2018/08/16 のログ
シュライア > もしこの場にいたのが聡明すぎる姉なら
出会った瞬間、相手の素性を把握し、警戒しながら話をしただろうが
ローベルク、という名前だけが彼女の中で独り歩きしているのかシュライアの中では尊敬する父親から聞いた…武勲を立てた話が先立つようで

「そんな、正義の化身など…。私は、ただお父様の教えに従っているだけです」

素直な性格なのか、男の間を保たすための言葉に少し頬を朱に染める
その姿だけ見れば身長が少々高めの普通の少女だろうが
男の眼に映るのはいつ爆発するかわからない力の塊なのだろう

「ローベルク家こそ、昨今ではあまり名を聞きませんが、貴族となったきっかけ…大戦時の活躍は寝物語としてよく聞きながら眠ったものです」

ふふ、と笑いながら心底会話を楽しんでいる様子で

「…美しいと言われるのは、嬉しいのです…けれど。その。鍛えている私が言うことではありませんが…気にしている部分でもあるのです。
お父様も、結婚相手がいないと嘆いていますし…。ただ…」

鍛錬の部分を褒められればうれしいやら少し複雑そうで
女性ではある以上、そういった部分も気になることは気になる様子

「そうですね、まずは見回りが無い日などは所有する修練場で一日中鍛錬を。
模擬戦から体作りまで、ですね。ハテグ周辺で小競り合いがあった際などは参戦しますが…最近はあまり召集はありませんね。」

どこか自慢げに鍛錬の内容を
細かく聞くならば鍛錬の詳細なども、快く語ってくれるだろう
寝物語として聞いていた家の者が目の前にいるとなれば少女のように目を輝かせながら
男にとっては非常にやりにくいが、彼女にはとてもうれしい会話の様子

クレス・ローベルク > 「はは、親の言うことを素直に聞くというのは良いことですよ。少なくとも両親を幸せにできて、しかもそれが高潔なるラクスフェルの家訓ならば。……貴方はきっと、多くの人を幸せに出来る……少なくとも、その努力ができる人だ」

そんな言葉がすらすらと、口をつくように出る。

「何と。それはそれは――我らが先祖も、天で喜んでおられるでしょう。我らが戦いが、正しきを目指す子の寝物語になっていると知ったなら」

しかし、それは全てが、全て、お世辞でもない。話していて、何となく気づくが、彼女の表情は変わりやすく、結構――つまり普通の女の子同様に、魅力的ではあるのだ。ただ、危険度が高いだけで。

「(可愛いなあ。うん、可愛い)」

そんな風に微笑ましく思っていながら、会話を紡ぐ。
さっきよりやや自然な笑みで。

「ほお、一日中!僕も鍛錬は欠かしませんが、シュライア様程には中々。貴方のその刀剣の如き強くも美しい肉体は、その様に磨かれているのですね……。僕が言っても慰めにもならないかもしれませんが、声をかける男性が居ないのが不思議なほどです」

勿論、全くの本気というわけではない。実際彼女の風体を見て避ける男の気持ちも理解は出来る。
しかし、可愛いと思ったのは本当だし、それなら彼女の、女性らしいところにもっと自信をつけさせてやっても良い、と彼にしては珍しく、そんな親心にも似た気持ちで言ってみた。

「(まあ最も本気にされたらそれはそれで困るけど、まさかねえ)」

シュライア > 「まあ。お世辞が上手ですね。…私にできることなど大したことはありません。
…この国を、正そうとしているのに全く、うまくいきませんから…」

言葉を紡ぐ相手に…それが世辞だとわかっている、という態度を見せて
実際、疎まれることが多い彼女にとっては世辞ということにしないと、嬉しさで顔が緩んでしまいそうな言葉だ。

「もちろん、休憩は取りますよ。鍛錬と休息はどちらも重要ですから
…その、美しいなどと言うことはありません。殿方は…例えば、あちらのような女性が好ましいということはわかっていますから…」

相手の言葉に、あいまいに笑いながら、視線で歓談中の貴族の女性を示す。
示した女性は豊かな肢体とおっとりとした緩い雰囲気。いかにも男の後ろをついていきそうな淑やかな女性だ。


