2019/06/14 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 夜の大通り」にルビィ・ガレットさんが現れました。
ルビィ・ガレット > 「――ですから、私は。……――様の護衛の帰りでして」

遠くから、言い争いの声。
若い貴族の青年が冒険者の女に因縁をつけている。
身分違いをいいことに言いくるめ、暇つぶしのおもちゃにしようとしているのだろう。

女の一見、必死そうな弁明は続く。

「見苦しい格好で街をうろつき、あなた様の視界を煩わせたのは謝罪致します。
 ……私には、とても。申し訳が立ちません――ですから、
 そちらが『消えろ』とさえ言ってくだされば――きゃっ!!」

女は手首を強引に掴まれ、泣き出しそうな顔で周囲を見渡す。
多くの者は遠巻きに彼らを見て、すぐに興味をなくしては雑踏に戻っていくのだが……。

クレス・ローベルク > 「――ん?」

何やら、言い争いの声が聞こえる。
平民地区や貧民地区であれば然程珍しい事ではないが、貴族階級の多いこの街で起きるとは珍しい。
上手く使えば、いい具合に脅しの材料に使えるかもしれない。
そう思った男は、そっちの方に歩みを進めたの――だが。

「う わ あ」

一見すると、身分差を利用して、平民を搾取しようとしている貴族の図――であるのだが、その相手は吸血鬼である。
吸血鬼と言っても、血族や生まれつきの性質によって強弱があるが、それでも武術の経験に乏しい、その辺の貴族がどうこうできる者ではない。
あの貴族が握っている手が、彼女ではなく熊や虎の様な肉食獣であった方が、まだ危険度的には安全な程だ。
それでも尚、彼を屠らぬ理由は解らないが――

「(放ってもおけないか。この街には"あの子"も居る事だし)」

そう心に思うと同時、男は駆け出した。
下手に問答するのも面倒なので、貴族の方が急に駆け出してきたこちらに反応する前に――掠めるように顎にアッパー。
まともに訓練を積んでいない人間なら、まず脳震盪による気絶は免れぬ一撃だ。

ルビィ・ガレット > 誰もが自分を見捨てるだろう。そう踏んでの猿芝居だった。
助けを求めても、誰も来ない――そういう演出をすることで、
貴族の男に改めて優越感を持たせ、油断させ……、

自分を暗がりや、どこか個室に連れ込んだところで。
……"愉しむ"つもりだったのだが。

――そのアテが外れる。彼女からすれば、闘牛士服の青年は闖入者であった。

「……ひっ! ――あなたはどなたですか。
 わ、私を助けてくださったんですか? ……でも」

彼の繰り出す衝撃で気絶して、地面に崩れた貴族の男。
……そして、唐突に現れた目の前の相手。それらを交互に見ながら、
心底、心細そうにうろたえてみせる。

「助けてやったのだから」と恩を着せて、自分に何か理不尽なことを要求してくるのかも知れない――、
そのように怯えている、平民の振りをしてみせる。内心、こっそり舌打ちしたり、
どう出たものか……などと少し忙しく考えてもおり。

クレス・ローベルク > ――あ、うっかりノリでぶん殴ってしまったけど、この後どうしよ……。
幸い、周囲の人間は見てみぬ振りをしてくれているが、しかし此処で剣を抜いたりしたら大騒ぎになるだろう。
そもそも、客観的には、何処ぞのならず者が身分ある貴族を殴り倒したのである。何時、衛兵が飛んでくるか解らない状況ではある。
対応策を求めて忙しなく回る思考を停止させたのは、彼女の言葉だった。

「ああ、そうだね。そういう事になるかな……えーと、怪我とかは……」

そう言うと、出来るだけ自然な動きで彼女の顎を持ち上げる。
周囲からはそれこそ、助けたことに託つけたナンパに見えるだろうが、男にとっては自分の見立てが正しいかの再確認の方が先に立つ。
素早く精神を集中し、彼女が纏う魔力を感じ取る。

「(肌は白いものの、瞳孔は普通か――だが、瞳に魔力がある。
これは幻術だけじゃないな……?精神操作系か?
体温も人間の範囲だがかなり低い――確定じゃあ無いが、やはり……)」

