2017/09/21 のログ
■オデット > たしかにヒトにはない魔の魅力が相手には備わっているものの、こうしていれば紛れてしまう身なりだ。
だからこそ彼の言葉に人間とのギャップを大きく感じ、女は素直に目を丸くする。
「数ヶ月…? え、…っあ…――――…それ、は…寂しいと思いますわ…。
…ロレンスさまのお子さまもそう…なのでしょうか」
驚きに言外に示唆されたことを感じ取るまでに時間を要したが、気付くとあからさまに言葉を詰まらせる。
一瞬己は何を想像したのだろう。
人間ではない赤子を己が産み、育てるなど―――まだ夫と死別して間もないというのに。
愚かな己の思考に鼓動を狂わせつつ、目の前の男にさらに尋ねる。
彼は見た目こそまだ若いが、己よりずっと長く生きていることが言葉の端々から窺える。
ならば子供の1人や2人、すでに世に存在するのかもしれない。そんな好奇心も覗かせて。
「……、…。私…ロレンスさまのお優しさに甘えてばかりおりますね」
こぼれる艶声が妙に際立って聞こえるのは恐らく、己の後ろめたさからだろう。
すっと過る頬の朱は、何に対しての恥じらいなのか。
掃き終えた箒を握り、夜の顔へと移りゆく宿を振り返ると熟睡中の赤子の体勢を整えるようにお尻を支えてやり。
「お部屋で休まれます?それともこの辺りを散策でもされます?」
いずれにしても己は彼に買われるのだから共に過ごすのだ。
久しぶりの穏やかな時間に女の貌は自然と緊張感を失い、口元が微笑んでいた。
■ロレンス > 「あぁ、種族によって違うようだけど大体それぐらいだね」
驚く彼女に楽しげに微笑みながら頷く、しかし、ほんの一瞬だけ生まれた空白と、崩れる言葉の音に彼女が何を想像したのかを察していく。
否、そう仕向けたのだから想定通りで笑みが浮かびそうなのをぐっと堪えながら、僅かに顔を近づけて耳元に唇を寄せる。
「……私の子を孕むのを想像したかな?」
人ではない子供を宿し、その母となって過ごす一瞬。
それを見透かすように問いかける言葉は、先程までの柔らかな音から、僅かに音の下がった嗜虐性のある低い響き。
やはり、甘ったるくも満たされたい欲望が彼女にあるのを感じ取ると、一層その魅力に惹かれていき、欲しくなるが…今は欲望を抑える他ない。
「…そうだね、一人娘がいるよ。生まれたのが春頃だけど、人で言う15,6歳の見た目まで成長したよ。でも、純粋な人間相手なら……成長も緩やかかもしれないね」
好奇心の問には素直に、一人娘がいることを答える。
夢魔と吸血鬼の血を継いだ娘の様相は、彼女が見たら驚くだろうと思い、微笑みのままに語るものの、僅かに彼女の渇望を擽る言葉を交えた。
人の血が混じれば変わる可能性がある、それを加味するなら、彼女にとって自分はどう映るのだろうと。
「魔は人に魅入られる為に優しくも、美しくもなるさ。それだけ君が欲しいからね」
妙に声が甘く、そして心地よく聞こえる。
再び頬に浮かぶ赤色は、照れくささからだろうか。
けれど、彼女がそれを受け入れてくれるのなら、それが何よりだった。
緩やかに頭を振れば、短い銀髪が揺れ、紺色の瞳は変わらず柔に微笑みかける。
「そうだね、部屋を借りるとしようかな? 先客も腰を落ち着けたほうが楽だろうしね」
背中におぶった子供も、温もりで眠るなら寝転びやすい場所のほうが良いだろう。
穏やかな微笑みを見やれば、少しだけ悪戯心が我慢できなくなる。
先程の声のこともあり、すっと一歩近づくと、僅かに唇を重ねる程度の淡い口吻を交わしてから、手を引いて宿の入り口へと向かう。
受付嬢が子を背負ったままのオデットを見やれば驚くかもしれないが、そのままでいいと断りを入れてから、部屋番の入ったプレートを受け取り、そのまま和室へと場所を移す。
部屋には既に情事の為に敷かれた布団と、片隅に置かれたテーブルがあり、その傍に敷かれた座布団に腰を下ろした。
