2017/12/14 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区の大通り」にオルティニアさんが現れました。
オルティニア > 朝と言うにはいささか遅く、昼というには少し早いそんな時間。
快晴の空にどこまでも広がる蒼に対して、店舗連なる主街路が灰色の空気を纏うのは、身を切る仲冬の寒風のためだろう。
そんな大通りにこじんまりと居を構えるカフェのオープンテラスに、紅茶を嗜む少女の姿。

スラリと伸びやかな脚線、抱きしめれば折れてしまいそうな程に華奢な腰つき、ティーカップを持ち上げる白指は妖精じみた繊細さ。
長い睫毛に飾られた切れ長の双眸と、森の湖面を思わせる澄んだ翠瞳の煌めき、形よく整った小鼻と可憐な桜唇が形作る容貌は、傲慢そうな気配を加味しても美少女と呼ぶに相応しい代物で、特徴的な長耳を見ずとも彼女がエルフであることを知らしめていた。

少女の周囲は盟友たる精霊達の働きにて、小春日の暖かさを保ってはいるのだけれど、傍から見れば寒々しい事この上ない。
テーブル中央に鎮座するティースタンド上、一人ではとても食べ切れぬであろうサンドイッチとスイーツの物量が、その印象をますます強めていた。
空席だらけの外席にて、ぽつんと一人きりの少女の姿は、柔らかな白頬に頬杖を付き、物憂げに視線を落として溜息を付く所作と併せて酷く儚げに見えるかも知れない。

オルティニア > そんな淋しげな美少女に声を掛けようとした者は一人や二人ではない。
しかし、紅茶に沈んだティースプーンを手持ち無沙汰に弄び、往来激しい主街路へと流し目を向けるその姿は、若くして人生に倦んだ王侯貴族の退廃さえ漂わせ、エルフ族の纏う神秘的なイメージと共に軽薄な声掛けを拒んでいるのである。

―――と、外から見たエルフ娘は概ねそういった印象、なのだが…


「―――ヒマ。 ……ヒマだわ。何か面白いことでもないかしら。」

実際の所はこの有様。
ちょっと油断をすれば、スプーンを咥えてぴこぴこ動かしかねない。
オーガ退治で予想以上の報酬を得、今日のブランチはちょっと豪華にするわ! とお高いティーセットを注文したのはいいものの、本来それは一人で楽しむ代物ではない。
紅茶と軽食の味に定評のある店だけあって、たしかに美味しくはあるのだけれど、この生臭エルフ、生粋の肉食獣なので肉分控えめな軽食に早くも飽いてしまったのである。
少し時間をおけば、また食べたくもなるだろうし、それまでの暇つぶしとしての話し相手、もしくは何か面白そうな出来事でもないだろうか……なんていうのが、街路へ向けた流し目の正体なのだ。

オルティニア > 「……………………。」

小さな嘆息と共にテーブルへと視線を戻したエルフ娘。
ピンク色の花びらの様な唇に緩く曲げた白指をあて、伏せた睫毛を震わせながら、しばしの間懊悩する。。
そして、持ち上げた翠瞳には確かな覚悟が覗いていた。

「―――ちょっと、そこのあんた! そう、あんたよ。 これ……その、あの、ね……た、食べきれなかったから、その……つ、包んでくれる……?」

出だしこそ普段通りの傲慢さを匂わせた物の、エルフらしからぬ貧乏くさい願いに気恥ずかしさを覚えたのだろう。
ついには赤い顔に困った様な上目遣いという恋する乙女の如き表情にて要望を伝える事となった。
先刻からチラチラとエルフ娘のことを気にしていたウェイターの青年は、少女の羞恥と葛藤には気付かぬまま、多少上ずった声音で了承の二つ返事を戻した。

今日はこの後、訓練所に行き剣術と弓術の鍛錬をする予定である。
その際には、きっとこのお弁当が役立つ事となるだろう。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区の大通り」からオルティニアさんが去りました。