2016/08/14 のログ
ご案内:「富裕地区 小さな教会」にドルクスさんが現れました。
ドルクス > 月明りが照らす夜
噂の聖女様とやらのご尊顔を拝見しに教会へ
不信人とか言われそうだがそんなのは気にしない

「お邪魔しまーす、聖女様?」

教会の扉を開く
中に居るのは恐らく一人、これで相手が聖女でなかったらかなり恥ずかしいが…

「へぇ、聖女ってのは噂だけじゃなかったんだ。」

物憂げな美しい少女
大きな火事から無傷で生還したと聞いたが本当に火傷の跡なんて何処にも見られない
むしろ陶磁器の様な美しい肌だ

アナスタシア > 教会、というものは須らくそうしたものだろう。
此の教会も例外では無く、普段は万人に解放されており、特別な事でも無い限り、
扉は施錠されておらず、何時でも、誰でも入って来られる。
―――ゆえ、突然の来訪者を訝しむ事も、相手が見知らぬ誰かである事に、
特段の警戒を示すことも無い、けれども。

「―――今晩は、 ……」

何か、御困り事でしょうか。

そんな決まり文句が出て来なかったのは、相手が気になる単語を連呼した所為だ。
一部の人間に、己が見世物じみた扱いをされている事もとうに知っている身としては、
振り返った瞬間の微笑を崩さなかっただけでも、上出来、といった処。

「……御祈りに、いらした…と云う、訳では、無さそう…ですね?」

異性との対面には些か心許無い夜着の胸元を、無意識に片手で掻き寄せつつ。
もう一方の手に携えた燭の火を、来訪者へと軽く掲げて。

ドルクス > 「はい今晩は、礼儀正しいねぇ流石聖女様。」

教会に足を踏み入れる
魔族としてはあまり居心地のいい場所でもないのだが、入っただけで体が燃え上がったりはしない

「生憎神様には嫌われてるからね。
それに見えない神より見える聖女、男だったら聖女なんて聞いたら是非お話ししたいとか思うでしょ?」

ね?と首傾げ
燭の火には赤い目が爛々と輝いて見えるだろう
ただそういう色で赤いだけではない瞳が

「僕はドルクス、根無し草のその日暮らしを楽しむ旅人。
良ければお名前を聞いてもいいかな聖女様?」

アナスタシア > 仄明かりの下で相対する男に抱くのは、軽妙洒脱な印象。
此の段階では、勿論飽くまでも第一印象に過ぎない、のだが。
聖堂を満たすひんやりとした空気の中に混じる、甘い香りを嗅ぎ取れるか否か。
揺れる焔に照らされた眸の色を、美しい、と感じると同時―――ほんの、少しだけ。
恐ろしい、と感じたのは、己の怯懦ゆえ、か。

「神さま、は…何方の事も、厭われる事など無い、と思いますが…、

 ―――わたくしは、アナスタシア、と申します、…ドルクス様、」

祭壇を背にして相手を迎え入れる態、軽く頭を垂れて名乗ってから、
僅かに首を左へ傾がせて。

「聖女様…と御呼びになるのは、どうか、御容赦下さいませ。
 わたくしは御覧の通り、唯の、修道女で御座いますから」

ドルクス > 「いいや、神様にも好き嫌いはあるさ。断言するね」

だからこそこうして神に嫌われた種族が存在する
神に嫌われ人に嫌われ…まぁ、それは今はいいか

「アナスタシアちゃんね、綺麗でらしい名前だ」

うんうんと頷く
美人はやはり名前の響きも綺麗だ

「そう?でも皆はそうは思ってないみたいだけどね、火のない所に何とやら~って」

ただの綺麗な修道女、それだけで聖女なんて呼ばれる事は無い
肩書には肩書なりの理由のある筈

「何でも火事で君だけ無傷だったとか?
何と言うか、不運だったね。」

怪我の一つでも負っていれば聖女と言われることもなかっただろうに

アナスタシア > 彼の眸の色に感じた僅かな違和感と、彼の物云いがかちりと填まる気がした。
断言する、とまで云われてしまえば、己は其れ以上押す事もせず、唯、気弱に微笑むのみ。
告げた名前について、御褒め頂き有難う御座います、とは、笑み交じりに呟くように。