「…オデットを買い取ってしまうのは駄目なのかな?」
宿の借金を背負ったままここへ流れ着いたと聞いているが、おそらくこんな危険な場所にとどまるのは、借金が枷となっているのだろうと思う。
子をあやすのに喜びを覚える様な女性が、望んでいる場所ではない。
改めて、危険な場所から解き放ちたいと己が欲望を語りながら、そちらを見つめる。
■オデット > 分かりやすい反応を見せている自覚もなく、まるで己の思考を見透かしたような囁きに女の顔が一気に赤くなった。
ましてや『孕む』などという生々しい表現を使われると、
ぼんやりと輪郭だけが浮かんでいた想像に血と肉を与えられたような気分になり、いたたまれない。
「そ…、そんなこと…」
嘘をついた。首を左右に振って、否定した。
これもまた見透かされることが容易だったとしても そうせねば己はどこまで堕ちるか分からない。
そんな自覚だけは―――ある。
「…何だか不思議。魔の子は親の力をそう借りずして生きられるようになっているのですね。
………、…私は…、まだ親になるわけには…」
夫と死別して間もないこと。ここでまだしばらく働かねばならないことを考えれば子を孕むことは許されない。
彼の言葉に揺らぐ心を抑えるように呟いた言葉は、その返答のようでいて外れており、自身に言い聞かせるもの。
優しい彼は本当に“魔”そのものだと思う。
甘く誘惑したかと思えば被虐心を刺激し、女心をくすぐるような言葉を吐いたかと思えば肉欲混じりであったり。
魔ではない女はそのたびに翻弄され、動揺し、生きた心地がしないのだ。
そんな存在と今からまたしばらく過ごす。
重なるだけの口付けに、女が ふと吐息のような微かな声をこぼす間だけが与えられ、宿の中へと。
部屋に着くと女はおんぶ紐を解き、ゆっくり、慎重に赤ん坊を布団の上へと置いた。
わずかに眉を寄せたのみで覚醒することのなかった赤子の顔を愛しそうに眺めていると、
思いもよらぬ言葉をかけられて彼へと視線を移した。
今まで似たような言葉を聞いたことはあったが、己の理性もあやふやな褥の最中であったし
あくまで戯れのような調子だったため、現在交わっているわけでもない状況で言われると少し事情が違ってくる。
「――――……そんなこと、考えたこともありませんでしたわ。
買い取って頂くというのは、私の借金と それにプラスされた金額を支払って頂くということなのでしょう?
………やはり、戯れには過ぎる行いだと思います」
そこまでしてもらう理由があるとは思えない。
女はひとつひとつの言葉を選ぶたびに考えるそぶりを見せ、――そしてどこか遠くを見つめる。
彼の言葉は現実離れしており、己の想像を遥かに超えていることを感じて。
■ロレンス > 「ふふっ、否定する割には少し弱い音だね?」
何故音が弱いのかを知っていながら、恥じらいに頬を赤らめる彼女に愉しげに微笑み返す。
艷やかで自分よりも少し年上に見える姿ながら、心は穢れを知らない。
その恥じらいこそが、自身の心を擽り、欲しくなる。
独り言じみた返答が溢れるのも、心の揺さぶり合いに慣れていない証拠だろう。
風に揺れる柳のように脆くも美しい、力で奪い去るのではなく、心を毒する魔性で語り、唇を奪っていく。
部屋にたどり着くと、子供を寝かせつける姿を眺めながら、妙に絵になる光景を楽しみながら問いかけたが……予想外な答えを返され、少しだけ目を丸くするも、暫し考えてから嗚呼と一人納得したように俯いた顔をあげる。
「確かにオデットには戯れに聞こえるかもしれないね、でも……オデットが死んだり、壊れたりすると、私は数少ない血を失うことになるんだよ」
そう告げると、ポケットに忍ばせていた試験管のような瓶を幾つか取り出す。
それには赤黒い血が収められており、コルクの栓が嵌められている。
瓶にはそれぞれ、女性の名前が書かれた紙が貼り付けられており、名前は全て違う名前ばかりだ。
