2018/07/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/小さな教会」にリュシーさんが現れました。
リュシー > (昨晩は久しぶりに、すこしだけ羽根を伸ばせた気がする。
父親が押しつけた堅苦しい従者から逃れて、ひと晩限りの自由を謳歌した。

―――――とはいえ、それはあくまでもひと晩だけの自由。
相変わらず、ひとりでの外出は許されておらず、どうかすると数日、
自室へ軟禁状態であったりするのだから、放蕩息子歴の長い己は息が詰まる。

粗悪品の脳みそを必死で動かし、自宅近くの教会へ、なんて殊勝な用事をひねり出したけれど、
結局、建物前まで従者がついて来ていた。

気が散るから、お祈りはひとりでしたい。
―――そう主張したから、礼拝堂へはひとりで入れた、のだが。)

―――ここ、裏口、とかないのかな。
……って、そんなものあったら確実にアイツ、ここまでついて来てたか…。

(重厚な質感の長椅子が並ぶ聖堂の中、正面奥にびろうどで飾られた祭壇。
その裏側へ回り込んで身を屈め、びろうどの下まで覗き込んでみたけれど、
隠し扉も、秘密の出入り口もなさそうな。
―――ということはやっぱり、扉の向こうに従者の待つ、正面扉を利用するしかないのか、と。)

ご案内:「王都マグメール 富裕地区/小さな教会」にアシュトンさんが現れました。
アシュトン > 「まぁ、そういう所の隠し扉はある意味お約束だけどな」

(ややと控えめな声の量が、聞こえてくるのは――上の方。
祈りに来た人物もそうと視線を向けないであろう位置から、まるで蜘蛛のように、上下さかさまにワイヤーで吊られている男が一人。
相手が入って来た頃合いには居なかったので、ごそごそと家探しをしている間に侵入してきた、という事なのだろう)

「ここしばらく見ていなかったから、遂に年貢の納め時でも来たのかと思っていたが。
なるほど、そう間違えてはいなかったみたいだな」

(立てた親指が、ちょいちょいと入り口の辺りを示す。
護衛、というか見張りの類が居る事は、既に把握している様で。
喉元から、くくっと小さな笑い声が漏れていた)

リュシー > (―――――不意打ち、というのは絶対に、どう考えても卑怯だ。
静まりかえった聖堂の中に、突然響いた己以外の人の声。
返事など返るはずのなかったヒトリゴトに応じられて、緊張に張り詰めた喉から、
令嬢らしからぬ、というか、なんとも形容しがたい悲鳴がこぼれ)

―――――ッ、……なん、…なん、っ……!?

(誰、というより、何、と問いたい。
声のしたほうへ反射的に振り仰いだら、―――相手の存在の仕方がまた、とても心臓に悪かった。
ぎゅう、とドレスの胸元を押さえて、乱れ打つ鼓動を抑え込もうとしながら、
きつく顰めた眉の下、明らかな警戒を孕んだ眼差しを向けて)

……る、さい、あんたに、関係ない、だろっ……。
って、いうか、どこから入ってきてんの、さ、あんた!

(はっきり言って、めちゃくちゃ怪しい。
己がまともな令嬢だったらきっと、とっくに甲高い悲鳴をあげているところだ。)

アシュトン > (手から床へと着地すると、ワイヤーを切り離し。倒立の姿勢からくるりと半回転すれば、足を地面に。
首を鳴らすような仕草の後、相手へと振り返れば口の端を僅かに上げた)

「まてまて、襲う心算なら、声もかけず上から襲い掛かってるさ」

(人差し指を立てると、天井の方から相手に向けて一本線を引く。
まぁ、上へと意識を向けていない状態で奇襲されて、避けきれるヤツはそう多くはない筈だ。
ハッキリ言ってしまえば、誘拐するにはコレが一番早かっただろう)

「関係は無いが、話は聞いて損はないと思うぞ。そう、何処から入ってきたか、だ。
俺が上にいたんだから、そりゃ上だわな。建築時に使われていた作業用の出入り口があってな。
そこからお邪魔させてもらった、って訳だよ」

(ちょいちょいと、指先が天井から垂れたワイヤーの根本を差す。
現在の位置からでは見えにくいのだが、内装に影響がないように建物の形で誤魔化されているのだろうか。
なお、じゃぁなんでこんな場所に来ているのかと言えば『仕事の下見』である)

リュシー > (仰ぎ見た視界に飛びこんできた、その姿も蜘蛛のようだったが、
するすると降りてきたその挙動がまた、完全に八本足のアレじみていた。)

