2017/07/13 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にジェイコブさんが現れました。
■ジェイコブ > 『旦那、頼まれていた剣はちゃんと間に合わせておいたぜ』
「ああ助かる、これが儀礼剣か」
街中が祭の雰囲気で明るくなっている中、大男は大通りにある店で、武具鍛冶の男と話していた。
大男が手に持っている剣は、それなりに飾り立てられた式典用の長剣であり、普段持っている物よりも細身だった。
流石に富裕地区の店であるため、その場で振り回すことはなく、重さや軽く揺すって重心を確かめていく。
『しっかしこの時期に急ぎの仕事とは、まさかアンタ儀礼用の剣を持ってなかったのか?』
「…ああ、入り用になってね。実は式典用の儀礼剣は持っていなかったんだ…とにかく助かった、急な仕事の礼だ、取っておいてくれ」
店主に、今更騎士がそんなものを買うのかと聞かれれば、大男はその通りだと少しばつの悪そうな表情で頭を掻く。
剣は木のケースに収められて、それを小脇に抱えながら、銀貨の入った袋を店主のテーブルの前に大男は置いていく。
『そりゃどうも。ここのところは放蕩騎士どもが慌てて注文に来るところだ。旦那もそのクチなんじゃないか?』
「全く、気が緩んでいたのかもしれないな…とにかく、また頼むかもしれない、こうも細いと折りそうだ」
お代を棚に仕舞った武具鍛冶が、ゲラゲラと笑いながら冗談めかした言葉でからかってくると、大男はまたも頭を掻いて答える。
少なくとも冗談を言い合える仲で、以前から恩のある相手であるだけに、大男は苦笑しながら反論しない。
そして、礼を言ってから意趣返しのように一言を添えると、店を出て大通りを歩いていく。
祭で人が集まる雑多な雰囲気は嫌いではなく、店を見て回りながら帰ろうと大男は考えていた。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にスティーリアさんが現れました。
■スティーリア > 「え、こんなに貰って良いんですか?どうもありがとう。またお願いします。」
街中がお祭りムードとなっているその広場で、盛り上げて欲しいとの呼び出しを受けて剣舞を披露したのはつい今し方のこと。
観客の盛り上がりも上々で依頼主も随分と気に入ってくれたらしく、五日は余裕で過ごせるほどの給金をいただいてしまった。
にっこりと笑顔を向けながらお礼をし、しっかり頭を下げることも忘れずに。
シャムシールを黒い布にぐるぐる巻きに包み、貰ったばかりの給金を胸にしっかりと抱えてほくほくした気持ちでかなりの賑わいを見せている大通りを自宅へ向かって歩き始めた。
「さっすが富裕地区、給金も弾んでくれる」
上機嫌な様子を見せながらも、この賑わいに乗じて引ったくり等々の被害に遭わない為にも胸に抱え込んでいる大事なものたちは手放さないようにしっかりと。
―――なんて考えていたそばから、横からすっと伸びてきた毛むくじゃらの太い腕、手。
すぐさま引ったくりだと判断してはその手から身体をよじってかわそうとしたとき、擦れ違いざまにかなり長身の男性にぶつかりそうに―――。
■ジェイコブ > 「せっかく来たんだ、何か上等な肉でも買って帰るか…」
本来なら仕事で出入りすることの方が多いこの地区にせっかく足を運んだのだから、たまには飼い犬のためにも奮発を、と思考が巡り、大男は大通りを進んでいく。
その体格故に、多くの通行人が道を空けようとするのを苦笑しながら、大男は人を避けて蛇行気味に歩いていく。
時折、持っていない儀礼剣を買いにきたところを見られたくないと思い、周囲に視線を巡らせて同業の姿を探すが、大男にとっては幸いにも巡回をしている者は見えない。
もっともいた方がいいのだからと我ながら不謹慎な考えにまた苦笑を噛み殺しながら、目的の店を探そうと歩を進めようとする。
「おっと…失礼、大丈夫ですか?」
街を歩けば綺羅星のごとく、着飾った者たちが多く歩いており、その中で踊り子然とした女性の姿は目を引いたが、特段の注意を払っていなかった。
躓きでもしたのか、不意にこちらへと身体を寄せてくる女性に大男は驚く。
片手に剣を収めた箱を抱えているため、反射的に片腕だけが伸びてその身体を支えようとする。
もし間に合わず腕をすり抜けてしまったとしても、筋骨隆々とした大男の体躯は打ち付けられた柱のように女性を受け止めることだろう。
■スティーリア > ―――身体をよじった時、擦れ違いざまの男性にぶつかってしまった。
しかも丁寧な言葉と共に身体まで支えて貰っている状態で。
「あっ、わ、ごめんなさい!すみません!」
反射的に男性から少しばかり距離を置き、先程手が伸びてきた方向へ勢いよく顔を向けてみるも、毛むくじゃらの腕はもういなくなってしまっていた。
この賑わい、人混みなのだから仕方ないとは分かっているものの、何だか少し悔しい。
こんなに皆が楽しく騒いで賑わいでいるというのにも関わらず、悪事を働こうとする人物がいることに少々苛立ちを覚える。
煌びやかな雰囲気をなぜ壊すような真似をするのかと。
「横から手が伸びてきて…、避けようとしたらぶつかってしまいました。…すみませんでした。」
人混みの中でもずば抜けて体格の良い男性で、意識はしていなくとも向かいから歩いてくる姿はとても印象的で視界には入っていた。
再度男性のほうへ顔を向け、簡単に経緯と謝罪をしては何度か頭を下げて男性の様子を窺おうか。
■ジェイコブ > 「いや、こっちこそ少しよそ見をしていて…」
結局、身体で受け止めることになった女性を倒れないように支えるだけに留まる大男の腕は、あまり力は込めていないががっしりと野太さが見て取れる。
ぶつかった女性が、謝りながら慌てて離れようとする動きには、素直に片手を解いて。
そして何か別の方向に視線を向けていることから、不埒な輩に狙われていたのかと思い至り、大男もすぐに周囲に目を光らせるが、如何せん人通りが多すぎた。
慌てて逃げ出す背中でもあれば、追いかけようとも考えるが、どうやら完全に紛れられてしまったらしく、眉をしかめて嘆息する。
「混雑に乗じた不埒者ですか、大丈夫でしたか?……非番とはいえ捕まえて差し上げたいところですが…この人混みでは難しそうだ、申し訳ない」
何度も頭を下げる相手には鷹揚に微笑みながら、問いかけて気遣っていく。
非番であるとはいえ、衛兵としては盛り上がる祭に水を差す行いには少し渋面を作るところであったが、それが手の届く範囲にいないのは仕方がないと割り切ったのだった。
それから改めて女性へと向き直り、頭を掻きながら申し訳なさそうに困り眉になって言う。