2021/04/23 のログ
ご案内:「九頭龍の水浴び場」にリーアンさんが現れました。
リーアン > 日帰り入浴の客はほぼ帰り、宿泊客の受け入れもひと段落したであろう、夜更け。
異国情緒溢れる佇まいにやや戸惑いつつ、此方も王国の民ではないと体現した格好で、
ロビーと思しき空間をひとわたり見渡し―――――板張りの受付カウンタに歩み寄って。

「失礼、……お忙しいところ、申し訳無いのですが。
 此方に、こんな感じの娘が、お世話になっておりませんか?」

カウンタに立っていた壮年の男性に、そう問いかけながら。
一枚の紙片、其処に描かれた絵姿を提示する。

其れは己より、幾つか年上と思しき黒髪の女を描いたもの。
帝国風の面差しだが、己より格段に柔らかく、男好きしそうな。
――――客には居ない、と答える男の、貼り付けたような笑みに眉根を寄せる。

「いや、客人では無くて、……此処で、働いていたりしないかと」

そう聞いて来たのだけれど、と付け加えながら、相手の反応を窺う。

リーアン > やはり同じ笑顔のままで、左右に首を振る男。

『お疑いでしたら、ご自分で探してみてはいかがです?』

部屋も未だ空いている、宿泊代を払ってくれれば『お客様』だから、
幾らでも中を探し回ってくれて構わない――――そんなことを言い出した、
相手の顔はどう見ても、失礼ながら胡散臭く見える。
少し迷ったけれど、今度は此方がきっぱりと首を振り、

「……いや、……良い、其れはまたの機会に」

愛想笑いを浮かべようとして、敢え無く失敗した。
紙片をふたつに折り、懐へ戻しながら、軽く頭を下げてカウンタを離れる。
ロビーを抜け、玄関を潜ろうとした、其の瞬間。
何処かから、懐かしい故郷の言葉が、というより、哀願が。
聞こえた気がしたけれども―――――気の所為、だったかも知れない。

ご案内:「九頭龍の水浴び場」からリーアンさんが去りました。