然し。
彼が己の過去に言及すれば―――途端、己の纏う空気の温度が下がった、ような。
微笑は其の儘なれど、其れまで、声音に含まれていた柔らかさは失われて。

「―――云いたい方には、云わせておきますわ。
 わたくしの知らぬ処でどんな噂をなさろうと、わたくしには無関係ですもの、

 ―――――でも。
 面と向かって云われるのは、余り良い気分とは申せませんわね。

 確かに…わたくし一人生き残った事を、嘆いた事も御座いますけれど…
 其の御話を、世間話のように御話しするには、もう少し、時間が掛かりそうですわ」

暗に、屋敷を襲った炎の事は話したくないのだ、と伝えた心算だが、果たして伝わったかどうか。

ドルクス > 「無関係なんてつまらないなぁ、聖女なんて言われたくないならそう皆に…あぁ、もう無理か。」

聖女という名前は広まり過ぎた
それを今更消していくなんて、無理に決まっている
琴線に触れてしまったようだし話題を変えてみよう

「じゃぁ、君は何でこんな場所で教会なんて?
はっきり言えば見たくもない場所だとおもうんだけど。」

嘆いた上でそれでも尚この場所に教会を建て、修道女として留まる理由
それを問う

アナスタシア > くす、と小さく喉を鳴らして笑う。
―――やはり、親しみも暖かみも感じられぬ笑みを。

「何処でどんな噂をされているかも解りませんのに、いちいち、云って回れと仰るの?
 無理、だとか云う以前に、…此方から其処までして差し上げなければならない、理由が有りませんわね」

手にした燭はゆらゆらと、着々と燃え続けている。
ひとの手で、ひとの力で制御出来る、小さな焔を携える儘。
ぐるり、とひとわたり、聖堂の中を眺め渡してから。

「―――何故、見たくも無い場所、と決めつけられなければならないのでしょう。
 此処は、わたくしにとって大切な、家族との思い出が詰まった場所ですのに。
 確かに、……結末は、幸福とは云い難かったですけれど。
 此処以外に、わたくしの在るべき場所は…無い、とさえ思っておりますわ」

ドルクス > 「おぉ、ゾクッとするねぇアナスタシアちゃん。」

聖女のイメージで固めていたが、本人はそんなイメージで当て嵌めるべきではない
今のは聖女というより悪女といった感じの笑みだった

「結末が幸福じゃなかったから見たくもないって思ったんだよ。
これは一本取られた、君は家族の死を嘆くだけの子供でもないみたいだ。」

はは、と笑みを零す
家族との思い出は詰まった大切な場所
ある意味支えなのかもしれない
あぁ…とても面白い

「ここ以外に無い、つまりずっと君はここに居るのかな?
この教会の修道女としてずっと…君が運命の王子様を見つけるまで。」

足音と共に近付く
一歩一歩ゆっくりと

アナスタシア > ―――ふと、気づいた。

此の名前に、ちゃん、などつけて呼ばれた事は、今まで、無かったように思う。
揶揄めいた物云いは些か癇に障るが、本音をぶつけられるという意味では、決して悪くない相手。

一本取られた、などと云い出す彼に、己は緩く頭を振って。

「喪ってしまった事を嘆く事で、得る物が有ると思えないだけですわ。
 未だ若輩者である事は否定しませんけれど…―――、」

一歩。そして、また一歩。
削られる距離に怯えた、というより、娘らしい警戒心が働いた。
揺らぐ焔も其の儘に、燭を胸の前へ掲げ、一杯に伸ばした腕の長さの分だけ、
彼我の距離を確保しようとしつつ。

