2017/08/05 のログ
ご案内:「九頭龍の水浴び場 混浴露天風呂」にツァリエルさんが現れました。
■ツァリエル > 「どうしよう、この体……」
温泉で途方にくれているツァリエルは今体に異変を抱えている。
朝起きたら自分の体が男のものとも女のものともつかぬ曖昧な体になってしまっているのに気づいた。
以前から体が魔法や薬によって女性になることは何度か経験しているが
なんの心当たりもなく変化した例はあまりないので驚いてしまった。
とりあえず何か治る方法を模索して湯治場として名高い露天風呂に来たが
こんな方法で治るとも思えないが今は藁にもすがる思いだった。
懇意にしている魔法使いもおらず、相談できる相手はみな都合が悪い。
一人悩み抜いての選択だったのだが果たして効果の程はでるのだろうか。
乳白色の熱い湯にそろそろと足先から浸かる。
効能は怪我や病気に効くと書いてあったが、さて魔法の変身にも効くのだろうか。
「はふ、気持ちいい……」
お湯の熱さが心地よく、まだ誰もいない浴場は一人でのんびりとお湯を楽しめる。
■ツァリエル > 湯治の効果が出たかどうか、確かめるために自分の体を調べる必要がある。
きょろきょろと周りを見渡し誰も居ないことを確認したあと、
そろりと自分の股の間に手を伸ばす。
いつもと同じ少年らしい小さなペニスの奥、指を這わせれば
そこには女性のつるりとした割れ目がやはりある。
「ん……く……」
早々効果が出るわけもなし、そもそも湯治で治るものでもないのかとがっかりする。
あまり自分の性器を撫で回すのも変な気分になるので
さっさと指を引き剥がそうとするが……
「っ……なんか、変……」
誰も居ないことをいいことにどうしてもそこをいじるのがやめられない。
秘裂に恐る恐る触れ、指先で割れ目を撫で回し肉芽をつついてみたりする。
女性のそこがどうなっているかわからないでもないが
自分の体についているものをじっくり調べることもなかったわけで
だんだんと興味が湧いてついいじり回してしまう。
「はぁ……、ん、っ……だめなのに……」
いけないこととはわかりつつも股の間を探るのをなかなかやめることが出来ない。
ご案内:「九頭龍の水浴び場 混浴露天風呂」にシトリさんが現れました。
■シトリ > 先客がいないと思われていた露天風呂、しかし実はいた。
「……………っ…!?」
ツァリエルが浸かる白い濁り湯のすぐ隣、水風呂と言っても差し支えない温さの浴槽。
その水面から、かすかな水音一つだけを伴い、レモン色の短髪が生えた褐色の頭部が浮上してくる。
シトリはかれこれ1時間も前からこの水風呂の底に潜んでいたのだ……正確に言えば、潜ったまま寝てしまっていた。
半分は水精霊の身体。潜っていても窒息することはなく、むしろ体力の回復には都合がいい。
(……なに、してるんだろ……お……おなにー、ってやつ……?)
