2017/07/14 のログ
スティーリア > 身長や体格を見ると一見怖そうな印象を受けるのだが、こうして言葉を交わしてみると怖さなど全然なく寧ろ紳士的に思えてくる。
支えてくれた男性の腕はがっしりと逞しく、美丈夫という言葉が似合うかもしれない。

「あっ、はい、大丈夫です。……非番?もしかして騎士の方ですか?」

ぶつかってしまったのはこちら側だというのにも関わらず気遣うような言葉まで掛けてくれるその姿に最初に抱いた怖そうなイメージは完全に払拭された。
見上げた男性が眉を顰め、嘆息した様子に少々疑問を抱いたのだが、この男性が騎士というのならば疑問は解決する。

「寧ろぶつかってしまって……、お荷物は大丈夫ですか…?」

困り顔をする男性に頭を小さくと振って大丈夫さをアピールするのだが、男性の小脇に抱えている荷物に視線を流して不安そうな顔をする。
そんなに強くぶつかったつもりはなかったけれど、もし中身が大事なものだったり高価なものだったらどうしようかと心臓はどきどきで。

ジェイコブ > 「それはよかった。ええ、街にいる間は衛兵としての活動が多いですが。私はジェイコブと言います、貴方は旅芸人の方でしょうか?」

普段から威圧的な体勢になってしまうため、大男も人当たりは気を付けていた。
話を聞こうとしただけで、子ども相手に泣かれることもしょっちゅうなためである。
そして、自分の職業に言及した女性の恰好を見て、割と煽情的で目のやり場に困るデザインに、あまり露骨にならないように視線を動かして逸らしていく。
なんとなく浮かんだ踊り子が答えであるのか微妙に断定できなかった大男は、名乗りながら曖昧な問いに逃げて返した。
土地柄娼婦なども珍しくないとはいえ、初対面でそれを問うのもはばかられるものがあったからで。

「あぁ、これは剣なんで、そうそう簡単に壊れては、店の者に文句をつけなければいけません」

女性が特に問題ないように見て取れれば、大男も安堵しながら頷いた。
手荷物について言及されると、大男は箱を軽く揺すって見せておどけたように言う。
いくら儀礼用とはいえ、頑丈に作ってもらってあるもので、多少の衝撃で壊れるものではなかった。

スティーリア > ぶつかった相手が善人な方で本当に良かったと心から安堵する。
これだけ体格が良いのに加え、騎士ならば人混みでさえなければ先程の引ったくりだってさっくりと捕まえてくれそうな気がして、長身の男性を見上げては小さく笑った。

「支えてくださって、ありがとうございました。そうなんですね、その体格ならとても頼りになりそうです。ジェイコブさん、ですね。私はスティーリアと言います。昔は旅芸人でしたけど、今はここに住んで剣舞メインの踊り子をやってます。」

男性からの自己紹介を受け、緩く笑ったままにこちらからも簡単な自己紹介を。
胸にしっかりと抱え込んでいる黒い布を僅かに解き、シャムシールの剣先を少しばかり外に出し、男性に見えるようにしては剣舞を強調してみせた。
この衣装から娼館の者かと間違われることもよくあるが、まず旅芸人かと問われたことに対して内心では少々驚きで。

「あ、そうだったんですか…。それは本当に良かったです。もし壊れてしまっていたらどうしようかと…」

男性が箱を揺する姿に心から安堵した様子で微笑んで、小さく笑い声を発す。
ばくばくだった心臓も男性の丁寧な対応に落ち着きを取り戻し、漸く少しずつ冷静さを取り戻してきて。

ジェイコブ > 「いえ、こうも身体が大きいと窮屈な人混みでは不埒者一人追いかけられません。ほぉ、剣舞ですか、あまり経験がないのですが、その剣で…一度見てみたいものですね」

見上げながら話すことになるほどの体格に、大男は苦笑しつつ、見せられた珍しい剣を見て関心したように唸る。
女性に遠慮した問いを意外と驚かれているとは露知らず、その優美な印象を持つ曲剣に視線が吸い寄せられていく。
自分にとっては単なる武器でしかない剣も、持つ者によって踊りにもなると聞かされると、ちょっとした羨望の気持ちも沸いてくるもので。
同時に、見た剣が斬るのに適しているなという考えも浮かんでしまっている自分に大男は少し自嘲気味な苦笑を漏らす。
目の前の煽情的な姿をした女性がそれを踊れば、さぞ絵になる踊り姿になるのは容易に想像できた故に、見てみたいと零したのも世辞などではなく。

「ただ…儀礼向けの少し華奢な剣なので、ひょっとすると歪んだりするかもしれませんが、遠目に気づく者もいないでしょう。…この人混みです、まだ不埒者がつけ狙っているかもしれませんね」

