2019/01/22 のログ
ジーヴァ > 「トゥルネソル商会……よし、覚えておくぜ!
 そんであんたは竜胆・トゥルネソル……商会の娘か!?」

そりゃ富裕地区にいるわけだ、と少年は今更ながら納得する。
護衛が一人もいないのは、本人の実力とあの巨狼のおかげだろう。
金をいくら積まれてもあんな獣に挑みたがる傭兵はいない。

「こりゃとんでもない人に助けられちまったなあ……
 まぁいいか、通りで見かけたら贔屓にするぜ!」

すっかり傷の癒えた身体を元気に動かして、寒空の中石畳を踏みこむ。
そうして少女と巨狼に元気よく手を振り、少年は彼女たちとは別方向へと走っていった。
いつかまた出会えたときには、飯の一つでも奢りたいと思いながら。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からジーヴァさんが去りました。
竜胆 > 「ええ、どうぞご贔屓に。」

 とはいえ、少女自体は商売には手を出していなかったりする。
 それに、彼は色々と足りない模様。
 観察眼、とか物を見る目、とか。

 ――――死にかけた直後でそれはちょっとかわいそうかもしれないが。

 隠してもいない尻尾に翼を見落とすのは魔術師としていかがなものだろう、と。
 まあ、自分のことでもないし、いいわ、と走り去っていく少年を見送ることにした。
 さて、いろいろと、気が削がれたがどうしようかしら。
 少女も歩き足りなさそうな狼犬グリムに引っ張られて歩いて考える。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にアデラさんが現れました。
アデラ > 竜の少女が再び歩き始めて、暫しの時間が過ぎただろう。
夜にも退廃の光に満ちた街の中、一つ、少女の目に映るものがある。
夜の闇と同程度には黒い衣服を纏った娘の姿だ。

その目は、道の両脇にならぶ店に吸い寄せられている。
酒場、ナイトクラブ、娼館――そういう〝ろくでもない〟施設に向けられる熱視線。
それが何かの拍子に竜の少女へ向けられた時、

「――あらっ」

娘は少しだけ驚いた様子を見せた後、小走りに近付いて来るだろう。

竜胆 >  ―――自分の視線が、狼のそれが、新たな人を捉える。

 自分の姿見て、駆けてる姿は、以前に見たこともあるそれで。
 それは前にもであったことのある少女であった。
 近寄ってくる姿に、笑みをひとつ浮かべてみせた。

「ごきげんよう、アデラ?」

 気安く友人である彼女に声をかけて狼犬と近寄る。
 匂いをかごうとする狼犬をたしなめてから、彼女をみやろう。

アデラ > 「ごきげんよう、竜胆」

貴族と商家と、上流階級らしい挨拶を交わしながら距離を詰める。
近付いて来る獣に対しては、さしたる関心を示さなかった。
或いは年頃の娘なら、かわいいかわいいと撫で回す事もあるのだろうが。
この娘の興味は獣より、竜の少女に向けられている。

「探したわよ、もう。商会にまで出向いたのに、お留守なんだもの。
 稼業手伝いでもしてるかと期待してたら……」

十分に距離を詰めると、少女の横に立ち、くるりと進行方向を同じに変えた。
何処へ行くとの目的も無い放浪、行き先が180度変わっても気に掛けない。
そういう気紛れな娘は、〝あなたの家にお邪魔しましたよ〟と告げながら、

「お母様にお会いしたわ。……ふふっ、中々に素敵な方ね」

竜胆 > 「あら、私に何か御用、かしら?」

 と近寄ってきた彼女のこと場に、少女は首をかしいで見せる。
 何か用があったのに、待たせてしまったであろうか、と。
 話を聞くところ、自分の母親と出会ったこともあるらしい。
 なにか買い物とかでの幼児だろうか、と聞く姿勢になる。

「別に何かをしているわけじゃなかったわ。
 それでも許されるぐらいにはお嬢様でしてよ。」

 会えなかったことに対して、はごめんなさいね。
 彼女に謝りながら抱きしめて見せた。

アデラ > 抱き締めようとする腕に逆らわず、その中にあっさりと閉じ込められる。
冬空の下で幾分か冷えた身体は、以前と変わらず華奢なもの。
華奢ではあるが、痩せぎすの固さではない女の身体――

「用なんて無いわ……また会いたいと思っただけよ。
 あなたはそんな風に思ってくれなかったのかしら?」

――と、女の声。
少しだけ背の高い相手の耳へ、下から吹き込むように囁く言葉は、

「寂しいわ……ああ、でも、大丈夫。お母様が慰めてくださったもの。
 流石に母娘ね、良く似てた。見た目より乱暴なところも、たくましさも――」

ああ、でも。
そんな言葉を緩衝材にして、少しだけ間を開けて。

「――お母様の方が、上手だったかしら」

竜胆 > 柔らかな体は、自分の腕の中に収まって、彼女のことをしっかりと抱きとめる。
 ほんのりと甘い彼女の匂い、その中に潜む女性としてのフェロモンに少女の中のオスが目覚めるのを感じる。
 冷たさも少女の中の眠気を覚ますような、そんな気さえしてくるのだ。

「ごめんなさい、私は、いつも魔導や魔術を調べておりまして。
 ついついそういったところが不精となってしまいますの。
 でも、会えたことは、とても嬉しいですわ、本当ですのよ?」

 引き籠もり故というところか、用事がなければまず出かけない、だからこそ、ペットの世話を押し付けられたのかもしれない。
 彼女の言葉に苦笑をにじませて見せて。
 次の言葉に、目を瞬いてみせた。

「お母様と出会ったのね。
 ―――どちらのお母様、なのかしら、多分、リスお母様の方だとは思うのだけれど。
 ふふ。
 挑発、されてしまってるのかしら。」

 彼女から聞く、母と比べられる言葉に、ニッコリと笑ってみせて。
 母に対してでも、比べられると対抗心が強く浮かぶのは止められずにいて。

「ええ、ええ。
 私の方が上だって、教えて差し上げますわ?」

 そっと彼女の手を握り、狼犬に帰るわ、と告げながら。
 彼女と共に歩み去るのであった。


 ――――先程の言葉を示すために――――

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からアデラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」から竜胆さんが去りました。