2016/05/31 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にテイアさんが現れました。
テイア > 「各員、予定通り配置に付け。」

夜の富裕地区に、物々しい雰囲気が満ちる。
王城に近い、富裕地区の中でも上位の王侯貴族の豪邸が立ち並ぶ一角。
金にものを言わせた、広い敷地、豪奢な装飾の施された一つの豪邸を騎士団の面々が取り囲む。
路地裏にまで人員は配備され、猫の子一匹逃さぬ配置。

『配置、完了しました』

全ての班から、予定通り配置が完了した旨の報告が入る。
報告を受けた女が、改めてその屋敷を見上げる。
外の騎士団の動きに気づいたのだろう、慌ただしい気配が伝わってくる。

「抜刀。戦闘用意。手向かうものは切り捨てて構わん、投降するものは速やかに捕縛せよ。――突入!」

屋敷の主が雇った私兵が、広い庭園にとぞろぞろと現れてくる。
隣に立つ騎士団長に視線を送れば、彼が頷いた。
女の突入合図と共に、頑強な門へと魔法弾が打ち込まれ爆音が上がる。
抜刀した騎士たちが、一気に中へと雪崩込んでいき戦闘が開始された。

テイア > 「混乱に乗じて逃がすなよ」

今回の騒動。漸くたどり着いた黒幕だ。
付近を固める騎士たちに念を押して、女自身も戦いに身を投じる。
既に富裕地区一帯には魔術師により、転送魔法などを阻害する結界が張り巡らされていた。

「風よ、我が行く手を遮るものを打ち砕け」

ふぉん、と刀身に風が集まり強烈な突きと共に旋風が舞起こる。
真空にまで圧縮された空気が風と共に押し出され、庭園の土をえぐる程の衝撃が走る。
手向かう私兵が、飛ばされ宙を舞い地面に叩きつけられるのを尻目に屋敷へとむけて女が駆け出した。
それに何名かの騎士が追従する。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にセイン=ディバンさんが現れました。
テイア > 『対象は、屋敷の奥へと逃走中』

耳につけた小型の通信用魔導機械から、屋敷内を索敵する魔術師から連絡が入る。

「マグメール王国聖騎士団だ。大人しく投降せよ。投降する者の命の保証はしよう。手向かう者は直ちに切り捨てる!」

ばん、と閉ざされた大きなロビーの扉が勢いよく開かれた。
物陰に隠れ、剣を振り下ろしてきた私兵の一人を切り捨てると屋敷内の人間へと、最後の警告を声高に叫んで。
警告を聞いて尚、複数の私兵が連携して斬りかかってきた。
ぐっと柄を持つ手に、力を込め瞬時に筋肉へと魔力を通わせる。
次の瞬間、幾重にも重なった見えない刃が私兵たちを襲う。
私兵の眼には、女が剣を脇に構えているだけにしか見えていない。
目にも止まらぬ速さで繰り出された剣技が、その体を細切れにしていく。
返り血すら浴びずに、佇むその様に恐れをなした私兵が戦意を喪失し武器を手放していく。
彼らの捕縛を、一緒に来た内の騎士に任せ続く騎士たちと共に階段を駆け上がり、廊下を駆け抜け屋敷の奥へと進み。

対象の立てこもる部屋へと到達する。

「ギングバート・エギン・カルネテル殿。貴殿を、軍事機密情報の漏洩、魔術鉱石及び魔導機械の密輸、――以上の罪状にて捕縛する。大人しく投降せよ!」

ほかの部屋のものよりも、頑丈に作られた扉。
ヒュン、ヒュンと不可思議な音と共に斬撃のあとが走る。
次の瞬間には、立てこもる男からバラバラになった扉の残骸と共に現れる銀髪の女が見えたか。
数々の罪状を読み上げ、投降を促す。
初老の脂肪に覆われた男。
彼こそが、此度の騒動の黒幕。カルネテル王家の流れを汲む先王のまた従兄弟に当たる男だ。
名をギングバート・エギン・カルネテル。
汚職と不正にまみれ、弱者から絞り取り甘い汁を吸う典型的な腐敗貴族。
彼らにまつわる不正の数々を暴こうとした正しきものたちを、無茶な作戦に投入し葬ろうとした者達の筆頭。