少し意地悪な冗談を口にする大男は、女性がだんだんと落ち着きを取り戻しているのを見て取っていた。
周囲を見て取れば、浮かれた雰囲気で歩き回る者や、書入れ時に気合を入れて商売に取り組む者などでごった返している。
そんな中に紛れ込んでいた不埒者が、まだ近くにいないとも限らず、大男は忠告めいて口にしていた。

スティーリア > 「でも一言道をあけろ!って言えばざっと道が出来るんじゃないですか?人混みなのに道をあけようとしてる人いましたよね。ありがとうございます、呼ばれればどこにでも行きますよ。このお祭りの期間中なら、また呼ばれて舞うかもしれません。」

それはぶつかる前、正面から蛇行するように歩いている長身の男性に道をあけようとしている人がちらほら見えていた。
勿論今し方の提案は冗談であり、その表情はどこか楽しげに笑みが刻まれている。
剣舞を見てみたいと言って貰えるのはそれがお世辞だったとしても嬉しいことで自然と表情が緩んでしまうのを感じながら、どこか苦笑を滲ませている男性を見上げて首を傾げてみせる。
もし時間を巻き戻すことが出来れば男性に見て貰うことが出来たのに、なんて少々残念にも思うわけだが。

「え…っ!歪んでいたらどうしよう……、確認してみてください!あぁでも私に弁償できるかどうか…。…あ、そうですよね…。また引ったくられないように、ぶつからないように気を付けます」

さらっと恐ろしいことを口にする男性に落ち着きかけていた心臓のばくばくが再来。
もし高価な物だったら平民ごときのこの身に支払えるかどうか不安しかなく、歪んでいませんようにと祈るばかり。
しかし男性の善意か、忠告を素直に受け入れては真剣な顔をして一度だけ頷いた。

ジェイコブ > 「確かに、道は開くかもしれませんが、衛兵の恰好でもないのにそんなことをすれば後でどんな誹りを受けるか…自分で催しをできるほどの地位にないのですが、噂を聞いたら是非とも」

実際、道を空ける者も少なくないため、一声で人混みを割るようなこともできそうなのは大男自身も想像できた。
しかし楽し気な笑みの女性がからかっているとわかれば、釣られるように大男も口角を持ち上げていく。
大男に、自分で宴を開くだけの地位と財力はないが、女性が様々な場所で踊るということを聞かされて、それならば警備の時以外にもチャンスがあるかもしれないと考え。

「……はは、いや失礼、冗談です。作った者の腕を信頼しているので、確認するまでもないことですし…ええ、気を付けるに越したことはないでしょう。もしよければ、近くまでお送りしますが?」

単なる冗談のつもりだったが、割と深刻に受け止めてしまった女性に合わせて、しばらく真剣な顔を維持してから、結局大男は大きく噴き出してしまう。
店の紋章が刻まれた箱を撫でながら、あっけからんと笑って答えて、蓋を開けることなくそれをまた抱え直す。
周囲に気を配るように忠告した後、ふと考えてから、提案するように問いかけてみた。
路上の立ち話でしかない相手の話をもう少し聞いていたいという考えもあったが、何より治安がいい場所でも何かがないとは言い切れないのは、それの警備に携わっている故の発想だった。

スティーリア > 「…あ、そうですよね。でも一度見てみたいです、道がざっと開くところ。はい、機会があれば是非。楽しみにしています」

男性の言うことは納得できるもので、厳しい世界ならば尚更だと思うものの正直な気持ちもついでに吐露。
釣られてか、男性の口角が上がるところを見ては段々と表情が緩んでいき、いつか剣舞を見て貰える日が来ることを心待ちに。
それがいつになるかは分からないけれど、そのいつかが来ればいいと心の中でこっそりと思った。

「……冗談、ですか?本当に不安になったのに…。え、いいんですか?私の家、平民地区の端っこのほうなのでそこそこ距離があるんですけど…」

男性は真剣な顔をしていたかと思えば噴き出す様子にこちらは少々拗ねた顔。
心臓ばくばくするほどに不安になったのだが、歪んでいるかを確認しない辺り作り主との信頼関係が感じられる。
箱を抱え直す男性からの提案には最初は目を丸くさせ、この提案に乗ってしまいたい気持ちもあるのだがよくよく考えてみれば初対面の人物にそこまでして貰うのはいかがなものかと考え直して。
確かにこの長身の男性がいれば先程のような引ったくりにも遭わないだろう、という確信もあり、男性の様子を窺うようにして下からじっと視線を向ける。

ジェイコブ > 「はは、そんな見世物になるほど大したこともないでしょうけれど、衛兵として仕事が絡むなら辞さない時もあるかと」

一声で人をかき分けることなく分けるのは、非常事態には役に立ちそうだとぼんやりと大男は考える。
自発的にはやることはなさそうだと苦笑しながら、大男の思考が向くのは相手の剣舞の様子だった。
振り回すことしかできない剣で、踊りを舞う姿は自分と対極にあって興味を掻き立てられる。