水の外から聞こえてくるかすかな嬌声に目を覚まし、額と目だけを水面の上に覗かせてみれば。
隣の浴槽には、自分と同じ褐色肌をした少女……それとも少年? 性別は判然としないが、なにやらいやらしい声を上げている。
シトリはしばし、その光景に見とれていた。
立ち上がったりはせず、水音も立てず。ツァリエルは視界の端にちらつくレモン色の頭髪に気づけるだろうか。
■ツァリエル > 誰もいないと思っていたことに油断して
自分の体を弄り回すことに没頭してしまうツァリエル。
誰かに聞かれるかもしれないと恐れ、声だけは一応押し殺してはいるが
それでも浴室の造りでは悩ましげな声も響いてしまう。
(指……入れてみようかな……)
興奮と興味によって正常な判断ができなくなった頭が
割れ目の奥へと細い指先を埋めるよう指示する。
つぷ……と湯の中で女性の秘められた箇所へ指先が埋まっていく。
「ひ、ぅううん……っ!」
ぞくりと指先を埋めただけなのに体に快感の衝撃が走る。
埋めた指先もまた熱く、蠢く膣壁の刺激に気持ちよさを得ていた。
もっと奥へと指を埋めたい気持ちになるが、これ以上いけないという理性が僅かに働いた。
一息に指を抜き、ほっとため息を漏らしてようやくそこで周囲の様子に目をやれば
となりの水風呂にぷかりとレモン色の何かが浮かんでいる。
「ひゃ、ひゃああああああああああっ!!」
それが何かはよくわからないが思わずびっくりして甲高い悲鳴を上げてしまう。
慌てて湯からざばりと上がり、タオルで自分の体を隠し水風呂から距離を取るが……
■シトリ > たどたどしい手つきで、自らの秘部を弄っている眼前の人物。
シトリから見えるのは肩口までだし、性別は未だ判然としないが、それでもその仕草はたまらなく色っぽく、官能的。
か細い喘ぎ声がそのいやらしさに拍車をかけ、見入るシトリも否応なく興奮してしまう。
しかし、それは唐突に終わってしまう。眼前の人物がふと、こちらに視線を向ける……気付かれたか、と思うや否や。
「ひっ!? あっ、あ、あのっ、こ……これはっ!!」
突然叫び声を上げ湯槽から飛び上がるプラチナブロンドの人物の仕草に、シトリも驚き、ざばりと飛沫を上げて立ち上がってしまう。
成り行きとはいえ、やっていることはほぼ覗き。罪悪感を弁解するかのように両手を前に出して振るも、言葉はどもって巧く出てこない。
持参した手ぬぐいは遠くに放ってしまった。ツァリエルのように身体を隠すことはできないまま、浅めの湯槽の中に立つシトリ。
波打つ水面からは、天を仰ぐように屹立した歳相応の皮被りのペニスが生えているのも見えるだろう。
「………ご、ごめんなさい。その……えと……邪魔、しちゃったようで……」
しばらくして落ち着きを取り戻した褐色の少年は、まずは眼前の人物のリラックスタイムを妨げてしまったことを謝罪する。
やや俯き、ツァリエルの身体は直視せず。その顔はほんのりと赤く染まっている。
■ツァリエル > ざばりと水風呂から出てきたのは自分とそう歳の離れていない少年だった。
レモン色の何かの正体は彼の頭髪だったらしく、
そこでやっとおばけや怪物のたぐいではなかったことに安堵した。
だが安堵したのもつかの間彼に自分の痴態が見られていたということに
かぁっと頬が熱く赤くなる。
その証拠に彼の小さな性器は健全に屹立し、興奮を示していた。
「あ、えっと……あのう……」
未だ警戒を解くことが出来ないままきつく体をタオルで覆い隠し
どぎまぎと声をかける。だが何を喋ればいいのやら……。
「……もしかして……見てた?