『王族に対して不敬だぞ!誰の許可をえて…ひっひぃぃ!』

「残念ながら、もう証拠も全て出揃っている。王族であれど、罪はしっかりと償ってもらうぞ。」

汚らしく唾を飛ばしながら捲し立てるのを、最後まで言わせず彼の指示に襲いかかってきた私兵をほかの騎士が切り捨てる中、切っ先を男の喉元へと突きつける。

セイン=ディバン > 宵闇に紛れ、一人の男が空を滑走する。
屋根から屋根へと身を躍らせ、目的地である屋敷へと。
そこで中を覗き込めば……。

「……うっ、げぇ~。もうあらかた片付いちゃってるじゃん」

目的地は凄まじい有様であった。新たな冒険者ギルドに移籍し、最初の仕事。
怪しい動きをしている貴族の調査、状況によっては捕縛もしくは殺害。
それをこなすために屋敷に行ってみれば、騎士団が既に踏み込んだ後であり。

「しゃ~ねぇ。とりあえずご挨拶だけしとくかな」

男は明かりに照らされた部屋の中を見つめ、小声で詠唱を始めた。

『Myself in darkness(我が身は闇)
 It will shadow creeping bias toward(這い寄る影なり)』

次の瞬間、男の姿は掻き消え、室内へと音も無く現れる。
その目的の貴族らしき男の後ろに出現した男は、喉元に剣を突きつけられる男の後頭部にごり、と散弾銃を押し付ける。

「アンタさぁ。ギングバート・エギン・カルネテル? アンタの捕縛が冒険者ギルドに。殺害がシーフギルド経由でアサシンギルドから依頼されてるんだけどさ。
 このキレーなエルフ姉ちゃんに捕まるか、ここで俺に殺されるか選びな?」

そう告げ、今度は目の前の女性へと視線を向ける。

「冒険者ギルド エデン所属。登録番号150433。
 セイン=ディバン。依頼でこの男を殺害に来た。
 ……けど、アンタはこの男を捕まえて法の裁きを食らわせたいんだろ?」

ニコリと笑いながら尋ねる。さて、この仕事のブッキング、どうしたものか?

テイア > 時を同じくして、関連する貴族の屋敷にも騎士団が踏み込んでいた。

『第12班、目標制圧。ロードレッグ卿を確保』

『第15班、現在交戦中。』

『第3~5班は15班の援護へ回れ。負傷者の回収を6班、25班が行う』

通信用の魔導機械からそれぞれの状況報告が聞こえる。団長が、それに対して指示を出している。

「第1班、ギングバート・エギン・カルネテル殿下をかく…っ!!」

こちらも、魔導機械を通じて団長へと報告をしようとした刹那。
対象の後ろに人の気配が現れる。

『ひ、ひぃぃっ!』

後頭部に散弾銃を突きつけられ、殺すとの言葉に豚のような悲鳴を王族の男が上げた。
反射的に女は、もう一本の剣を抜き身すら見えぬ速さで薙ぐと、その散弾銃の銃口を弾こうとするか。

「…ギルドからの依頼だと?面倒な。そなたのギルドへは騎士団から正式に申し入れをさせてもらう。
 此度は手をひいてはもらえぬだろうか?」

銃口を弾き、とりあえずは対象であるギングバードの命を確保する事ができたならば男へと問いかけていく。
男が銃口を弾く剣先を避け、動こうとするなら、そのまま臨戦態勢へとその場にいる全ての騎士が移行するのだろう。
この男には、生きて罪を償ってもらわなければならない。
散っていった正しき者達の命のためにも、
そう簡単に、楽に死なせてやるつもりは女にはなかった。
二色の異なる彩を放つ瞳は、冷たくまるで凍てつかせるかのように圧力をかけていくか。

