2019/07/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区【イベント開催中】」にベルモットさんが現れました。
■ベルモット > そうだ、新しい服でも見てみよう。
富裕層地区の相変わらず様々な催し物で賑やかな広場でお昼ご飯を食べていると、不意にそんな事を思った。
「衣食足りて礼節をうんたらかんたら。なんて言う言葉もあるくらいだものね」
その内の片方である食──以前食べた薄絹のような衣を纏わせた肉団子の揚物を頬張って機嫌よさげに鼻が鳴った。
「……で、来てみた訳だけど……ふぅん水着まであるんだ。そういえば水遊場なんてのもあるのだっけ」
食後に訪れたのは、富裕層が住まう地区の一角に多数の服飾店が並んだ場所だ。
煌びやかな通りは煌びやかなままに、ライバル店への敵愾心に満ちたある意味での戦場のよう。
豪奢な意匠とリーズナブルな値段を売りにする新進気鋭。
伝統と格式を重んじて王室御用達を謳う老舗。
はたまた国外に拠点を置くと云う異国情緒に溢れた刺客。
王都の傍に在る水遊場に特化した水着専門店まであるのには少し驚いてしまったくらい。
「水に浸かるのは嫌いじゃないけど水着ねえ……」
サウナの後に浸かる水風呂は好きだ。湖で泳いだりするのも気分は良い。
でも、わざわざそれ専用の衣類を誂える文化は、驚きと共に少しばかりあたしの首を傾けさせた。
■ベルモット > 「もうちょっとこう、あたしの好奇心を刺激するお店とか……」
通りの右を視て、左を視て、そうして絢爛に並ぶお店の数々の中に奇妙なものを視た。
近付いてみるとなんでも魔術的付与を施した衣服であるとか、冒険に欠かせない用具であるとかを扱う店だと知れた。
「へぇ、ほぉ、ふぅん……錬金術師の作品かしら?それとも魔術的なエンチャントかしら」
あたしの流派の錬金術は作成の段階で物品に効果を付与する。
既に作成された道具に後付けで効果を付与するものは、あたし的には錬金術の範疇に無い。
勿論、それこそが錬金術である!と喧伝する流派も居るでしょうけれど、今は定義を長々と思考に籠らせる時では無いのだから止めた。
今は意気軒昂に店内に歩み入り、入店する客に挨拶をする店員に鷹揚に応じて店内を散策する時だ。
■ベルモット > 「ふむ、ふむ、ふむ……思ったよりモノが良いわね……お値段もいいけど」
店内の調度自体は然程特別感は無い。良くも悪くも富裕層向けだ。
ただ並べられた品々はなかなかどうして興味深い。
物理的衝撃に強いマント。耐火性に優れたドレス。防臭効果のある肌着。
特別に高価なものでは夏に涼しく、冬に暖かい外套なども展示されていたけれど、家を一軒買う方が安い値段では手が出る筈も無い。
「幾ら詰め込んでも重さを感じない背嚢とか、そういうのは無いのかしら……まあ有っても手が出ないでしょうけど……ん?」
溜息と同時に携えた杖を床で鳴らし、次の棚へ。
そこには衣服の類ではなく履物や鞄が並べられていて、その中の一つ、濃緑色の背嚢をあたしの目線がすらりと射止める。
「どれどれ……へえ防水。防水かあ便利そうね……物は革製かな。何の革だろうこれ……」
近付いて手に取り、矯めつ眇めつ眺めて重さであるとか造作の確かさであるとかを確かめる。
手で触れても素材は何らかの革製という事しか判らず、けれども魔力は感じられ、作成の段階で魔術的付与の施された品物であると察せられた。
棚に記された説明文によると、魔術的付与により、一切の水気を寄せ付けず、例え水中に沈めたとしても中身が濡れることが無いと云う。
「んん~~~~…………」
とても便利そうだ。
でもお値段もそれなりにする。少なくとも先日納品した茸の代金だけでは足が出る。
だからあたしは棚の前で唸りもし、如何にも買おうか買わないか悩んでいる人となった。
途中で視線を感じて一瞥すると、店員さんがちらちらと様子を窺っている事に気付いて、少し気不味くもなった。
「よし、未来への、投資!」
それからたっぷり10分以上は悩みに悩み、結局あたしは背嚢を手に取り、宝物を見つけた冒険者のように掲げてから会計へと向かう。
財布は随分と寂しくなってしまったけれど大丈夫。あたしは天才なのだから直ぐにでもまた潤うに違いないのだ。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区【イベント開催中】」からベルモットさんが去りました。