2020/04/20 のログ
アリアドネー > 「へぇ、わからないのに演奏出来るのね、変なの。
 でも、浮足立つって伝わって来なかったわ。
 もっと上手い人が弾いたらわかるのかしら?
 貴方見た目通りあんまり上手くないのね。」

にっこりと笑顔を浮かべたまま、周囲の異変に気付かない少女は自らの主観的な感想を歯に衣着せず投げつける。
『あ、あの私一度闘技場に行ってみたいですわ。』
何か問題が起こる可能性を感じた取り巻きの一人が少女が興味を示しそうなことを口にする。

「闘技場かぁ……。」

その提案に唇に指先を当てて考える。
『今日はお嬢様お気に入りの闘士も出場する予定です。』
御者は余計なことは言うなとばかりに少年の肩を掴んだ手に力を込めて助け舟を出す。

「そうね!
 じゃあ、今日はアリアが闘技場の楽しみ方を教えてあげるわ。
 まずはどっちが勝つか予想するのよ。
 それでね、勝った奴隷をね、買って貰ってね、虐めるの。
 どんなに強くても言いなりで凄いの楽しいのよ。」

悪趣味極まりない楽しみ方を口にしながら、少女は取り巻きを引き連れ前の馬車へと乗り込む。
そして、御者は少年へとさらに金貨を2枚握らせ、『お前は何も見なかった。』そう告げて御者席へと乗り込む。

「あ、貴方!
 また今度聞かせてね!
 ちゃんと練習して上手くなってね!」

自分勝手な少女は置いてけぼりの少年へと馬車の中から顔を覗かせ手を振る。
そして、そんな少女と、少年以上に苦労していそうな取り巻き達を載せた馬車はゆっくりと走り出す。その後ろを着いていく馬車には満載の荷物。
二台の馬車は嵐のように迷惑なお嬢様を次の被災地へと送り届ける為、大通りから消えていった。

リン > 「ぐっ」

気持ちが緩んだところにストレートに馬鹿にされて膝から崩れ落ちそうになった。
身の程というのをわきまえているので引きつり笑い以上のリアクションはしない。
情けないとも言う。

「あ、はい…………」

好き勝手言い残して去っていく彼女らに、乾季のサバンナを思わせる表情になりながら
金貨を握りしめてただ見送る。
どうやら助かったらしいことをその少し後に悟った。

「また聴かせてね、か……」

どうしようもないものが多い貴族の中でもとりわけどうしようもない相手だったが、
そう言って貰えたことは嬉しかった。
なぜならこの呪われた楽器に魅入られて以来、そう言われることは本当にまれになったからだ。

「……願わくばもう逢いませんよう……」

小声でつぶやいて、提琴弾きもその場を立ち去った。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区/大通り」からリンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/大通り」からアリアドネーさんが去りました。
ご案内:「王都マグ王都マグメール 富裕地区/屋敷裏口」にカインさんが現れました。
カイン > ある貴族の屋敷の裏門。富裕層の集う地区の一角にしては小さめの路地に面した場所に陣取るその場所に、
短めの槍を片手に腰に剣を履いた大柄な男が突っ立っている。
門を跨いだ先から聞こえるのは、宴も闌といった様子の喧騒である。
それを横目に見ながらだらしなく突いた槍に寄りかかれば自然と嘆息が漏れる。

「全く、ここに居るのは結構なリスクなんだがなあ。
 弱みを握られてるってのは困りもんだな」

その屋敷の持ち主の貴族とは随分古い付き合いになる。貧民地区の娼館にお忍びで来ていたのを、
悪さして叩きのめしてできた縁だがあれよあれよと口車に乗せられて偶に護衛を引き受ける間柄だ。
今日は大事な賓客が訪れるとかで駆り出されたのだが…

「魔族を徹底的に排斥唱えてる様な連中を呼ぶ宴に俺を使うなよ、っと。
 別にバレる要素はないとは言えバレたら面倒臭いことこの上ない」

ぼやいて視線を表通りに向けると賓客として迎えられていた一部の騎士達が去っていく所である。
直接の知り合いに心当たりはないが、かと言ってリスクも冒す必要もないと裏手に回ってきたのがつい先程。
賓客の案内に笑顔を振りまく必要のなくなったことに安堵の息を吐きながら体を伸ばす。
傍から見ると完全に衛兵がサボって気を抜いている図である。

カイン > 「しかしこの手の正装ってのは動きにくくていけないな。
 騎士とかはこんな格好が常で良く戦えるもんだ」

元より甲冑を身にまとっての戦い方などが元来性に合わない手合である。
自分の豪奢な、言い換えれば余計な飾りのついた衣装を見下ろした後、
遠目に見える恐らく護衛だろう甲冑姿の騎士の姿を遠く見送りながら不思議そうな声が漏れる。
勿論町中で見る騎士達が常にその様な格好ではないのはよく知っているのだが。

「このに衣装引っ掛けて賊を取り逃がしたなんて笑い話があったら、
 クレーム入れてやる。…そろそろ終わりじゃあるようだが」

気がつけば宴の音もかなり遠く、客足が去っていくのが裏門からも気配でわかる。
メインの賓客がいの一番に帰った後は好きに離れていいと言われて居る以上、
もう仕事としては終わって居るのだがこのまま根城に戻るのも何となく憚られ手持ち無沙汰の様子で衛兵を続け。

カイン > 「…ん。いよいよ本格的に客が帰ったみたいだな。
 幸いというべきか何というか、無事に終わったのは少しホッとしたな。
 とはいえこのまま帰るのも癪だし、なにか酒でも集っていくか」

自分の身の上を考えればそれこそこのまま立ち去って、
ご実体入れるのが利口ではあるだろう。だがそれも何となく癪だと、
ボヤキと共に支給された槍を方に担いで門を跨いで屋敷の中へと姿を消していく。

ご案内:「王都マグ王都マグメール 富裕地区/屋敷裏口」からカインさんが去りました。