーは左の脚の付け根に刺さる。
傷が大きいわけではなく、これで命にかかわったり後遺症が残ったりするものではないが、
完全に両足とも殺されてしまっている。
これで決着か、そういう風に思うかもしれないが……

「でやああああああ!!!」

そのまま前転宙返りで逆立ちすると、剣を持たない左手の力で再度跳躍をした。
重力を操り軽くなっているからこそできる芸当だろう。

一気にクレスに空中から近寄ると……

「でりゃあああああ!!!」

残りの力を振り絞って、剣を袈裟懸け、
相手の左肩から右胴にかけて斬りつける軌道で振り下ろした。
まさに最後の一撃である。

クレス・ローベルク > 勝った、とは思わなかった。
アリエルがその気になれば、魔術による攻撃も出来るし、何ならまだ見せていない隠し玉の一つもあるだろうという予想もあった。
だが、少女が見せたのは、男が考えもしない方法での跳躍だった。

「その状態で、また動けるのか……!」

狙いは、左肩から右胴にかけての斬撃。
今までのダメージはどちらかといえばアリエルの方が大きいが、その様な大きな傷を受ければ、幾らなんでも戦闘不能を免れない。
逆に言えば、これを受け止めて、地面に叩き伏せればそれで勝てる。
だから、男は残ったモールで、少女の剣を受け止めた――しかし。

「あー……やっぱ、駄目だね、こりゃ」

右手の力が、ほんの少しだけ戻らない。
先程の肘鉄の影響だ。
力負けしたモールは、剣の圧力に耐えかねた様に撓み、腕から滑り落ち、そして。

「今日のところは、君の――」

残りの言葉は、声にならなかった。
厚い闘牛士服の上を滑るように、少女の剣がその身を切り裂く。
痛いというよりは、熱い何かが身体の深くを抉る感覚。
それに押されるように、男は仰向けに倒れ伏した。

アリエル > そのまま倒れるクレスの上にぶつかるようにして堕ちる。
刃はつぶしてあるので切れてはいないが、ひどい痣になっている。
ちょっと手加減が出来なかった。

「なかなかやるじゃぁないか、クレス君」

ぐったりと倒れ伏しながらそう告げる。
正直立つ余力がない。というか足を両方やられているので普通に立てない。
そのまま相互ノックアウト、引き分けで今回の戦いは幕を閉じたのであった。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区 王都闘技場」からアリエルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 王都闘技場」からクレス・ローベルクさんが去りました。