2019/09/13 のログ
ご案内:「九頭龍の水浴び場 奥の浴場」にフィルさんが現れました。
フィル > 段々と薄暗くなっていく空は、遠くを見ればまだ夜と昼の境が伺え。時間が夜へと移り変わっていくのが感じられるかもしれない。
帰路へと着くもの、どこかによって楽しんでから帰る者が大通りでも混在し、朝の賑わいとはまた違う賑わいを感じられるが吹き抜ける風は未だ蒸し暑いものである。
そんな人々が賑わう中、フードを目深にかぶることも無く少年は、人込みを縫う様にして目的地である温泉宿へと向けて進んでいく。
涼しさを求めて水場や酒場に続く道に人が多いのは当然ながら、温泉宿がある方向へもそれなりに人込みが見て取れれば、暑い中でも湯につかるということを好む人はそれなりにいるのだろう。
時折人にぶつかりそうになりながら、それでも大きなトラブルに巻き込まれることも無く。
やがて目的地へとたどり着けば、思った以上に賑わっている入口に少し気圧され気味になったようだが。
何度か来ている道をたどる様に少年は、ロビーにある受付を抜けてそのまま奥へと歩を進めていくことになり。

「思った以上に混んでたけど…この時間はこの位、なのかな?」

ロビー周りの休憩施設で休んでいる人はそこそこの人数であったのである。
けれども、大浴場へと向かう人々は、いつも来ている深夜とは比にならない数であり。
改めてこの温泉の本来の賑わいを少年は実感したのかもしれず。
そんな人が賑わう中でも、歩を進めていけば人気が減っていく廊下を、奥へと向かって進んでいく。
余りに奥まった場所まで完全に踏み込みきったことはないものの、途中にある中規模な温泉は大浴場と比べれば人が少なく。
ゆっくり入る時の小さな穴場のような感覚にも近く、少年は気に入っているようであり。

「やっぱりここは…静かみたいだけど」

ようやくたどり着いた脱衣所へと踏み込めば、空いている脱衣籠の多さに視線を巡らせていく。
人が多い時間でも、相変わらずの人気のない浴場の様子に、少年は苦笑交じりの笑みを零し。
手近な脱衣篭を手に取れば、空いている棚だらけとはいえ、奥の棚を選んだようである。
テキパキと衣服を脱いでは丁寧に畳み。篭へとしまっていけばやがて棚へとしっかりと篭を押し込み。
手慣れたようにタオルを頭に乗せるが、気が早いと気づいたようであり。
改めてと腰に巻き直して、浴場へと入っていこうと、脱衣所から続くドアを開けていくだろうが。

フィル > 「まずは…っと」

ドアを開ければ立ち込める温泉からの湯気に視界は少しの間真っ白に染まる。
其処から徐々に見えてくる、湯船や洗い場の影に目を細めながら、温泉独特の香りに一つ鼻を少年は利かせていく。
鼻を利かせすぎると、種族的に少し刺激がある時もあるようだが、此処の温泉の香りは悪い気はしないようであり。
温泉に来たという実感を、湯気と情景から受け取り。
足元に気を付けて、とはいえ若干軽い足取りで、濡れた石畳の上を少年は進んでいく。
湯船に行き成り飛び込むのではなく、まずはかけ湯をして体を洗ってからといった所のようである。

「これと…これと…」

お湯を汲むための桶と、体を洗う備え付けの石鹸。
手元にそれらがあることをちゃんと確かめれば、少年は組んだ頭から勢いよく桶からお湯を被っていく。
静まり返った浴場に、激しい水音を響かせながら、二度三度と繰り返し。
漸くしっかりとずぶぬれになれば、まずは頭を洗い、そこからタオルに石鹸を伸ばして体を洗ってと初めていくようである。
流石に頭を洗いながら目を開ける何てことをすることもなければ、少々手探りな動きとなり。
頭を洗っている最中というのが、はたから見てもわかる様子となっているわけで、少々滑稽にも見えるかもしれないが。
何事もなければ、頭を洗った所で再び泡を流すためにしっかりと湯をまた被り。
髪の毛のお湯を切るのもそこそこに、泡立てたタオルで体を足の先までしっかりと洗い始めていくだろうが。