セイン=ディバン > まさに戦場音楽といわんばかりの館の喧騒。次々に打ち倒される私兵の声。
時折上がる権力者の情けない悲鳴。その中、部屋の闇に溶け込むように立つ男は、その赤き瞳で女を見返す。

「まぁそうなるよなぁ。それがアンタの仕事なわけだし。
 確かに? ここでこの腐れブタを殺しても何も面白くはねぇ。
 だったら法に従い、生き地獄を見てもらうほうが愉快痛快だ」

散弾銃を弾かれれば男はそうクツクツと笑いながら言うが。
逆の手がリボルバーを貴族の後頭部に突き付け、どうしたものかと高笑いしながら言う。

「いや、コイツの身柄をアンタに渡すのはかまわないんだけどな。
 一応こっちも冒険者として名を売ってるんだ。
 仕事放棄して帰るって訳にも行かないのよ。判るだろ?」

一度は出した銃を慣れた手つきで仕舞い。相手の眼前へと指を突きつける。

「なぁアンタ。強いよな。強いだろ。
 オレと勝負しないか? オレが勝っても負けてもこの男はくれてやるよ。
 ただし、アンタが負けたら俺の慰み物になってもらおうかな」

そのくらいじゃないと割があわねぇな、と笑みを浮かべながら。
相手にそんなむちゃくちゃな提案をする。
無論、相手にこんな話を受け入れる筋合いがないのはわかったうえだ。

テイア > ぴりぴりと緊張した空気が場を支配する。
女の背後に控える騎士たちは、いつでも飛びかかれるように間合いを計り。
散弾銃の銃口を弾けば、別の銃が男の後頭部へと突きつけられる。
住を突きつけられた男は、涙と鼻水で顔をグシャグシャにしながら敷かれた絨毯に股から染みを広げていたか。
すぐにその銃口を払うこともできたが、とりあえずは話を聞いて。

「ギルドであれば、既に騎士団が動いている事くらいは掴んでいたと思うがね。
 情報不足は、そちらの落ち度だろう?」

ギルドにとって、情報はなによりも重要だ。
いかに騎士団が水面下で動いていたとしても、その情報くらいは掴んでいただろう。
先にこの王族を捕らえていたのならともかく、後から来ての言い分にやや呆れた響きが交じり。

「…いい、下がっていろ。
 別に構わんが、それでそなたに何の得があるのか分からんな。」

慰みものに、と言った途端他の騎士たちが殺気立った。
それを制して、銃口を弾いたあと男に狙いを定めていた剣を下ろすと女は、少し怪訝そうに首をかしげた。
ギルドから約束されていた報奨を補填するほうが都合がいいのではないかと。

セイン=ディバン > それまでの緊張状態とはまた様子の違う室内。
唯一、ガタガタと震える貴族だけが時折悲鳴を上げる。
男は動かず。そして、女をはじめ騎士も動かず。
じりじりと時間は流れていく。

「それを言われると弱いな。でも、こっちが掴んだ情報は、
 『突入は明日だ』って聞いてたんだけどね。随分な電光石火だ。
 あるいは、このブタが逃亡準備でもしていたのを掴んだのかな?」

まいったな、という様子で頭をかく男。確かに、依頼を受けてすぐここに来たのは間違いないのだが。
突入の情報をギルドが間違えて掴んだのかもしれない。

「……いいねいいね。ノってくれるとは思わなかった。
 とりあえず、おらよっ!!」

目の前で縮こまる貴族の尻を思い切り蹴飛ばせば、脂肪まみれの体は体形に似合わず大きく宙へ浮き。
女の後ろの騎士たちの下へと着地することになる。

「得? 決まってるだろ。自分がどれだけ強いか分かる。
 アンタみたいに強いやつと戦えば強くなれる。
 勝てればアンタの体を好きに出来る。それで十分だ。
 アンタ、名前は?」

後ろに跳び、距離を取る男。
その二人の距離はおおよそ5メートルほどか。
そのまま相手の名を聞き、男は両手を大きく広げる。
さぁ、殺りあおうぜ。とでも言うかのように。
その姿は、狂気に満ちた道化師のようであった。

