2019/06/22 のログ
ご案内:「王都マグメ.ール 富裕地区【イベント開催中】 街中」にホアジャオさんが現れました。
■ホアジャオ > 夜半の富裕地区、住宅とも何かの施設とも取れる、凝った建物が立ち並ぶ地区。
時折石畳の路地に漏れる光は、夜間営業中のレストランやパブ、はたまたしどけない格好の夫人がたむろする店のもの。
昼に時折降ったスコール様の雨のせいで、石畳はその光を滑る様に跳ね返している。
その石畳の路地を、細かな飛沫を跳ね上げながら歩く女が一人。
光がこぼれる店をいちいち、覗き込んでみたり、窓から様子を見たりしながら、楽しげに弾む足取りを進めている。
昼のうち、ずっと雨が降ったり止んだり。
アルバイトのせいで王城にずっと足止めだったのもあって、こうして気ままに歩き回れるだけで、上機嫌に紅い唇に笑みが浮かんでいる。
(……手頃な店、見つかッたらいいなァ…)
普段は王城の宴会でつまみ食いをしているものの、たまには大手を振って自分で選んだものを食べたい。
それをするには、富裕地区の『ふつうの』店では聊か、自分にはいろんな意味で敷居が高すぎる…
(……あと)
女の眼は、店内の客や道行く人の様子も浚っていく。
いつもの癖と言っていい。
ついでに、大手を振って喧嘩を吹っかけてよさそうな相手も探している。
兎にも角にも上機嫌な足取りだ。
…今のところは。
ご案内:「王都マグメ.ール 富裕地区【イベント開催中】 街中」にベルモットさんが現れました。
■ベルモット > 雨上がりの夜気はそう好いものじゃあない。
変な依頼を受けた後となれば尚更。
「なんでも良いから生きた魚を沢山……ってそれは漁師に頼みなさいよ漁師に。武器は武器屋と言うでしょうに」
錬金術の徒として王国に足を入れて数日。それなりに儲かりそうな仕事を見つけたは良いけれど、
内容が奇妙にも程があるのだからあたしの足取りは重い。まるで全身雨に降られて濡れたかのような重々しさだ。
携えた家宝の杖先に灯る明りも何処か頼りなさげになろうというもの。
「…………あら?」
そんな時に一人の、奇妙な人の姿を見かけた。
姿恰好は明確にこの国の人物ではなく、何やら探しているのか彼方此方を見ているのが判り易い程に解る。
「ねえそこの貴方。ひょっとして、何か困りごとかしら?」
夜中にそんな事をしているとなれば、その目的は自ずと察せようもの。きっと人探しか何かだ。
あたしは幾何かのお金になりそうな匂いに瞳を欲望の二文字に煌めかせ、後ろから異国風の装いの女性に声をかけよう。
■ホアジャオ > 背後から掛けられた声。
自分は困っているわけではなかったから、他に困っている人でもいるのかと、何となく声の方を振り向いた。
が、声の主らしい、少女は自分の方を見ている……
「…哈(はあ)?」
思わずもう一度辺りを見回して、矢張り自分に向かっていたらしいと思うとそう、間の抜けた声を上げて。
「哎……いやべつに、アタシは困って、はいないケド」
ぽりぽり、と後頭部を掻きながら更に少女をしげしげと見る。
……随分と好みの、金髪碧眼の美少女だ。
気づけばなんだか視線があたふたと泳ぐ。
それを誤魔化すようにあはは、と笑って
「―まァ、しいて言や安くて美味しいお店が見つかんないかなァとおもってる」
どっか知ってる?と首を傾げながら腕を組んで、その細い目の視線は少女の様子に釘付けだ。
■ベルモット > 「……………」
あれ?もしかして目算が外れた? なんだが異国風の女性の眼差しが痛い気がする。
もしかしたらあたしの後ろに何かいるのかしら。
思わず辺りを見回して、特別なものを見ないのだから、彼女の目線が自分に射られていると理解しよう。
「……ふ、この天才錬金術師の眼すら欺くとは異文化恐るべし……ええと、おほん、うおっほん。
