2020/04/10 のログ
ご案内:「九頭龍の水浴び場」にエリシュさんが現れました。
■エリシュ > 「おじゃましまーす………」
白い肌。小さな背丈。くりくりとした目の懐っこい顔立ちの少女がタオル一枚見につけて、露天風呂に入ってきた。
入ってきたときは、間違いなく女風呂だった。今はどうだかわからない。などということは、知らないのだった。
乳白色の湯がなみなみと湛えられた岩作りの大浴場。
誰一人いないことを確認する。湯気が凄まじいため、あてにはならないが。
「誰もいないよね………よしっ」
誰もいないならばよいだろう。
タオルを取ると、頭に乗せる。ゆっくり湯船に近づいていき、足をつけてみる。
程よい温度だった。次に両足を。
「ほわぁぁぁぁ………」
最後に全身を。心地よさに変な声を出しながら。
ご案内:「九頭龍の水浴び場」にブレイドさんが現れました。
■ブレイド > 男湯の暖簾を確認し、戸を開ける。
人の気配は…あるのかないのか。
湯気が濃くて視認は難しい。少しばかり見回すが人影は……
「っと、先客か」
頭のタオルを確認し、腰にも巻きつけしっぽもかくしてから湯船に近寄ると
金色の髪が見える。
黙って浸かるもいいが、声をかけたほうが怪しまれずにすむだろう。
こういう場合は、最初に怪しいものではないことを伝えておいたほうが問題が起こりにくいものだ。
「邪魔するぜ」
ただし、それは相手が同性だった場合に限るのだが。
■エリシュ > 女湯のつもりで入ってきたが、外の表札はいつの間にか男湯になっている。
などという事態を少女が知るはずがない。入ってくるのは女性だと思っていた。
声をかけられると、のんびり振り返る。腰と頭にタオルをつけた人物がいた。
女性だろうと早とちりをする。相手の線が細く、幼く見えたこともそれに拍車をかけた。
「お気遣いなく~」
のんびりとした口調だった。何せ相手は女性である。と思っている。
なので、胸を隠そうとは思っていない。丸出しの無防備なリラックスポーズで応答して。
「いい湯ですねぇ」
■ブレイド > 相手からは朗らかな返事。
どうやら若く人懐っこい感じの人物らしく安心しても良さそう…
男にしては声が高いのだが…
「一人でのんびりしてるところわりぃな」
他に人影は見当たらない。
女性がいるとは思っていないためにそのまま人影の傍に腰を下ろす。
続けて話しかけてくるあたり、話すのが好きなのだろうか?
「ああ、そうだな。
なんか濁ってるけど…なんか普通の温泉とは……」
乳白色の湯を手ですくってからなんとなく相手に視線をおくる。
男性と言う割には細く、丸みがあるそのシルエット。少し目を凝らしてみる。
■エリシュ > 女の子にしては、ずいぶん声が低いなあ。
というなんとも暢気な疑問はしかし解決しようとは思ってすらいない。思い込み、先入観、恐ろしや。
「いえ~ボクだけじゃちょっと寂しいくらいですから」
横にやってきて浸かる相手を見つつ、今度は肩まで浸かる。そうすると、乳白色の中に胸元が隠れてしまうであろう。
少女は、少女(と思っている)相手の視線を感じると、振り返った。
「温泉よく入らないんですけど、なんだか肌がつやつやしそうな感じがしますよね。
……どうかしましたか?」
なぜ見てくるのだろう。
相手に視線を合わせてみる。女の子にしては、なんとなく体が凹凸しているような。
■ブレイド > 華奢な…おそらく少年?少年だろう…ではあるが
社交的なようで、王都ではあまりみないタイプか。
冒険者などと言った荒事をしているような感じには思えない。
「へぇ。じゃ、ちょうどよかったかもな」
肩まで浸かってしまえば、そのシルエットは湯に隠れてしまい真実は湯けむりの中。
同じ男性であったとしても、ジロジロみられるのは好ましくはないだろうし
少しだけ目を伏せようとするも、そのまえに相手から声をかけられる。
「あ?ああ、いや。なんかな。線細いなぁってな
この辺冒険者が多いだろ?そういうやつとは違う感じだもんでよ」
どっちかはわからないが、まあ、こちらをみて声を出したり逃げたりしていないのだから多分男性だろう。
少女のように整った顔の男も今は結構いるようだし。
■エリシュ > 冒険者であることは間違いない。冒険する対象が自分の体であるだけで。
相手は女の子、それも同世代である。普段余り接しない対象だけに、温泉の気持ちよさも合わさって、舌がよく回る。
……と、思い込んでいる。真実は湯の中である。
女の子にしてはおっぱいが小さかったかって。
小さい女の子もいるのだ、うかつなことを言うべきではない。
「そうかな………? うーん、鍛えたりってのはあんまりしないんです。
ボク、エリシュって言います」
以後よろしくと手を差し出してにこにことヒトのよさそうな笑みを浮かべる。
■ブレイド > 「へー…、まぁ、力仕事とかしなけりゃそうだよな。
オレはブレイドだ」
手を差し出す少年。
エリシュと名のる人物の手を握り返す。
柔らかく小さい手…鍛えていないというのも事実だろう。
はっきりと言えば女性と大差ない。
こういう見た目の少年となると、そういう趣味の人間には結構狙われるもので
穏やかな彼もそういう人物が好みそうに思えた。
「エリシュ、ね。まー、このあたりは気をつけろよぉ?