お、お願い……誰にも言わないで……」
穴があったら入りたいような気持ちで小さく呟いて懇願する。
今の自分の体の秘密や自慰をしていたことなどを誰かに言われてしまったら
恥ずかしさのあまりどうにかなってしまいそうだった。
「き、君……ええと、誰……?」
名前など聞いてどうするのか、あまりの焦りにまともな判断が出来ず
つい名前を尋ねてしまう。彼も温泉客なのだろうか。
■シトリ > 相手の様子を伺うため、伏せていた顔をそろそろと上げ、上目遣いに相手を見る。
タオルを纏い、こわばった姿勢で身体を隠している。やはり性別ははっきりと分からない。
そしてここにきてようやく、自分の恥ずかしい場所を相手に晒していることに気づくシトリ。
股間を隠すかわりに、ざぱっと音を立てて下半身を水風呂に沈める。
シトリの方もまた、他人の自慰風景を目撃するような状況ははじめて。言葉に詰まってしまうが。
「あ、う……えと、その、だ、大丈夫だよ。誰にも言わないよ……言ってもなんの得にもならねぇし。
それに、その……そういうことしちゃう気持ち、オレにもわかるもん。
一人でお風呂に浸かって気持ちよくなったら、つい、しちゃうこと、オレにもあるから……。
って、な、なに言ってるんだろうなオレ! あ、あははは……」
相手が泣き叫んだりしてこないのを察すれば、今度は相手の警戒を解くように必死に言葉を紡ぐシトリ。
伏せた顔はなおも赤く染まったまま。興奮を紛らわすように、知らず知らずのうちに早口になっていく。
「えっと……オレ? オレはシトリ、冒険者やってるシトリ。よ、よろしく……。
君の名前も知りたい……けど、恥ずかしかったら言わなくてもいいよ。
それと……その、こんなこと聴くの変かもしれないけど……キミって、男? 女?
あ、いや、いまの時間が男湯か女湯か混浴かわかんなくてさ……結構ながいこと寝てたっぽいし……あはは……」
■ツァリエル > 自分を落ち着かせるためにあえて早口になる男の子の様子に、
年下に慰められて恥ずかしいという気持ちが湧き上がる。
深呼吸を一つしてから、タオルを胸元でとめそっと彼の方に近づく。
「あの、約束してくれてありがとう……変なところ見せてごめんね」
そうして水風呂の脇に腰を下ろし、顔を赤らめながらシトリに微笑む。
「僕、ツァリエルっていいます。よろしく……。
一応、男だけど……今ちょっと体が変になっちゃってて
自分でも男か女かわかんなくなっちゃってるんだ……」
タオルの上からではわからないだろうが、ツァリエルの体は
なだらかな起伏を伴っており、胸もそれなりに膨らんでいるが
男か女か分かりづらいほどの微細な変化でそれを判断するのは難しいだろう。
「それにしても、長いこと寝てたって、お風呂で?
危ないよ、君みたいな小さな子がお風呂で溺れちゃうってよくあるんだから……」
心配そうにシトリに目をやる。
■シトリ > 「ツァリエル、ね。よろしく。男子だったんだね、じゃあオレも安心……」
名乗られた名前を反芻し、男であるという主張にようやくシトリの緊張もほぐれる。
お風呂場で異性と共に居るのはやはり緊張するし、同性であれば逆にいろいろ気を使わなくてすむというもの。
……しかし、続くツァリエルの妙な発言には、再びぴくりと肩を震わせ、目を丸くするシトリ。
伏せていた顔をすっと上げ、水風呂の傍らに座り込んだツァリエルの方を今度はまっすぐに見つめる。
しっかりと前を隠すツァリエルの輪郭はやはり詳細に窺い知ることはできないが。
「……男か、女か、わからなく………それって……オレと同じ……」
最後の方は、ほとんど聞こえないほどに小声。それでも運がよければ(悪ければ)ツァリエルの耳にも届いたかもしれない。
「……あ、ああ! お、オレのことは大丈夫だよ。溺れない身体だからさ。
なんつーかその、オレも突拍子もないこと言うけどさ。オレも色々あって、今はちょっと身体が変でさ。
水の精霊っつー奴のくっついちまったようで、水の中でも息できるんだ。だから心配すんなって!」
水のしたたる短髪をがりがりと掻きながら、不器用な笑みを向け、声を張り上げるシトリ。
