2021/11/22 のログ
ご案内:「九頭龍の水浴び場」にエレイさんが現れました。
エレイ > 「~♪」

夜。
ピーヒョロロと下手っぴな口笛を吹きながら、館内の廊下を一人のんびりと歩く浴衣姿の金髪の男が一人。
着込んだ浴衣は客室に備え付けのものであるが、男の着こなしは何故か妙に様になっていた。

それはそれとして、男は現在旅籠内を探検という名の散歩中である。
この旅籠は知らないうちに道が変わっていたり施設や仕掛けが増えていたりするので
男にとっては適当に歩き回るだけでもなかなかいい暇潰しになるものだった。
知り合いの従業員に聞いたところによると、その妙な特性のおかげで主に女性が迷ってしまう確率が高いらしいが……。

それはさておき、やがてT字路に差し掛かると、男は一旦足を止めて。

「──さて……どっちに行くべきですかねぇ」

右か左か。
廊下の中央で仁王立ちしながら、男は顎に手を当てうぬぅ、と唸りながら思案し始め。

「んんーむ……よし右だな、右へ行くべきと俺の中の何かが囁いている──おおっと!」

しばらく悩んだ後、男はおもむろに右側の通路へと踏み出し──その途端に、
ちょうど通りかかった誰かと出くわし、思わず足を止めて上肢をのけぞらせた。

エレイ > 出くわしたのは一般の男性客。互いに軽く謝罪し合うと、男は改めて足を踏み出し、何処かへと──
ご案内:「九頭龍の水浴び場」からエレイさんが去りました。
ご案内:「九頭龍の水浴び場 個室」にリスさんが現れました。
リス > 珍しく、少女は自分の意志ではなく、九頭龍温泉の宿にやって来ていた。
 理由は、トゥルネソル商会に借金のある貴族が居るのだけれども、今回、借金の返済が間に合わないとの事らしい。
 しかし、契約書に関しては、魔法のアイテムであり、踏み倒すことが出来ない物となっていて、無理に踏み倒そうとすれば自動的に資産が借金の分と、利息の分だけリスの所に移譲されるのものであった。
 だからだろう、リスに、借金の期日を伸ばして貰うために、貴族はもてなしをすることがある。
 その場所が、この九頭龍温泉宿。
 マグメールの貴族が、裏で性的な事に浸かっている噂があるというのだけども、それは事実なのだろう。
 そして、リスは豪華な一室に通されている、普段はお風呂ばかり使うが、VIPようのルームに通されて、店員に、飲み物と共に待つように言われている。

「こんなことに使うのであれば、お金を返していただければ、良いのに。」

 貴族の価値観という物は良く判らない、リスは、貴族では無いから。
 体面という物が大事なのは、何となく聞きかじっている程度の知識。
 リスの気質を良く知るものであれば、ここに来るのは―――恐らく女性だ。
 借金の起源を伸ばす代わりに、貴族の妻を抱いたりするのは、リスは良くすることなのだ。
 妻でなく、娘を差し出す貴族もいる、自分の所のメイドを差し出す貴族もいる。
 その辺りは、貴族の性格にもよるけれど、妻や娘を差し出すなら、リスは大体期限は伸ばす。
 借金自体がなくなるわけではないし、リスは急いで回収する理由は無い。
 伸ばせば伸ばすほど、利子も増える、そして、寿命は―――人間ではないリスだ、規則が死んでも生きているから、その子々孫々取り立てていける。
 だから、焦って、無理に返済を求める必要はない、魔法の契約書がある限り、その契約書が燃えたり消えたりもしない。
 最悪、利子が膨れすぎて返済が不能となれば、その場で、その貴族の全ては、リスのモノになるようにもなっている。

 そんな契約があるから、のんびりと待っているだけでいい。
 それよりも、商売の方が忙しいから。
 飲み物に、混ぜ物や毒がない事を確認してから、少女は軽く盃を呷り、『生贄』となる誰かを待っていた。

リス > 出された飲み物は、グレープジュースだった、濃厚な葡萄の味が、舌を楽しませて滑り落ちていく。ワインでもよかったのだけども、その辺りは、何かの意図があるのだろう。
 気遣った、というわけではないのかもしれないし、平民のリスにワインを出すのは、貴族としてのプライドが邪魔したのかもしれない。
 その辺りは、彼の考えることだ、リスの知るところではない、別にワインでなければいけないというわけでもないし、怒るところでもないので、こくり、こくり、と嚥下していた。
 何時頃、来るのだろうか、というか、誰が来るのだろうか。差出人のある手紙、その封蝋に家紋がある。
 確か、お金を貸し付けた貴族のモノだと言う事は、何度かのやり取りでしっている、家の場所も知っている、この家紋の貴族の債権の額も覚えている。

「うーん、まあ、ここで来る人で、あの人の本気が判る、ともいえるのよね。」

 金を貸しているとはいえ、向こうは貴族でこちらは平民だ、さて、あの貴族がどんな態度で来るのだろう。
 考えてみれば、金を貸している貸主が、自分よりもはるかに年若い小娘なのだ、貴族というプライド以外にも、色々あるのと思う。
 ただ、借金の際には、対面で話をし、契約をしている事もある。
 余り無礼た態度は取らない―――そうは思うのだけども。

「待つしかないって、退屈、ね。」

 自分が待っている部屋を見回す、自分一人しかいない。
 部屋は、高級な調度品が、目を楽しませる。貴族の家の様な成金というわけではなく、部屋の格に合わせた物であり、高級な壺なのだけども、風景になっている。
 バランスが良く配置されていて、こうあるのが自然だとそんな風に思わせてくれる並べ方だ。
 こういうの勉強をして、家に配置するのも良いわね、なんて。
 退屈しのぎに、部屋の中をウロウロし始めるリス。

リス > うろうろと、リスは、VIPルームを歩いて、調度品を、部屋の中を、部屋の外を眺める。
 どれもこれも、高級品でも、嫌みが無く、風景に溶け込んでいる、これが粋という物だと、思う、多分。
 こういうのは、東洋の知り合いなどに、教えて貰えればもっと良く判るとおもうのだが、今は一人きりだ。
 今度、妹の家庭教師の人は、そう言うのに詳しいので教えて貰う事にしよう、なんて、決める事にする。
 しかし、何時頃来るのだろう、少女は、調度品を見回って、見終わって。
 また、テーブルの前に腰をすとんと落として座る事にした。

 そして、しばらくして、扉が開き、誰かが来た。

「―――貴女が?」

 入ってきた人物に少女は首を傾いで問いかける。
 頷く彼女に少女は近づいていく。
 扉が締められて、その後の事を知るものは、誰もいない―――。

ご案内:「九頭龍の水浴び場 個室」からリスさんが去りました。