そこまで分析した所で、男は彼女の顔から手を離す。
そして、温厚な表情で彼女に笑いかける。

「……無いようだね。
ああ、心配しないでいいよ。別に恩に着せて何かを要求しようとか、そういう気はないさ。
でも、そうだね。良ければ一緒に御飯でも食べないかい?ああ、勿論ホテルとかじゃないよ。此処とは別の通りに、行きつけのレストランが有るんだ」

人外である事が確定した以上、次は彼女がどうして此処に居るかが知りたい。
行きつけのレストランが有るのは本当。だが、そこへの最短距離を行くためには、人気のない通りを通らないといけない。
もし、そこで彼女が何も行動を起こさぬなら良し。こちらに襲い掛かってくるようならば――
そう考え、男は提案する。

ルビィ・ガレット > 倒れた貴族は、いかにも温室育ちの優男と言った風貌だった。
心根に問題があったのは、おそらく周囲が甘やかしてきたせいだろう。
……とは言え、見た目は"及第点"だったので。彼を襲うきっかけを奪った相手を、それとなしに見る。

人間の形態でも女は夜目が利く。なおかつ、この至近距離だ。
彼の顔は十分、視認できた。……足元で転がっている坊やよりいいかも。
短い時間で身勝手な感想を出したところ、気遣うような言葉と共に触れられる。

「ん……」

目を細め、思わず甘く掠れた声を漏らす。
顔に触れられていた時間はそんなに長くは無い。自然な範囲だったと思われる。

――だが、

「……はい、怪我はありません。

 ――でも、私。やっぱり心配です……人の正体に勘付いた上で、
 誘ってくる人と一緒に行動するなんて。――私が人外だと気づいてるだろ、貴様」

彼の提案には、酷薄な笑みを浮かべたまま蹴る。
さすがに種族まで特定されたとは思っていなかったが、彼がこちらを探っていたのには気づき。
自分と"同様"、隠し事をしながら会話を続けているのだと悟ったら、こちらからつい打ち明けてしまった。

まどろっこしいのは、性に合わない。
周囲には聞き取れない、彼にだけ聞こえる声量で続ける。
本性の、尊大な口調のまま。顔には控えめな笑みを貼り付けて。

「今思えば。……私が人でないと勘付いたから。
 むしろ『こいつ』を守ろうと、間に割って入ってきたのか?」

こいつ。……二人のそばで伸びている貴族様のことである。

クレス・ローベルク > 「(……ちゃ、バレたか)」

元々、この手の盗み見るような見立ての技術は実家由来のものだ。
家出して以降は、使う機会も減っていた。視線や表情の動きで、目敏い者は気付くだろう。
だが、それで動じる程初心でもない。
何時襲い掛かってきても対応できる心構えはあるし――何より、彼女自身、此処での大立ち回りは望まないだろうと解っているからだ。

「まあ、知らんぷりも面倒だから白状するけど、実は最初から気付いてた。
ただ、別に積極的にこの人を庇った訳じゃないよ。俺男を守る趣味はないし。どっちかっていうと、用があるのは君だが――」

こちらも小声で話す。
意外と早く正体を表したのは想定外だった。正直、大通りはあまりよくない。彼女がどういうタイプの吸血鬼か解らない以上、"眷属化"や"魅了"で周囲の人間を使った人海戦術を取られるとキツイからだ。
彼女を"見極める"為にも、できればさっさとこの場を移動したい所だ。
何しろ、最悪の場合、吸血鬼と戦わないといけないのだから。

「お互い、此処じゃやりにくいだろ。
人目につかない場所で話さないかい?俺としても、此処に留まって衛兵に捕まるのはゴメンだし。
……場所はそっちが決めていいから」

ルビィ・ガレット > 「気構えが据わってる。……気に入らないなー、人間の癖に」

動揺しない彼に、子どもみたいな拗ねた声。
それに合わせて、表情も幾分か柔らかいものの。
……真意を覆った上での薄化粧に見えなくもなく。

「男だったら自衛のひとつ、できろよ――ってこと?
 ……私に用? やっぱり、『守った』分のお代を請求するつもり?」

同性は守らないなど、と。正直に言う彼にくつくつ……のどを低く鳴らして笑った。
続く相手の言葉には、すっ呆けた調子で返して。まともな受け答えなどしない。

半分、魔物の血が流れていると言えど、理性はある。知性もある。
……その上で、はぐらかすような言動を。こちらを警戒しているらしい彼の様子を愉しみたくって。
薄い笑みを浮かべながら、会話を続ける。

