2017/04/23 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/貴族の屋敷」にティエンファさんが現れました。
ティエンファ > 暖かな春の日差しの中、人々は貴族の庭に集い、歓談している。
王国でも有力な貴族の先代が80の誕生日だとかで、その祝いの席である。
主役の老人は品の良い紳士で、矍鑠たるものだ。 来賓に挨拶をされ、座ったままだが明るく礼の言葉を述べている。

「なんというか、こういう長閑な護衛ってのも良いもんだなあ…
 騎士や他の護衛も多いし、わざわざ狙うにしても、主賓はもう引退してるから狙う意味もあまりない」

ぱく、と薄く切られた上等なハムを摘まむ少年の姿。
帝国盛装に結い上げた髪、薄化粧した姿は艶やかともいえるが、
料理をつまみ食いする姿は悪戯小僧そのままで。
しかし、それを咎める者も特にいない。 鷹揚な雰囲気のガーデンパーティーだ。

ティエンファ > 一応酒には手を出さないが、美食を極めたと噂される先代の趣味だろう、料理がとにかく旨い。
暖かな日差しの中、広い緑の庭で歓談する貴族や王族関係者の間をゆっくりとした足取りで見回りつつ、つまみ食い。
レモンを絞った水を一口飲んで、警備の少年ものんびりと息を吐く。

「当代の主が居れば話は別だが、今日は最初に顔を出したきりで王城に戻ったらしいし
 まあ、何もなく終わってくれるだろ そうすりゃあ、危険手当抜きでも悪くない報酬だしな」

兎肉のパイを一切れ皿に摘まんで、いったん料理席から離れる。
高い壁の近く、茂みのある当たり、一団が見渡せる位置。
さくさくした上等なパイを食べながら、小さく頷く。

「今の所、怪しい影も無し、だ」

ご案内:「王都マグメール 富裕地区/貴族の屋敷」にエナーシアさんが現れました。
ティエンファ > 「それぞれ来る貴族や王族は、自分達で護衛を雇ってるわけで
 外からの雇われ警備員としては、気楽なもんだな」

ちろ、と指についた肉の脂を舐めとってから、八分目埋まった腹を撫でる。
何でこうして人の多い来賓席や料理席から離れてるのかと言うと、
…結局のところ、警備以外の問題なのだ。

「襲って来る奴より、護るやつらの視線の方が怖いや
 そりゃまあ、俺は冒険者で、帝国生まれだけど、騎士達もあんな警戒しなくて良いじゃんなあ」

貴族や王族の護衛をしている騎士からすれば、この少年こそ、異物なのだろう。
あからさまに睨みつけて、自分の警護する貴族を護るように動いたりされれば、少年も流石に閉口する。
なので、人気の少ない隅っこで、時々こうして全体を眺めるのだった。

エナーシア > 周囲の警戒と偵察終わらせて報告に戻る。
この後は私も会場での警備に入るようだ。
警備とか護衛といった仕事はどちらかといえば傭兵向けという気がするが、このぐらいの地位の連中ともなるとその程度自前で揃えられるという事か。
私のように単独行動が得意で、ついでに襲撃や危険物の設置等がないかと目端が利く人材がいくらか雇われてるようだ。
いかにもな格好をした騎士の姿や、ステレオタイプな暗殺者みたいな姿の奴も堂々とくっついているな。
あれも護衛なのか。
今日雇われたのか貴族子飼いの人間なのかは知らないが、ああいう奴らがいるなら会場に私が護衛につく必要なんかないんじゃないか?
他には、珍しいな異国人か。
あれもまさか来賓ではないな。我々の同業者だろう。
しかしいくら襲撃の危険が薄めとはいえ、どうも浮ついて見えるな。
あ、凄い露骨に睨まれてる。
流石に可哀想だろう、あの扱いは。
……同業者のよしみだ。
ちょっと挨拶でもしてくるか。