………あんた、本当にナニモノなんだ。

(思わずそんな言葉が口をついて出たのは、たぶん己のせいじゃない。
ついでに言えば、襲う気はないと言われて簡単に信じてしまうには、
この男との記憶はなにもかも、あまりにも剣呑に過ぎた。
―――したがって、正面から相対した己の立ち姿は見るからに、
全身に力が入っています、という格好のままで)

―――― う、え……って、

(油断なく相手の顔を睨みつけていた視線が、ふと、己の頭上へ逸れる。
ワイヤーの残りがゆらゆらと垂れている、その先へと。
――――ここからでは薄暗くて見えないけれど、ソコに、もうひとつの出入り口がある、とは。
つまり、――――――いや、しかし。)

……いやいや。
ソレ、聞いてもどうにもならないし…、

(だって、どうやって上がれというのか。
たった今目の前の男がやっていたような芸当が、この身体で出来る、とは思えなかった。)

アシュトン > (虫というのは素晴らしい。音もなく高速で動き回るモノ。体躯の数倍を軽々と飛び跳ねるモノ。壁を自在に上るモノ。
八本足のアレだって、糸で罠を張り、自由自在に動き回る。技術として取り入れられていても、不思議ではない)

「少なくとも、タダの人間、さ。生物としては、君と大差ないよ。
違うのは、技術と経験と訓練位のモンさ」

(微かな笑いを交えるようにすれば、肩が小さく揺れた。
何処からが冗談という訳でもなく、全て事実ではある。事実ではあるが、それだけ身に着けられるモノも極一部だ。
そう言う意味では、人間離れしている、と言えなくもない。
相手が警戒している姿には、以前からそうであるし、当然の態度ともいえるので気にしてもいない。
ついでにいえば、本当に逃げたいのなら大声を出せば一発だ。扉を破って従者が入ってくるだろう)

といっても、君が一人で登るのは無理だろうな。
カベをよじ登るのも、ワイヤーを登るのも、どちらも難しい。

(壁の凹凸は限られている。低い場所なら窓枠なんかを足掛かりにできるが、天井付近まで続いてはいない。
ワイヤーだって、ロープより更に握るのがつらい細さであり、これまた足がかりはない。
もちろん、それを知っての提案。掌を相手へと向けて、そして自分を示す)

君には無理だが、俺には出来る。独り位なら運ぶのも可能だろう。
という訳で交渉だ。逃がしてやってもいい、対価は君の身体でいい。あぁいや、売り払う訳じゃぁないから、その点は安心してくれ。

(身体、の意図するところは、敢えて言わなくても分かるだろう。
とはいえ、彼女にとって現状は千載一遇と言っても良い。見張りは入り口のみ。逃走手段は目の前に。
これが自身の屋敷となっては、そうそうとチャンスも無い筈だ。俺だって楽には侵入できない。
後は、目の前の男にたいして、どう思うか、と言った所だろうか。
敢えて判断をゆだねる格好で、少し距離を置いたまま問いかける)

リュシー > (まさか本物の少女のように、悲鳴をあげて逃げ出すほど、ではないけれど。
虫、のたぐいが得意でもない軟弱者としては、あえてその話題から意識を逸らしておきたい。
―――――しかして、ただの人間だなどという相手の言葉にも、思い切り懐疑的な眼差しを向けてしまい)

……どんな仕事してたら、こんな技術身につ、く、
―――――あ、いい。やっぱり、答えなくていい。

(思いつくままに疑問を口にしかけて、慌ててかぶりを振った。
深入りしてはいけないこと、知らない方がいいこと、のような気がして。
好奇心のおもむくままに行動して、さんざん痛い目をみてきたのに、
うっかり、また失敗を重ねるところだった、などと、
内心、そっと胸をなでおろしつつ)

……そりゃあ、無理だよ。
ぼくは本当に、そういう点では普通の……、――――― は?

(文字通り降ってわいた、これはきっと、チャンス、と捉えるべきなのだろう。
瞬きも忘れて相手を見つめる眼差しを、再び頭上へ向ける。

ゆらゆら、ゆらゆら、揺れる蜘蛛の糸にも似たかすかな希望。
けれど―――――)

……そこはむしろ、売り払う、って言われた方が安心できるなぁ。

(閉じ込められる場所が、家から男の棲み処に変わるだけ、だとか、
そんな可能性もついつい考えてしまう。
―――――ああ、でも、だとしても。

そんなこんなで迷っているうち、扉の向こうから声が聞こえた。
従者がそろそろ痺れを切らしたものらしい。
――――その声に追い立てられるように、なかば反射的に、
男の手に取り縋ってしまおうとする。
それなりに重要なはずの選択をこんなかたちでしてしまえば、
もしかするとすぐに、後悔することになるのかもしれないけれど)