「私は吸血鬼の中でも変わった種でね、美しいと思えた女性の血でなければ、乾きを癒せない。そして……同じ女性から血を吸いすぎると、その血の味を感じれず、乾きを癒せなくなる」
こうして予備として持ち歩いている血の名前がバラバラなのも、同じ血を口にしすぎないための配慮ということだろう。
指先を指揮棒のように揺らすと、赤黒い魔力の蔦が伸びていき、するりと瓶を絡め取って手元に引き寄せ、ポケットに戻していく。
「オデットは数少ない、私の乾きを癒せる存在だよ。そして、私がオデットを美しいと思うのは、その性格や仕草、愛らしさから。だから……廃人になって人形になってしまったら、例え血を口にしても、何も感じれなくなる」
この街にいれば、金として売られた女性が薬や快楽の沼に沈められ、壊れていくさまを見たことぐらいあるだろう。
壊れたように笑う少女や、虚ろな瞳で動かなくなる女、正気を失った姿は哀愁を感じさせられる。
それでは満たせないからこそ、彼女を確保したい。
戯れではなく、己が生きる為でもあると、確りとした理由を語れば、どうかなと彼女を見つめた。
■オデット > 彼が吸血鬼だということは初対面で聞いたが、その特殊な事情を聞くのは初めてだ。
最初こそただ驚きに満ちた表情を浮かべていたが、次第に眉根を寄せて くちびるを結んだ。
色々と複雑である。彼の事情も、己の感情も。
「………」
視線を再び赤子へと戻したが、その瞳はすやすや熟睡する赤ん坊を見てはいない。
意識は外にあり、不意に自身の首筋へと指先を押し当てた。
以前吸血された痕は治癒しており、触れたとて場所が正確に分かるわけでもないのだが。
「――――そう…、そうなの…ですね。
それなら尚更、ロレンスさまに買い取って頂くわけにはまいりません」
それまで思案に気を取られ、ぼんやりとしていた貌も口調も、結論を出せばしっかりと。
赤子の体に掛け布団をかけてやり、まだ起きる気配のない様子を確認すると立ち上がる。
そして彼の傍へと向かい、着物の裾を正すように気を遣いながら正座して向き直った。
至極まじめな顔をしてはいたが、それを崩すように ふっと笑えば雰囲気も緩み。
「ロレンスさまはお優しい方ですし、私の心を見透かしていらっしゃると
思うことが多々ありますけれど…大事なところは見えませんのね。
ロレンスさまにはご恩がありますもの。
私の血が必要だと思われる時には喜んでご協力致します。
けれど、…そんなつもりは毛頭ないのですけれども…、もしも、万が一、
本当に私が壊れることがあれば、この血はあきらめてくださいませ」
■ロレンス > 他の吸血鬼にはない、血というものに対する制約の違い。
故に吸った相手にその遺伝子を授けることも少なく、子を授からせるのも、容易ではない。
だからこそ、彼女の眼の前にいる魔物は、力を振るうものではなく、心に忍び寄る魔性を得たのかもしれない。
驚く様子に、困ったように眉を寄せて苦笑いを浮かべていたが、尚の事駄目だと断る彼女に、その表情が崩れる。
「……君の心にある大切な人か、それとも…同じように自分だけを見る人、そういうことかな?」
微笑みながらも正した格好で紡がれるのは、意味深なコトアを交える。
そこから拾っていくならば、断った理由は彼女の心にあるのだろう。
死別した夫に立てる貞操、だがそれが崩れ行くなら、その頃のように彼女だけを見てくれる誰か。
どちらにしても、その対象として此方を見るならば……不適切だろうと思い、残念そうに瞳を伏せた。
「……それは容認できない」
壊れたら諦めて欲しい、その言葉には頭を振って否定すると、瞳の色が赤く染まっていく。
溢れる魔力はずっと伏せられていた魔性の部分だが、覆い尽くす闇のような恐ろしさはない。
月夜のように静かで、そして周囲には淡い赤の光が満ちる。
感情の発露のように、周囲に赤黒い魔力が水晶のように生まれていき、薄っすらと赤い光を放っては崩れて鱗粉のように漂う。
