2021/10/14 のログ
ご案内:「九頭龍の水浴び場」にタマモさんが現れました。
タマモ > 気紛れに、今日やって来たのは、この九頭龍の水浴び場。
脱衣所からの入り口が、よく見える。
しかし、脱衣所からは、そう目立つ事のない、そんな温泉に少女は浸かっていた。
まぁ、それに加え、湯気も立っているのだ、そうそう気付く事もなかろうか。

そんな場所を位置取って、少女が何をしているのか。
純粋に、温泉で寛いでいる?
いやいや、そうでない事は、少女の様子を見る者が居れば、分かる事だろう。
視線は油断なく、脱衣所へと向けられ、その手には…一個の石鹸。
新品ではなく、それなりに使い込まれた、少々掴み難い感じに、滑ったものだ。

「………」

時折、すっ、すっ、と投げ込むように、その石鹸を持った手を動かす。
…うん、これ見たら、何がしたいか一発で分かるか。
そう、脱衣所から出て来た相手、それを狙い。
その足元に、その石鹸を投げ込むつもりなのだ。
転ばして、相手によっては、そこから何かしら…とも、そんな計画も企てつつ。
そこで成功だけしても、それはそれで嬉しいものなので、それでも良し、と。

タマモ > ちなみに、今の少女は普段とは、微妙に姿が異なる。
いつもの狐を模した、耳と尻尾が見えず、誰から見ても普通の人間の少女なのだ。
魔法?もちろん魔法ではないので、感知にも引っ掛からず。
その看破手段は、少女を知る者か、同じ妖としての存在くらいである。
…まぁ、それはさて置き。

今のところ、新たな犠牲者は、現れていない。
偶然なのか、時間が悪いのか。
お陰で、もうしばらく入っていようものなら、のぼせてしまいそうな程である。
…さっさと出れば良い?ごもっとも、だが断る。
一度でも良い、悪戯を成功させたい、その気持ちは強いのだ。

「位置を変えようと、湯よりも、水に入っておれば良かったじゃろうか…」

今入っているのは、普通の温泉だ。
とは言っても、その普通も少女にとっては、それなりに熱い。
そう掛からないだろう、そんな甘い考えに、今更ながら後悔してしまいそうだ。

タマモ > 「むむ…そろそろ、限界、が…
………はっ!?」

温泉の縁に凭れ掛り、ぽつりと呟く。
ただ、その手にした石鹸だけは、しっかりと握られたまま、だが。
…と、ふと、そんな折、きゅぴーんっ!と少女の視線が、脱衣所へと向いた。
少女の直感が、感じたのだ、誰かがやって来る、その瞬間を。
ぐったりとしていた、そんな姿が嘘のように、しゅたっ、と構えを取る。
床を伝う足音に、その音と、感覚に、意識を集中し…

「………そこぉっ!」

叫び声…と、言いたいが、小声で。
声を発すると同時に、しゅぱっ!と手にした石鹸が、投げ込まれた。
それは狙い澄ましたように、脱衣所から出る、その相手が脱衣所から、数歩歩いた辺りへと滑ってゆく。
手前にしないのは、転んだ時、どこかの角とか、当たらないような配慮である。

タマモ > 床を音もなく滑り、石鹸は、綺麗に相手の足元に。
しかも、しっかりと踏み締める、そのタイミングに石鹸は滑り込んで行くのだ。

どうやら、今回の犠牲者は、普通にこの温泉に入りに来た、一般人。
その石鹸に、何ら対処も出来ないまま、しっかりと踏み締め…
そして、すてーんっ、と見事に転んだ。
とは言っても、ただの尻餅、ではあるが。

ぐっ!温泉に浸かったまま、少女は拳を握り締める。
その表情は、とても満足そうなものだったとか。
そして、もうのぼせる寸前、そのまま、さっさと温泉を上がり、脱衣所へと撤収。
少し休憩をした後、この場所を後にするのだった。

ご案内:「九頭龍の水浴び場」からタマモさんが去りました。
ご案内:「九頭龍の水浴び場」にエレイさんが現れました。
エレイ > 「~♪」

夜。
ピーヒョロロと下手っぴな口笛を吹きながら、館内の廊下を一人のんびりと歩く浴衣姿の金髪の男が一人。
着込んだ浴衣は客室に備え付けのものであるが、男の着こなしは何故か妙に様になっていた。

それはそれとして、男は現在旅籠内を探検という名の散歩中である。
この旅籠は知らないうちに道が変わっていたり施設や仕掛けが増えていたりするので
男にとっては適当に歩き回るだけでもなかなかいい暇潰しになるものだった。
知り合いの従業員に聞いたところによると、その妙な特性のおかげで主に女性が迷ってしまう確率が高いらしいが……。

それはさておき、やがてT字路に差し掛かると、男は一旦足を止めて。

「──さて……どっちに行くべきですかねぇ」

右か左か。
廊下の中央で仁王立ちしながら、男は顎に手を当てうぬぅ、と唸りながら思案し始め。

「んんーむ……よし左だな、左へ行くべきと俺の中の何かが囁いている──おおっと!」

しばらく悩んだ後、男はおもむろに左側の通路へと踏み出し──その途端に、
ちょうど通りかかった誰かと出くわし、思わず足を止めて上肢をのけぞらせた。