「――まぁ、ね。……このまま私たちが立ち去れば、『こいつ』、目を醒ました時に何も覚えて無さそうだし。
 場所? ……あなたに選ばせてあげてもいいけど?」

彼の言葉に頷く。ここに滞在し続けるのは不利益しかないと。
伸びている貴族の青年に一瞥をくれてやれば、相手に向き直り。
愉しげな笑みを浮かべながら、場所の指定を譲る。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区 夜の大通り」にクレス・ローベルクさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 夜の大通り」にクレス・ローベルクさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 夜の大通り」からクレス・ローベルクさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 夜の大通り」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 「いや。単に、こっちはこっちで思惑があるってだけさ。
んじゃ、そうだな……近くの路地裏に行こう」

そう言うと、彼女を先導して歩き出す。
一応、背中に注意しつつ、だが。
辿り着いたのは、とある大型店舗の裏手だ。
商品の搬入口でもあるためか、スペースが十分に取られている。
その気になれば、少し大立ち回りしても問題ないぐらいには。
男は、近くにある木箱に脚を組んで座ると、

「さて、それじゃあまあ、さっくり用件を話すんだけども。
ぶっちゃけ、人間殺すタイプの魔族?殺さないタイプの魔族だったら、このままナンパに移行するんだけども」

ルビィ・ガレット > 彼に促されれば、それについて行き。
舗装された道をしばらく歩く。……たまに彼の後方から小さく笑う気配がするのは、
女が彼の警戒心を感じ取って、それを面白がっているから。

……そのうち、従業員や関係者でないなら、普段は立ち入らないような場所にたどり着く。
こちらは立ったまま。体の位置の関係上、彼を見下ろす形で応えた。
フードを取り払わないまま。

「――殺すタイプだったらどうするの? ……一応言っておくと。
 私、あなたと殺り合うつもりはないんだけど。

 ……うん? 今お前、ナンパって言った??」

遅れて気づいたようで。やや拍子抜けした様子で問い返す。
自分が口説く対象に成り得ないとしても、彼の言葉には意表を突かれたようで。
……若干、信じられないようなものを見るような目つきで。彼の返事を待っている半吸血鬼。

クレス・ローベルク > 流石に彼女の具体的な能力はわからないが、警戒しているこちらを面白がっている事ぐらいは解る。
だからといって怒ったりする訳ではないが、故に『ああ、魔族っぽいな』と思って対応してたりしたのだが。

「ん?いや、殺すタイプだったら、この街に住んでる俺の恋人を殺さないでーって交渉するつもりだったけど。
殺さないんであれば、君可愛いし、普通ナンパしない?あ、恋人居るのにする奴はレアか」

あ、何か一人で結論出してしまったと思うが、しかし自分からすれば魔族であろうが何であろうが、可愛いければナンパをするのは当然である。
てっきり、魔族特有の余裕ムーブで受け流されると思っていたが。

「それより、実際どうなの?君を安心してナンパできるかどうか、俺にとってはかなりの重要案件なんだけど」

我が心に恥じる事なしという、堂々とした表情で答えを促す。

ルビィ・ガレット > 「に、人間を殺しはするけど――お前の恋人と言うことは……女、だよな?
 ――先月、女ばかり殺り過ぎたから、当分、女は……って。

 なんの話だよ、これ……!?」

彼が平然と受け答えするので、こちらも思わず普通に対応してしまったが……、
途中で我に返り。動揺を隠さず吐露した。

「……先ほどまで警戒していた相手を口説く、あなたの思考回路についていけない」

つい、半歩後ずさる。目の前の相手はマイペース過ぎるというか。
普段なら凄んだり、からかったり。のらりくらりとかわすような言動を通して、
話の持っていき方やこちらの出方を決めるのだが。