「…ただ、ローベルク家の方に刀剣のようだ、と褒められるのは…それとは別の喜びがありますね。
この体も戦闘以外で、報われることがあるということでしょうか」

褒められているのは本気にしているのか、くすくす、と笑いつつ。
言葉を交わした印象なら、彼女は非常に実直で、腹芸には全く向いていないということがわかってしまうか


「そういえば、ローベルク家の方もよく訓練をされていますよね。何度か合同訓練を依頼したのですが日程が合わず…
よければ、クレス様の鍛錬方法も…何かあれば聞かせてくださいませんか?」

すっかり気を許し、笑顔をよく見せる様になりながら、そういえば相手はどう訓練しているのだろう、と気になり疑問を返してしまう
こういった処もまた、男受けが良くないところではあるのだが、どうしても聞いてみたかったようだ

クレス・ローベルク > 「はは、確かに僕もあの様な子は魅力的だと思いますよ。でも――野花の美しさと、刃紋の美しさは別で、僕はそのどちらも、綺麗だと思いますよ?――全くシュライア様に、花が似合わぬ訳でもないですしね」

とはいえ、これ以上は褒めと謙遜の勝負になりそうなので置いといて、と話を転換する。実際、これ以上彼女の心持ちをどうこうするのは難しかろう。ただ、自分がそう言っていた事を覚えていてくれればそれで良い。

「鍛錬の話をするならば、僕はひたすら反復練習ですね。素振り、足運びの練習、ローベルクに伝わる決められた型稽古を何回か。後は覚えた魔物や人の急所や知識に抜けがないかのチェックを月一回」

後は実戦ですね。幸か不幸か、戦場には事欠かない情勢ですから――とそう言葉を濁す。実際には彼の実践の場は闘技場であることが多く、大抵の場合実戦と陵辱は同一なのだが。

シュライア > 「…武勇に優れた者は女性を口説くのも上手いと聞きますが、本当のようですね」

などと言って、話を切り上げる。
褒められることはあまりなく、新鮮で。確かに彼の言葉は彼女に届いたのだろう

「していることは、私と似たようなもの…でしょうか。実戦…?」

なるほど、と言いながら実戦という言葉に首を傾げて
この辺りで実戦ができる戦場は今あっただろうか、と思いつつ

「それならば、模擬戦などもためになりそうですね。…私で相手になるかはわかりませんが
…その……」

その疑問は一旦置いて。誘ってしまう。
名のある家、その相手が目の前にいるのだ。宴も特に問題はないようだし、と自分に言い訳を付けて
言葉は濁すものの是非、手加減ありの模擬戦でもいいから戦ってみたい、と…武勇を誇る貴族の想いが態度に表れてしまっている

クレス・ローベルク > 「(あれ、最近はあんま戦場無かったっけ。最近でもミレー族との紛争が……ってあれ奴隷徴収じゃん!馬鹿馬鹿俺の馬鹿ー!?)ま、魔物退治や、盗賊退治ですね。魔族との戦争も、小競り合いの様な物はありますし」

最近行われた、ミレー族の隠れ里との紛争に参加していたりしていたせいで、微妙にそのあたりの温度差が出てしまったのだろう。

「(油断してたー。相手は危険、相手は危険……)」

そう自分を戒めていた所に、模擬戦のお誘いが来た。
冗談じゃない、自分はローベルクの家と言っても出奔者であり、そもそもシュライアとは地力の時点で釣り合わないのだと、そう思いはするが、

「(こ、断れねえ……!だってこれアレでしょ?同じ趣味の人を見つけて、でも宴の途中だから何となく遠慮して、でもそれでも誘ってみたっていうそういうアレでしょ!?そんなの断れるわけ無いじゃん!男としても、剣闘士としても、無いじゃん!!!!!!)」

100%色気のないお誘いでも、それでも受けてしまうのが男としての性だった。それに、全く彼女の実力に興味が無いわけでも無いのだ。全身にかきそうになる冷や汗を、無理矢理こらえて、

