2016/03/08 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にヴィールさんが現れました。
ヴィール > 噴水を囲うように並べられたベンチの数々。
その内の一つに腰を下ろして、少年は夜風を浴びていた。
ぶらぶらと足を所在なげに揺らして暇を潰す。潰しきれていないことは傍目にも明らかだが。

「………ハッ。見た目ばっか取り繕っても、キッツイ中身は覆い隠せてねぇってヤツか」

耳を澄ませば聞こえるのは、何処の邸宅であろうか。女性の悲鳴、もとい嬌声。
誰ともなしに悪態をつきながら空を見上げた。夜も大分深い。

ヴィール > 「久々に外に出たのに相変わらずつまらんな。……俺の興味を惹く彼彼女はどこなのかねーぇ」

何とも不躾千万な台詞を吐き散らし、辺りを見渡している。
つまりは暇、ということだ。家の規則に縛り付けられて疲弊した心地が刺激を欲しているだけだ。
如何にも子どもっぽい、幼い思考。それで高慢なのだからタチが悪い。

ヴィール > どれくらい経ったろうか。
ベンチから腰を上げると同時、足元に気配を感じた。
見れば、闇に溶けるような黒猫が一匹。気づかれるや否や駆け出して消えるその背を見送ってから、笑う。

「……野良は自由だな。羨ましいったらねぇ」

虚しくも呟いてから、自宅の方へと歩き出した。
帰路はいつもと同じく重々しい、牛歩とも取れる遅さで。
少しでも長引かせんとするかのように。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からヴィールさんが去りました。