2023/05/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2/路地裏」にアスリーンさんが現れました。
アスリーン > 平民地区の路地裏に脚を踏み入れたら、悲鳴が聞こえてくるかもしれない。
けれどそれは悲痛なものではなく、甘美なモノ。
悲鳴に嗚咽、嬌声に絶叫────けれどそれは全て幸福から鳴るモノ。

また誰かが襲われているのかもしれない。
王都に住む者ならそう思うかも。
興味がないとスルーしても良いし、興味を惹かれたなら声の場所まで訪れるといい。


────そこには天使がいた。
うっすらと半透明に見える純白の六翼が生えた背中。
並の男性を優に超える巨躯。
滑らかな白い地肌を包む聖職者の法衣ながら、豊かに満ちた胸元を大きく曝け出している。
束ねた白銀の髪は長く輝いて、同じ色の長い睫毛がゆっくりと開かれ、その下のセルリアンブルーの双眸が宝玉のようにきらめいた。
その大きすぎる天使の腕の中には声の主がいる。
ほとんど裸身に近しく、ゆりかごのように天使の腕の中に包まれて、幸せに蕩けた表情で、快楽によって搾取され続けている。
それは間違いなく、異形の気配。
天使は、とてもとても愛おし気に、腕の中の存在を見つめ、子供を抱く母のごとく包み込んでいる。
まだ少女の面影も残す美しい横顔。
その顔がゆっくりと、振り向いた。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2/路地裏」にフィフティワンさんが現れました。
フィフティワン > その辺りを通りかかったのは、まったくの偶然のこと。

「…………はて???」

とても、不思議そうな表情を浮かべる。足を止めて。
最初悲鳴が聞こえてきたかと素直に思ったが、よく聴くと、それは悲鳴とは言い切れないしろもの。
普通の叫び声ではないことは確かだが、込められている感情が女には複雑すぎて、
一体何を想って発声しているのか、理解がおよばない。

不思議に対する興味半分、誰かがひどい目にあっているなら見捨てていくのは、何となく具合が悪い。
例えば無理矢理禁制のクスリをうたれて暴行を受けていたら、こういう叫び声にもなりえる。
と、そんな思考を3秒でまとめると、女ははたして声の出所をおとずれた。

そこには、天使がいた。
三対六枚の物質的に存在しているのか曖昧な翼を生やした……見上げるほどの大きな女。
巨躯といっていいだろう。率直に言えば。
いかにも天使、といった服装をしているが、露出が多い気もする。

「………………???」

何か言うべきかと思ったが、まるで子供をあやす母親のような姿を見て、思考回路が混線した。
これは、なんとも……
女はこれほどまえに判断のつかない状況を前にしたことは滅多にない、と思った。
そして、無表情に困惑しているこちらを、天使? のようなもの? が振り向く。

アスリーン > 路地裏の何もない通路の奥、少し開けた所に膝を揃えて座っている天使はゆっくり振り向いた。
その青い瞳が、この場所へとやってきた貴女へと向けられる。
視線が合う。数秒、じっと天使は貴女の眼を見つめている。
視線が逸らされることはなく、また貴女も反らさないのであれば、得も言われぬ感覚を覚えるだろう。

────貴女の視覚を侵すモノがある。

貴女の感情、感じ方、価値観がどうあれ、貴女が幸福というものを僅かでも知っているのならば。
目の前の天使は、繋がる視線から、貴女の視覚を侵し、脳へと幸福信号を送ろうとする。
とは言え、この現状で「ちょっとラッキー」だと思うことは、違和感があるかもしれない。