そういう趣味のスケベなおっさんとかに狙われたら厄介だしな」
■エリシュ > エリシュという名前は、男でも女でも使える名前である。
そしてブレイドという名前も、男よりではあるが女でも使える名前である。
よってエリシュが相手を疑う理由がまた一つ減ってしまう。
握ってきた手。ごつごつして、使い込まれた手だった。荒事に慣れているようだった。
少女は手を離すと、はふーと息を吐いて体を上げた。ぎりぎりで胸元の膨らみは見えない。タオルで顔を拭くと、岩に寄りかかる。
「えぇ!? そんな人がいるの? いるんですか?
でも大丈夫。逃げ足だけは自信があるんです。
ブレイドこそ、そういう人に狙われそうですけどね」
かわいい顔してますもんと続ける。
鋭い目つきをした相手でも、少女基準だとかわいいになるらしい。
■ブレイド > お互い名前に違和感がないことが幸い…いや、災いしてゆったりとした時間が流れている。
顔を拭うエリシュに習うように、片手で湯をすくって顔を洗い流す。
すでに相手の身体を注視はせず、すっかりリラックスしていた。
同じく大きく息を吐いて、驚くエリシュにむかって人の悪そうな笑顔を向ける。
「おー、いるぜ?
結構金持ちにはそういう奴らが多いんだと…
って、オレはねえよ。ああいうやつはオレみてぇな生意気そうなやつよか
エリシュみてぇな…こういっちまうのもなんだが、可愛らしい感じ?のやつが好きなんだよ」
エリシュはかわいいというが、流石にそれには笑ってしまう。
当然といえば当然だ。
■エリシュ > この場に第三者がいればあるいは気がついたかもしれないが――。
そんな者がいないために、気がつかない。湯が透明ならあるいは気がついたかもしれない。
えへへと少女は口元を緩めた。頭のタオルを取って、岩に乗せる。
「かわいいなんて言われたの、久しぶりです。なんだか照れくさいな……。
えー、ブレイドみたいな“女の子”が好きって人もいそうだけどなぁ」
そして、唐突に爆弾を投下した。
いいつつ、湯からざばりとあがって、岩に腰掛ける。タオルで隠すなどといった素振りは一切せずに。
■ブレイド > このような場所でゆっくりと雑談することなどあまりなかった。
同じく緩めた口元。笑顔を浮かべつつ、大きく伸びをして
再び息をつこうとする。温泉に使っているとつい漏れてしまうもの……
と、そこに唐突に飛んできた爆弾。
「っ…なっ!???」
思わずエリシュの方を向く。
驚きに目を見開くも、ぎりぎり立ち上がるのは踏みとどまった。
冒険者としての危機回避能力だろうか。
■エリシュ > 爆弾が炸裂した。そして、見れば分かるであろう。
エリシュは女性としては、物足りない体つきかも知れぬ。だがそれでも胸元はしっかり隆起しているし、腰周りは子を産むためのそれだ。足も細く、傷一つない体は見るものを魅了する。
そう、女性である。そしてエリシュは、相手がまさか男とは思っていない。
「………? どうかしたの?」
曖昧に笑いながら、首を傾ける。
湯気の薄っすらとしたヴェールを纏った裸体が、まさに相手にさらけ出されている。
「何かついてるとか?」
自分の体をぺたぺたと触って。
■ブレイド > 何故だとか、ここは男湯だとか、何故相手が気づかなかったのかとか
そういうことはもはやどうでもいい。
目の前の裸体は明らかに女性だ。
シルエットの違和感はこれだったのだろう。今思えば言及しておけばよかった。だが、それももう遅い。
彼女は裸を自信の眼前にさらしているのだから。
「あ、え…あーーーっと…あー…き、きれいなからだ、だなーって…な?」
嘘はいっていない。女性としての魅力をもつ美しい体だ。
嘘はいっていないがそれどころではない。
自分も男なのでそういうものが近くにあることがとても良くない。
■エリシュ > ここでブレイドが立ち上がれば流石に気がつくだろうが、何しろ濁った白湯である。立ち上がらない限り気がつくまい。
少女は何か相手が酷く動揺している理由に思い当たるものがなく、頭上に疑問符を浮かべるばかりであった。
「きれい………ありがとう。そんなこと、言われたことないです。
でも、うーん………もうちょっと大きいほうが男の人は好きって聞いたけど……」
己の胸元を手で包み込んで、ふにふにと軽く揉む。
酒場辺りにいる踊り子などと比べれば、確かに物足りないサイズである。
「どうなんだろう。胸って大きいほうがいいんでしょうか」
ガールズトークを開始する!