「勿論。魅力的な女性のお誘いを、受けない男は居ませんよ」

そして同時に、あ、そういえば貴族のオッサンの護衛どうしよと思ったが、まあ見る限りシュライア以外に驚異になるような者は居ない。他の護衛で十分抑えられるだろうと、そう判断し、彼女の誘いを受けた。

シュライア > 「ああ!確かに最近は遠い山脈の方によく…。なるほど、こちらで名を聞かないと思っていましたが遠方で…」

盗賊、と聞いて彼女の顔色が変わった
近くではないもののそういった者が跋扈しているのは知っていた様子で勝手に納得しており。
それは男の言葉に無条件にある程度の信を置いているという証明だろう

そして、模擬戦の…彼女にしてみればはしたなく、断られても仕方ない、という誘いだったが…

「本当でしょうか!…嬉しい…。どうしましょうか。この時間なら邪魔も入りませんし、ラクスフェルの修練場を使いますか?」

欲しくてたまらない玩具を買ってもらった子供のようにはしゃいでおり、矢継ぎ早に言葉を紡ぐ

「えーと、馬車はありますし、ルミフェールはここに…あぁ…お姉様に自慢ができる…」

指折り数えて。男が流されるなら、あれよあれよという間に移動が叶ってしまうでしょうか

クレス・ローベルク > 「そ、そう、シェンヤン帝国の九頭竜山脈!そちらの方でぼちぼちと」

やっべ、後でそれなりの成果出さないと嘘がバレると思いつつ、とにかく直近の命の危機に集中する。具体的には模擬戦である。もうすっかり舞い上がってしまった彼女に、今更取りやめなどという無様は見せられない。今日一日だけは、『出奔者』でも『剣闘士』でもなく、『ローベルクの一員』を演じ切らなければならない。

「おお、まさか、そちらの家の修練場を使わせて頂けるとは!是非に。それでは、早速ですが参りましょう。」

そう言って、シュライアの前にそっと出る。手の一つでも取ってみようか、とも思ったが、今の彼女は戦いを楽しみにしているようだし、水を差すのも無粋。彼は久々に、本当に久々に、ローベルクの人間として、戦いに相応しい態度を取った。

シュライア > 案内されたのは、本当に人気がない、木人や練習用の武器が並べられている広い修練場だ

「ここなら、少々じゃれあったところでお咎めを受けることはないでしょう…さて」

練習用の刃が潰された剣を持ち、もう一本の柄を相手に差し出す
これならばもし事故が起きたとしても、最悪で骨が折れる程度だろう
そして武を誇るもの同士なら、加減もわかっているためそういった事故も起こりにくいだろう、と彼女は考えている

「……ルールはどうしましょう。一本を取るか、降参で?」

流石に自分の愛剣を使うわけにもいかず脇に一度置いて
豪奢なドレス姿も…別室で着替え、動きやすい軽装になっている。
剣を持つと雰囲気が変わり…修練場の温度がいくらか下がったような錯覚が襲うだろう
模擬戦だからと言って手は抜かず。武を確かめたい、と

相手の返答を待ってから…ぎ、と片手で剣を握りしめなおしていて

クレス・ローベルク > 馬車から降りて修練場についたクレスは、まずその広さに驚いた。
ローベルク家にも修練場はあるが、どちらかというと手付かずの森や山、平地での戦いも荒野や平原が主だった。

「(家の方針の違いって感じなのかなあ)」

と、ぼんやり思っていたが、剣を差し出されると意識を切り替え受け取った。一応、人体を切り裂く事のない魔剣があったりするが、アレはどちらかというと陵辱用なので、この場では使いたくない。ありがたく使わせてもらうことにした。

ルールの相談を受けると、少し考えた後

「うーん、降参かなあ。やるならとことんやりたいですし」

というか、真っ向勝負で戦うとほぼ確実に負けるので彼に選択肢はない。今の彼が何となく見せている余裕は、かなり薄氷だと、自分でも解る。

「(そもそも剣を持つだけで周囲を圧するって、それ達人の域だよね!?この子他の同年代の、三倍ぐらい階段飛ばして行ってない!?ねえ!)」

とはいえ、今更逃げ出すことはできない。精神を戦闘用に切り替え、彼女だけを見る。正確には、彼女の動きだけを見る。今この時だけ、彼は彼女が女であることを忘れた。

半身になって右手に剣を構えてシュライアに向け、左手を開ける。剣を叩かれればそれで弾かれてしまうような構えだが、元より剣と剣がぶつかりあうような事になればその時点で負けると、そう判断してのことだ。

