2019/02/17 のログ
ご案内:「九頭龍の水浴び場 地下大浴場」にシシィさんが現れました。
シシィ > ──白霧にも似た湯気の煙るのは、湯屋と宿を兼ねた王都の老舗、その地下にある大浴場。

場所によって、あるいは時間によって、女湯と男湯の入れ替わる不思議の場所。
時には湯の色すらも不可思議に色を変える。
その理由が何なのか、は常人にすぎぬ己には推し量りようもないことだけれど。

仕事で倦んだ体をほぐすには、その理由を知らずとも十分すぎる。

本日の仕事はある意味徒労だった。
顔つなぎ、という意味では十分とは言え、用意したものが無駄になったのはただ忍びない。

着衣をほどき、体を覆う申し訳程度の麻布を巻き付けて浴場の中へと足を踏み入れる。

一瞬体を包み込む湯気に視界を奪われて少し目を細める。
滔々と流れる湯の音だけが響くその場所は少し寂しげでもあるが、少しだけ安堵に緊張を緩め。

「──時間、遅めでしたしね」

磨かれた岩のタイルの上をぺたりと小さな足音を伴って歩く。
体を清めるための汲み置きの湯を、湯桶を使ってすくい、体にかける。
少し熱いくらいの湯が肌の上を滑るのにほ、と溜息をついた。

シシィ > 埃を落とし、汗を流して。
石鹸を泡立てて、肌を擦る。蜜色の肌に、白い泡がトロ、と絡みついて自重で滑り、あるいは水気を増して消えてゆく。

麻布は解き、それを今は洗い布代わりに肌に滑らせる。
こしこし、と日々の汚れを落として、湯で、泡を洗い流す心地よさに目を伏せた。

「は───、つい、お風呂の良さで宿を決めてしまいがちに、なった、ような……まあ、些細なご褒美、ですかね?」

そんな呟き落としながら、かけ湯で温まった頬がほんのり染まる。
独り言は湯の溢れる音に紛れて、消える。

体を清め終えると、かがめていた腰をあげ、大浴場の名にふさわしい浴槽へと、つま先を沈める。
他に人影もなければ、そのままゆるゆると肩まで浸かる。
四肢の先からじわじわと熱が染みてゆくような刺激に、小さく吐息を漏らして、ぐう、とつま先を伸ばした。

シシィ > ゆら、ゆらり。
湯を蹴立てるほどの稚気ではなく、ただ、つま先を遊ばせる。
伸ばしても広い浴槽の中では、壁につま先が当たることもない。

岩をくりぬき磨かれたつるりとした感触を背に感じながら
疲労や、体の中の倦みや、澱ともいえるものが溶けてゆくのを感じる。

とろ、と薄い色の双眸を伏せて、頤を湯面につけた。
眠るわけではないが、ただ、誰に気兼ねすることもない貴重な時間を味わうことに、する。

シシィ > ──そのまま暫し、体の芯まで温まってから、大浴場を後にして。
ご案内:「九頭龍の水浴び場 地下大浴場」からシシィさんが去りました。
ご案内:「九頭龍の水浴び場」にジードさんが現れました。
ジード > 「んー…寒くなってきたせいで、尚の事この熱が体に染み渡るな」

どこか惚けたような気が抜けた声が岩風呂に響いく。
商品の仕入れの帰りに近くに立ち寄ったので風呂だけでもと入りに来たものの、
一度風呂に入ってすぐに宿泊の手続きを終えたのがつい先程。部屋でくつろいで
従業員にこっそりあまり人のいない時間を教えてもらって狙い通り、ほとんど独り占めの状況で
湯船に体を浸して弛緩したように息を吐き出し肩を揉む。
全身がほぐれていくような感覚に自然と上機嫌になるのも無理なからぬこと。

「どうせなら店でも構えるかなあ。貧民地区だと色々危ないんだが。」

露天商などという身の上をやっているのはそれが少なからず関係している。
押し入りなどよくある話で、そういう意味では身一つの方が気楽ではあった。

ジード > 「金銭的な問題はないけど、それに見合った価値を見いだせるか、だね」

先のことをなんとなしに頭に浮かべるものの考えがまとまらない。
ハァッと熱っぽい吐息を吐き出すに任せてゆっくりと目を閉じ。

「このまま寝たら流石にのぼせそうだね」

ジード > 「ん、倒れる前に風呂からあがろうか。このまま体調崩したら笑い話だよ」

眠り込んだが最後目が覚めないまであり得そうな心地に体に鞭打って立ち上がる。
のぼせないうちにと脱衣所の方向へと足を向けるのだった。
最後に一つ強めに吹いた風にくしゃみが漏れたとか。

ご案内:「九頭龍の水浴び場」からジードさんが去りました。