と本人は思っている。
■ブレイド > 立ち上がれない。
立ち上がってはいけない。立ち上がってしまったら、悲鳴ですめばまだいいほうだ。
乱れそうな呼吸を、なんとかと整える。
ここで視線を外すのも不自然なので彼女の身体を見つめたままなのだが…
「きれいだって、すげえきれいだよ。えーと、なんだ…オレの体とか傷だらけだし!
なんつーの?肉付きよくねーから?エリシュは女の子らしくていいなって…」
嘘は何一つ言ってない。
少女の体はきれいだし、自分の体は傷だらけ。
冒険者としてガタイが良いわけでもない。そして彼女の体つきは女の子らしい。
何一つ間違ったことは言っていない。
言ってはいないが、彼女視点で自分は女だということだけが違うのだ。
「そんなことねーって!えーと、オレは小さい方がいいと思うし…
っと、好みってそれぞれだし!!」
自分の好みを言ってどうする。
だが、男の好みという視点ではリアルな意見ではあるか。
■エリシュ > なんでこんなに焦ってるんだろう。もしかして自分の体がおかしいのではないか。
という推論にいたった少女は、こちらを痛いくらい凝視してくる相手に対し、小首を傾げるのだった。
「そう、よかった。なんかじーっと見てくるからおかしいのかと思っちゃいました。
ボク、体はあんまり自信がなくて………」
相手は女の子なので、女の子の話題を振ってもなにもおかしくはない。
続く相手の言葉はなんだかおかしなものだった。くすくすと口元を押さえて笑ってしまう。
「もしかして、女の子もいけるとか……? 大丈夫です!
ボク、愛し合う人同士なら性別なんて関係ないって思ってますから! 安心して!」
何を勘違いしているのか力説し始める。
相変わらずのノーガードで。相手に顔を近寄せて、どや顔である。
■ブレイド > 全く気づかれてない。
むしろ少しくらい気づかないものなのだろうか?
目が悪いのだろうか?すくなくとも察しは悪いと観る。いい意味でのんびりとした感じの少女なのだろうが
いまはそれは悪い状況しか産まない。
「つ、つい見惚れてってやつ…?
あ、はは…まぁ、なんだ…胸なんか大きくなくてもいいって
自信もてよ」
自分も反応しているので自信は持っていい。
流石にそれは言えないが。
温泉に使っているのに冷や汗が止まらない…というのに、少女は距離を詰めてきた。
顔が近い。近い。
「…あ、はは、バレちまったか?そ、そうなんだよ
だから、その、エリシュもかわいいなって思っちまって…えっと、わりぃな」
この距離ならば気づくだろう。むしろ気づいてくれ。
土下座の準備はできている。
■エリシュ > ここは女湯である。ということは相手も女である。
という先入観のせいで気がつけない。
『ここの旅館はいかがわしいことをするときがある』なる知識があれば別だったかもしれないが、そんな知識を持ってはいかなかった。
相手の顔をじーっと見つめていると、何故か気まずそうな雰囲気を纏い始めるではないか。
今度は自分の顔がおかしいのかとぺたぺた触る。
「そうなんですね。いいと思います。愛は、色々な形があっていいわけですし……。
ひえっ!? だめですよ煽てても。ボク、お金はないんですよ! 自慢じゃないですけど」
言って、また湯に浸かろうと腰を上げる。そしてふらつく。
流石に長居をし過ぎたようだった。
「のぼせちゃったかも………お先に、失礼させて頂きますね。
また会ったら話しましょうね!」
そして、タオルで体を隠すでもなく、小ぶりなお尻を揺らしながら入り口へと歩いていく。
少女は最後まで気がつかなかった。
■ブレイド > 近い、見られてる。気づかれたか…と思ったが…
そうじゃないらしい。今度は自分の顔をペタペタしはじめて何かしら確認してるようだ。
なんでここまで近づいてバレなかったのか。
「べ、べつにかねがほしいわけじゃなくてな…
っと、そ、そうだな。倒れる前にあがるんだぜ」
ふらつく彼女に思わず手を伸ばしそうになったが
立ち上がることは流石にできなかった。
「お、おう…またな」
だが、倒れることもなく去っていく彼女のお尻を見送って、ようやっと肩の力が抜けた。
運が良かったのかも知れないし、色んな意味で幸運だったのだろうが…一つ思うことがあった。
「………オレの顔、そんなに女っぽいのか………?」
自分の顔を彼女に習うかのようにペタペタと触り首を傾げた。
ご案内:「九頭龍の水浴び場」からエリシュさんが去りました。
ご案内:「九頭龍の水浴び場」からブレイドさんが去りました。