「……そっかぁ、ツァリエルも身体が変になってるんだな。男なのに、どっちかわかんない体になっちゃって。
それでつい、なんつーか確かめるような気持ちでおなにーしちゃってたんだな……」
続いて、相手の気持ちを汲み取る言葉を吐くシトリ。しみじみと語るように。「わかるわかる」と言わんばかりに。
その口調に嘲笑や嫌悪の色は混ざってないが、ツァリエルにはどう聞こえるか。
■ツァリエル > 男同士であるという気安さにツァリエルもほっとしたような表情になる。
だがつづくシトリの小さなつぶやきにえ、というように首を傾げた。
「シトリくんも、同じなの? その、男の子の象徴も女の子の象徴も付いているの?」
まさか自分と同じような境遇の相手がこんな近くにいるとは思いもよらず
ずいっと顔を相手の方に近づけて尋ねた。
溺れない身体だから、と説明するシトリも何やら複雑そうな事情がありそうで
うんうんと相槌を打つもののきちんと理解するのは難しかった。
とにかく、溺れないということがわかったのでひとまず安心は出来た。
「水の中でも息が出来るの? それってすごいね……。
その、水の精霊がくっついているから体が変になっちゃったのかな……。
う、うん……オナニー、本当はあんまりいいことじゃないからいけないんだけどつい……。
シトリくんもしたことあるの?」
自分をあざ笑うでもなく、同意してくれる相手にツァリエルも警戒心を解いて
あれやこれや尋ねてしまう。
自分の恥ずかしいところを見られたのだから、相手の恥ずかしいところも若干知りたい気分ではあったし。
■シトリ > 「うっ……ぐ……」
口に出したつもりはなかったが、声が漏れてしまっていたか。それがツァリエルに届いてしまったか。
『同じ』という点に突っ込まれると、つい口ごもってしまう。
馴れ馴れしく近づけられるツァリエルの顔。その造形は妙に色っぽく、素直に同性として見れない自分に気付く。
シトリはそんな彼からほんの少しだけ距離を取るように、また湯槽の中でざぱりと立ち上がり、数歩奥へと歩く。
意図せず、シトリの身体の輪郭を再びツァリエルに見せつけるように。褐色の胸はほんのり柔らかく膨らみ、お尻も大きい。
おちんちんはすっかり萎えているが、ツァリエルの傍に居続けたら再び元気になってしまいそうな、そんな気がした。
「お、オレはまだ男だよっ! ちんぽはついてるけど、おっぱいも……ま、まんこもねーし。
でも……その。何度か、そうなっちまったことはあるんだ。そして、いつかずっとそうなってしまいそうな気もしてるんだ。
……そう、そう! 水の精霊がくっついたからそうなってるんだ。オレの故郷の守護精霊だったんだけど、女って言い伝えがあったしな」
両手でぐっと股間を隠しつつ、所々詰まりながら説明する。
「おっ、オナニーも…そりゃするよ。みんなしてるだろ。オレはそう聞いたぜ。自慢できることじゃないけどよ。
でもオレは『男子』としてだけオナニーしてるぜ。
その……怖いだろ。男なのに、女としてオナニーするとか。おかしくなっちまいそうじゃん」
年上と思われるツァリエルからの無邪気な質問にも、生真面目に答えるシトリ。
答えながら、先程目撃したツァリエルの自慰シーンを脳裏に浮かべる。彼のあの仕草や声、今思えばかなり、女らしかった……。
「……な、なぁ。ツァリエルって、男なんだろ。
もし、もしだよ。身体が完全に女になっちまったら、ツァリエル、どっちとして生きていくつもりだ? 男か、女か」
湯面に立ち尽くしたまま、シトリは体をこわばらせつつ、ゆっくりと問いかける。
■ツァリエル > 自分から距離をとったシトリを不思議そうに見つめる。
が、湯船からあがったその体は確かに同性にしては胸もお尻も豊かな膨らみを持っている。
自分のために適当に話を合わせているわけでもないことは理解できた。
「そっか、シトリくんも時々なることがあったんだね。
良かった、ごめんね……なんか僕だけじゃなくて安心しちゃったっていうか……
同じ境遇の人がいてほっとしちゃったんだ。
オナニー、皆するの?それって本当?
