2018/05/01 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 貴族邸宅」にリーセロットさんが現れました。
リーセロット > 無限にも感じられる退屈な時間を肉欲で埋めようとする貴族は多い。
今宵、そんな貴族の1人から招待を受け、ブロンクホルスト家の令嬢は
複数人の男女が交じり合う淫宴に出席していた。
薄暗い部屋にこもる淫臭、熱気。
それは主催者の望んだものだろうが、少々狂気じみてもいた。
それもそのはず。人間に紛れた夢魔の少女が触れた人々に媚毒を注入し、
場の興奮を異様なほどに上げていたのだから。

「………少し…休む時間をください」

そして頃合いを見計らい、当の夢魔は肉の交じり合いから一旦離れる。
裸身に薄布を羽織り、熱い熱い部屋を出ると思わず足がもつれた。
他のみんなを上手く使ったので自身は軽く肌を触れ合わせた程度。
けれど魔力を使い過ぎてしまったようだった。

(頭がぼーっとする…。でも今なら彼の執務室に入れるかも…)

主催者は対魔戦線に詳しい人物。
魔族の母が娘を今夜の浅ましい宴に送り込んだのは、そういう理由であった。
裸足で、乱れた髪で、肌が透けんばかりの頼りない薄布だけで、荘厳な廊下を歩く。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区 貴族邸宅」にルシアンさんが現れました。
ルシアン > ―――およそ、それは好都合だった。と言わざるを得ない。

身寄りのない子供が集まる孤児院。そこには時折、珍しい存在が紛れ込む。
希少な種。それも、保護する者も居ない存在。
「下種な考え」と黄金を腐るほど持つ者にとって、其処は良い狩場なのだ。

勿論、それを察して守る存在も又居るのだけど――今回は不埒な者が一枚上手で。
居なくなったその子供を探し、伝手を辿って探し当てた手掛かり。
とある貴族の手の内に居る――そんな、怪しい情報でも青年には乗るほかが無くて。

「………有るとすれば、此処…のはずなんだけどな…」

苛立つような声。勿論、その声量は小さい。
如何なる手段か、貴族の執務室へと忍び込んだ青年。悪趣味な書き物机の中を探り、何物か書類なんかを探している。
警備は屋敷の外と確認済み。当然だ――屋敷の中はどういうわけか、目も当てられぬ惨状なのだから。
誰かが来るはずもない。来ても、気配を察して逃げられる。そんな油断。
――執務室のドアの鍵も開けたまま。誰かが来ても、部屋に入るまで気づくことは無い。それほどに焦りもある、らしい。 

リーセロット > 執務室へ辿り着くまでに2、3人は使用人とすれ違うことを想定していたのだけれど。
こういった宴が催される日は使用人も駆り出されているのか、客人への妙な配慮か、運良く誰とも出くわさなかった。

――――好調である。
このまま執務室へと忍び込み、母にとって有益な情報を得られれば褒めてもらえる。
ふらつく足取りではあったが顔色は悪くなく、さっさと仕事を済ませようとドアを開けたところ。

(………?)

簡単に開くドア。室内の物音。
主催者が宴の間にいたのは確認したし、中にいるのは別の誰かなのだろう。
彼を、この屋敷を護る誰かなのではないかと考えた少女は咄嗟にドアノブから手を引いたが―――

ガタッと、肩が扉に当たり音を立てた。
そこですぐさま踵を返し走り出せるほど回復していれば良かったのだが、
焦った少女はそのまま体勢を崩し、転ぶことを回避して廊下に膝をつく。

ルシアン > この貴族がどんな人物なのかは知らない。ただ、館の中での「宴」の様子を見たならば、
そんな事を催す人物はろくな人間ではないだろうと勝手な判断。
ならば、子供を売り買いする位はしていてもおかしくないという確信も得るわけで。

紙入れの中を探り、机の引き出しをひっくり返して。二重底にでもなってやしないかと細心の注意を払いつつ。
――ふと、耳に響く音。バネ仕掛けのように身を起こすと音の源を探そうと顔を向ける。

「……っ!」

ドアの近く、廊下へしゃがみ込むような影。人影が、一つ。
見られた―――そう判断するや否や、全力で駆け寄って。

近寄り、ぱっとその姿を見れば、薄手の衣をまとった女性。
ならば、と手を取って。力の限り、少々手荒に部屋の中へ引き込んでしまおうと。

「…危害を加えるつもりはない。静かにしていてくれれば、手荒な事もしない」

抵抗されるか、部屋の中に引き込めるかは女性次第か。
叶うなら壁に押し付け、身を寄せ身動きがとれぬようにしてみようか。
いずれにしろそんな言葉を投げながら、鋭い目で女性を見る。

リーセロット > 少女が見上げるより速く、室内の何者かが近付き引っ張られる。

「………っ…!!」

『ごめんなさい』咄嗟にそう発しようとしたのだが、生憎声にはならなかったようだった。
抵抗する力も余裕もなく、傍目には一瞬の出来事だっただろう。
少女の膝が絨毯に擦れる音だとか、肩がまた扉にぶつかった音だとか、少女が感じるより小さかったようで。
屋敷の使用人が何事かときてくれることもなく、気付けば壁と男に挟まれていた。

「…っ、はぁ、はぁ…っは………」

もともと弱っていた身体に一瞬で最高潮まで達した緊張感。
そのせいで少女の肩は上下に揺れ、呼吸が速い。
すぐに返事は出来ないが、ろくに力も入らないため抵抗の意思があるとはとられないだろう。

