2023/06/04 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2 酒場」にエドヴィン・バルゼルトさんが現れました。
エドヴィン・バルゼルト >
 深夜 日付を跨ぐ時間でもやっている店はそれなりにある。
 夜を専門とする店は女についでに酒だろうが、酒を専門とする店も中にはある。
 店を出て、懐にあるのは煙草と金だけ。
 革製の拵えに身を包んだ中年は、また一つの酒場を訪れると手を挙げて挨拶をした。


   「よう、オヤッさん。 なんか、好い酒残ってるか。」


 今回はいつもの銘柄ではなく、店主が勧める酒を希望するように言ってからカウンターに腰を下ろす。
 周りは人も疎ら 明日に備えて眠る者と、稼いだ金を使おうと女を買ってしけ込んだ者が多そうだ。
 まだ安っぽい香水の残り香が漂っている。
 今は疎らで静かな酒場も、もっと賑わいを見せていたらしい。


   「おっ。」


 出てきたのは、透明な酒 所謂月光だった。
 密造された酒という変わったそれは、度数が高く透明でクリアな味がする。
 好い酒と言ったからには少し金を出す必要はあるものの、混ぜ物や粗悪な類ではないらしい。
 霞がかり、傷だらけの使い込まれたぐい飲みサイズの杯を取り、舐めるようにズッと口をつける。


   「―――美味い。」

 
 男の見た目はわかりやすく、甘ったるい味がする酒よりも、酒を甘いと感じる度数のやや強いものが合う
 酒を楽しんでほしいのか、店主は豆類とサラミを薄く切った奴だけ出してくる。
 男は気を良くして、懐から手巻きを何本も入れた革のケースを取り出すと、一本咥えるだろう。   

エドヴィン・バルゼルト >

 手巻きのそれは、茶褐色めいた細巻
 葉巻とは違い、紙巻のように刻んだ葉を平民が扱うクラスの葉を広げて綺麗に巻いただけの代物。
 両切りタイプのそれを咥え、マッチを一本バチッとグローブの甲に擦るとジジッと先端を燃やす。

 紙巻よりも香りが好いものの、やや低級な煙草を吸いながら透明な酒をまた一口飲む。
 穀物を発酵し、蒸留してから造るせいか金を持つヤクザか錬金術師が作る小遣い稼ぎの一つだ。


   「戦場に居た頃粗悪なやつを持ってきた馬鹿がいてな
    蒸留しているから味はたいして変わらないんだろうが。」


 こいつは丁寧に作っているから充分上物だと口にする。
 蒸留する前の発酵段階で、獣が飛び込んで溺死したり、ゴミが入ったり
 中には蒸留してしまえば関係ないからと、流し込む器に何でも使う者がいるくらいだ。
 ムーンシャインと全うに言えるくらい、きっとこいつは月を映せる透明度だろう。
 煙草で舌を辛くし、酒で流してさっぱりさせる。
 躰に悪い呑み方をしながら、サラミを口の中に入れて噛みしめる。


   「どこの錬金術師が持ってきたんだ?」


 などと口にしても、それ自体は秘密だろう。
 ただ、安く上物として流せるだけいいみたいだ。
 店主が灰皿替わりの貝殻を一つ出しているそれに、一本吸い切るとジッと押しつぶすだろうか。


 

ご案内:「王都マグメール 平民地区2 酒場」からエドヴィン・バルゼルトさんが去りました。