シュライア > ラクスフェルの剣技は、儀礼剣に近いものがあるが、ただその修練の密度は他に比肩するものが無いほどだろう
剣を渡した後、わずかに相手の雰囲気が変わったことも、とてもうれしく
動きやすさのためか薄い上着と動きを阻害しない短いスカートのような布着を翻らせて

「…わかりました。では、降参で。」

正確には、剣を持ち相手を認識した時点で彼女もまた女であるという意識は遠のき
ただ剣を振るうものとして相対する

「…。シュライア=フォン=ラクスフェル…行きます。」

相手の変わった構えに対し、彼女は真っすぐに両手で剣を構え
宣言する。本来の戦闘では行わない、今から行くぞ、という意思表明の後

「……っ!」

一手目は、性格通りに実直な上段からの鋭い振り下ろし
大男すら抑える力からのそれはまともに受ければ腕を持っていかれそうな迫力と速度だが
正道を行こうとする彼女の性格故か、剣筋が真っすぐすぎるところが難点か

クレス・ローベルク > 「……。クレス=ローベルク。何時でもどうぞ」

そう受けた次の瞬間には、彼女の攻撃に対し、半身の後ろ足で自分の体を強引に押し出し、斜め前に飛んだ。最小限の動きで跳んだそこは、彼女の後ろだ。それは彼女の防御や攻撃が届きにくい場所であり、彼からすれば右手の剣を突き出すだけで、彼女の脊椎を断絶せしめる場所でも有る。

勿論、潰れた剣ではそこまでは行かないが、背骨を強く叩かれれば、それで十分「致命傷を与えた」事は伝わるだろう。つまり回避できなければ、

「開始数秒で悪いけどこれで終わりだ……!」

シュライア > 「っ、!」

避けられることはわかっている。
元々自分の剣は実直にすぎることもまた
避けられることも予想し、反撃があることも予想し…
相手の雰囲気、力量からその速度も体感するように予測できた、が

それよりも、ほんの僅か、薄氷の意地…その剣は速かった
しかし…その速さを彼女の判断力も見逃さない

「――――っ」

相手が斜め前に飛び、視界から外れた瞬間、振り下ろした勢いでそのまま体を丸め、前転
相手の踏み込みにもよるが…果たして躱せるか
役得として、一瞬ではあるが飾り気のない下着を見せつけることになるが
もし躱せるのであれば体を反転させ、に、と笑って立ち上がるでしょう

クレス・ローベルク > 「……!」

元より、これで『殺せる』とは思っていなかったが、しかし、回避の方法が予想外に過ぎた。何だ前転って。猫じゃねえんだぞと思いつつ、しかし

「(やっべえ)」

何時もなら、下着が見えたならそれをあげつらい相手の羞恥心を煽って集中力を下げるが、今はそんな事をする気もおきない。それこそが致命的。何せそれは……

「(ああ、クソ、認めたくねえが、俺)」

前転直後の彼女に向かって、刃先を突き立てるように剣を投擲。同時に、自分自身も前に踏み込み、丸まった彼女を踏みつけにしようとする。仮に剣を弾くなりしても踏みつければダメージは通るし、何よりうまくすれば剣を回収できる。二段三段の狙いを持って彼女を攻撃する。

「(楽しんでやがるなあ、オイ!)」

シュライア > 身体能力に明かせた、無理矢理な回避
男の眼に狂いはなくその凝縮された筋肉はあり得ない動きを可能とする
それこそ野生の獣のような。

(追、撃っ)

転がったからと言って相手の手が止まるわけはない
下着が見えたことにすら気づいておらず思考は戦闘に染まりきっている。
笑みを浮かべながら、今度は横に。
後ろに目があるかのように素早く転がる
背筋や腹筋がぎり、と軋むがそれすらも心地よく

(あぶな、ははっ!)

