2017/07/27 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にマティアスさんが現れました。
マティアス > ――祭りと言えば、洒落た催しが必要である。

知り合いに居る劇作家の一人に請われ、個人的に依頼を請けて赴く先は富裕地区の一角。
数々の劇場が並ぶこの地域の通りに面した箇所で、準備してきた道具類を並べる。
足元には「○○の一座」と走り書きで書かれた、とても簡素な看板。
その裏面に隠れるように、色とりどりのゴルフボール台の水晶を台座の上に乗せて安定させておく。

纏うは何時ものローブ。腰には愛用する長剣。そして、顔には口元から上を隠す道化の仮面。

「……さぁ、御立合い。見ても食えなければ、聞けても喉は潤せない。けれども、ちょっとこじゃれた遊びの始まりだよ」

響かせる声は、装いにふさわしく道化めかして響く。響かせる。
両腕を振るい、如何にもという注意を道行く人々に遣りながら。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にエアルナさんが現れました。
エアルナ > そして、そのそばには。今夜の助手を決め込んだ娘が、いつもの魔法使いの使用に目元を隠す仮面をつけている。

くるん、と杖で空中に輪を描けば、幻影とは思えないような炎の輪がそこに浮かび、白狼が軽々とその輪をくぐって見せる、
いかにも楽しそうに見えれば、足を止め見物するものも少しづつ増え始めて

「はい、まずは、この輪の奏でるダンスをご覧くださいーー」

上下左右にと踊るように動き出す(幻影の)炎の輪を、ひょい、ひょいとくぐってみせる狼に、子供の歓声があがる、
ついでに白いハトたちの幻影も出して、一緒に遊ばせてみよう、にぎやかに。

マティアス > さぁ、そろそろ本番だろう。取り出す小瓶とその中に揺れる水を確かめる。
或る意味でも助手のような立ち位置でもある姿が、客寄せに幻影を手繰る様子に小さく笑う。
使うものと一つ一つを見ると、それは実際他愛のないものである。
優れた術師であれば、それこそ吐息一つで扱いかねない。しかし、ちゃんとそれを魅せるように扱えて一人前だろう。

「ついで、この光の芸をご覧あれ。此れより天に竜の絵を描いてごらんに見せましょう――、ほらっ」

口上を述べつつ、小瓶の蓋を開けて空高く中身の水を撒き上げる。
ただ、それだけならば地面に落ちるだけである。
しかし、それを左手でさりげなく組む印と共に、魔力を流せば、霧として中空に浮かんで程よく熱を持った大気を冷やす。
其れが狙いである、瓶を仕舞い、左右の手を続けざまに印を組んで術式を組み上げ、胸の前でぱんっと手を打ち鳴らす。

「いざや空より来たれ。黒き魔竜よ。かつて討たれ、夢幻と果てた姿を……照覧あれー!」

合図に呼応し、足元に置いた看板に隠れた水晶玉が色とりどりの光を放って、幾つもの光のラインを霧に投げかける。
そうすれば、霧をスクリーンに精緻な幻像を描くことができる。かつて見て、打ち倒した竜のイメージの再現。
吐き出す炎もまた、幻像。前列に並ぶ子供たちが泣いたり、驚いたりする。それもまた、愉しみのひとつ。

エアルナ > 十分に人が集まったのを見れば、杖の動き一つで幻影の炎の輪と鳩たちは撤収させる、
すぐに本番、師匠でもある青年の操る黒い魔竜が霧のスクリーンへと映し出されれば、どよめきが起き、

「竜の前の人間の大きさは、実に実に、ちいさきもの。
お見せしましょう、その場面をーー」

と。黒い竜の足元に、ちょうどあの時の光景どおり。人形のような大きさの騎士や冒険者の幻影を加えてみせる。
炎に応じて右へ左へ、よけながら攻撃する姿に、また感心したような声が上がり。

「さあさ、この竜をいかにして、討ち果たしたか?見たくば、拍手をどうぞ!」

興味をかきたてるよう声をだせば、もちろん、あがるのは拍手。

マティアス > 「然り然り。

 竜は大きく! 人は小さく! 時に千も万も生き! 常しえに生きるもの!

