2017/10/20 のログ
ご案内:「富裕地区外れ 小高い公園」にヴェオフラムさんが現れました。
ヴェオフラム > うろうろきょろきょろ。
曇り空が陽光を薄く差し込ませる貴族街の外れを、一匹の獣少女がうろついていた。
肩口で切られた焦茶の髪が奔放に跳ね、頭頂からぴょこんと突き出た犬耳はぴこぴこ動いて周囲の音を拾っている。
小さな顔は稚気を残した大きな瞳も愛らしく、ツンと尖った小鼻も、桜色の唇もバランスよく整っていた。
華奢な体躯は人間の娘を二回り程縮小したような小柄さで、胸もお尻も相応に控えめである。

ここしばらくの雨を店の軒下やら立木の根本でどうにか凌いできたヴェオフラムだったが、未だに腰を落ち着けられる場所は定まっていなかった。
住処を探して彷徨ううちに迷い込んだ貴族街。
衛兵に追い立てられて、今は川辺の高台に作られた公園へと入り込んでいた。
誰でも利用出来る公園とは言え、貴族街に位置するだけあってまばらな立木も茂みも共にしっかり手入れされていて、獣娘が住処にするのは難しそう。

「――――わぅ?」

そんな公園の隅、柵代わりに配置されていると思われる茂みに潜り込んだ犬娘は、葉枝の衝立の奥に古い細路を発見した。
砂利と芝生で埋もれかけの石畳は、川を見下ろす崖へと続いている。

ヴェオフラム > 幾度か瞬きを繰り返した犬娘は、何かに誘われるようにそちらに歩を進めた。
もう何年も手入れされてなさそうな路は護岸の石壁を細く削って降りていく。
端に積もった枯れ葉に滑らぬ様に気をつけつつ、下り階段のちょっとしたトンネルの薄暗さを抜ける。
一気に開けた視界の中、吹き付ける肌寒い秋風に焦茶の髪が弄ばれて、貫頭衣の裾がめくられた。
瑞々しくしなやかな太腿が、下着も無いお尻の曲線まで丸っと露出するけれど、獣少女は気にしない。
崖の石壁に張り付く様な細い通廊を更に進む―――――が、さして進まぬうちに終端へと至ってしまった。
何のために作られた通路なのか、獣娘には全くわからない。
落下防止の細い鉄柵から下方に見えるは生活用水に汚れる前の綺麗な水面。
広い川の向こう側にそびえ立つのは王城の峻厳なる城壁。
せめて雨除けのひさしでも付いていればと見上げる物の、当然そんなものがあるはずもなく……。

「…………わぅう??」

護岸堤防の石壁にぽっかり小さな穴が空いていた。
王城の明り取りくらいの大きさの、横長の穴。

ヴェオフラム > 大の大人が飛びついてもギリギリ届かないくらいの位置にあるそれも、木登り上手な犬娘にとってはどうという事もない高さ。
好奇心旺盛な少女は、手足を器用に使って石壁をよじ登り、穴の中に小さな頭部を突っ込んだ。

「―――わぅううっ!」

そこには、ちょっとした空洞があった。
大人二人がどうにかすれ違う事の出来る幅と、長身の男ならば頭が擦れそうな低い天井。
古びた石壁に囲まれているのに、どういう仕掛けなのか横壁の一部から光が入り込んでいるらしく、内部はぼんやりと明るかった。
どうやら通路の様だけど、入って少しも行かない所で天井が崩れて埋まっている。

「わふっ、わふんっ、わぅっ、わぅうううっっ!!」

興奮の声音をあげて、穴から突き出した小さなお尻と尻尾を振りたくり、強引に華奢な体躯をねじ込んでいく。
頑丈そうな石のブロックがあっさりとずれて通路内に落ち、それと共に犬娘の小さな体躯も内部へと転がり込んだ。

受け身も軽く顔をあげた犬少女が、オレンジ色の童瞳で改めて通路内を見つめる。
広さとしては物置部屋か、懲罰房かという程度。
それでも、獣娘が探し求めていた隙間としては、十分過ぎる広さである。
多少カビ臭くはあるものの、雨に濡れた道端で毛皮のマントに包まり眠っていた昨晩に比べれば全く気にならない。

―――獣少女はここに来てようやく王都での拠点を手に入れたのだった。

ご案内:「富裕地区外れ 小高い公園」からヴェオフラムさんが去りました。