テイア > 「流れる情報の中にはブラフも混じっている事は往々にしてあると思うが…。」

様々な事を想定し、慎重に騎士団は事を進めてきた。
なんせ、捕縛対象は腐っても王族だ。
この機を逃せば、捕縛の機会は再び巡ってくることはまずなかっただろう。
だからこそ、ブラフを流しそれによって慌てふためき動き出す蛆虫達を芋づる式に捕らえた今回の動き。
まさかギルドがそんなブラフに引っかかる不手際を起こしたとは。
ブラフの情報をもとに依頼を受けた男に些か同情する。

「はぁ…。いい、殿下を『丁重に』団長のもとまでお連れしろ。」

殺気立つ騎士たちを制して、尻を蹴飛ばされ悲鳴を上げながら大きく宙を舞った男。
呆れたように視線を投げると、半ば気絶している男を連行するように指示を出した。

「酔狂としかいいようがないな。
 マグメール王国聖騎士団、辺境守護部隊隊長、テイア・ルア・ルミナスだ。」

左手に持っていた剣を鞘へと収める。キィンと水晶のような刀身が澄んだ音を立て。
右手に持つ剣を改めて男へとむけて構え直すと、名乗りをあげ。
表情のない、冷たい瞳が男を捉え。

セイン=ディバン > 即時性が求められる今回の依頼。騎士団が貴族どもを一気に検挙すれば、こちらの仕事は全く無くなる。
稼ぎを求めるあまり、情報の真偽を確かめるのがやや甘かったのだろうか。
しかしいまやこの男にとってそのようなことはどうでもよかった。

「ハハハッ。じゃあ今回は騎士団の皆さんにギルドがいっぱい食わされたわけだ。
 いや、新参者のオレを試すためにわざと確認を怠ったかな?」

ゲタゲタと笑いながら、連行される肥満体と、こちらを睨みながらも部屋の外に出る騎士を見る。
その気配には、女の敗北を疑う様子は無い。
いや、むしろこの失礼な男が痛めつけられることを信じ、期待している素振りすらあった。

「……ハッ。ハハハハハハハハハハハッ!!
 アンタがあのテイア・ルア・ルミナスか!!
 戦女神!! 純白の騎士!! 戦場の白百合!! 民衆護りし姫騎士!!
 相手に不足は無いな!! ……いくぜ!!」

相手の名乗りを聞けば、壊れたような笑い。
目の前に、伝説とまで謳われた騎士がいる。
その騎士と戦える。その喜びが男を突き動かした。

男の初手は、散弾銃の抜き打ち。装填されていたスラッグ弾が射出され、一直線に相手に向かう。
そのまま相手に向かって駆け出しながら、逆の手はリボルバーを抜き。

テイア > 「ま、ギルドでも見抜けぬほどの情報戦ができたと思えばこちらとしては誇らしい所だがな。」

諜報関係の者を褒めてやらねばなるまいか、だなんて肩を竦め。
大丈夫だから、と残ろうとする騎士達も他の班の援護に向かわせる。
今も現在進行形で作戦は遂行中だ。
他の貴族も次々に捕縛され、或いは抵抗を続けている。
一人でも多くの人員が必要な今、この場に他の騎士を足止めするわけにはいかない。

「――…最後のは少し違うだろう。」

名乗りを上げれば、壊れたように笑い出す。それにすら無表情は崩れず。
しかし、最後の姫騎士というのにはツッコミをいれて。
残念ながら姫という立場に生まれた覚えはない。

散弾銃からスラッグ弾が射出される。空気の動きを、風を読み最低限の横への動きでその弾を避けると、背後で着弾した弾が大きな音を立てる。
そのまま、足に風を纏わせて、男へと間合いを詰めると腕に魔力を通わせて人の眼では到底負えぬ程の剣速と、真空の刃を交えて男を切りつけていく。

セイン=ディバン > 「騎士団も腐ったと聞いたが。どうしてなかなかやるじゃないか」

えぇ? オイ。などと気安い様子。
そのまま仲間を退かせる様子には口笛を吹きつつ。
自分の実力に自信があるのか。作戦に徹する冷静さがあるのか。
あるいはその両方か、と感心する。

