2020/04/19 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区【イベント開催中】」にヴィルアさんが現れました。
ヴィルア > 「ああ、そうだな。あの件は以前出した指示通りに。
西の地区にはもう少し人と金を回そう」

王都富裕地区の一角で、何やら人だかりができている
その中心には一人の美青年。
現在は、彼の傘下の商人たちに指示を出しているところだ。
本来であれば邸宅で行うのだが、数が多く。
こうして一気に聞くことで時間を節約しようという考えだ。

「ふむ…よし、ならそれで進めてくれ。解散」

やがて、その小さな会合が終われば、ゆっくりと歩き出す。
これからしばらくは、仕事もない。
今日もまた富裕地区は貴族たちでにぎわっており。
その中を…僅かな休憩時間を使って散策していく

ご案内:「王都マグメール 富裕地区【イベント開催中】」からヴィルアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/大通り」にアリアドネーさんが現れました。
アリアドネー > 平日の高級な商店が立ち並ぶ大通りにはちらほらと買い物客の姿が見える。
その一角、四頭立ての馬車が二台並んで停められているのは3階建てからなる洋服店。

「やっぱりあのドレスは赤がいいと思うの。
 ミーシャには絶対赤が似合うわ、今度仕立ててあげるね。」

店からきゃいのきゃいのと騒ぎながら出て来たのはまだ少女と呼べる年齢の4人組。
その後ろからは何人もの召使いが次々と商品の箱や袋を後ろの馬車に積み込んでいく。
よく見れば、後ろのほうの馬車の中にはすでに満杯に近い箱や袋が詰め込まれていた。

「それじゃ次どこ行く?
 えー?お芝居飽きたー。
 やっぱり闘技場とかに比べると安っぽいっていうかさ―。
 時々いい奴隷も落ちてるし、悪くないよねー。」

馬車の前で4人組はいかにも仲が良さそうに談笑する。
しかし、よく観察していれば、わずかな違和感に気付くことだろう。
他の3人が話の中心のツーサイドアップの少女にさりげなく気を使っていること。
そして、ツーサイドアップの少女の言葉を誰も否定しないこと。

アリアドネー > 「何か詰まんない。
 面白いこととか楽しい場所とか知らない?」

和気藹々の談笑の仲、突然ツーサイドアップの少女が不機嫌そうな表情を浮かべる。
気分屋で移り気で我儘……。
そんな少女の態度に周りの少女は笑顔を貼り付けたまま困惑の視線をお互いに送り合う。
何か彼女の気を引くことを言わないと……。
そう思いながらも下手なことを言えばあっさりと切り捨てられる。
今までもそうやって切り捨てられてきた少女達を見てきた3人はお互いに牽制し合う。
そんな取り巻きの水面下での押し付け合いに気付かない原因の少女は頬を膨らませてその場に座り込んでしまった。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区/大通り」にリンさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/大通り」にギュンター・ホーレルヴァッハさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/大通り」からギュンター・ホーレルヴァッハさんが去りました。
リン > (あー疲れた……)

呪いの演奏の腕前を買われて、知り合いの貴族に呼び出されていいように使われた帰り道。
ここでは一回の平民にすぎない楽士は、みすぼらしいとは言えないが質素な装いで華やかな貴族たちに
いらん注目を買わないよう、ひっそりと歩を進めていく。
とはいえ抱える青いバイオリンのケースはどうしてもある程度目を引いてしまう。

(なんかあそこのムード、微妙に険悪だなぁ……
 小さな社交界があそこにもあるんだな、怖や怖や)

そんなふうに緊迫した空気の漂う少女たちによそ見をしながら馬車の前を通り過ぎようとして……
うっかり道の段差につまづいてしまう。

「あああ~っ」

運動神経さっぱりな少年は無様な声とともに転んで、抱えていたバイオリンを地面に叩きつけてしまう。
ちょっと衆目を引く音が立つだろう。

アリアドネー > 一人のワガママ娘を取り囲み、3人の貴族の少女が何とか状況を打破しようと焦り始めた頃、不意に響く大きな音。

「わ、びっくりした!」

突然の物音にしゃがみこんでいた少女は大きな瞳を見開き、音がしたほうへと視線を向ける。
そこには無様にすっ転んでいる小柄な少年の姿。
そして、目を引く青い楽器のケース。

「ねえ、貴方奴隷?
 どうして楽器の箱持ってるの?
 盗んで来ちゃった?」

少女の基準からすれば少年の服装は奴隷のそれと変わらない。
まるで新しい玩具を見つけた子供のように瞳を輝かせ、不躾な質問を矢継ぎ早に投げかける。
その機嫌が治った様子に取り巻きはほっと胸を撫で下ろし、同じように少年へと視線を向ける。
『あれはバイオリンじゃないかしら、アリアちゃん。』『子供のお稽古かしら?』
口々に少年の話題を振るのは少女の気を引くため。

リン > 「え!? いや奴隷じゃないし盗人でもないですけど……!?
 そう見えちゃいました? えへへ~」

気をつけようと思ったそばからさっそく厄介そうなお嬢様に目をつけられてしまった。
開口一番の奴隷呼ばわりに鼻白むが、高慢な貴族には慣れていないわけじゃない。
あわててケースを抱え直しながら、空疎な作り笑いを浮かべる。