その表情には男の心情と同じ、笑顔
転がるついでとばかりに剣を振り上げ男の腕を叩こうと試みる
片手で振り上げられたそれは狙いもあまり定まっていないが、当たれば痙攣くらいは起こす威力は十分に

クレス・ローベルク > 「(ちょ、転がった状態から更に転が……ぐっ!)」

左手に衝撃。あの状況からの回避と攻撃の両立は、流石に予想外らしく、完全に意識の外だった。流石にこれ以上の追撃は危険と判断し、突き刺さった剣を右手で回収し、一旦後ろに下がる。

「本当……凄まじいの一言ですね。あの状況から、こちらに一撃を加えますか」

左手は、まだ暫く回復しない。動かすことはできるが、力があまり入らない。しかし、ならば。

「ですが、僕も男です。このまま負けはしませんよ。……さあ、僕の腕はまだ痺れている。追撃するなら今がチャンスです。何時でもかかってきてください。できるなら、ね」

と、あえて左腕を垂れ下がったようにしてアピールする。これは罠かと、一瞬でも思ってくれればその分だけ時間が稼げるからだ。

シュライア > 「それほど強くは打てていないはずですが?…ローベルク家の剣、興味深いです」

くるん、と身を翻して立ち上がって笑顔を見せる
宴で見せた可愛らしいものではなく、獰猛な獣のような笑み

「………」

実直、いうなれば馬鹿に近い彼女だが、戦闘に関しては一流だ
ただこの場合、一流というのが足を引っ張る
垂れ下がった左腕。普通の相手ならこれはチャンスだ。一気に攻め込み勝負を終わらせられる
しかし先ほどの動き。宣言したとはいえ反応も早く、また急所を狙う動きも的確だった…と彼女は感じている

自分の剣とは違う、罠に嵌めるような、あるいは突っ込んでくるものを返す、あるいは誘い込むような戦い方
警戒を抱くのは当然で。
彼女は一流であるが故に躊躇してしまう
視線を巡らせ、本当に動かないかどうか、確かめてしまうだろう

クレス・ローベルク > 「はは、僕は戦士としてはどうも力や耐久力がなくて。どちらかというと技巧派な物で……」

と笑いながら、

「おや、どうしました?今が絶好のチャンスですよ」

そう言いつつ、一歩一歩、ジリジリとシュライアとの距離を詰める。
左腕は垂れ下がったまま、それでも彼女との距離を詰める。行動と状況が矛盾しているが、しかしこれぐらいしなければ、駆け引きにはならない。

笑顔のまま、一歩、一歩。また一歩と距離を縮めていく。傍目から見れば隙だらけで、寧ろ突かないほうが難しいほどに。

シュライア > 「私に足りないのは、そういう柔軟さかもしれません」

ふふ、とこちらも笑いながら迫る相手を見つめ…

「……シッ!」

左腕をかばう動きすら見せず
男はただこちらに向かってくる
踏み出せば届く距離から…剣を振るだけで届く距離へ
そこまでくれば、もう彼女は止められない
自身の最速、最高の速度を持って、罠があれば罠ごと踏み越えてやろうという気概と共に放つ、横なぎの一閃

模擬剣でありながら食らえば吹っ飛びそうな迫力を持って、決着をつけようと

クレス・ローベルク > 「……素晴らしい。いや、本当に」

何故なら、此処で、攻撃をしてくるのは。
それは、クレス・ローベルクの想定するパターンの中で、『尤もやりたくない事をさせられるパターン』だったからだ。

「ああ、これは絶対やりたくなかったんだ……!」

瞬間、クレスは左手に剣を持ち替え、そしてあろうことか、右腕の肘鉄で、横薙ぎの一閃を迎撃した。ゴギィ、という嫌な音ともに、右腕に激痛が走る。だが、それを歯を食いしばる事で堪え、そのまま左手の剣を首筋に振り下ろす。時間を稼いである程度力は戻ったとはいえ、痺れた左腕だ。力も速度も余り乗ってない。しかし実際に当たれば『致命傷』になる一撃が、シュライアの首筋に迫る

シュライア > 飄々とした、受け流し誘うことに秀でた剣
それは彼女には初体験の相手であり心躍るものだった
その相手が仕掛けてきた、おそらくは罠。迷っていても仕方がない、と全身全霊を持って叩きつけた一閃は素晴らしいものであった
しかし