「どうかな? アンタのことを知らない国民なんていないんじゃないか?
 アンタに憧れる民衆にとっちゃ、お飾りの王族よりはよっぽど姫様みたいなもんだろうよ」

相手の言葉をやんわりと否定する。目の前の騎士を称える詩。御伽噺なら事欠くまい。
その英雄と戦い、勝てるか。否。天地がひっくり返ってもありえない。
正攻法なら、だが。

「ハッハァ!!」

銃弾を回避する余裕の動きを見ながら。同時に、男は限界を超えた反応速度で横に飛ぶ。剣撃、そして真空の刃が見えたわけではない。
ことここにいたって男が頼ったのは、相手の高い実力と、自身の戦闘能力の低さ、であった。
恐らく相手の攻撃は知覚できぬ速度。攻撃自体も的確な物ばかりのはず。
ならば。相手の攻撃する挙動を先読みし、同時にかわし続けるのみ。
相手ならこうする。手練ならこうするはずだという勘。それだけが頼りだ。

「こんなのは、どうかなぁ!?」

リボルバーをめったやたらに撃ちながら、懐から爆弾を投げ、自身は地面を転がる。
投げたのは閃光弾。相手が油断でもしない限りは、弾かれてあさっての方向へと吹き飛ぶだけだろう。

テイア > 「腐った部分が全くないとは言わないが、聖騎士団の名は伊達ではないさ。さて、憧れてもらうのは嬉しい限りだが、昔から姫という柄ではなくてね。」

末端の腐敗は止められない。今回の騒動でも騎士団の上層の部分からも関係者を捕縛していた。
腐ったと聞くとの言葉は、耳が痛い。
残念ながら、それはない。と否定に、否定を重ねる。


「……。」

思わぬ方向に飛ぶ男。剣先は空を薙ぎ、けれどそれに動揺するほど未熟ではなかった。
リボルバーから放たれる銃弾を、なんなく躱す…どころか剣で打ち払えば、キン、キン、カキィンと甲高い音が響き渡る。
懐から取り出された爆弾、自身にむけて放たれたそれ。
どのような規模かは分からない。爆発した際に金属片などが飛び散る仕組みかもしれない。だから、爆発させない、という選択肢を女は選んだ。
正確な剣筋は、その導線についた火種だけを切り取って無力化する。
手首が特殊な動きをすると刀身がいくつかに別れ転がる男に鞭のように伸びて襲いかかるか。
それを避けて立ち上がるならば、恐らくはこれは予想外の動き。白銀のグリーブで包まれた拳で男に殴りかかり。

セイン=ディバン > 「認めるよ。これからは騎士団を侮らないようにするさ。
 何もイスにふんぞり返るのが姫様じゃないだろ。民を護るのもまた。高貴なる者の務めなりや、だ」

相手の言葉に返事を返し、ケラケラと笑う。
戦場においてベラベラとしゃべる男の姿は、女からみれば異常に見えるかもしれない。
だが、この男にとってはこれも策のうちであり。この男はいつもこうして話しながら戦う。

「くぅっ!!」

狙いもつけず牽制として撃った弾丸はなんなく弾かれ。
放り投げた閃光弾も無力化され、驚いたように目を見開く。
更に、蛇の様に襲い掛かる剣閃を前転して回避しながら、リボルバーに弾丸を装填すれば。目の前に迫るは剣ではなく拳。
とっさに後ろに跳び退るも、決して浅くもない一撃が胸を打つ。

「ぐっはぁ!! チッ、まるで蛇切剣だな……。
 しかし、重いな、アンタの拳……はっ、っとぉ!!」

咽ながらなんとか軽口を叩き、再度リボルバーを連射。そのまま次の手段として、煙幕を床に叩きつける。
目くらましとしての効果がどれほどあるかは不明だが。
とれる手段は全て使うつもりだ。

