2017/02/28 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にジアさんが現れました。
■ジア > 「うぅん、どうしようかな~?」
夕刻、様々な店が立ち並ぶ広場で、いつも通りお使いのために背負い袋を持った少年は店先にあるメニューを眺めながら歩き回る。
普段ならばそんな店をじっくりと眺めるような資金力が少年にあるはずもない。
独力で鍛造の剣を作ったとはいえ、あれから目覚しく給金や仕事が増えたわけではなかった。
「えへへ、こんなに貰ったの初めてだな~っ」
そう表情を緩ませる少年の手には、数枚の金貨が握られていた。
ただ単に、今日の使いで向かった先で、貴族に気に入られてチップを弾んでもらっただけのことだった。
すっかり浮かれた少年は、鍛造の剣を作って増えた赤字のことなどころりと忘れ、普段ならば近づくこともはばかられるような店の商品を堂々と見つめる。
見たこともない焼き菓子から鼻腔を擽る甘い匂いが香ってくると、それを目いっぱい吸い込んで笑顔で皮算用をして、何を食べようかと落ち着きなく身体を揺らしていた。
■ジア > 「……あ、これください!」
しばしうろついた末、目についたのは以前に見たことがある、シュークリーム?とか言う名前だったような焼き菓子だった。
近づいていくとカスタードの甘い香りが漂ってくるため、きっとそうだと確信した少年はそのカフェまで小走りで向かう。
そして、店員にニコニコと笑いかけながらそのお菓子が袋に詰めてあるものを指さして注文し、普段なら仰天しただろう金額にも金貨で払う。
そして受け取った袋を大事そうに胸の前で抱えながら、広場に設置されたベンチにちょこんと腰を下ろし。
「ふふっ、いただきま~す……あれ?」
そして、袋から取り出した焼き菓子をぱくりと一口で頬張った少年は、そのサクサクとした歯ごたえに少し首をかしげた。
たしか、前見たときは食べた瞬間零れそうなぐらいのカスタードが溢れていた気がしたが、これはそもそも中身がなく、生地全体からカスタードの香りと甘さが舌へと溶け出すようだった。
「ま、おいしいからいっか」
しかしちゃんと甘いものであることに変わりはなく、少年は呑気に笑いながらお茶もなしにぱくぱくとその変わった焼き菓子を口に運んでいく。
■ジア > 「あれ、もうなくなっちゃった…」
そうやってしばらく焼き菓子に舌鼓を打っていた少年は、袋の中に手を突っ込んでも何もないことに気が付く。
結局喉が渇くことも忘れてあっという間に全て食べつくしてしまったのだった。
指にくっついている欠片を名残惜しそうに舐めながら、少年はくしゃくしゃと紙袋を纏めていく。
「ホントは残そうと思ってたんだけど…ま、いっか」
そこそこ日持ちもしそうなお菓子であっただけに、全て勢いのままに食べ切ってしまうのは不覚だったと後悔する少年は、さっぱりそれを諦める。
そして、背負い袋を担ぎ直しながら、帰路についていった。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からジアさんが去りました。