「あー……、そこの男。仕事の具合はどうだ?」

いや何がどうだ?だ。
もう少し気の利いた言葉が言えないのか私は。
とりあえず隣に立ち、会場の様子を長めながら接触を試みた。

ティエンファ > 「うん? ああ、ぼちぼちだよ 腹も膨れてる」

しかし、エナーシアの気遣いにはあっさりと、気にした様子も無く返す少年。
露な左肩から腕にかけて、牡丹と龍が乱れる刺青が刻まれた姿。
鍛えた腕や胸板は、相応の鍛錬を積んだ者だけが持つ精悍さがあった。
しかし、エナーシアに向けたのは、子供っぽい明るい笑顔。 年下だろう。

「今の所怪しい奴はいないし、主催の周りは腕利きで固めてある きな臭さもないしな
 …そっちも同業者って感じかな、お姉さん 俺はティエンファ、冒険者だよ」

言ってからエナーシアの服装を眺めて、頷く。

「ギルドで見かけたことがある気がするな」

エナーシア > なんだ大分余裕そうだな。
確かにあのぐらいの嫌がらせでいちいち気落ちしていたらこの手の仕事は務まらないのだが。
見たところ少年、という程ではないが歳の割によく鍛えているといった感じだな。
浮ついて見えたのも余裕の現れだろうか。
しかしこの、異国人のファッションセンスというものはよく分からないな。
何せ自分の服装でさえ頓着が薄い。
彼の服装が良いのか悪いのか全く判断が出来ない。
……あまり、触れずにそっとしておくのが無難だな。
私の方はといえば、金属製の胸当てと脛当て、関節等には革製のプロテクターを身に着けた一応の戦闘仕様。
装甲の下は、丈夫な繊維で編まれた戦闘用の補強がされた服で覆っている。
とはいえ本格的な戦闘よりも身軽さを損なわない事を重視しているので、そこいらの騎士の得物で斬りつけられれば気休め程度の効果しかないだろうな。

「ティエンファか。私はエナーシア。エナでいいよ」

必要最低限の自己紹介。
そういえばちょっと励ましてやるつもりだったというのに、この対応は素っ気なさすぎたか……。
ティエンファの視線が私の服に向く。
……まあ、鎧姿とはいえこのいでたちでは男にじろじろと見られるのも仕方ないか。

「……ギルドは、よく出入りしているのでね。君も普段からその格好なら、覚えていないはずがないんだが」

記憶を探り、面識があったか思い出そうとする。
まあ一方的に知られている事も少なくない業界ではあるが……。

ティエンファ > 軽装ながら防具をちゃんと身に着けたエナーシアに対し、少年の服装は布地のみ。
腰に剣も無ければ、暗器を隠すような場所もないように見える。
余裕なのか舐めているのかは、出会ったばかりでは判らないだろうけれど。

「エナさんか、よろしく頼むよ 知らない奴ばっかりで緊張してたんだ」

そんな事を言ってから、エナーシアの問いかけに目を瞬かせ、それから吹きだした。

「普段からこんな格好じゃあ、男娼と間違えられちまうよ
 もっと気楽な格好で動いてるから、まあ、見かけても分かんないかもな」

呵々と明るく笑いながらそんな事を言う。
そして、飲み干したグラスを揺らせば、ふと視線を庭の入り口に向けた。
その目は鋭く、見やるのは、今は行ってきた貴族の一団。

「エナさん、お仕事っぽいぜ」

言いながら歩き出す。 貴族の一団は、別に特に暴れていると言う事は無いのだけれど。

エナーシア > ティエンファの説明は確かに腑に落ちるものだ。
組んで仕事でもしない限り出で立ちが変わってしまえば認識できなくても無理はない。
たしかに男娼やらはこれに近い格好はしているが、別にいつもその格好でもいいと私は思うのだが。
だがそれを言う間もなく、ティエンファの気配が変化した。

「……何か起きたのか?」

貴族の一団に向かって歩き出したティエンファに続く。
事が起きる前に武器に手をかける訳にはいかないが、いつでも抜剣して応戦出来る構えだ。

ティエンファ > 「うんにゃ、まだ起きてない 多分、これから起きる」

そんな事を言いながら、しかし様子は先程と変わらないのんびりした振る舞い。
途中で、ハムの乗った皿を取ってつまみ食いしつつ。
向かう先にいる貴族の一団は、主催の座る席に近づいている。
着飾っているし、振舞も優美で違和感はない。

