2019/05/07 のログ
サタン > 新たな杯が運ばれ、それを手にして傾けながら視線はまた宴の中心へ。
それぞれ談笑を交わしながらも相手の値踏みを行っている商人達を眺めてふと思う。

「――ここで全員消えてしまえば、儲かるか。」

幸い誰にも聞えていない独り言だが、実践することは容易い。
とは言え、今以上の富などに何の価値も感じない男は
傾けた杯の内のワインを舌で転がしながら嚥下し味わうと
また興味も無さ気に窓の外を眺めた。

サタン > ぼんやりと居るのか居ないのかすらも怪しい気配の男は杯を再び空にすれば、カウンターに置いたまま腰を下ろした椅子から立ち上がり、フロアを回る給仕に退席する旨を伝え、夜会の場より姿を消した――。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区【イベント開催中】」からサタンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区【イベント開催中】」にギュンター・ホーレルヴァッハさんが現れました。
ギュンター・ホーレルヴァッハ > 富裕地区の一角。表向きは貴族や豪商等、上流階級の顧客を相手取った娼館。
厳重な警備。魔導士やレンジャーによって仕掛けられた侵入者対策のトラップ。徹底的に管理された顧客情報。

女を抱く為の施設としては些か過剰なまでの対策が施された此の場所は、時に貴族達の密会の場ともなっている。
逢瀬を許されない者達の部屋として。おいそれと口に出せない嗜好を持つ者達の捌け口として。そして、誰にも聞かれたくない話を交わす者達の会合場所として。

『……王都の乱痴気騒ぎを引き延ばすのも限度がありますな。辺境から市民の目が離れている内に、事を進めたいものですが』

『とはいえ、未だ王国軍の主力たる各師団は健在かつ精強。武力によって立てば、我等とて辺境の連中の二の舞』

『慌てる事はありますまい。既に此の国は詰んでいる。収穫の時期が早まったと思って、刈り取りの準備を進めれば良いでしょう』

薄暗い室内で言葉を交わす者達。様々な資料が広げられ、実務的な数字が飛び交いながら、囁く様に陰謀が飛び交う。
その議場で、上座に腰掛けていた少年は近くの貴族達と二言、三言言葉を交わし、周囲を見渡して万年筆で机を軽く叩く。

その瞬間、しん、と静まり返る室内。その雰囲気に満足した様に唇を緩めると、少女の様な風貌の少年は穏やかに口を開いた。

「……未だ語らう事も数多あるやも知れぬが、我等が集える時間は短い。それ故に、今宵出た結論と、各々が得た情報は有意義に、有益に利用して欲しい。
我等の正当なる国家。精強なる祖国。精鋭たる民族。それらを実現する為、諸君らの奮闘と忠誠に期待しよう。
————とはいえ、息抜きも必要だろう。今宵、此の館は私が借り受けている。久し振りに享楽に耽るも良し。英気を養うも良し。好きに過ごすと良い。…つまらぬ事で、憲兵に捕まらぬ程度にな」

最後に、冗談じみた口調で締め括ると、椅子から立ち上がった参加者達は恭しく一礼して部屋から退出していく。
後に残されたのは、何事も無かったかの様に整えられた部屋の窓際で、葉巻を蒸かす少年一人。

「…無能では無いのだがな。蛮勇と楽観論が入り混じっている。悪い事では無いのだが」

王国を滅ぼす為に暗躍する者達の会合。
その中でも家柄と資産によって高い発言力を有する己は、一派の長とも言える地位を得ていた。幼子と侮られるが故の地位であっても、付随する王族という地位と資産は偽りでは無い。

溜息と共に紫煙を吐き出すと、窓の外から王都の夜景をぼんやりと眺めていた。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 過剰なまでの防音対策と、厳重な警備によって部屋の中は静まり返っている。今頃、幾人かの参加者達は宛がわれた女達を貪っている最中だろうが、そんな気配も物音も微塵も感じさせない。
窓の外から時折馬車が走っていくのが見えるが、その車輪の音すらも室内には聞こえてこない程。

「…つくづく良く出来た館だ。とはいえ、物音がしなさすぎるというのも考え物だとは思うが…」

葉巻を燻らせながら、己の立てる物音と葉巻が燃えるチリチリとした音だけが響く室内で独り言ちる。
警備は万全なので余り心配はしていないのだが、こんな場所で襲撃されては助けを呼ぶ声も外には響かないだろう。
一応、館の警備を呼ぶ為の魔法のベルが設置されてはいるが――

「…そういえば、此処の警備は選りすぐった奴隷を更に選抜して育成しているのだったか。羨ましい限りだ。一人譲ってくれないかな」