2019/01/29 のログ
カイン > とある貴族の屋敷の裏門。富裕層の集う地区の一角にしては小さめの路地に面した場所に陣取るその場所に、
短めの槍を片手に腰に剣を履いた大柄な男が突っ立っている。
門を跨いだ先から聞こえるのは、宴も闌といった様子の喧騒である。
それを横目に見ながらだらしなく突いた槍に寄りかかれば自然と嘆息が漏れる。

「全く、ここに居るのは結構なリスクなんだがなあ。
 弱みを握られてるってのは困りもんだな」

その屋敷の持ち主の貴族とは随分古い付き合いになる。貧民地区の娼館にお忍びで来ていたのを、
悪さして叩きのめしてできた縁だがあれよあれよと口車に乗せられて偶に護衛を引き受ける間柄だ。
今日は大事な賓客が訪れるとかで駆り出されたのだが…

「魔族を徹底的に排斥唱えてる様な連中を呼ぶ宴に俺を使うなよ、っと。
 別にバレる要素はないとは言えバレたら面倒臭いことこの上ない」

ぼやいて視線を表通りに向けると賓客として迎えられていた一部の騎士達が去っていく所である。
直接の知り合いに心当たりはないが、かと言ってリスクも冒す必要もないと裏手に回ってきたのがつい先程。
賓客の案内に笑顔を振りまく必要のなくなったことに安堵の息を吐きながら体を伸ばす。
傍から見ると完全に衛兵がサボって気を抜いている図である。

カイン > 「しかしこの手の正装ってのは動きにくくていけないな。
 騎士とかはこんな格好が常で良く戦えるもんだ」

元より甲冑を身にまとっての戦い方などが元来性に合わない手合である。
自分の豪奢な、言い換えれば余計な飾りのついた衣装を見下ろした後、
遠目に見える恐らく護衛だろう甲冑姿の騎士の姿を遠く見送りながら不思議そうな声が漏れる。
勿論町中で見る騎士達が常にその様な格好ではないのはよく知っているのだが。

「このに衣装引っ掛けて賊を取り逃がしたなんて笑い話があったら、
 クレーム入れてやる。…そろそろ終わりじゃあるようだが」

気がつけば宴の音もかなり遠く、客足が去っていくのが裏門からも気配でわかる。
メインの賓客がいの一番に帰った後は好きに離れていいと言われて居る以上、
もう仕事としては終わって居るのだがこのまま根城に戻るのも何となく憚られ手持ち無沙汰の様子で衛兵を続け。

カイン > 「…ん。いよいよ本格的に客が帰ったみたいだな。
 幸いというべきか何というか、無事に終わったのは少しホッとしたな。
 とはいえこのまま帰るのも癪だし、なにか酒でも集っていくか」

自分の身の上を考えればそれこそこのまま立ち去って、
ご実体入れるのが利口ではあるだろう。だがそれも何となく癪だと、
ボヤキと共に支給された槍を方に担いで門を跨いで屋敷の中へと姿を消していく。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区/屋敷裏口」からカインさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にディールさんが現れました。
ディール > 医院から外に出たのは久々か。
数日間ほど薬剤や魔法を組み合わせた研究に没頭していた事もある。
――もっとも、その薬剤や魔法が真っ当な物ではなく、明らかに己の欲求を満たす為だけの物。
自分の目に、永続的な魔法を埋め込む事で擬似的な魔眼を作成。
それは失敗に終わり、今は右目に眼帯を巻いていた。

「ふん。――そうそう魔眼なぞ得られんか。」

脳に響くほどの眼球の奥から響く痛みはある。
だが、それも無駄ではない。失敗の果てに成果さえ得られれば良いのだ。
幸いにして時間は腐るほどある。――が、この痛みは些かに堪え難い。
眉根に皺を寄せ、道行く通行人を見据えながら。ただアテもなくふらりと歩くだけの気晴らしの散歩。

ディール > 目に固定の術式。其処に魔法陣を描き、周囲の魔法を眼に吸い込む魔眼。
貪欲にして強欲の魔眼を自ら得ようとしたが上手くは行かない。
血の涙が頬を伝った時点で一旦諦めた。
難易度は高いが代償として得られるのは魔法使いへの絶対的な優位性。
天秤にかけるならば悪くないが――自分の器と知識では定着させるにはまだ遠い。

「王城の禁術図書でも使うか。まだ目を通していない書もある。
とはいえ、医者がこの格好では如何せん格好もつかんか。」

寄付金という名の利用料も高くつく。
何も覚えられなければそれはドブに捨てる事にもつながりかねない。
最低限、自分は魔王級に為らねば――と。あの今も尚脳裏によぎる存在を思えば。

所詮己など羽虫程度であろう。軽くあしらわれるだけで消え去る儚き命でもある。

ディール > そのままふらり、と曲がり角を折れて姿を消した。
向かう先は何処に為るか――。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からディールさんが去りました。