「……運命の王子様、なんて、探す心算は御座いません。
 わたくしはずっと此処で、…こうして、祈りを捧げて暮らすと決めたのです。

 ―――どうぞ、其れ以上此方へは。」

近づかないで欲しい。そう、笑みの余韻を消した、真摯な眼差しを向けて。

ドルクス > 「若輩者というか達観し過ぎた老人みたいな事言うね?」

こんな年若い乙女が言う事ではないだろうと思うのだが
少なくとも自分は初めて見た

「祈りを捧げる少女の元にある日悪い狼が現れました。
狼は一人の少女に襲い掛かり…」

ニタリと笑う
腕を精一杯こちらに伸ばし抵抗の意思を示す少女を見つめ、その手を…

「そうになりましたが狼は悪いなりにも紳士、寸での所で己の本能に打ち勝ちましたとさ。」

ゆっくりと降ろさせる
神の家で嫌がる修道女を~というのは流石に罰でも当たりそうだ

「アナスタシアちゃんみたいな可愛くて面白い子はあんまり見ないし、偶に遊びに来るよ。
今度はお菓子でも持ってこようか?」

トン、トンと後ろに下がる
末恐ろしいと思わせたり年相応の少女のような反応をしたり
話してみると意外と面白い
ポヤポヤした天然聖女なんかより会話も弾む

アナスタシア > 「―――…… 其れ、は。
 褒められているのでしょうか、其れとも?」

老成している、という意味であろうか、何れにせよ、褒め言葉には聞こえない気もするのだが。

あかい瞳が焔を受けて煌めく、彼の腕が伸びてくれば、反射的に身構えてしまったものの。
如何やら強引に何かをする心算では無いらしい、彼の言葉に僅か、双肩から力を抜いて。

「――― 襲い掛かろうとした処で、其の獲物が余り、
 美味しそうで無い事に気づいた、だけでは御座いませんの?」

彼が狼だとしても、己が美味なる獲物と成り得るかどうか。
かたり、背後にした祭壇の上へ、もう随分と蝋燭の短くなってしまった燭を置いて。

「…遊びに、いらっしゃる御心算なら、御菓子だけでは不足ですわ。
 是非、美味しい御茶も買っていらして下さいませ。
 御覧の通り、清貧を旨として暮らしておりますので…、

 『御寄附』は、何時でも歓迎致しますわ」

己が男であったなら、生臭坊主、とでも誹られる処か。
然し云い出したのは相手なのだから、遠慮する気は無い、とばかり。
細めた眼差しで弧を描き、向けた微笑は聖女と云うには俗っぽく、
もっと云えば悪戯好きの童女めいたもの。

ドルクス > 「ちょっと可愛げないかなって事。
まだ若いんだし暗い事ばっか言ってると生きてても楽しくなくなるよ。」

楽しんで生きろというのが無理なのか、それとも彼女なら可能か
まだ分からないがそれだけは伝えて

「それはない、少女は極上の獲物だよ。
狼さんが紳士じゃなかったら美味しく頂かれてたさ。」

美味しそうでないなんてことは一切ない
むしろ我慢したのを褒めてほしい

「は、ハハハハ
あぁ分かった分かった、お菓子に紅茶に素敵な物でも持ってくるよ。」

思わず本気で笑ってしまった
御茶どころか寄付まで向こうから言ってくるとは
ここまで正直な子は嫌いじゃない、むしろ大好きだ

「悪戯狼のお墨付きだ、君は面白い。
是非君がこれからも君のままであらん事を、神には祈らないけど君にそう祈っているよ」

ヒラヒラ手を振り教会を後に
実に気分が良い…思わぬ収穫に笑みを浮かべながら夜の街に消えていく

アナスタシア > 信仰に生きると決めた身、とは云え、うら若き乙女には違い無い。
其の己に面と向かって、可愛げが無い、まで云い放つ相手に感じたのは、
憤りよりも寧ろ、或る種の快さだった。
一瞬だけ丸く見開いた瞳を、可笑しげに撓ませて。

「御心配無く、……わたくしはわたくしである事を、其れなりに楽しんでおりますわ。

 ―――、……御冗談を。」

極上の、獲物、だなどと。
己を評する言葉とは思えなくて、軽く肩を揺らして笑った。
相手が己に対して、狼、になる事など、きっと無い、と思い込んでいる風。
―――で無ければ、寄付など求めたりはしない。
笑い乍ら諾、と応じる相手に、芝居がかった仕草で頭を垂れて。

「……御待ちしておりますわ、ドルクス様。

 わたくしは変わりません、…どうぞ、祈るよりも信じている、と仰って下さいませ。
 ……御休みなさい。」

貴方に、神の御加護が有らんことを。
―――そんな決まり文句を告げる代わりに、唯、御休みなさい、とだけ伝えよう。
相手の中の「聖女」像はきっと、跡形も無く崩れ落ちただろうが、
其の方がずっと心地良い。
去って行く彼の背を見送り、扉が閉じる音に暫し聞き入った後。
今度こそぐっすり眠れそうだ、と思いつつ、寝床へと戻って行く事に―――。

ご案内:「富裕地区 小さな教会」からドルクスさんが去りました。
ご案内:「富裕地区 小さな教会」からアナスタシアさんが去りました。