「だれ……だれ…、…ですか…?」

相手がここの護衛なら言い訳を考えねばと思っていたのだが、そういうわけでもない様子。
室内に引っ張られたおかげで羽織るだけだった薄布は床に落ち、裸身を晒していたが身動き出来ずそのままに。
宴の名残と緊張にしっとり汗ばむ肌が男に触れ、金色の瞳が暗闇の中、不安げにまばたく。
人一倍豊かな双乳も触れてしまうのだろうが―――体勢上、仕方ないし気にしている状況でもない。

ルシアン > その女性を首尾よく部屋に引き込むことに成功して。
誰も来ないと思っていた油断に、改めて気を引き締める。
そっと扉を閉め、小さく念じるような仕草――「幻」の術。
ドアの位置を惑わし、また自分の家の中でも思うようにたどり着けなくなる、そんな術を仕掛けた。
これで、まだ暫く誰かが来る事も、無いはずで。

「…………此処の住人じゃ、無いのか」

壁に押し付けた女性…改めて見れば、顔立ちは少女と言えるほどか。
少女の様子を伺ってみる。薄手の衣は脱げてしまっている、そんな素裸の状態。
それも幼げな表情に似合わない、豊かで色気の匂い立つような裸身――
普段であれば、青年の事、慌ててしまう所なのだろうけど…今は非常事態。
ぐっ、と表情は押し殺す。ただ、ほんの少し気恥ずかしげに視線を逸らしてしまったりはするかもしれない。

「ここで名乗ることはできない。…探し物があって、此処に来た。黙っていてくれるなら、これ以上は何もしない」

簡潔に理由だけを話す。幼くも、怯えているようにも見える少女に、まだ多少の警戒はあるのだけど。
手を汚すことはなるべく避けたい、というのも理由の一つ。
だけど、これ以上怯えさせて叫ばれでもすれば、それこそご破算である。
なるべく穏やかに、声を潜めつつ囁く。壁に押し付けて居た体も離して。
…少し気まずげにしつつ、まとっていたマントの留め金を外し、少女の身体へと。

「…これを。その…すまない事をした」

よく見なくても、とびきりの美少女である。目の保養というか、目の毒というか。
ポケットから布切れを出し、口の周りに巻いて簡易の覆面。とはいえ素顔はちらちら覗いてしまうだろうか。

リーセロット > 男の言葉は少女にしてみればお互いさまであった。
ここの関係者ではないことが知れ、大人しくしていれば危害を加えられることがないと思えば呼吸は次第に整ってくる。
当然、彼がどこの何者かを知りたくないはずはないのだが、勿論さらに訊ねるほど平和ボケはしていない。

「……言いません…誰にも」

そもそも言えた立場ではない。
お互いの言葉を何割信じるかは難しいところだが、距離が離れれば ほっ、と初めて安堵の息を吐いた。
そして余裕が僅かばかり生まれて気付く。自分の格好に。

「――――あっ…ぁ、あ…ありがとうございます…」

彼のマントに肌が覆われ、隠れる。
膨らんだ胸元は白い肌が黒いマントの隙間から覗くこととなろうが、素っ裸よりマシである。
下着も穿いていないため、太腿を重ね合わせるようにして今さらながら頬を染めた。
先ほどまでの緊張やら何やらの汗とは違う、羞恥の熱で顔が熱かった。

「…………」

口元を隠されたので貌の全容は分からないが、目許にはどことなく異国めいた雰囲気がある。
『何か盗むおつもですか?』と口をついて出そうになったが詮索はしない約束なので。

「――――見ませんから…その……」

どうぞ、引き続き盗みをなさってくださいとは言えないものの。
部屋の隅っこで借りたマントに包まれた少女はゆっくり、目を閉じる。
どうせ自分も悪さをするつもりできたのだから、彼を咎めることは出来ない、しない。

ルシアン > 「……………」

さて、どうしたものだろう。正直な所、困惑している。
「こんな場所」で、「こんな催し」の最中に、「こんな格好」で出歩いていた少女。
だとしたら当然、相応に如何わしい類の者だろう。そんな事も思っていた。
言葉だって、どの程度信用できるのか。「騙す事」にかけては自分だってそれなりの見識がある。
弱い見た目と頼りない雰囲気の、その裏で舌を出す。女にはそんな一面だってあると、知っても居るのだけど。

「……………え?」

見ない、と言って目を閉じる少女。まさか――自分は見ないから、目当ての物を探してください。とでも言っているつもりなんだろうか?
思わず、間の抜けた声を出し…そして。

「…ふふっ。あー…まさかとは思うけど、君も…僕と似たようなクチ、だったりするの?」

思わず、小さく噴き出した。こんなことを言う子が人を騙せるわけがない。
何となくそんな気がした。自分の直観である。
しゃがみ込み、少女と目線を合わせるようにして。その金色の瞳を地っと覗き込むように。
…貸したマントでも隠し切れない胸元や真っ白な素肌がちらちら見えるのは、出来る限り気にしないようにするのは大変なのだけど。

「……君が何か悪い事でもするつもりなら、手伝ってもいい。黙ってくれる借りは返さないといけないしね」

軽く笑いつつ提案を、一つ。少女が何か企みを持っているかも分からないし、乗って来るかも分からないけれど…
気まぐれと、好奇心。理由はただ、それだけで。