テイア > 「よく回る口だことだ。国を守るのは騎士、武人の役目。戦いの面ではね。姫君の役割ではないよ。」

ぺらぺらと戦いながらよく回る舌だと呆れ。
護る、という事についての考えを口にする。
騎士には騎士の、姫君には姫君の国の護り方があると。

「…割とタフだな。」

割と今の一撃はよけられるとは思わなかった。
完全に掠ったわけでもないが、相手を沈めるにはどうやら浅かったらしい。むせながらも未だにそのよく回る舌は止まらない。
鞭のように延びる剣先は、規則性もなくそこに真空の刃を交えて幾度も男に襲いかかるだろう。

「――っ風よっ」

リボルバーが連射され、剣を意のままに操っては弾丸を弾いていく。ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、と男が撃ったた間数を頭の中で数えて。
ぼひゅ、っと男が叩きつけたそこから煙があがる。
煙幕を視認した瞬間に、剣を元の形へと戻すと風を舞おこし視界を確保する。それと同時に床を蹴り男の懐へと間合いを詰める。
さて、五発装填タイプであれば打ち止め、六発ならあと一発弾丸が残っている事になるが…。
その間合いへと入る事を許したなら、銃を女に向けるよりも早くその切っ先を喉元へと突きつける。

セイン=ディバン > 「イイ男ってのは口も良くまわるもんさ。戦場の花形がアンタみたいな存在ならば。民衆にとっちゃお姫様だろうよ。
 特にアンタに憧れる子供にとってはな」

こちらの軽口にまったく揺らがない相手に舌打ちをする。
ペースが崩れないどころか、むしろ冷静さを増しているような気さえさえする。

「ま、な。荒事には慣れてるんでな」

正直、一発で体中が悲鳴を上げているがそれは表には出さない。
ただの拳一発だが、実力差をハッキリと判らせる一撃であった。
正攻法どころか、どんな手を使っても今の自分では勝てまい。
しなる剣を避け、防ぎ、逃げ惑うのですら精一杯。
それすらも完璧ではなく、少しずつ皮膚に血が流れていく。

「うおっ!? ……くそ、こりゃ完全にオレの負けだな」

煙幕を吹き飛ばされ。最後に残った弾丸を放とうとするよりも早く。
喉元には死の刃が迫っていた。そのまま両手を挙げ、降参の意を示すが……。

「ってことで。今回は負けを認めて引き下がるぜ。
 なにせ、この銃も使ったのは始めてなんでな。これ以上無駄な抵抗はしないさ。
 ……あばよ、戦乙女。いつかアンタと本気でやりあうかもしれないな」

瞬間、右手の指輪が光を放ち、男の姿は掻き消える。
後に残されるのは静寂のみ。男の姿が消える直前、部屋に声が響く。

冒険者ギルド、シーフギルド。そして、『怠惰』の魔王軍所属。
それがオレ、セイン=ディバンだ。覚えておけ、と。
それを相手がどのように受け止めるかは、また男本人は知らぬところで。

テイア > 「あまり口が回りすぎると信用されない事もあるぞ。」

全く、どこまでいっても軽口は止むことはない。
やれやれとため息を小さく溢し。

「勝負あり、だな。…まあ、私もそうそう簡単に体を許すわけにはいかなくなったのでね。」

今お腹の中には二つの命が宿っている。
そんな時に、ほかの男を受け入れるわけにはいかなかった、というのが女の事情。
そのような事情がなくても、女の矜持にかけて勝とうとはしただろうけれど。
降参の意を示し、両手をあげるならば突きつけた切っ先を下ろして鞘へと剣を収める。

「唐突に現れて唐突に去っていくのだな。命のやり取りをするならば、肩を並べて味方同士でいたいものだ。」

既に目の前から男の姿は消えていた。
ただ、魔王軍所属と聞けば無表情から驚きの表情へと変わる。
冗談か誠か、真意を問いただそうにも既に男の姿はない。
やれやれと、吐息を零すと女も部屋をあとにする。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からセイン=ディバンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からテイアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にアマンダ さんが現れました。
アマンダ  > 砦での依頼などを得て、金に余裕が出来てきた少女。
冒険者と言えば金が溜まれば飲む、打つ、買う、が定番なのだがこの少女は酒を飲まず、博打も打たず、女も男も買うこともしない。