「いやー、ぼくの演奏を特別気に入ってくれている人がこのあたりにお住まいで……
 たまにお呼ばれされるんですよ、ははは……」

もっとも、気に入られているのは演奏そのものよりも、演奏がもたらす不思議な効果のほうなのだが。
表情に感情をそのまま出すことはしないが、取り巻きに子供のお稽古呼ばわりされるのが耳に入れば
恥辱に服の裾をぎゅっと握りしめてしまう。
四体一の構図だ。

「こ、子供じゃないし……」

ぼそりと聴こえるか聴こえないぐらいの声で呟く。

アリアドネー > 「そうなんだ、すごいね!
 じゃあ、ちょっと演奏して。」

道端にしゃがみこんだまま、満面の笑顔を浮かべる少女にはすでに取り巻きの言葉なんか耳に入っていない。
目の前の小動物のような少年へと有無を言わせぬおねだり。
その様子に取り巻き達も触らぬ神に祟りなしとばかりに口を噤む。
そして、そんなお嬢様の無茶振りに慣れているのだろう、なかなか馬車に乗り込もうとしない4人をドアを開けて待っていた御者が少年の背後へと音もなく近寄り金貨を一枚握らせる。

リン > 「えっ? そ、それは……」

己のうかつさを呪う。
この提琴──《アクリス》は聴かせた相手に
なんらかの害を及ぼす呪いの音楽しか奏でることができない。
こんな衆目のある場所で身分の高い女性に何か起こしてしまえば──当人はともかく、
その縁者にいかほどの報復を受けるだろうか。
金貨まで握らされてしまえば、ダラダラと脂汗を流し始める。

「あ、いやその、ええと、すみません、勘弁してもらえませんか……
 いまはちょっと、その、演奏が出来ないわけが……」

滑稽にキョロキョロし始めるのは、なんとかこの場から離れるスキがないかを探しているのだ。

アリアドネー > 「どうして?アリアがお願いしてるのに?」

まさかの拒否にきょとんとした表情を浮かべる。
その表情から、この少女が普段どのような扱いをされているか感じ取れることだろう。
そして、取り巻きの表情は明らかに引き攣り、背後の御者が剣呑な気配を放つ。

「アリアが聞かせてってお願いしてるのよ?」

再度のお願いは眉が寄り、頬が膨らみかけている。
このまま、なぁなぁでの拒否は命取りになるかも知れない。

リン > 「わかりました……」

どうもどこにも退路がないと理解して、手で顔の汗を拭う。
覚悟を決めるしかなかった。

(……害の少ない選曲にしよう)

粛々とケースを開くと、そこから出てくるバイオリンも青く塗られてくる。
奇抜な色をしているが、目利きができるなら値の嵩む名工の拵えたものとわかるだろう。
怯えた表情がすっと消え、背筋を伸ばし、バイオリンを胸に置き、弓を構える。
先程までとは打って変わった堂々とした立ち振舞だ。

「……」

そうして奏で始めるメロディは、この国のどこでも聴くことの出来ない異界の音楽。
行進する兵隊が靴を鳴らすような旋律を、少しずつ形を変えながら繰り返す。
この音楽に価値を認める心があれば、幾ばくか気持ちが高ぶり、全能感が身体に満ちていくだろう。

(普通の人に聴かせると傲慢になりすぎるんだけど──
 元から傲慢なら、大丈夫だろ)

アリアドネー > ようやく【お願い】を聞いてくれる気になった少年へと愛らしい満面の笑顔を向ける。
取り巻き達ほほっとした表情を浮かべ、御者が少年の背後から離れる。
演奏が始まれば、じっと静かに耳を傾ける。
その程度の分別はあるらしい。
そして、曲の盛り上がりに従い、取り巻き達の頬が高潮し、そわそわと落ち着きをなくしていく。
しかし、問題の少女は笑顔を浮かべたまま、まったく異変を感じている気配はない。
そして、演奏が終われば衆目を集めていても気にする素振りすらもなく大きく手を叩く。

「面白いね、全然聞いたことのない曲だったわ。
 どこの国の曲なのかしら?
 違うのも弾ける?」

矢継ぎ早に質問を投げかける少女。
取り巻き達は謎の全能感に包まれながらもそれを表に出さずに理性で抑え込む。
それほどにしゃがんだ少女の機嫌を損ねることを恐れているのだろう。
そして、異変を感じ取っていたのは護衛の御者も同じ……。
力強い手が少年の肩を掴み、おかしなことはするなと睨みつける。

リン > 演奏が一段落したところで肩に圧力を感じ、一瞬表情が強ばる。

(ハハハそんな都合良くは行ってくれないよな……)

「お気に召していただいて嬉しいです」

称賛を受ければ、緊張にさらされながらも、なんとか笑みを作る。
演奏家として、褒められて嬉しくならないことはない。
曲が鳴り止んでいる今、もたらされた異変も時とともに少しずつ収まっていくだろう。

「さて、どの国の音楽かはぼくにもわかりません。
 これを譲ってくれた人に教えていただいたものでして……
 他にもやれますよ。今みたいな『浮足立つ』曲以外にも、
 『気分が落ち着く』曲とか、『眠くなる』曲とか、色々と」

嘘にならない範囲で答える。
本当は、この楽器が『教えて』くれたものだ。
おそらくは魔族の間に伝わる音楽なのだろうが──さすがにそれは言えない。
もっと過激な効用を齎す曲もあるということも伏せた。