2023/07/20 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にエイリさんが現れました。
エイリ > 依頼の張り出されている掲示板を見上げ、ふぅとひとつ大きなため息をついた。手頃な依頼が何ひとつなかったからだ。
閑古鳥の鳴いていた店は早めに閉めて、冒険者ギルドへ依頼を物色しに来たのだが、ものの見事にアテが外れたかたちだった。

「オーク討伐の遠征隊か……。実入りはいいけど、妾の店をあんまり長いこと空けておくっていうのもねぇ」

長期遠征ともなれば報酬は充分で、さらに移動中には娼婦の真似事をして小銭稼ぎもできそうだったが、いかんせん期間が長すぎる。
流浪の身だった頃ならよかっただろうが、店を持って常連客もできている今は、留守にできるのも1~2週間が限度だろう。

胸も尻も顕なクノイチ衣装を普段着とし、腕組みの姿勢で乳肉の盛り上がりをさらに強調している彼女だが、それに注目している者はほとんどいない。
隠匿のニンジツで、何の変哲もない地味な服を着ているように見せかけているからだ。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にヨハンさんが現れました。
ヨハン > 地味な服に身を包む彼女の、そんなぼやきが聞こえたのか。
一人のフードを被った、同じ冒険者であろう青年が歩みを進める。
微かな金属の擦れ合う音があるが、そこそこ冒険者のいる今のギルドにそこまで響くことはないだろう。

「最近なかなかほどよい依頼ってのは見つからないよねぇ。
まぁ、冒険者を副業にしているなら余計にちょうどいいってのはなかなかなさそうだけど」

そう人懐っこい笑みを浮かべた青年はあなたに近づきながら話しかける。

「突然ごめんね、ついぼやきが聞こえちゃってさ。ま、僕も別になにか解決策があるわけじゃないんだけど」

紺色の衣類と、各所に鎧を仕込んである、いかにもな冒険者の青年。
フードを下ろして、黒髪の短髪と蒼い瞳が露わになって彼女へと視線を向けて。

エイリ > 「ちょっと遠いところに生えている薬草を取って来て欲しいとかなら、1日2日で帰って来れるから、いいんだけどねぇ」

冒険者というのは孤独そうでいて、横の繋がりを軽んじていては長く続けられない職業だ。
顔見知りでなくても、気軽に声をかけあって情報交換をすることも多い。
なので隣に並んできた青年が彼女に対して話しかけているのだと分かると、横目で彼のほうを見ながら気さくに応じて。

「アハハっ。実は貴女だけに紹介できる、とびきり美味しい仕事があるんだけど……
 なんて言われるほうが警戒しちゃうよ。
 そう美味い話が転がってるはずないからね」

名の売れた冒険者ならいざ知らず、副業程度にやっている立場だ。
秘密裏の依頼など、そうそう舞い込むものではない。
ぶつかった彼の視線は特に違和感を抱いている様子はなさそうで、ニンジツは看過されていなさそうだと気づく。

ヨハン > 「薬草採取は定番だけど、量とか質で時々報酬が増減するからなんともだよね」

うんうんと頷きながら、気さくな様子の彼女に向かって。
副業でも本業でも、冒険者というのは横のつながりがなければパーティーはもちろんいい話もしょい込んでこない。
こうして話しかけるのもそうやって僅かでも繋がりを広げる為が主であり。
まぁ若干困っている女性ということで話しかけてみたというのもあるが。

「なにそれ。胡散臭すぎて笑っちゃうね。
 第一、そういう風に実際に声をかけて来る人って成功するとどうして思うんだろうね」

ハハッ、と彼女の言葉に笑いながら、彼女の真意に気付くことなく掲示板を見上げる。
青年の白い肌はそこそこ清潔感があり、髪も乱雑にはなっていない。
手入れはしていないようだが、最低限見栄えを整えているのがわかるだろうか。
下心や警戒心のあるなしはともかく、困っていたようだから話しかけた、という感覚はわかるかもしれない。

「魔物の討伐依頼も、基本は近場で起きることなんてないし。
 やっぱり、なるべく近くてすぐ終われるってなると薬草探しか。
 あるいはこういう風に建築や一部貴族の屋敷の護衛ぐらいしかなさそうだね」

