2018/08/15 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にリュシーさんが現れました。
リュシー > (日暮れ時、白亜の邸宅の外壁がみな、ほの赤く染まるころ。
サイズの合わない、ついでにいえばかなりくたびれたワンピースを着て、
ぶかつく靴の不揃いな足音を響かせながら――――己はしばらくぶりに、
父の住む実家の傍へやってきていた。

傍、とはいっても、2ブロック、3ブロックほども離れた場所である。
それ以上近づく勇気がもてないまま、街灯が瞬きはじめた通りを、
あちらへ、こちらへ、俯き加減に難しい顔をしながら。

―――――ここまで来たけれど、己はまだ迷っている。
このままで良いとは思わないけれど―――どうするのが一番良いのか、
きっと皺の数がひとより少ないのだろう、己の頭ではわからなかった。)

リュシー > (馬車が近づいてくる音を聞いて、反射的に物陰へ身を隠した。

ゴトゴトと駆け抜けてゆく黒塗りの馬車は、横腹に見慣れた紋章が浮かぶもの。
その行方をじっと見送って、ほう、と大きく肩を揺すった。

そうして、歩きにくい靴を引きずるように―――――小柄な人影は、宵闇のなかへ)

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からリュシーさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にシュライアさんが現れました。
シュライア > 「はあ……。姉様に任せるだけではいけないとはいえ、これでは…」

富裕地区の一角。宴好きとして有名な貴族の邸宅
そこで本日行われているのは…この国では珍しいまともな宴だ
交流を主とし、歓談の内容もまっとうなもの。
そんな場所に来た彼女の目的はこんな中でも蔓延ろうとするモノの発見。

このまっとうな貴族に取り入り、私服を肥やすか傀儡とするか
あるいは、歓談に紛れ込んで怪しげな密談を交わすものもいるかもしれない

「…。今のところは、大丈夫でしょうか…。ああ、フィルコ公、その節は…」

宴の様子を見ながら頷く。洞察力に優れた彼女の眼にも会場に妙な動きはない
ついでに慣れない動きで世話になっている同志に礼をした後少し歓談。
彼女の装いはいつもの軽鎧とは違い、ひらひらとしたドレスだ
これでは足を上げにくいし動きにくい。靴もヒールなので歩きにくい…と不満を覚えながら
ただ、今日は姉の代役として来ているのだ。失礼を働くわけにはいかない

「……ふぅ。」

歓談が終わり、壁に背を預ける
ウェイターが持ってきた飲み物を少し口に含んで味わい
淑やかにしていれば正に令嬢と言った雰囲気。彼女の事を初めて見た貴族たちは少し浮足立ち、隙があれば話しかけようなどと画策している様子

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 女騎士シュライアが溜息をついていたのとほぼ同じ時間、同じ大広間で、実はもう一人、溜息をついている男が居た。
この宴を主催している貴族に頼まれ、他の参加者と混じってこっそり彼を護衛している男である。

いつものトレードマークである青地に金の刺繍が施された闘牛士服ではなく、黒いタキシードに身を包み、できるだけ気配を消して彼の周りを警備していたのだが……

「ん?」

ふと、ドレスに身を包んだ彼女が気になった。
最初は『ちょっと大きな人だな』ぐらいにしか見えなかったのだが、よくよく立ち振舞を観察してみると……

「(オ、オイオイオイオイオイ!?何あのヒト!?)」

明らかに此処に列席している他の貴族たちより、圧倒的に戦闘力が違いすぎる。
っていうか、身体――筋肉の質からして違う。戦場に出る、武勇に優れた貴族に比べてすら、一頭地を抜くレベルの実力者だ。

「(刺客か?いや、迷ってる暇はない!もしこの人が暗殺を企てている様なら、不意打ちされたら対応できない!)」

一瞬でそこまで判断し、クレスは自分の判断で彼の傍を離れた。
彼の傍に居ない事より、彼女を野放しにしている方が余程危険だと判断した結果だった。
彼はシュライアに出来るだけ自然に近づくと、

「失礼、お嬢さん。僕はクレス・ローベルクと申します。失礼ながら、貴方のお名前をお聞きしても?」

とそう声をかける。
一応、ローベルクというのも有名な家門だが、此処最近で目立った戦働きをしている訳ではないので、知っているかは五分五分だろう。

シュライア > 「…?」

飽きもせず、油断なく広間を見渡していれば自分に近づいてくる正装の男
特に目立ったことはしていないはずですが…と思いつつ姿勢を正す

「は、はい。私は…シュライア=フォン=ラクスフェルと申します。あの、私が何か…。…ローベルク?」

話しかければ特に無視する理由もなく
むしろこういった場に慣れていないのか少し硬い笑顔で自己紹介を
事情通ならば、この腐った国にあって未だ正義を掲げる異端の貴族。武勇に優れたその次女であると脳裏に浮かぶだろうか

何かパーティについて粗相をしたのかと聞こうとしたが相手の名前が引っかかる

「…ローベルク!ラクスフェルと同じく武勲によって貴族として認められた…。初めてお目にかかります。
…そちらに比べれば小さな家ではありますが…お名前は父から聞かされておりました。」

ぽん、とあまり貴族らしくない動きで手を打って少し喜色を滲ませ
その後思い出したように丁寧に礼を。

「まさかお会いできるとは。…今日は、歓談に?」

にこり、と花のように笑いながら会場を指す
まともな宴であるここは、笑い声がそこかしこから聞こえ、活発に情報交換が行われている。
彼もその目的だろうか、と。

クレス・ローベルク > にっこりと、何時もの人好きのする――正確にはほぼ誰にもわからないレベルで引きつった笑みで話し掛けたが、相手が名乗った姓に、別の笑みでその笑みが引きつることになる。

「(ラクスフェル?ラクスフェル!?この夏場に外に捨ててあるミルクより腐敗した国で、マジの正義の英雄やってるあのラクスフェル!?)」

命の危機で心臓が早鐘を打つ。
何せ、このクレス・ローベルク、犯した奴隷は数知れず、非合法活動への関与は星の数ほどである。流石にこの場で何かされる事はないだろうが、しかし同時にあのラクスフェルならこの場でもやりかねないとも思う。

そして、更に彼を追い詰めていたのは……彼女自身はどうやら、こちらに対して良印象を持っているという事だった。これでは会話を直ぐに切り上げるのも難しい。

「そ、それは光栄です。かの名実ともに正義の化身である所のラクスフェルの方に覚えていて頂けるとは。ええ、元々は歓談に」

とにかく、此処は彼女が気に入りそうな話で気を逸らそう。そう考え、取り敢えず彼女に話しかけた理由である所の、戦いの話をする事にした。

「ですが、貴方にお声を掛けたのは、その、美しいドレスを着ていても解る、その鍛錬の顕れる所が、遠くからでも解ったからなのですよ。不躾ながら、いつも、どの様な訓練をなさっているかを聞いても?」