半吸血鬼は、肩を落としながら、

「……そもそもナンパするな、ナンパしようと思うな、自分に勝機があると思うな――!!」

吼えた。

クレス・ローベルク > 彼女のつぶやきから察するに、しばらくは女を狙わないらしい。
幸い、自分の恋人はもうすぐ王都を去ってダイラスに来るのだし、まず彼女と関わり合いになる事はないだろう。
――つまり、ナンパして良いという事だ……!
しかし、当の彼女はそうは思っていないらしい。

「えー、だって警戒ってのは、"害を加えられる可能性があるから"するものでしょ?
――こっちに害が無い可愛い子を警戒する意味ないじゃん」

力強く言い切る男だが、どうやらあちらは絶対拒否の姿勢だ。
ならばと男は責め方を変えてみる。
ナンパは戦いと同じく、粘り強いトライが大事なのだ。

「まあまあ、ナンパって言っても即ホテルとかはしないからさ。
お互いの相互理解の為にお話しない?俺、魔族の子とは戦う事はあっても、お話することあんまりないからさ」

ルビィ・ガレット > もはや、女の顔は当惑を行き過ぎて、半笑いの表情になっている。
……引き攣った笑顔だし、唇が片端しか持ち上がっていないところを見るに。
やはりというか。好意的な、自然な笑顔ではないのだが。

「……場合によっては。お前を襲ってもよかったんだが――なんか、その気は失せたよ……」

完全に毒気を抜かれてしまった。波長が合わない、とはまた違う気がする。
相手のペースにこちらが巻き込まれている気がする。……そんなのは嫌だし。
いつもの調子を取り戻したくは、あるのだが。

「――私は。……あなたがよっぽどの変人だということは、よーくわかった。
 お、お前が私を理解してどうするっ? ……なんとなく、嫌な予感しかしないんだが」

話しながら、今度は3歩程後ずさった。今はもう、吸血種のプライドとかどうでもよかった。
距離感というか、勝手がわからない相手とは、ひとまず距離を取るに限る――、
女の中では、「逃げに徹している」という認識はなく。物は言いよう、の言い逃れに過ぎないが。

クレス・ローベルク > わぁ、すっごい引きつった笑顔。
闘技場の女性客辺りによくこんな顔をされるが、しかし問題はない。肝心なのはトライである。

「あ、やっぱ俺も襲われる可能性あったんだ。まあ、そうなったら逃げてたけどさ」

彼女に害のある可能性があるならば、多少の危険を犯してでも討伐していただろうが、そうでないならまともに戦う必要もないのだった。
ともあれ、完全にその辺の不安が払拭されたならば、後は相互理解である。

「変人は酷いな。君を理解したいのは、君が可愛いからさ。気に入った女の子を理解したいと思うのは普通でしょ?
それに、俺は魔族の事も人間の事も割とよく知ってるし――ああ、君が吸血鬼だってのも知ってる。その辺踏まえると、この街に潜伏する上で有用だと思うよ?」

男とて、彼女に何か引かれてるのは解っている。
故に、実利を絡めて懐柔を試みた。

ルビィ・ガレット > 「……たぶん、一生襲わないから安心しろ」

本能レベルで訴えてくるものがある。――こいつはやめとけ、と。
仮に、こちらのほうが身体能力や魔術で上回っていたとして……だ。
それ以上に、割を喰う「何か」が彼に、ある気がしてならない。

ともあれ、なんだか酷く疲れた声でそう宣言すれば。
続く言葉に耳を傾け……思案顔になる。

「酷くない。正当な評価だ。受け入れろ――っ、かわいいのもどうでもいいだろうが……。
 ――よくわかったな。種族まで見抜いているとはさすがに思わなかった。……そこ"は"純粋に感心するよ。
 
 あ・の・さ? ……私にも一応、人間の知り合いも、人外の知り合いもいるんだよ。
 ……というか、さ。――相互理解だっけ? あなたが本気でそれを望んでいるなら……そっちの弱点、教えてよ。