「なっ―――」

いくら刃を潰した剣だからと言って、それを肘鉄で迎撃されるのは、彼女にとっても予想外だったらしい
間違いなく骨は折れてしまっただろう。しまった、という思考が彼女を埋め尽くし、一瞬だが完全に動きが止まる
その一瞬は、この勝負にとって命とりだ

コン

余りに軽い、小突いた程度の衝撃だが自分の急所、首が獲られた事に他ならない衝撃だった

「…。参りました。あんな無茶をするとは……」

少しの間、驚きに顔をゆがめていたがすぐに晴れ晴れとした顔になり、敗北宣言
彼女が知らない戦術、体の使い方。それを見れただけでも僥倖だ、と

「ええと、その。振っておいて、なのですが…。治療、受けられていき、ますか?」

剣を置き、立ち上がったかと思えばすぐに心配をして
模擬剣とはいえ自分の一閃を体に受けてよかったのか、と。
武を重んじる家のため、そういった治療体制も整っていると伝えるだろう

クレス・ローベルク > 「はは、あいたた、何とか、勝てました」

左腕で右腕を庇い、彼は笑う。いや、本当に笑うしか無いぐらい激しい痛みなのだが。
しかし、それでも意地は張りたかった。

「とはいえ、これはあくまでも模擬戦だからできた事、ですけどね。多分、実際にやればシュライアさんが百戦百勝します。でも、ほら、男ですから」

負けるからって、そのまま負けるのは癪だったんですよ、とそう嘯くも、

「あ、それはそれとして、治療は勿論お願いします。っっていうか、割とそれ前提で右腕犠牲したので……!」

と情けなくお願いするのだった

シュライア > 「……負けました。…ふふ…」

負けたというのになぜだか彼女は喜色を隠さず

「…私の剣なら、腕ごと切り飛ばしたでしょうけど…これが、プライド、というものなのですね」

なるほど、と。これは注意しなければならないところではある
意思の力というのはこれほどまでに強いのか、と

「はい、もちろんです。治るまで、私が責任を持ちましょう」

情けなくお願いする相手を見下す事もなく。笑顔で

宣言通り、自分が折ってしまった、彼の腕が治るまで…甲斐甲斐しく世話を焼くのだろう…

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からシュライアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からクレス・ローベルクさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にキュリオさんが現れました。
キュリオ > 富裕地区にある税収官の邸宅は絢爛豪華―――そして趣味が悪い事で有名だ。
豪華であれども荘厳さの欠片も無い邸宅には今日、ぽつぽつと人が訪れていた。

普段は税を自らの足で取り立てに参るのが常であるが当然、納められるのを受け取る時もある。
今日はそうした、自らの足で税を納めに来る輩を相手にする日。
とは言え、主自ら対面することは滅多と無く、部下に対応を任せることが殆どだ。

よっぽどの大物の来客か、或いは食指の動く女が訪れた際には、連絡を受けて自らが相対することもある、という程度。
中には税の低減願う代わりにと、生贄の如く何も知らされず――或いは奉公を言い含められて――代理として女性を送り込む輩も居る。

「…っち、特に目ぼしい者は来ておらんか。何かあったら連絡を寄越せ。
 儂は部屋で”仕事”をしているからな。」

訪問記録に目を通し、興味を引く名も、部下からの推薦も無いと知れば舌打ちを一つ。
なればと、部下へと声をかけ、仕事と言い放ちながらも寝室へと移動する。

――今日は既に1人、目を着けて引っ張り込んでおいた所だ。
拘束し、媚薬をたっぷりと局部に塗り込み部屋へと放置したその女は、今頃どうなっているだろう。
想像して自然、足取りが軽くなる。
次なる獲物が見つかるまでの余興には丁度良いと、下種な笑みを浮かべて。
寝室の扉をゆっくりと、開いた。

キュリオ > 媚薬に善がり狂う女の姿を目にすると、喜悦に表情を歪め。
その身を嬲り、獣欲の限りを尽くすのだろう―――

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からキュリオさんが去りました。