僕、さっき女の子の部分でオナニーしちゃった……
もしかしたら女の子の部分、消えなくなっちゃったりしないかな……」
シトリの説明に心配そうに自分の体を抱きすくめる。
もしも自分の体がこのまま中途半端な状態のままだったなら
どうやって過ごすべきか……。
そう考えていたらシトリからこわばった問いかけがなされる。
少し悩み、考えてから……おずおずと答えた。
「もしも、女の子になっちゃったら……
僕の意志なんか関係なく、女の子として生きなきゃならないかもしれない。
僕をお嫁に欲しいって言う人、いなくはないんだ。
だからその人達の言うことに従って女の子としてお嫁に行くかもしれない。
で、でもシトリくんは男の子でいたいなら、男の子のまま過ごせばいいと思うよ」
最後のは気を遣って相手を励ますような言葉になった。
そうだ、男として生きたいなら男として生きればいいし、女として生きたいなら女として生きればいい。
その自由が許されているのならそれを謳歌したって罰が当たるわけじゃないだろう。
■シトリ > 「……さっき会ったばかりなのに変なこと言うようだけどよ。オレ、ツァリエルのこと、他人のように思えねぇよ」
ほっとした、と柔和な声で語るツァリエルに、シトリも応える。
しかし、シトリのその声はかすかに震え、どこか不安げ。あるいは僅かに苛立っているような。
『女の子の部分でオナニーした』という告白には、シトリの肉付きの良い身体が目に見えてこわばり、狼狽しているのは明らか。
そして、シトリ自身もどういう意図で問うたか分からない質問に、素直に答えてくれるツァリエル。
しかしその回答を聴くにつれ、シトリの身体のこわばりはなおも強くなり、戦慄さえも見て取れる。
すべてを聞き終えると、居ても立ってもいられないといった様子でシトリは水底を蹴り、飛沫を上げながらツァリエルに歩み寄った。
そして、彼が座り込む湯槽の縁に、バンと両手を尽き、ツァリエルの鼻先に顔を突きつけて睨みつける。
「なんだよ、それ……なんだよ、それ!!
ツァリエル、周りが女の子になれって言ったら女になるのかよっ! そんな生き方ってありかよ!
あんたの身体が変になったってのも、自分のせいじゃないんだろ?
男なのに、身体を変にされて女の身体になって、そして周りがそうしろって言ったら心まで女になって、お嫁に行くだなんて。
変だろっ! 普通に考えておかしいだろっ、そんなの!
ツァリエルがどうしたいかで決めるとこだろ、そういうのって! 男か女か、なんで他人に決められなくちゃなんねーんだよ!」
先程ツァリエルがそうしたように鼻先が触れるほどに顔を寄せ、唾をちらしながらまくし立てるシトリ。
苛立ちが頂点に達したかのように、興奮ではなく怒りで顔を真赤にしている。
……その苛立ちの理由、さっき会ったばかりの他人にどうしてここまで感情が昂ぶるのか、シトリ自身も薄々理解している。
ツァリエルは自分と似ている気がしたが、それだけではない。
シトリには、ツァリエルが自分の『弱い部分』を写像しているように思えてならないのだ。
しかし、一息にまくし立てた後、シトリは眉間にしわを寄せたまま、ふと目を伏せ視線を逸らす。
「……ごめん、言い過ぎた……かも。
オレ、まだツァリエルのことよく知らないのに。王都にはいろんな身分の人がいるって……一応は知ってるのによ」
■ツァリエル > 「うん、僕も……シトリくんのこと他人とは思えない。
どうしてだろう、お互いちょっと似た境遇だからかな」
体が変になっているというのにそのことで共感しても困っちゃうね、
などと苦笑しつつシトリに向けて笑いかける。
だがシトリの様子が目に見えて変わってくるとどうしたのだろうというように目を丸くした。
自分の答えたことがどうやら彼を苛立たせ、不安にさせているのだとわかれば