「美しいと思える者を壊すものを……私は何人たりと赦せない。オデットが壊されそうになるなら、君に嫌われようともその輩を跡形もなく屠る―――だから…」
一気に思いの丈を吐き出すと、残っていた水晶が散っていく。
光は消えて、普段と変わらぬ宿の空気に戻っていく中、瞳が紺色に染まる。
掠れるような音を立てて深呼吸を一つすれば、僅かに震えた手が彼女の手を握ろうと伸ばされる。
「壊れることは…許さない」
歪ながらに彼女に向ける言葉は、彼女に向ける意志のあるもの。
この穏やかな笑顔も温もりも壊されると思うだけで、体中の血が沸騰するような怒りが沸き立つ。
認められない、その気持ちを吐き出す一瞬は魔族の牙が垣間見えたかもしれない。
■オデット > 「―――…人間の一生は短いのです、とても」
さて、独占欲や恋愛感情で収まるような単純な話だろうかと思うが己の内の感情とて まだ完全に整理しきれていない。
人ではない彼にこれを言葉として伝え、理解させようとするのは不可能だろう。
ただ、今の段階では己と相手には越えようのない隔たりがあり交わることは難しい。
それだけはおそらく―――お互い感じることができるのではないか、と。
初めて会った時のように交渉決裂となった。
彼も納得してくれるだろうと、女の方は思っていたらしい。
双眸の色が変わるばかりか魔力があふれるような光景に やや戸惑いを見せる。
燃え盛る熱のようでいて、その真逆の凍てつく氷のような。
これが魔が魔たる所以なのだろうかと、女はその場に座したまま男の変化を眺めていた。
「…………万が一の、…話です」
彼の手が己のそれを握ると、そっともう片手をその上にさらに乗せて。
掌の体温で包み込むように淡く、優しく、撫でた。
その時赤子が かすかに鳴くような声を絞り出す。
母親が我が子の泣き声に敏感なように、女もまた ふっと何より先にそちらへと向いて。
「起きてしまったみたい。そろそろお客さまもお帰りになられる頃かしら…」
子守りももう終わりだ。母親ごっこも。
落胆するような、安堵するような―――
■ロレンス > 「……知ってるさ、それを超えさせた時に生じる責任も、選択の難しさも」
だからこそ、人を超えさせる時に間違った選択をすれば、その相手が苦しむのも知っていた。
同じ時を生きれないことを理由にするには、何処か違うような気もする。
今までと違う何かが、彼女の中に食い込んでいる事が分かれど、正体がわからぬもどかしさに、心が焼けるように痛みを覚えて、わずかに笑みが崩れた。
そして……完全に崩れたのは、彼女を失うイメージを浮かべた時。
「……ごめんね、怖がらせたね」
手の甲に感じる新たな温もり、それに合わさるように瞳の赤色が消えていくと、周囲を満たした赤色も消えていく。
珍しく感情をあれさせてしまった事を詫びながらも、優しく撫でる感覚に、安堵の吐息を零す。
少しずつ熱が下がっていく中、赤子の泣き声に顔を上げた。
「……」
挙句に子供を起してしまったともなると、居た堪れない心地になりながら俯く。
魔として長く生きながら、まだ己の感情を満足に抑えられぬ自身を恥じながらも…まだ抑えが効かない気持ちに従ってしまう。
子供へと振り返った彼女の体を抱き寄せ、ぎゅっと捕まえるかのように力強く包みながら一呼吸すると、耳元に囁く。
「その子を返しても、まだここに居てくれるかな…?」
彼女を力では縛りたくない、時間を買った上でもその意志を問う。
嫌だと言うなら、彼女をここに縛り付けることは出来ない。
手放すことに淡い恐れを感じつつ、静かに問いかけた。
■オデット > 以前言っていた壊れてしまった誰か。
それがこれほどまでに彼を変化させるのだろうかと思い返すが、これ以上刺激するのは控えておく。
―――恐怖を感じたからではない。壊れるのなら、彼の方ではないかと思ったから。
どれだけ踏み込んで どれだけ暴いて許されるのかは人か魔かは関係なく、難しいところである。