 別にアンフェアではないでしょう? 私は吸血種と見抜かれた時点で、日光や聖性を帯びたものが弱点だとあなたに知られているのだから」

暴言を吐いた後、時間差はあったものの、ようやく「可愛い」という単語に気恥ずかしさを覚えて。
正確に種族を言い当てられると、複雑そうな顔はするものの、素直(?)に相手を賞賛した。
彼の言い分や提案には、いい顔をしない。間に合っている、と言いたげ。

……が、話を少し変えると。情報提示を彼に求める。まっとうな取引とでも、言うように。
――実際は、そんなことなどなく。彼女には、通常の吸血鬼の性質が当てはまらない箇所が多い。

クレス・ローベルク > 「あ、そうなの。何かこう、想定外の言動に弱い辺り、友達居ないのかなーって……吸血鬼って基本夜行動だから、他人と接する機会少ないし」

割と失礼な事を言う男。実は微妙にこの打てば響く会話を楽しんでいたりするのだが、彼女にはバレないようしれっとした表情で。
だが、続く、こちらの弱点を求める言葉には、「うーむ」と顎に手を当てて、

「弱点かー。教えてもいいけど、あんまり他言しないでね?一応俺、剣闘士だから、他人に弱点知られると商売上がったりだからさ」

そう前置きした上で言う。
正直、そこまでする必要はないが、しかし相手は魔族だ。
もし、此処で言葉を濁したりしたら、甘く見られて再び敵対される可能性もなくはない。
故に、正直に、一番の弱点を告白する。

「――実は、俺、ローベルク家って言う家から家出してきてるんだよ。
だから、俺の情報をそこに流されるのが、俺にとっては一番キツイかな」

ローベルク家については、もしかしたら彼女は知っているかもしれない。
割と有名な退魔の家だ――それで警戒される可能性もあるが、舐められるよりは良いと判断した。

ルビィ・ガレット > 「――お前が想定外過ぎ、過ぎるんだよ。……自然に失礼なこと、言うなよ」

正規の言い回しを脱してまで、相手の逸脱具合を強調した。指摘した。
友達のくだりには、眉を顰めるものの。露骨に反応すると彼がなんとなく喜びそうだったので。
さらりとした口調で、静かに注意するくらいで。

「私さえ知り得ていればいいのだから。……他言はしないさ。
 ――剣闘士。だから、そんな格好。一部、似つかわしくないものもあるようだが。
 ……それは見て見ぬ振りをしておく」

彼の言葉に了承の意を示しながら、それとなく相手の風体を確認して。
少し、嫌そうな顔になる。彼がぶら下げているものが原因。
……が、女は掘り下げる気はなく。言葉通り、視線を逸らした。

「ローベルク? ……お祖父様が『あまり関わるな』と仰っていた家の名前に、よく似ているような」

思案顔にはなるものの、その家の詳細までは思い出せず。

クレス・ローベルク > 「他と比べて想定外過ぎる……つまり、特別って事だね!?よし、ワンチャンあるね!」

多分ないが、あると思っていた方が人生は楽しい。
というより、そう言った方が多分ルビィの琴線に触れる気がする。
多分、こういう風に好意だけで迫られた事が少ないのだろうなあと思いつつ。

「いや、寧ろこれこそ闘技場で一番良く使う仕事道具なんだけどね。
でもまあ、無視した方が良いと思う。多分君にとって愉快じゃないだろうし」

腰にぶら下げている物を指摘されると笑って言う。
この薬だけでもう少しからかえそうな気配も有るが、あまりからかっても慣れられてしまう。
人間、メリハリが大事だ。

「ローベルク家って言うのは、所謂退魔の家系だよ。
魔物退治の英雄が興した家でね。
それ以来、新しい英雄を作るのに色々ご執心なのさ。俺はまあ、そこの不良息子って感じ」

君のお祖父さんが関わるなって言うのも、多分それじゃないかな、と男は付け加える。
自分と彼女の関係に罅を入れかねない様な事実だが、だからこそ男は堂々と言う。
彼女がフェアを望む以上、それは当然のことだった。

ルビィ・ガレット > 「お前は特別のベクトルを見直せっ! ……なぜそこで『マイナスかも知れない』と思い至らない!?
 ――私の好みは、知的、年上、影がある……だ。あなた、どれにも当てはまらないよね?」