 だが、しかし! ――恐れることなかれ。怯えることなかれ! 人もまた強く、力を合わせて、魔の国より来たりし竜を討たん!!」


魔法を維持しつつ、頭の中に覚えたセリフをアドリブも加えながら朗々たる声で張り上げ、響かせよう。
視点を変える。竜が大きく舞い上がり、地面に急降下しては咆哮を響かせる情景をまた描き出して見せよう。
打ち合わせ通りである。当事者として居た自分たちの姿は退けつつ、騎士や冒険者たちが力を合わせて火を吐く竜を斃す。

時に飛んだり、魔法使いたちからの対空射撃で落ちて、其処に騎馬兵の突撃の槍が刺さる。

「かくして、竜は討たれ、街は守られた!」

最後は竜が首を大きく上げ、嘆きめいた声と共に地に伏せる。そのあとにぱっと弾けて、光の粒を霧のスクリーンへと映す。

エアルナ > 迫力ある竜の姿と、勇敢な騎士や冒険者の姿のリアルさにどよめく見物人達。
当然だろう、実際見ていた場面の再現なのだ。

「勇敢な騎士や冒険者に、もう一度拍手を!」

竜がはじけて消えたなら。
歓声を上げる勇士達の場面を添えて、そこに、祝福するかのように花吹雪の幻影も重ねよう。
実際花吹雪まではなかったけれど、演出、というものだ。

それから…画面を転換するはずの切り替えに向け、一面に花吹雪を舞わせ、見物人のほうまで花弁が落ちてくるような。
そんな幻影を重ねて、また、拍手をよぶ

マティアス > だが、実際どうだろうか。
魔法による幻像ではなく、精緻に作った人形やハリボテをまるで生きているように動かす芸能もあると聞く。
それらと同じく人を魅せるに足るであろうか。
記憶していたものを作り出す幻像の基礎としているだけ、多少はそれらしく見せることはできている。
結局のところ、使い方次第だ。如何に真に迫る程に迫力のあるまやかしを作れても、筋書が仕様もなければ。

しかし、多少は許されるだろうか。
如何に演じ手が拙くとも、描き出すものがその分だけ迫力と見えるものがあるのならば。

「お帰りの際には、こちらもご覧あれ。水霊や風精の舞を、ここに!」

まだ、余力はある。頭の中で思い描き、演ずるものを切り替えて魔力を走らせる。
中空に舞う光の粒が、ぱっと空に舞い上がって今度は二人の乙女の踊り手を描き出す。
緑の薄衣と、青の法衣を纏った姿。イメージの基礎となるのは、自分の旅の途中に見た異邦人の踊り子たち。

円を描く動きやしなやかに身を揺らし、躍る様は子供よりも大人にも効くであろうか、否か。

エアルナ > 街に暮らす人々の多くは、普段は町の外には出ない。
実際の竜を見たことなどないものがほとんどだろう。
だから、多少細部が違ってもきがつかないーーということはあるが、本物をもとにした迫力というのは伝わるものだ、と思う。

「精霊の輪舞には、音楽も添えましょうーーそうれっ」

それなら、と。乙女の踊りの下のほうによびだすのは、チョッキを着た白兎たちの幻影。
タンバリンを鳴らし、リズムをとる愛嬌のある姿は、こちらは子供向けな絵柄。

大人向けな踊りと、子供向けのウサギたちと、双方が効果を高めるのもまた、打ち合わせ通り。

おまけ、とばかりに白狼が空中でくるりっと一回転、などもしてみせて。

マティアス > 生憎音楽も多少は覚えはあるものの、如何せんそこまでは手が回らない。
この精緻な幻像は複数の魔法を同時に起動することで成り立っている。
戦闘時に囮にする程度ならばまだしも、このようにどこから見ても破綻のないものというのは其れなりの手間がかかる。
だから、補佐は本当に重要である。
知り合いの劇作家に時折、頼まれて演出の為の手助けをすることも遣るが、やっぱり維持は大変なのである。

「さぁ、一座のご挨拶にて。一先ずは此れにてお仕舞を」

たん、たたん。足を踏み鳴らし、拍子を振る手で刻んで幻影の踊り手を増やす。
さらに赤と茶色、白と黒と。肌の色も露な乙女の幻影を刻んで、派手に宙を乱舞させたのちに一礼をさせてゆこう。
子供好きのする擬人化された動物たちのものと、どちらかと言えば大人向けの己のものと。

嗜好も相まって、分担は出来ている。
センスも問われるが練習にはもってこいである。下手な攻撃魔法よりも、はるかに神経を遣うかもしれないのだから。