フィル > 「っふぅ…」

きっちりと隅々まで洗い終えれば、改めて肩口からお湯をかけ。おまけとばかりに頭からまた桶一杯のお湯を少年は掛け流していく。
今の姿では、毛並がない分これでも大分体を洗うのが楽であり。
そういう意味でも、人の姿に化けられるというのは色々と便利であることを、改めて実感しているようである。
そんな風に考えを巡らせながらも、しっかりと絞ったタオルで体を拭っては顔を拭い。
ある程度ちゃんと、脱衣所に上がれそうなくらいに水気を切れば、お待ちかねとばかりに向かう足は湯船へ。
使った桶は戻すべき場所にしっかりと戻すのは、少年の気質といっても間違いではないかもしれず。
湯船に向かう時も、慌てて走って転んだりとしないようにと、ゆっくりとしたものであり。

「暑くても…やっぱりいいですよね…」

足先で湯船の表面を、温度を確かめるように突くこと数回。
やがてつま先から太腿へ、そのまま下半身をしっかりと沈めたところで、タオルは様式美とばかりにきちんとたたんで頭へと乗せていく。
熱さに下をむいてずり落ちそうになったタオルを、慌てて手で押さえるのはご愛嬌といった所であり。
やがて葉を少し食いしばる様にして、肩口まで湯に沈めていけば、染み渡っていく熱に一つ少年は身を震わせ。
そのまま湯に身を任せるように背を縁へと預ければ、脱力していくようである。
表情もすっかりと湯の心地よさに、ふやけてしまっていれば、完全に気を抜いてしまっているのだろう。
目も軽く閉じ気味といった様子で、そのまま寝てしまいそうなほどに、寛いでいる様子がうかがえるか。

フィル > 暫く湯につかり続けていたものの、しっかりと肩までつかった状態で長時間である。
流石に大分のぼせてきたようであり、ゆっくりと湯船に預けていた背をはなし、身を起こせば一度立ち上がっていく。
行き成り湯船からあがりきることなく、湯船の縁に一度腰を下ろせば、軽く自らの手で顔を仰ぐ様に手をひらひらと揺らめかせ。

「あっつ…」

転寝までいかないとはいえ、少し眠りかけてしまっていたようである。
気が付けばのぼせかけていたのだから、少しだけ焦ったのだろう。
腰を掛けてから一息というには早く立ち上がろうとすれば、少年は軽くまた立ちくらみを起こして湯船の縁へと腰を下ろしてしまう。
湯船の中で寝こけて溺れかけたり、倒れ込んで体を打ったりするよりは大分マシだとは言えるかもしれないが。
浸かり過ぎていたことに少し少年は苦笑を零せば、改めてゆっくりと湯船から完全に上がりきっていき。

「何か冷たい物でも…買ってから…かな」

しっかりとお湯を切ってから脱衣所へという手順は変えることはない。
けれども、流石に直ぐに熱が引くわけでもなければ少年は、脱衣所で着替える前に体を冷やしてからにすることにしたようである。
脱衣所で体を拭いて、しばしそのままで脱衣所に流れてくる風で軽く涼しみ。
やがてふら付くほどの熱が抜ければ、休憩スペース辺りで冷たい飲み物でも一つ買って、改めて体を涼しませてから漸く帰路へとついて行っただろうか―

ご案内:「九頭龍の水浴び場 奥の浴場」からフィルさんが去りました。
ご案内:「九頭龍の水浴び場」にカインさんが現れました。
カイン > 月が天頂へと向かう頃合い。
月光に照らされた岩風呂の中を一人貸し切り、
ゆっくりと体を伸ばす男の姿が有る。
一度体を伸ばした後、ゆっくりと力を抜いて目を細め。

「はぁ…こうやって一日の締めくくりに湯に浸かると、何というか生き返るって感じがするな。
 最近はあんまり風呂に入るってコト自体が出来ない旅ぐらしだったし、
 暫くのんびりと街で過ごすのもいいかもしれないな」

街道をゆく商人たちの護衛やら、
大海をゆく船の護衛やらと、正直な所あまり落ち着ける仕事をしてない昨今である。
ここまでのんびりとした時間を取れるのは久方ぶりだとひとりごちながら肩を叩く。
それなりに長く生きてるせいか、どうにも所作がおっさん臭い。