「エナさん、右からー…そうだなあ、俺が合図したら、とにかくあの騎士に切りかかって」

そんな物騒な事を言いながら、ハムを飲み込む。
主催が座る席、壇上に近づいた貴族風の男。 そちらに顔を向けた老紳士は、不思議そうな顔をする。

「…今っ!」

声をあげた瞬間、持っていた皿を投げつける。
フリスビーのように飛んだ皿は、真っ直ぐに貴族風の男の顔にぶつかり、割れる。
あたりにいた貴婦人が驚きの声をあげる間に、少年は駆け出していた。
突然の奇行に、周りの護衛が騒めき、剣を抜く。

エナーシアは少年の指示に従っても良いし、凶行に及んだ少年を止めても良い。

エナーシア > 「何だと、正気か?」

ティエンファも何か考えがあっての事だろうが、あまりにも判断材料と時間が少なすぎる。
こういう時は最悪の事態を想定しそれを防ぐために動くべきだ。
動揺と焦りを抑え、冷静に思考する。
最悪なのは、このティエンファが別で雇われた襲撃者で冒険者として潜り込んでいたという場合。
彼の言うように騎士に切りかかれば、まんまと口車に乗って襲撃の片棒を担いだ間抜けという事になるな。
やはりティエンファを止めるべき……、いや待て。
ティエンファが襲撃者でなかった場合、あの騎士達は主催者を襲える位置にいる。
最悪を考えるのなら、そっちだ。
もしティエンファの方が襲撃者だったとしてもすぐさま私が応戦出来る位置だし、少しでも時間を稼げばこの護衛の数だ。
後は彼らが何とかしてくれるだろう。

「いいさ、乗ってやる!」

しかし文字通り斬りつけるというのも、騎士相手にこの短剣は心もとないな。
それならいっそ……。
やる事を決めてからは迷ってはいけない。
一気に騎士の元へと駆けていき、その腕を取ると絡め取りへし折る。
……流石に折れるという程まではいかなかったが、暫くは激痛でまともに武器は握れまい。
さて、この間にティエンファはどうなっているのか……。

ティエンファ > 「正気さ ま、失敗したら全力で逃げよう」

不安になる一言を返してから、少年は皿を投げ、それに追いすがるように駆け出した。
その動きは滑らかで、隅っこでのんびりしていた時の暢気さは欠片も無く。
屋敷の護衛の騎士達が剣を振り上げ、少年に振り下ろす。 それをするりと搔い潜って、飛び上がる姿。
割れた皿で目をやられたか、貴族風の男は慌てて手に握っていたものを振り上げる。
それは、短剣。 刀身は紫色に塗らりと輝く。 …毒だ!

飛び上がった少年を狙い、貴族風の男の後ろに控えていた騎士が少年に向けて剣を振るう。
しかし、その腕を取るエナーシア、みしり、と騎士の腕が悲鳴を上げる。

「ありがとよ、エナさん!!」

声を放ちながら、貴族風の男…いや、襲撃者に躍りかかる少年。
その男が短剣を主賓の労基族に振り下ろす寸前、その腕を蹴り飛ばす。
そして、地に降り立った瞬間に身を捻り、その男の胴に肘を埋めた。

水の詰まった革袋を叩いたような鈍い音。 ぐう、と呻いて膝から崩れ落ちる襲撃者。 一撃であった。
遅れ、少年を止めようとした騎士達が状況に気付き、一団を取り囲んで捕縛した。

老紳士を背に庇いながら、エナーシアに向けた表情は、一瞬見せた鋭さはどこへやら、
明るく笑って見せながら、地面に刺さったナイフを取り上げて、手近な机のナプキンで包んだ。