狼狽えるように体を強張らせた。
そして一気にシトリに捲し立てられればぽかんと口を開けて相手を見つめる。
一気に近くなった距離に動じることもなく、ただ自分のために怒ってくれているシトリをまじまじと見つめた。
「……シトリくん、……ありがとう、怒ってくれて。
本当は僕もそうしたいと思っているけど……でもそう出来ないこともいっぱいあるから」
顔を真赤にし、視線を逸らして詫びるシトリに首を振って優しく声をかける。
「僕は自由に振る舞えないかもしれないけれど、でもシトリくんはそうじゃないなら嬉しいな。
シトリくんは水の精霊だかに負けないで男の子としてちゃんと生きてね。
それに僕だってまだ、本当の女の子になったわけじゃないからちゃんと男に戻る方法を探すよ。
今だって湯治してもとに戻らないか試していたんだよ」
結果は見ての通り駄目だったみたいだけど……なんて笑って肩をすくめる。
先程会ったばかりではあったが、ツァリエルはこの優しい少年のことをすっかり気に入ってしまった。
自分のためではなく他人のために怒れるのは心が清い証拠でもある。
そっと相手の頭に手を伸ばし、レモン色の頭髪を優しく撫で回した。
「僕、そろそろ上がるね。他に人が来ちゃったらまたまずいことになるかもしれないし。
シトリくんもあんまり長湯しないでね、のぼせちゃうかもしれないよ」
そう言って湯船の縁から立ち上がると、脱衣所に向けて歩き去っていく。
扉の前でシトリに向けて手を振り、またどこかで会おうねと声をかけて脱衣所の中へ入っていった。
ご案内:「九頭龍の水浴び場 混浴露天風呂」からツァリエルさんが去りました。
■シトリ > 似た境遇。たしかに、『身体がおかしくなっている』という点を見ればそうかもしれない。
しかし彼いわく、シトリには自由があり、ツァリエルには自由がない、ということらしい。
本当にそうなのかもしれない。マグメールの貴族というのは大変多くのしがらみや企みの中で過ごしていると聞く。
……でも。
「……お、オレは大丈夫だから。何があってもオレは男だし。
水精霊のせいで身体が女になっちまって、心まで女になっちまいそうでも……そうなるときは、自分の意思でそうするから。
……オレは、男だけどよ。な」
不自由、不可能を語るツァリエルをこれ以上責めたてる言葉を吐くことはできず。
口どもるように、ツァリエルの励ましに応えるシトリ。
本当は自分がツァリエルに発破を掛けなければいけないはずなのに、できないのがくやしい。
……『できない』ということは、こんなにも悔しいことなのだ。それをツァリエルにも知ってほしい。
あるいは、すでに十分すぎるほどにその悔しさを味わったうえで、あそこまで飄々としているのか。
そうだとしたら……薄っぺらい人生を送ってきたシトリに、ツァリエルの苦悶を汲み取る力などない。
「……うん、またな、ツァリエル。次会うときは、身体、戻ってるといいな」
去っていく褐色の人影を、シトリは水風呂の中に立ち尽くしながら、ぼーっと見送った。
そして、脱衣所の戸の向こうへと影が消えると、シトリはその場で気を失うように倒れ、水の中に身を投げた。
ぬるま湯の底へ底へと身体を沈め、そっと目を閉じる。ツァリエルが来る前からそうしていたように。
「……………」
水に潜っていないと、涙が溢れてしまいそうで。誰にも見られていなくても、男として泣くのは恥ずかしい。
ツァリエルと会ったことで、自分も彼のようになってしまう気がした。そんな実感が形を得ていく気がした。
よくない。とてもよくない。言い知れぬ不安を思考から追い払うように、シトリは懸命に考え続けた。
(オレは男だ……いつまでも男だ……絶対に……)
ご案内:「九頭龍の水浴び場 混浴露天風呂」からシトリさんが去りました。