まだ本格的に覚醒しているわけではないものの、間もなく赤子は
あの甲高い声で泣くのだろうと それを防ぐべく抱っこしようと立ち上がり―――かけた時。
抱き寄せられて ぽふ、と彼の首筋に顔が埋まる。
いつもとは少し違う声の調子に、まだ相手が元に戻っていないことが窺い知れた。
「…まるでロレンスさまも子供になってしまったみたい。
ご気分がよくなるまで撫でて差し上げます。……なんて、叱られてしまいますね」
片腕を彼の背に回し、言葉通り宥めるように、慰めるように撫でて応える。
相手が己のことを理解しきれぬように、己とて相手の機微は分からない。
なぜ彼が怒ったのか、何を怖がっているのか、―――本当のところは把握できていないのだ。
「赤ちゃんを連れていったら戻って参ります」
まるで本当に子供に対するように ゆっくりと、彼の耳元で言い聞かせ。
■ロレンス > 普段と違い、感情的なところを多く見せてしまった事に、彼女の気持ちが離れないかと不安になっていく。
それだけ、感情を引きずり出されることが少ない。
魔の激情を露わにするのは、人には噛み合い悪い事を知っていたからだが……その不安を解すように、背中に感じた掌に身体が小さく震えた。
「……子供か、悠久を生きてもまだ…未熟者だね、私も」
子供をあやすような仕草に、苦笑いをこぼしながらも安堵していく。
強張った身体から力が抜け、抱きしめたまま彼女の掌を受け入れる。
壊れることと失うことに焦ったのだろうかと思いながらも、瞳を閉ざそうとしたところで、耳元を擽る声に苦笑いを再び浮かべた。
「そこまで子供扱いされると、少し気恥ずかしいよ。大丈夫、待ってるから行ってきてくれるかな?」
照れくさそうに呟くと、顔を上げつつゆっくりと抱擁を解く。
まだ自分は彼女に嫌われていなかったらしい、それが確かめられただけでも、心のなかにあった嵐は過ぎ去る。
そして、そのまま彼女を見送り、戻るまで一人……部屋の中で思い返す。
魔と人、幾度とその繋がりを渡って生きてきた自分もまだ、把握しきれない何かがあるのだろうと。
その後の部屋での秘め事は、二人のみぞ知る夜となっていく。
■オデット > 「―――…ふふ」
後悔しているような口ぶりも、こちらからしてみれば普段の調子に少し戻った気がして余裕が出てくる。
だから思わず笑ってしまった。
魔だからといって、人の人生よりずっと永く生きているからといって、感情が揺さぶられぬわけではないようだ。
大丈夫、と言う彼から離れて立ち上がると大丈夫ではない様子の赤子の元へと。
ふにゃ、ふにゃと今にも泣き出しそうなその子を抱えて女は出ていく。
間もなく廊下に泣き声が響き、それが慌てる速度で遠ざかってゆくだろう。
女が戻ってくるのは数十分後。
約束通り今夜は彼の傍で穏やかに過ごすことだろう。
静かに夜は更けていく―――
ご案内:「九頭龍の水浴び場」からオデットさんが去りました。
ご案内:「九頭龍の水浴び場」からロレンスさんが去りました。
ご案内:「九頭龍の水浴び場」にシャルティアさんが現れました。
■シャルティア > 九頭龍の温泉、小さな岩場の露天の一つに、小さな少年が舞い降りる
背には小さな羽根、栗色の髪、人懐っこそうな幼い顔立ちをした天使だ
いつもなら元気いっぱいに駆けていって、温泉にダイブしてるのだが、今日はちょっと、ひょこひょこするような歩き方で温泉の縁へ立つ。綺麗に身体を洗い流しつつ、お尻に手を当てて
「…むぅ、まだ何か入ってる気がする。」
と、難しい顔してる。お腹にもちょっと違和感がまだある。
まあ、先日の行為がまだ身体に残ってるようで、流石に始めての挿入で巨大なペニスを飲み込んだので、やはり違和感は残ってる
「そっかー、入ってたんだー…えへへ」
と、大事なものをなでるように、お腹を擦ってみる。先日まで、繋がってた証拠だ。それは少年にとっても嬉しくもあって
