2016/12/09 のログ
《鋳薔薇卿》 > ふん、と花を…いや鼻を鳴らしたような音がした。
だが、そういう器官は見当たらない、声と音だけが聞こえてくる。

『そうかね。まあ、そこらに売られている花は喋らぬだろうな。
我はわけあって肉体を失い、この姿だが。
……其方から歩いてきたようだが、何か通りの向こうに用事があったのではないのか。
供もつけずにウロウロしておると、この地区とはいえろくなことにならんぞ』

花が周囲を見回すように左右に揺れる。
相手はどこぞの令嬢らしき衣装、富裕地区にいるのはいいが近くに従者などは見られない。

アラミル > そんな音も出せるんだ、と鼻を鳴らす薔薇に呟いて
話しながらも、これは食べられないなぁ、と判断して

「元々は、花じゃなかったんだ…。ぁ…」

くぅー、とお腹が鳴るがぶんぶんと頭を振って。…ごはんは欲しいが昨夜でほんの少しはお腹は満たされている。ならば…

「……ちょっと、探してる…こと?、…もの…?があって。……ろくなことじゃないこと、もわたしはすき、だけど」

自分でも目的を達成する手段はよくわかっていないため疑問符が混ざって
後に呟いた言葉は果たしてどういった意味か

《鋳薔薇卿》 > 『そうよ、もう扱いには慣れたが。これはこれでやりようもある。
この姿にもかかわらず仕事もあるしな』

少女が話す最中に腹の音が鳴り、気まずい沈黙がながれる。
否定するように頭を振る少女を見て、何と声をかけたらいいか一瞬ためらった。

『その……なんだ。
探し物も、腹になにか入れてからのほうが捗ると思うが。
人には言えないものかね?』

最後の方に聞こえたつぶやきは、何を意味するのか。
しかし相手はそれなりの地位にある人間だと判断しているので、
若い娘の夜遊びだろうと、勝手に推測した。

『ほう、ろくでもないことが好きと。
そう危険な真似をせずとも、娼館へ行ったりはせんのかね。
女だけでなく、男も売っているはずだぞ』

あるいはダイラスか、バフートでも観に行くとか、と。

アラミル > 「その札の…仕事…?」

と、札を指してから少女らしく、恥ずかしそうに顔を俯かせて…しかし

「………っ…!。その、ばふーとに…いきたいの。場所も、行き方も、しらないけど…」

薔薇がその都市の名前を出した途端、ば、と顔を上げて…名を出したのはちょうど薔薇も口にした悪名高い奴隷都市。そんな場所にこの令嬢のような少女がなぜ、と違和感があるだろう

「…娼館……それでも、いい…けど…お金もってない、の…」

これもまた薔薇には不思議かもしれない。かなりの価値があるであろう衣服を纏っているにもかかわらずお金を持っていないというのだから

《鋳薔薇卿》 > 『そう、この先の一画にある、魔法技術学院で魔術を教えていてな。
《鋳薔薇卿》と呼ばれている。……グリーンマン使役をはじめとした緑の魔術と、幻術くらいしかやっておらんが』

それで、とりあえずこの格好の説明がつくだろうか。

『バフートか。……一人で行くつもりならばやめておけ、案内人と財布係が必要だぞ。
いなければ金の都合つけるか、行くという誰かに頼んでみることだ。
場所は我も知っているから地図くらいなら書いてやってもいいが、一文無しではたどり着けんだろう』

しかしペンと紙は持ってないから、今すぐよこせと言われても困る。
むしろどうやって書くのか、そういう疑問を普通なら抱かれるだろうが、教職についていてそれができないということはないだろう。

アラミル > 「鋳薔薇卿……せんせー、なんだ…」

ふむふむ、とうなずいて。通ったことはないが先生という存在ぐらいはわかるようで

「…案内人と財布…。どこに行けば、見つかりやすい…とおもう…?
え、と……そんなに、遠いんだ…」

少女も紙はもっていないのかそれ以上は詰め寄らず、やめておけという言葉に少々落ち込んで

「……でも、見つけ、ないと…」

く、と少女の柔らかな手をグーの形にして握って。どうやらどうしても行きたいようだ

《鋳薔薇卿》 > どうにも重大な事情があるようだ。
探し物、はその場所で見つけるのだろうか?

『……やれやれ。我が連れていくか。
ただし今日明日中は動けぬのと、無償奉仕は御免だ、金銭でない対価をもらわねばならんが。
なに、命にかかわるものではない。それでも良いなら、引き受けよう』

何やら決意を秘めているような少女から、向き直って花瓶の中に納まる薔薇。
グリーンマンが数歩離れ、また立ち止まる。

『他にもっといい条件が見つかれば、別に我はそれでも困らんが。
あとで魔法技術学院に我の呼び名を訪ねて来い。都市そのものには入れんが、近くまで向かってやる』

アラミル > 暗い顔をしていた少女だがその言葉でぱあ、と白い花のような笑顔を浮かべて

「いい、の…?……、お金も、なにもない、けど…わたしにできることなら、する…
どうしても、いきたい、から…」

返答は明瞭なもの。よほどうれしかったようでその場で少し飛び跳ねていたり

「ううん。たぶん、誰も…あんまり私を助けたがらないと思うから…
……まほー、ぎじゅつ、がくえん…覚えた。…ありがと…鋳薔薇卿…」

花瓶の中に納まっていく薔薇にぺこ、と頭を下げて

《鋳薔薇卿》 > 本来なら、あまりあちこちの都市をウロウロして面倒事を起こしたくないが、
市内へ入らず寄るだけなら、見た目が不審でも問題はない。
そんなところへ何を探しに行くのか、少々気になるところではあるが。

『良かろう、交渉は成立だ。
では、我は用事を片づけねばならんのでな、これで帰るぞ。』

頭を下げる少女にそう言って、今度こそグリーンマンを操り歩き出す。
が、またもや立ち止まり、思い出したように尋ねた。

『そういえば訊いておらんかったな。
わからんと取次に支障が出る、名は何という?』

アラミル > 「ほんとうに、ありがとう…。条件…がんばる。」

また…今度は希望に満ちた目でぐ、と握りこぶしを作って
近いうちにまた、あなたのところを訪ねる心づもりなのであろう

「ぁ…、私は、アラミル…」

忘れてた、と付き足して、立ち止まった鋳薔薇卿に自分の名前を告げる

《鋳薔薇卿》 > 低い声が、少女の言葉を反復する。

『アラミル、だな。
では、来たら取り次ぐように伝えておく。待っているぞ』

そう言い残し、もじゃもじゃの人影が歩き去っていく。
やがてその後ろ姿が、闇に溶けるように消えた。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」から《鋳薔薇卿》さんが去りました。
アラミル > 「ん…わかった。近いうちに、いく…」

笑顔のまま、もじゃもじゃを見おくって…少女もまた、夜の闇に消えていった

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からアラミルさんが去りました。