だが、そんな少女も金が溜まった時にだけする遊びがある。
富裕地区のお高い喫茶店に入ることである。

店構えから店員の制服から客層まで全てが違うまさに異世界である。

店に入るなり、しっかりと教育を受けたであろう上質な店員のおもてなしをうける。

自分が灰被り姫にでもなった気になりながらも、少女は店員さんに案内されるままテラスへ。

メニューを渡され、お決まりになったらお呼び下さいと言われる。

が、少女はメニューを見て目を回す。

ジャンルからコーヒーだの紅茶だのは分かるが、名称が専門的すぎて少女にはわからない。

「あわわわわわ。」

凄いとこに来てしまった。
とても人前には晒せないような顔をメニュー表で隠しつつ、どうしようかと一思案。

アマンダ  > そうだ、冷静になろう。
僕は人前ではいつも冷静ではないか。

心のなかでそう呟くと、少女の中に一計が思い浮かぶ。

そうだ、こういう時は周りが頼んでいるものにしよう。

頭上で光が差したような感覚さえする少女は周囲のハイソな客の頼んでいる物を見渡し、聞き耳を立てる。

結果、どうやら今は○×△と言うコーヒーの一種が流行しているらしい。

なるほどと思った少女はテーブルの上に置いてある呼び鈴を鳴らし、店員が来るとそのコーヒーを注文する。

ここまでは完ぺき。 何一つ問題ないはず。

だが、問題はここからだった。

最近流行の○×△がやってきて一口入れた瞬間事件が起こった。

このコーヒーは夜に眠気を覚ますか酒を飲んだ後に酔いを覚ますのに良いとの事で人気の品だったのである。

つまり、一言で言うと限りなく苦くて濃い味であった。

「なるほど。」

いかにもわかったような風で飲んでいる少女。

だが、これは失敗であった。

大人しく、店員に聞けば良かったと後悔。

苦いコーヒーをチビチビ飲みつつ、次は何を食べようかとメニューに目を通す。

アマンダ  > コーヒーを1/3を飲んだ所で手が止まる。
何もなしで飲めるものではなかったのである。

少女は本来ここへ来た目的、スイーツへ選びへと入ることにした。
いつもの干し肉や乾パンの生活からは今はオサラバ。
文化の香りがする生活をたまには楽しもう。

「えっと、これって何になるんですか?」
今度は店員を呼び、メニューを簡単にだが説明してもらう。

「では、これをお願いします。」

説明を聴いてから選んだものはチョコレートケーキに季節の果物をふんだんに盛り付けた物。

入手ルートは分からないが、王国外の果物も入った大変手の込んだ商品らしい。

店員が去っていくと、少女は苦いコーヒーを飲みながらケーキが来るのを待っている。

アマンダ  > コーヒーが残り半分を下回った所でケーキが運ばれる。
少女はそれをフォークを使って綺麗に食べている。

食べながら、ふと周囲を見渡す。

店内も店の外を行き交う人も綺麗な服で着飾って歩いている。

少女は今の暮らしが好きであり、豪華な生活を望んでいるわけではない。

ただ…。

「ああいう恰好、僕でもできるかな。」
己の服装に視線を向け見比べている。

そもそも碌に着たことのないヒラヒラの服。

買うとなると相当な金額である。

正直、そこまでして欲しくはない。

なら、そういう服が切れる仕事でも探してみようか。

ギルドの依頼でそういうのはあっただろうか。

アマンダ  > 今ここであれやこれやと考えても仕方がない。

少女は頭を切り替えると、とりあえず明日の朝一番ギルドに向かうことを心に決める。

やるべきことは決まった。 後は食べて帰るだけ。

ケーキとその上に載っている数々の果物の味を堪能し、合間にコーヒーを口に入れる。

甘いものを食べた口には丁度良い。

優雅なひと時を楽しんだ後は、金を支払い夜の街へと消えていく。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からアマンダ さんが去りました。