「いやー、助かったぜエナさん! 信じて貰えなかったら、俺あのまま切り倒されてた!」

エナーシア > 「別にお前を信じた訳じゃない。最善を選択しただけだ」

元よりろくに素性も知らないティエンファの人柄を勘定には入れてない。
私は想定しうる最悪を避けるための選択を重ねただけに過ぎないのだ。
だが正直なところ冷や冷やしたぞ。

「あれだけ堂々としていると案外気づかれないものなのだな……。危なかった。
しかし、よく偽装に気づいたな?」

そうだ、他の警備や見張りすら見落とした事なのに一体どういうカラクリでティエンファは襲撃者に気づいたのか……。
警戒を解かぬまま、ティエンファに問いかける。

ティエンファ > 「そうかい、それでも動いてくれたのが嬉しいよ だから、ありがと」

素っ気ないエナーシアの様子に軽い笑顔で返して、ナイフを貴族付きの騎士に手渡す。
先程まで胡乱な目を少年に向けていた騎士が、なんとも気まずそうな表情でそれを受け取る。
そんな様子を見て、少年は騎士の腕を軽く叩いて気安く笑った。

「うん? ああ、あれだよ 貴族なのに靴が汚れてた」

あっさりと理由を返した。 それだけ?と思わず声をあげた老紳士に顔を向ければ、頷いて頬を掻く。

「だってほら、貴族同士なら絶対舐められないように、ばっちりきっちりキメて来るだろ?
 それなのに靴が汚れてるなんてありえないし、ましてや、爺さん、昔は偉かったんだろ?
 そんな相手に挨拶するのに、隙なんて作る奴はいない 靴紐を緩めてる武芸者が居ないようにな」

有力貴族の老人に気安く言葉を返して、壇上から降りる。 エナーシアに首を傾げて。

「あとはー… うん、それ位だな 強いて他の理由を挙げるなら、俺の勘?」

エナーシア > 「……そうか」

頷きながら説明を聞き、最後に短くそう答える。
ティエンファの種明かしを聞けば、何という事はない。
だがそれだけを根拠にあんな危険な橋を渡ったというのか、私は……。
結果的に無事だったから良かったものの、うっかり処刑されてた可能性も十分あるぞ。
今更ながら背筋が寒くなる思いだ。

「とりあえず、後処理はこいつらがやってくれるだろう。我々は警戒に戻るぞ。
これで襲撃が終わりとは限らないからな」

そうだ、襲撃が一度に一回と決まっている訳ではない。
むしろこれを陽動として続けて本命の暗殺者でも送り込まれててもおかしくないのだ。
より一掃の警戒が必要だろう。

ティエンファ > 「そんな顔しないでよ、結果オーライさ」

エナーシアの表情を見れば、ちょっと眉を下げて困ったように笑った。
しかし、どうやら不信感を抱かれてしまったようなので、肩を竦めて短く謝る。

「巻き込んでごめんな はいよ、じゃあ、俺はあっちに
 一度襲撃があったんだ、後は本職が気張ってくれるさ
 そんじゃ、エナさん また何かあったらよろしく頼むよ」

そう言って、エナーシアとは別の場所に脚を向けた。
さっきとは違う意味で、他の貴族や騎士達から奇異の目を向けられているが、
相変わらずの表情で、通りすがりざま、料理の皿を一つ持って行くのであった。

エナーシア > 「ここでしくじってもつまらないからな。ああ、ではまた」

確かに危ない思いをしたが、こう謝られると申し訳ない気持ちになる。
そもそもティエンファも自分の仕事を遂行しただけだ。
色々と声をかけてやりたい思いもあるが、今は仕事中だ。
挨拶もそこそこに、お互い警備に戻る。
……今度機会があったら、改めて礼を言っておくか。
根拠はどうあれティエンファの判断は間違っていなかったし、おかげで仕事が失敗せずに済んだのは事実だ。

「しかし、色々と掴みどころのない男だな……」

良くも悪くもインパクトはあった。
もう忘れる事はないだろう。
そういえば妙な体術を使っていたが、あれもその内聞いてみよう。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区/貴族の屋敷」からティエンファさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/貴族の屋敷」からエナーシアさんが去りました。