■シャルティア > 「痛かったな…痛かったなー…えへへ、えへへへへへへ♪」
痛かった、そう、痛かったのだ。指でもちょっと痛いのに、アレはもう凶悪というか怪物であった。なのに、少年はその痛みすら愛おしそうに笑う。痛みより、呼吸が苦しかったことより。嬉しさの方が大きかった、だから、少年の頬は緩んだままである。
「おとと、でも今は…っと」
ぽいっと、脱いだ服を放り投げると、解けるように光の粒子になって消える。脚からゆっくりと温泉に浸かる。ここの温泉は痛み止めとか、そういう効果もあったはずだ。ずっとこの感触に浸っていたいけど、それはそれでこまるので、温泉で湯治をしようと。
ぬるい温泉はここちよく、少年の身体をほぐしていく。はにゃぁ♪と気の抜けた声を出して
■シャルティア > 身体が幾分楽になる。まだ幼い少年の肌にも優しいぬるい温泉。たまに大人びて熱い温泉に浸かることもあるけど、やっぱりこっちの方が好き。
ほぐれた身体を、ん~~~っと伸ばしながら、夏と秋の間の、涼しい風を頬にうける。心地よさに、ちょっとだけ目を細めて
■シャルティア > 「むぅ…違和感はなくなったー♪でも…むぅ」
痛かったけど、気持ちよかった。何度も何度もイカされた
まあそれはいい、気持ちいいのは大好きだから、いいのだ。でも、相手はどうだったのだろう、と考える。勿論気持ちいいと言ってくれたし、いっぱいいっぱい、注ぎ込んでもらえたけど、自分は突かれてるだけで殆ど動いてない。良かったのだろうか…とちょっと考える。難しい顔…
「ちゃんと聞こ♪こんどはもっともっと、きもちよくなってほしいなー♪」
と、ちゃぷちゃぷとお湯を肩に掛けつつ、そう呟く
■シャルティア > 「…うし!あがるっ♪」
明るい声で少年は湯からあがる。虚空からバスタオルを出して、身体を拭って、そして少年は空に飛び去っていった
ご案内:「九頭龍の水浴び場」からシャルティアさんが去りました。
ご案内:「九頭龍の水浴び場」にジードさんが現れました。
■ジード > 月の綺麗な晩に岩風呂を一人で占領しながらタオル一枚腕に引っかけた格好で
湯船の中に浸って痩躯を晒している人影があった。
商品の仕入れの帰りに立ち寄った宿の湯に魅了されて以降、街の外に行く用事がある時は
少し遠回りでも必ずこの近辺を通るようにしていた。
あまり人のいない時間を教えてもらって狙い通り、ほとんど独り占めの状況で
湯船に体を浸して弛緩したように息を吐き出し肩を揉む。
無理を言って用意してもらった冷たい酒を陶器製の小さな器で喉に流し込み。
「ああ、思ってた通り良く合うな。あまりお勧めはしないと言われたが何でやら」
感じる清涼感に満足そうに独白しがてら勿体ないともう一つ漏らし。
■ジード > 「―ーム。なるほど、段々くらくらしてきたね。お勧めしないというのはこういう事か」
体にはよろしくないということをその身で実感しながらも残った酒を煽り片づける。
体中に回る熱を振り払うように立ち上がると酒瓶を片手に風呂場を後にしていく。
時折ふらついていたのはご愛嬌。
ご案内:「九頭龍の水浴び場」からジードさんが去りました。
ご案内:「九頭龍の水浴び場」にシドさんが現れました。
■シド > 夏過ぎて秋向かえても茂る梢から隠されたような場所。隠しきれぬのは薄白くたなびく湯気。木々を目隠しとして造られた温泉。
広く開放された場所に人の気配がないのは場所か時の故か。岩盤を歩く素足の張り付く音さえ酷く耳につく。
人の気配がないのを確認してから裸体を晒して並々と讃えられた湯殿へ。入る前に掛け湯を行うのは常識。
銀髪がたっぷりと水滴り背筋に張り付くほど浴びてから長い足を差し込んでいく。
夜気に当てられた肌には刺激的な熱さ。それも肩まで憑かれば抱きしめてくれるような温かさに変わって。
「ふぅ…」
震え上がる身体から至極心地よさ気な声が出るのに苦笑いが出てしまう。