ご、御免なさいね。てっきりお金──じゃなくて困ってる人の気配がした気がして……勘違いね、勘違い」
目線同士がぶつかって彼方此方に飛び散り、それらを追うようにあたしの目が泳ぐ。
何とか言い繕うとして言葉が纏まらず、結局空咳をして仕切り直しを計った。
「それで……安くて美味しいお店。となると場所が悪くない?此処、富裕層向けの区域でしょう。
あ、でもさっき向こうの広間で屋台とか色々出ていたわ。なんでも今、この国ってそういうお祭り?をしているのよね」
シェンヤンなる国との国交がどうたらこうたら。見聞きした範囲ではお目出たい雰囲気のアレコレ程度は耳に入っている。
そこで漸く、と目の前の異文化な服装の女性を上から下に、下から上にと眇めて視るのは、彼女がそのシェンヤン人かと思い至るから。
「美味しいかまでは解らないけど、そっちに行ってみない?きっとああいうお店よりは良いと思うのだけど」
唇をにんまりと曲げて指差す先は、看板にディナーコースの内容と料金を記した瀟洒な店だ。
記されている料金の程が如何様であるかは、立地を考えると妥当と言えて、それだけに二度見してしまいそうなもの。
実際三度見くらいした。冗談じゃない金額である。
■ホアジャオ > なんだか言いよどむ少女。
なんのことだかわからないけど、かわいい。
半分ぼやっとしながら話を聞いて、少女の指差す方向をつられるように見て――細い目を目いっぱいに開いて何度も瞬きを。
「哎呀(うへぇ)…」
最終的にはげーっ、と舌を出してから、くるりと少女に向き直る。
「場所が悪いッてェのは知ってンだケド、アタシ今王城でアルバイトしてるから、あンま遠出できないンだよねえ。
…屋台?かァ……」
王城でもシェンヤン料理はしょっちゅう振る舞われるが、なんだか故郷の味と違う。
というよりそもそも王族が食べるようなものだから、自分がとやかく言えるものではないのだろうけど。
ともかくも、ちょっと懐かしい気分にもなる。
一瞬考え込む瞳に色々な感情を行き過ぎさせてから、また少女へ視線を上げて。
「向こう?…そッか。
行ってみるよ。ありがと。」
また、その視線が泳いで、片手が後頭部をぽりぽりと掻いて。
「アンタも、お腹減ってたりしない?よかったら、奢るよ」
言い終えれば、紅い唇を三日月にして少女に笑いかける。
■ベルモット > ゴブリンがオーガと出くわしたような顔をする女性にあたしはつい、笑ってしまいそうになるのを堪える。
意識の外から出たと思われる、辟易とした言葉の意味は解るけど判らない。そういう不思議さを以てあたしの耳を打った。
「……え、王城!?やった、幸先が良い!お城って今どんなお仕事を募集している。とかって情報ある?
募集でなくてもいいわ、こう……何か探し物をしている。とか、こういう薬が欲しい。とかボヤいてる人とかに心あたりとか!」
だけれども、彼女の少し独特な発音に乗る言葉はあたしの態度を変えるに十分なもの。
思わず後頭部を掻いていない方の開いた手を取って、同じくらいの背丈であったなら鼻先がぶつかりそうなまでに近づいて
あたしの言葉が折り重なるようになり、杖が石畳に倒れる音で我に返って身体が離れる。
「……と、急に詰め寄って御免なさい。つい……えっと、それで奢ってくれるの?
ううん、何だかそれも悪いような……いや、しかし……」
離れた所でお腹が地鳴りのように鳴る。まるで今から地面が割れておどろどろしい魔物が現れようとする。
そんな音がして、悩むあたしの顔が視る間に赤くなり、誤魔化すように拾い上げた杖の先に炎が灯った。
「……じ、じゃああんまり断るのも悪いし?お近づきの印に……あ、あたしはベルモットって言うの。
ついこの間この街に来たばかりの天才錬金術師。何か困ったことがあったら出来る範囲で何とかするわ!」