と、いくらか手に取って眺める。

エイリ > 「それでも客の来ない店で店番をしてるより、妾が必要な薬草も仕入れられるから一石二鳥ってことさ。
 ――あ、そうそう」

と言って、小さく折りたたまれた紙片を取り出す。
極小な衣服の隠しポケットから取り出しているのだが、じっと見ていなければ忽然と現れたように見えたかもしれない。
その紙片を彼の目の前でヒラつかせて。

「平民地区の端っこで『モミジ』って薬屋をやってるから、暇なときにでも来てよ。
 あんたは薬で自分に暗示をかけないと戦えないって御仁でもなさそうだし……。
 そうだねぇ、効果は保証しないけど惚れ薬なんかもあるよ」

ちゃっかり営業をかけて紙片を押し付けてから、隣に並んで依頼の紙を眺める。

「相場の分からない貴族様の護衛なんかは楽だし儲けもいいけど、そういう美味い仕事は早いもの勝ちだからねぇ……」

ヨハン > 「なるほどね。そういう店をやってるんだ―――っと?」

声をかけられて顔を向けて、それまで依頼書に視線を向けていたせいかどこから出てきたのか気付かず。
その紙片を押し付けられながら受け取り、中身を確認して。

「ふーん、薬屋か。まぁ財布が重くなったら、ってぐらいでもいいなら……。
 あー、そういうのよりは普通に傷薬とか、解毒薬とかの方が嬉しいかな。
 惚れ薬も興味はあるけど、なんだか危なそうだ。ジョークグッズとしてならちょっと欲しいかも」

などと冗談めかして笑いながら、隣に来る彼女を横目で軽く見た後、紙面へと目を通して。

「好色な貴族ならそれこそ美味くても多少見目が良ければ採用してくれそうじゃない?
 おっと、今のは失礼な言葉だったね。ごめんよ。
 お姉さんとても綺麗で美人だし、つい口に出ちゃった」

くす、と笑いながら。一度依頼書を置いて。ちょうどいいのが見つかったのかそれに名前を書き込んでいく。
ヨハン、という名前らしい。

エイリ > 「あら、馴染みの酒場に意中の看板娘はいないの?
 でも余興としてはちょっと危険かも。
 その娘がよく効く体質だったら、君の体にしがみついて一晩中離さなくなるかもしれないから。
 もちろん普通の傷薬や解毒薬もあるから、いつでも大歓迎よ。
 効き目がいい代わり、ちょっとお高いけどね」

少なくとも年上には見えない隣の若者を、からかうように笑う。
粗野なタイプが多い冒険者のなかでは顔つきも身なりも整っているから、町娘には受けがよさそうだ。
薬が効きすぎたことによるトラブルは珍しくないので、それを承知で楽しめるならという意図だ。

「そうよ、依頼さえ確保できればこっちのもの。
 貴族様と顔合わせをしたときに、妾しかできない追加のサービスを提案したら、報酬は2倍3倍にも跳ね上がるんだから」

艶めかしく唇に舌を這わせる仕草は、彼から見えているいかにも野暮ったい服装とは不釣り合いだったかもしれない。
何の依頼を引き受けることにしたのだろうと、後ろから覗き込んだ。

ヨハン > 「ん-、気になる娘はいるけど、他にも狙っている人が多い子はあまり狙わないようにしてるんだ。
 トラブルは御免だし。それで看板娘の評判が下がったりしても嫌だしね。
 でも、そこまでなるような薬はとっても気になっちゃうなぁ……。
 やっぱり、財布が重くなったら行ってみるよ」

からかわれていることに気づいているのか気づいていないのか、そんな風に素直な様子で笑って。
初々しさを見せないその様子に、多少この若者も慣れているだろうと察せられるかもしれない。
とはいえ、そうやって興味を惹かれる辺り、見た目相応、といったところだろうか。
その割には、同じ冒険者仲間などはいないようだったが。