「これは少し冗談が過ぎましたね、壊れない自信があったのでつい、いやはや申し訳ない。お詫びも兼ねてですし、それぐらいならいつも歩くのと同じぐらいです」

拗ねてしまった相手には、ちょっと調子に乗り過ぎたと反省した大男は、頭を掻きながら頭を下げた。
そして目を丸くしている女性に、たしかにちょっといきなり過ぎたかと内省するものの、ひとまずはその答えを待つ。
そして確認するように問われた言葉には、何度か頷きながら快諾した。
じっと向けられる視線に見上げられると、下手な下心なら見透かされていたような気もする。
送り狼のつもりはなかったとはいえ、そう取られてもおかしくない提案で、女性の天秤がどう傾くかを待っていた。

スティーリア > 「そうですか?一声でざっと道が開いたら、私だったらテンション上がりますよ。もし挑戦して成功したら教えてくださいね」

人混みが割れる、なんて中々見れる光景ではないし見世物と言ってしまっては申し訳ないけれど凄い光景になりそうだと今は想像の中だけで楽しむことにする。
今更ながら出しっ放しにしていた剣先を再度黒い布でぐるぐる巻きに包み、しっかりと胸に抱え込んでは満足げに頷き一つ。

「…許します。………そうですか?なら、是非お願いします」

大柄な男性か頭を下げて謝罪する姿は当たり前だが見慣れず、ついつい頭をまじまじと見つめてしまった。
騎士という職業に就いているというのにこんな簡単に頭を下げていいものなのかという思いも勿論あるのだが、丁寧な物腰に好感度は上がる。
今し方のお詫びだなんて申し訳なさを感じるのだけれど、こうしている会話が楽しいのもあり、男性と一緒ならば被害に遭う心配もなさそうであり、頭を下げて提案に乗る旨を伝えて。

「…あ、でもどこかに立ち寄る予定はなかったんですか?」

もし何かしらの予定を控えていたのならばやはり申し訳ないと、首を傾げながら確認を。

ジェイコブ > 「しかし圧力で道を空けなければいけない人たちはたまったものではないでしょう、せっかくの祭を台無しにしたくありませんし」

光景としてのインパクトはあれども、この場でするべきでないという考えは共通できていたとわかり、大男もホッとしてから、切っ先を仕舞う女性にはあっと気づいた表情を浮かべる。
衛兵に見咎められれば、注意の一つもするべきことだが、非番であるためかその辺りは気が抜けていたと男は思う。
鍛冶にからかわれた言葉も、冗談で済まないのはよくないと少し気を取り直していくことにした。

「それはよかった。ええ、道を空けることはできませんが、不埒な輩が近寄ることはないでしょう」

非番ということもあって、騎士然とした四角四角な対応は、必要もないことからこそ素で振る舞える。
元々体面を気にする質でもないことも、女性の考えている以上に簡単に頭を下げられる理由でもある。
女性の承諾を得れば、大男は笑みを浮かべて大きくうなずいた。

「一番の用事は済ませているので問題ありませんよ…さて、平民地区の方でしたね」

家で主人の帰りを待つ飼い犬へのご馳走は、また今度にしようと考えて大男は頭を振る。
そして、相手の横に立って、家路に着く間までの護衛として歩き始めるだろう。

スティーリア > 「あ、それもそうですよね…。では、想像の中だけで楽しむことにします」

現実に見てみたい気持ちはあれど、現実的ではないことには気付いてはいた。
想像だけなら自由だろうと結論づけて男性を見上げれば、何かに気付いたかのようなあっとした顔をしており、疑問を浮かべた表情で下からじっと見つめてみる。
剣先を出しっ放しにしていたことだろうか、と内心心配になりながらも何も言わない男性から隠すように更にぎゅっと胸に抱え込んで。

「そうですね、とても頼もしいです。この人混みではぐれてもすぐ見付けられますし」

先程のような出来事に遭遇しないのは有り難いことで、本日は胸にシャムシールの他にそれなりの給金まで抱え込んでいるのだから男性の存在はとても心強く、顔が綻ぶ。
仮にはぐれてしまったとしても人混みの中でも頭が飛び出ている人物を探すのはかなり楽だろうと。
笑顔を浮かべてくれる男性を見上げたまま、釣られてにっこりと微笑んだ。

「そうですか…?ありがとうございます。では、よろしくお願いします」

男性の言い方は他にも用事があったように捉えられて、その用事よりも優先してくれたことが分かる。
やはり申し訳なく感じてしまうけれどご厚意は受け取っておこうと、申し訳ないながらも感謝を込めて深く頭を下げた。
そうして、安心できるほどの大柄な男性の隣に立ち、暫し共に家路を―――。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からジェイコブさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からスティーリアさんが去りました。