2015/10/31 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 貴族の茶会」にエウレリアさんが現れました。
エウレリア > 冬の訪れを感じさせない暖かな午後の日差しが、パーティー会場を埋める紳士淑女を綺羅びやかに照らしだしている。

王都マグメールの貴族街。
立ち並ぶ邸宅の中でも特に大きな館の庭園が、本日のパーティの会場である。
その外れ、高台の崖付近。
市民の暮らしを鳥瞰することの出来る石造りの東屋に、緋色の女剣士の姿があった。

白色の石柱に絡みつく蔦植物の緑の中、給仕さえも下がらせたその場所にただ一人。

本日のエウレリアは、普段そのまま背に流す金色の緩巻髪を丁寧に編み込んだ上で頭頂に纏め、ライトプレートによる補強の施されていない一般的なデザインの、しかし十分すぎる程に豪奢な緋色のドレスに身を包んだパーティ仕様。
うなじを飾る数本の後れ毛と、大胆に開いた襟元から覗く豊乳の深い谷間が匂い立つような色香を漂わせている。
その細腰に華美な装飾の施された細剣が吊るされている無骨な革ベルトが巻き付いていなければ、パーティ会場を彩る一輪の華として見事にこの場に馴染んでいた事だろう。

とはいえ、見るものが見たのなら、その雰囲気は他の参加者とはまるで別物であると気付くはず。
品よく背筋を伸ばした座姿の中、斬り込む隙が一切見当たらない。
歓談に花を咲かせる他の貴族たちとはまるで異なる、むしろ、会場の周囲を厳しい顔で固める護衛達と同質の―――否、それ以上に濃密な血臭が娘の細身には纏わりついているのだ。

エウレリア > 「なんとなく、こうなる気はしていましたけれど………本当、退屈ですわ。」

上品な紅茶の香りで唇を湿らせたエウレリアは、しなやかな細指でティーカップを置きながら呟いた。
年齢と外見に見合った甘く蕩けるような声音が風に溶ける。

カップを置いた白手で頬杖を付き、切れ長の瞳をパーティ会場の外へと流すその表情は、取り繕うつもりすらない退屈をはっきりと滲ませている。
物憂げなため息が、すべらかなドレスに押さえつけられていても十分なボリュームを残す胸元を緩く上下させた。

普段ならばこんな催しには参加しない。
そうした誘いには、執事の手によって書かれた丁重な断りの返事が送られるはずなのだ。

が、此度の相手は決闘代行人としての仕事におけるお得意様。
その地位の高さ故か、恨みを買うことも多いのだろう。
依頼の頻度も高く、また金払いもいい伯爵様。
何よりも妙な色目を使って来ないのがいい。
実家である公爵家ともつながりのある伯爵は、エウレリアの人となりをきちんと理解した上で仕事を回してくれる、気楽な得意先の一つなのだ。

もちろん、それだけで招待を受ける程、エウレリアの人付き合いはよろしくない。
参加の一番の理由は、この伯爵のパーティには容姿の整った給仕が雇われる事が多いとの情報を聞きつけたためである。
見目麗しい娘を適当に見繕ってつまみ食いするという不純極まる動機。
しかし、ざっくりと見て回った所、エウレリアのお眼鏡に叶う娘は見当たらず、こうして無為な時間を過ごしているのだ。

エウレリア > 「義理は十分果たしましたわ。」

陰り始めた日を見上げ、小さく呟き席を立つ。
腰に吊るした銀剣が透き通る様な金属音を微かに響かせた。

豪奢に広がり足元までを覆う緋色のスカートを踏みつけるような事もなく、滑るような足取りで目指す会場出口。
本来ならば主催者たる伯爵に辞意の一つも告げてから立ち去るべきだろうが、浮世離れした女剣士はそんな雑事に気を向けるつもりは無い。
貴族の娘らしからぬ乱雑な思考。

「帰ります。馬車を呼びなさい。」

門衛に告げる言葉も酷くそっけない代物であり、酷薄そうな赤眼は彼らに向けられもしない。
程なくしてエウレリアの乗り込んだ馬車が、夕闇に沈み始める街へと消えていく。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区 貴族の茶会」からエウレリアさんが去りました。