彼の前向き過ぎる思考にもはやついていけない。
仕方ないので、「あなたは、自分の嗜好の外」と示し。
その前向きさを挫くことにした。……上手くいく自信はまったくないが。

「……お前の家に、それ――報告していいか」

劣勢というか。先ほどから微妙に相手に優位に立たれている気がして、気に喰わない半吸血鬼。
道具の詳細はよくわからないが、いかがわしい気がして。
口先だけの形だけになるが、先ほど彼が嫌がった他言をするような素振りを見せ。

「退魔の。……だから、か。――お祖父様の、専売特許を邪魔するようなもの、だから。
 ……不良息子ねえ。人としていろいろだめなのはよくわかるけども」

祖父の「関わるな」は、相性と言うよりも、商売敵に対する悪感情から来るそれか。
女は端的に、相手とは違う見解を示して見せ。

クレス・ローベルク > 「えっ。年齢はともかく、一応貴族階級として教養はあるし、実家の影を割と背負ってるけど?
初恋の家庭教師の女性が実は俺の年の離れた姉で、それを知ったのが大人になるための儀式でその姉から拷問を受ける当日だった話、する?」

何かドン引きされそうだが、まあ魔族だし問題はなかろう。
最早ナンパというより、ナンパにかこつけたルビィ・ガレットをからかう会みたいになっているが、これはこれで楽しいものだ。

「いや、それはやめといた方が良いな。
俺がダイラスでエロ系剣闘士やってるの、実家への嫌がらせだし。
やるなら、俺が王都に居る時、泊まってる場所を教えた方が良いよ?ソッコで迎えが来るから」

あ、今日泊まってる宿の名前要る?とまで聞いてみる。
まあ、実際本当にされると困るのだが、しかし弱点は敢えて晒した方がかえって悪用されないものだ。
しかし、それとは別に、興味がある。この娘は確かに面白いが、それだけでもなさそうだ、と。

「専売特許?お祖父さんって何やってた人なんだい?単純に、英雄の敵って訳でもなさそうだけど」

ルビィ・ガレット > 「……………」

黙ったまま、被ったままのフードを意味もなく被り直した。
空はだいぶ前に白み始めている。日光に弱いのが嘘だとばれるな……、
そんなことを考えながら、眼差しはどこか遠くへ。

「有難いご忠告に沿って、あなたの言うとおりやめておくよ。
 ――宿の名前? 要らん。……お前のこと、深入りしないほうがいいのはよくわかったから」

そこまで言い終えれば、彼にくるりと背を向け……踵を返す。
彼の質問には、

「――教えない。アンフェアだろうけど、教えない」

一度だけ振り返って。そこだけは少し、申し訳なさそうな表情を見せた。
――しばらくそのまま、歩を進めば。自分の影の中に沈み、姿をくらませ……。

消えた。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区 夜の大通り」からルビィ・ガレットさんが去りました。
クレス・ローベルク > 「そっか」

何か怒らせる様な事を言ったのだろうか。
解らないが――しかしまあ、あれだけ軽口を叩けば、それは呆れてしまうだろう。
嫌われても仕方ないし、一人に嫌われたからと言って、それで気にするようなメンタルでもない。

「さようなら……さて、それじゃあ俺も、帰るか。
明日早いしねえ」

そう言うと、男は路地裏から出ていった。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区 夜の大通り」からクレス・ローベルクさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 公主歓待の宴」にツァリエルさんが現れました。
ツァリエル > 今日も今日とて公主達を持て成す宴は続く。
今度は厭戦派閥の貴族の屋敷で豪華な料理に優雅なダンスパーティといった所。
あまりの人の多さにめまいがしたツァリエルは、テラスへと静かに移動し
夜の静寂に身を任せて、気分を落ち着けていた。

よく手入れされた庭が見えるこの位置は、城の自分の花壇を思い出して
派手なパーティーよりずっと気分が紛れる。

ツァリエル > やがてお開きの時間が近づき、馬車に乗って城へと戻った。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 公主歓待の宴」からツァリエルさんが去りました。