アシュトン > 「順序で言えば、ある程度は身に着けてから、実戦で鍛えたって形だが。
はは、そういう事だ。マトモな用途で必要になる技術じゃぁないからね」

(別段聞いたからって、今すぐどうこうなる話じゃないが。
とは言え、知らない方が身のためなのな確かだろう。好奇心はネコをも殺すという。
なにが巡り巡って、自分を追い詰めるか分からない。なら、いっそ無知な方が良い事も多いのだ)

「そうじゃなけりゃ、この状況でわざわざ声なんてかけていないさ。
ただ見張りもいるんでな、万が一を考えれば此方の方が都合がよかったって訳だ」

(もう一度、扉の方を示した。バレずに誘拐することも、可能ではあっただろうが。
もしバレた場合、館の警備が濃くなるのは間違いがない。そして、今ここにいる理由はそもそも下見である。
二兎を追った結果が、今のやりとりなのだ)

ん~?そうだな。
一晩犯して、あとは平民区に解放してやる。後は自由にするといい。
先立つモノがないなら、目途がつくまで俺の家でかくまってもいいが。その場合、滞在期間中は君の身体を好きにさせてもらう。それ位かな。
仕事柄、契約や約束はしっかりと守ってやるよ。

(この言葉にウソはない。そもそも、彼女自身が屋敷の中ではなく、その外に居る方が此方としても有り難いなのだ。
そりゃぁ、屋敷の中に侵入して犯しに行く訳にもいかないので。
そんなやりとりをしている間に、どうやら外が騒がしくなりはじめた。扉を開き、中へとやってくるのもそう先にはならないだろう)

これは、交渉成立、ととってもいいのかな。
それじゃ、来る前に失礼させてもらうか。
流石にお手手繋いでじゃ難しいんでね、ちょっと、待てよ

(扉をノックする音が聞こえ始めた頃合いにて。
相手の手を引くと引き寄せ、ぐいっと持ち上げればそのままお姫様抱っこの姿勢にて)

跳ねるぞ、堕ちないようにな

(飛ぶのではなく、跳ねる。
ややと勢いを付けるように前へと大きく踏み出せば、地面を蹴り出し。
二人分の重さとなれば跳躍距離もたかが知れてはいるのだが――落ちない。
ナニカを足場にしているよう、いや、文字通り足場を作っている。魔術の透明な足場を掛かりにして、空中を何度も折り返し。
気付けば天井と、そしてワイヤーの繋がった出入り口まで、近づいてきて――)

(その後は、勿論と言うべきか。隠れ家の一つに連れ込まれて、その身を犯されるハメになる訳だが。
代わりに、少なくともある程度の自由は、手に入れる事が出来た筈だ)

リュシー > (―――あ、やっぱり聞かなくて正解だった。

そうでなくとも怪しいところばかり目につく相手ではあるが、
怪しい、程度で留めておけるなら、真相など知らずにいたほうがいいに決まっている。
たとえば、こっそりこんな夜更けに、忍び込んできた理由だとか―――
すくなくとも、ここは実家ではないのだし、素知らぬふりをしておこう。

―――――と、いうわけで。
反射的に縋りついてしまったことを、次の瞬間には激しく後悔したくなるような条件についても、
あえて、大半の部分を聞き流しておくことにした。)

……滞在、する気はない、から。
それだけは絶対、――――― へ、ぁ……!?

(油断したつもりはなかったけれど、お姫様抱っこ、は完全にノーマークだった。
すっとんきょうな声をあげてしまいそうになって、あわてて口もとを手で押さえ)

ちょ、この体勢はちょっと、………は、はね、る?
って、――――― っっっ、っ………!!

(ソレは人間が、すくなくとも普通の人間が、とれる移動手段ではないような。
しかし、問答している時間がないのも事実であり―――むしろこの体勢だけで、
見とがめられれば確実に、家での窮屈度が増してしまうだろう。
ならば、もう、こうするより他になかった。

ぎゅう、と両手で男の胸元へしがみつき、きつく目を瞑ってくちびるを噛む。
男の取った「方法」は、あんのじょう、ふつうの人間に出来るものではなかったけれど、
見ていなければやりすごせる、やりすごしてしまいたい。
とにかく今は、窮屈な現状から逃れられれば―――――と。

苛立ちを隠しもしない従者が荒々しく扉を開くころ、
聖堂の中はがらんとして静まり返っており。
「バーゼル公爵令嬢」の姿は、もちろん、どこにもなかった、とか―――――。)

ご案内:「王都マグメール 富裕地区/小さな教会」からリュシーさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/小さな教会」からアシュトンさんが去りました。