「ふーん、追加サービスか。僕もあやかりたいところだけど、報酬を支払う側じゃなくて貰う側だからなぁ。
 キミは見た目の割に、結構そういうのも自信あるんだね。もっとプロポーション見せつければいいのに」

なんて、不釣り合いに見えるその仕草に先ほどの仕返しだろうか。
からかうようにそう言った後、書いている依頼は国の模擬戦闘の依頼だった。
対人用の騎士の訓練の相手として、と書かれているが。殺傷沙汰もあり得ることが注意書きされている。
それを知っていてか、知らぬかは不明だが受ける旨の同意書にサインをしていた。
報酬は、オークの遠征討伐のものよりも少ないようだったが拘束期間はそこまで長くはなさそうだ。

エイリ > 「いい貌してるのに、もったいないねぇ……。
 嫁にしちまえばその男の勝ちなんだよ、踏ん切りがつかないならうちの薬を使いなって」

荒事に慣れている冒険者だからといって、傲岸不遜な性格の人間ばかりではない。
先程から慎重な発言が多いところを見ると、彼は冒険者の仕事をしているが、出自は真っ当なのかもしれない。
などと、彼の横顔を眺めながら考え、気合を入れるように肩をぱんと軽く叩いた。

「見せつけ……あぁ、そうだね、そう言ってくれるのは嬉しいねぇ」

彼の言葉に裏付けをしてやりたくなったが、そろそろ店に帰らねばならない時刻だった。
不意をついて体の側面から密着すれば、彼から見えていただぼついた服装ではありえないほど豊満な肉感が伝わるだろうか。

「お店の名前だけ教えちゃったけど、妾はエイリというんだ。
 また会ったらよろしく頼むよ、ヨハン」

異質な感触に彼が反応して振り返ったのならば、衣服が鋭角に際どく食い込んだ尻を挑発的に振りながら、その場を立ち去る女の後ろ姿が映っただろう。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からエイリさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からヨハンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/公園」にリーベンさんが現れました。
リーベン > 陽が落ちて、虫の鳴き声もどこかもの悲しさを感じさせる時間帯。
公園のベンチに座る禿頭の大男は長い溜息をつきながら天を仰いでいた。

「酷い汗だ……遊びに行くにしても風呂に入るのが先か」

荷下ろしを終えて街へと繰り出そうとしたところ、倉庫内へ運ぶのを手伝ってほしいと届け先が言ってきた。
それは仕事ではないと断るのは簡単だったが、届け先の孤児院を運営する老婆と子供達だけでは手に余るのは明白だった。
炎天下の中で頭を輝かせながら食料だか何だかを運び、諸々の雑用が終わったのが30分ほど前。
愚痴っぽく紡いだ後に横にあるレモネードスタンドへと視線をやると、売り子の少年――少女だろうか?――が短い悲鳴をあげる。
苦笑と共に視線を上へ、そして正面へと移す。手元には先程買ったレモネード。コップが早速汗をかいている。

「この気温じゃあ、これ以上汗をかくような運動を金払ってやる気にはならないな。
となると、飲み過ぎない程度に酒と飯、か。……なんにせよ、もうちょっと涼んでからにしよう」

汗の匂いが好きという物好きもいるが、大抵の者には敬遠される。娼館ならなおさらだ。
肉体労働者が集う酒場ならば似た者同士だ、体臭を気にされることもあるまい。
孤児院での疲れが今になって襲ってくる。よほどのことがなければ動きたくはなかった。

リーベン > 何度かレモネードを口に運び、長い息をつく。心地よい風に目を細めた。
太陽に長時間晒されて熱をもった身体は少しづつ回復してきたようだ。

「……よし。行くとするか。飯食ったら水浴び場まで行って……宿もとっちまおう。面倒だ」

自宅としている魔導機械に戻るのも手だが、空調を整えるにも魔石が必要となる。それならば九頭龍の水浴び場で休んだ方がいい。
ベンチから立ち上がると、ネイビーの作業着の上を脱いで薄手のシャツ姿になった。
少しづつ暗くなり、人の格好を気にする者も減る時間だ。そう問題もなかろうと作業着を小脇に抱え、酒場へと――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/公園」からリーベンさんが去りました。