2017/09/03 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/貴族の邸宅」にオデットさんが現れました。
オデット > 今宵の貴族の別邸は騒がしかった。
大広間にて行われているパーティが盛り上がりを見せているからだ。
主催者が旅篭の常連客だったため、仲居は使用人の1人のように広間の片隅にいた。
駆り出されはしたが向こうが求めるのは化かし合いの会話を
邪魔せぬ控えめな給仕であり、料理など二の次の場では手持ち無沙汰。
本来与えられた仕事ではなく、大抵―――

「休憩ですか?はい、ご用意しております。ご案内致します」

合意の上の爛れた関係を想像させる男女であったり、何か盛られたのか様子のおかしいご令嬢と
心配するフリの上手な放蕩息子だったり、それらを各部屋に案内する機会の方が多い。
不自然なまでにベッドの完備された部屋の多いこと。
貴族の交流とはこんなものなのだと呆れるばかりだ。
己の父親も似たようなものだったのかもしれない。
捨てた家のことを思えばチクリと胸が痛むが、顔には出さず案内から戻ってくると所定の壁際に立つ。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区/貴族の邸宅」にコーデルさんが現れました。
コーデル > 招待されたパーティーにやや遅れて到着したころには、すっかり盛り上がっている様子のようである。
すでにあちこちで人の言うところの邪まな催しが始まっていることに、普段の作り笑顔の口角が一段と持ちあがる。
労せずに信仰が深まるのも、自らの信ずる神の威光あってこそだろう。

「はい、ラケルナ家のコーデルです。本日はお招きいただき感謝いたします…おや」

受付に名乗り、腰の剣を預ければ、そのまま会場を歩いて見渡していく。
受付に立つ者も、法衣を纏って会場に入る人間がいることになんの違和感も覚えていないようである。
そんな爛れた認識に感謝しつつ、視線を動かしていくうち、壁際に立つ女性に目が留まった。

「その装い、温泉宿の方でしょうか?ああ失礼、私はコーデル・ラケルナと申します、以後お見知りおきを」

パーティー会場では目立つ和装に目を惹かれ、そちらへと歩み寄っていく。
その相手が女性であることも理由の一つではあったが、何より自分の関わりが薄い装いに興味が沸いたのだった。
そして、話しかけてからばつの悪そうにはにかんで自ら名乗り、胸に手を当てて礼をする。

オデット > 声をかけられた女は、一瞬『またか』とでも言いたげな貌を向けたが、
そうではなかったことに むしろ虚を突かれた様子で赤茶色の瞳をまばたかせた。
女がそうしてしまうくらい、今宵は寝所を尋ねる用件でしか声をかけられなかったのだ。
丁寧な挨拶に少し慌てるそぶりを見せると、腰を曲げてお辞儀し、それから。

「さようにございます。
 温泉宿、九頭竜の水浴び場より派遣されて参りました、オデット・マニャールと申します。
 今ご到着ですか?お好きなお料理がございましたら すぐにお持ち致します」

言っているそばから同じく旅篭より遣わされた従業員の男が、酒の入ったグラスを
いくつかトレンチに乗せて近付き、好きなものを手にしてもらうべく控えていた。
女は女で、今宵初めてまともに接客した気分になり、浮かべる微笑みには嬉々とした色さえ差し込んでいる。

コーデル > 周囲では、令嬢や娼婦などを侍らせてパーティー会場を抜けていく男女が見える。
それらを案内するのも、この場にいる女性たちの役目なのだろう。
中には自分と同じく聖職者の装いの者もいるが、飾り気の少ない恰好はかえって目立ってしまうだろう。
声をかけて、一瞬向けられかけた胡乱な視線だけで、この女性がこの催しに辟易していることは察しがついた。
そして今は虚を突かれ、慌ててお辞儀する相手には笑みを作ったまま顔を上げるのを待つ。

「実をいうと、未だ足を運んだことがなく当てずっぽうだったのですが、いずれ伺いたいものです。
ええ、只今、これは丁寧に…。神職ゆえ酒精を帯びる訳にはいきませんが、何も頂かないわけにもいきませんね。何か野菜を使った料理はありますか?」

丁寧な対応で返す女性には少し相好を崩しながら話し、その表情の変化から人となりも見えてくる。
眼鏡の奥の瞳は笑みを浮かべて細められ、柔らかい微笑を維持したまま、差し出されるグラスは丁重に断る。
それから少し考えるような素振りを見せてから、女性を見ながら所望する料理について問いかけた。

オデット > 「まぁ…。 ……失礼致しました。
 正直に申しますと…今までお会いしましたご神職の方は皆さま…その…
 お酒も女性もご存分に召し上がっているものですから…」

ウェイターに扮する同僚が軽い会釈の後、戻っていくのを見ながら女は つい驚きを露わとしてしまう。
腐敗した国において、当然のように禁忌を破る者たちばかり見ていただけに。
そしてそれをまた常識になりかけていた己を恥じて、ふと唇に手指を押し当て逡巡し。
気を取り直し、敬虔な神職である彼のために皿を取った。
会場内は立食形式となっているが、皆他のことに夢中で料理はあまり減っていない。
厨房のスタッフも暇しているのではなかろうか。

「もしお時間がありましたら厨房に言って、コーデルさまお好みのお料理をお作りすることもできますけれど…」

この会場で食事を目的にしている者がどれだけ存在するのやら。
野菜を中心とした料理は非常に少なく、とりあえずとサラダとスープを用意し、傍らのテーブルに置き。

コーデル > 「……ああ、そういうことでしたか。嘆かわしいことですが、これは私もお招きをいただいた催し、彼らを糾弾して場を台無しにはできません。
…それにしても、貴方は随分真っすぐなお方です、彼らの振る舞いに口出しできない私にはその心が眩しい」

酒を断ったことで驚く女性に、聖職者に扮する者の方がより清廉にみられる皮肉に内心で笑いを噛み殺す。
驚いた仕草を見せる女性の言葉に釣られて周囲に視線を動かせば、法衣を身に纏って憚らない者が乱痴気騒ぎに興じている。
それには悲し気な態度を繕って目を伏せながら力なく頭を振って見せて。
それから、伏せた目で相手を見つめるように顔を上げて深い笑みを湛えながら相手の性根を褒めていく。
それに嘘はない、眩しいからこそそこに快楽を添えてみたい気持ちもあった。

「ではいただきます。
…それはありがたい、これだけ美味な品物を作れる厨房は、料理がなくとも一目見たいと思っておりました、ご案内いただいてもよろしいでしょうか?…とと、これは失敬を、お手をどうぞ」

持ってこられた料理は種類も少なく、立食会のためのもので、下品にならないように気を付けてもすぐに食べ終えた。
そこで持ちかけられる申し出には、少し驚いてから頷きながら喜色を見せていく。
そして、案内を頼んだ後に、思い出したようにエスコートをするような立ち振る舞いで腕を差し出していく。
そうして女性が自身の身体に触れれば、ほんの少し、その身に淫らな情を呼び起こす程度の催淫の力を及ぼそうとするだろう。
わずかな力の行使のため、自分は女性がどうするにしても、まるで知らん顔で女性の案内を待って。