「まぁ、初めて逢う愛らしい貴女。こんにちは」

鈴を転がしたような声音が、貴女の耳に届くだろうか。
視覚と同じく、聴覚を侵すモノが現れ始める。
目を伏せ、耳を塞げば、今ならまだ侵蝕を防げるだろう。
天使はまだ何もしていない。困惑の表情を浮かべる貴女に、貴女の脳に、蜂蜜をかけるような甘くて愛しい、最高の好意に満ちた、愛情あふれる挨拶をしただけ。
腕の中にいた先客は、そっと地面に降ろされる。
蚕のような天使の羽根の膜に包まれて、誰かがそれをこじ開け救出するまで幸福な夢を見続ける。
それは、貴女の遠い未来かもしれないが、今は関係ない。

天使は立ち上がり、その巨躯から、120㎝も差がある貴女を見下ろし、近づいていく。
大きな掌、女性らしい細長く綺麗な指先が貴女の頬に伸びて、両手で包もうとしている。

フィフティワン > ぐらり。
視界が溶けたバターのように流動した。
と、思ったのは自分の体が少し傾き、咄嗟に片足で体重を支え直したからだ。
天使に見詰められた瞬間、緊張感が薄れ、心拍数が平常時に近づき、いわゆるリラックスした状態になった。
幸福とは興奮をもたらす、あるいはリラックスをもたらす、どちらかが最も初期の衝動としてよく知られている。
突然、何かが自分の頭の中に入り込んで、バチンッ と幸福スイッチ(そんなものがあるなら)を押したかのようだ。

幸福の信号の効果は、幸福に必要な土台のひとつであるリラックスを女にもたらす。
しかしまだ、同時にそのことに対する違和感もある。
頭が、くらくらする。女は自然とこめかみを指でつつき、首をぐるぐる回していた。
論理的思考を行おうとするが、喉に刺さった小骨のように幸福感の萌芽が邪魔してくる。

「こんにちは。あなたは、なんですか?」

女は問う。天使……の姿をした存在に。
しかし、どこか異質な存在だ。素直に問うてみたのは、少なくとも敵意の類はカケラも感じなかったから。
あるいは、その声を聴いた時に、もっと声を聴きたいと思ってしまったからかもしれない。
もっと声を聴くには会話が必要だ。
無条件の親の愛情というものを知らないし、欲しいと思ったことも特にはないが、こういうものなのかも知れない──
そんなことを漠然と考えてしまう。

す──
と、顔に向かって両手が伸ばされるその時まで。その場に立ったまま、気付けば動くことさえ忘れて。

アスリーン > 高揚よりも平穏を幸福と認識する貴女に、天使は美しく微笑んだ。
天使は貴女の敵ではない。
貴女を愛し、貴女を慈しみ、貴女に幸福をもたらすもの。
────それを貴女が望むまいと、一方的にそうすることを使命とした存在。

貴女の目の前に立った天使は、動かず、退かず、受け入れるように無防備に立つ貴女の頬を包んで撫でた。
貴女の生命を、存在を、たとえ貴女が何者であっても肯定し、愛する。
程よく温かい温もりが掌から貴女の頬へと伝わって、触覚を侵蝕する。
その愛情は幸福という蔦が伸びるように、無条件に貴女の思考を霧散させようとするだろう。

「わたくしはアスリーン。ヒトに幸福を与えるモノ。
 可愛くて愛しい貴女。貴女のお名前は何というの?」

鼓膜に声を響かせて、そして優しく問いかける。
そのまま首筋を、肩を、二の腕から背中へと手を滑らせて、抱き寄せる。
そこまで近づけば、甘やかでありながら瑞々しい、貴女の好むかぐわしい香りが鼻孔を掠めるだろうか。
嗅覚からの侵蝕が始まっている。
逃げなければ逃れられなくなる。
幸福付与は四段階目に入っている。

「さあ、愛しい貴女。こちらへいらっしゃい」

素直に従うのであれば抱き寄せて、全身で愛を伝えるように腕の中へ閉じ込めてしまおう。
そして檻のように、純白の六翼が貴方を包み込むだろう。

────貴方に快楽という幸福を与える為に。

アスリーン > 【移動します】
ご案内:「王都マグメール 平民地区2/路地裏」からアスリーンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2/路地裏」からフィフティワンさんが去りました。