2023/01/18 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にティリエさんが現れました。
ティリエ > 平民地区の大通りにある錬金術師ギルド
その前に荷車を引いた少女がやってくる。
さほど大きくはない荷車とはいえ、引いているのが少女ひとりとなると、道行く者たちも進路を譲る。
その度に頭を下げながら、どうにかギルドの前にまでやってきて。

「ふぅ……やっぱり、一気に運んじゃおうっていうのは無理があったかなぁ……」

額に浮いた汗を拭って、荷台に被せてあった幌を外す。
そこにはみっちりと詰め込まれたポーションが入った木箱がいくつか。
木箱のひとつを持ち上げようとしたところで、力が入らないのに気が付いて。

「うぅぅ……さ、さっきは持てた、のに……」

ぷるぷると腕が震えるばかりで、ギルドの中にまで運ぶどころか、少しばかり浮く程度。
どうやって積んだのかさえ、怪しいもので。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にイレーネさんが現れました。
イレーネ > 今日のぶんのあれこれを一通り終えて暇になり。特に思いつくこともなく帰ろうか、と言った所で。
何やら通りの前でぷるぷると固まっている少女が目に留まる。
どうやら荷運びでもしているようだけれど、見た目以上に箱の中身が重いのだろうか。
そのまま素通りするのも意地悪な気もしたし、驚かせないように前からゆったり近づいて。

「大丈夫……? 何なら、あたしが運ぼうか?力仕事だったら他の子達より、たぶん得意だし」

心配そうに覗き込み。
見た目にも、か弱い女の子と言うわけではないのよ、と。
身体の所々を包む赤い軽鎧をぽんぽんと叩いて見せて。
よく見れば、背中には大ぶりの剣が下がっていたりするのも解るだろう。

ティリエ > 「―――――もぅ、無理……」

ぐて。と力尽きて木箱が落下する。
そうであっても1cmも浮いていなかったために、中身への被害は全くない。
それを不幸中の幸いと言って良いのかどうか。
こうなったら最後の手段しかないかと、腹を括ったところで不意に声を掛けられて。

「え? あ、で、でも……そんな申し訳ないですし……」

あまりの非力さによっぽど見かねたのだろうか。
見た感じは冒険者っぽい鎧も身に着けてはいるけれど、何となく雰囲気が異なるような。
どちらかと言えば粗野な感じが多い冒険者とは違って華やかな印象で。
これが厳つい顔をしたオジサンだったら、すぐさまギルドの中に逃げ込んでいただろう。

「数もありますし……あ、でも、手伝ってもらえるなら、いくつかこれ差し上げます。」

正直、親切なお姉さんの申し出は本当にありがたい。
ただ申し訳なさが先に出てしまって、どうしたものかと逡巡していたけれど。
ぽん、と手を叩くと、詰め込まれた木箱の中から、1本小瓶を引き抜いて差し出した。

貼られたラベルに書かれているのは、上級ポーション
お店で買えば、そこそこのお値段はする品で。

イレーネ > 「ふふ、数があるんなら尚更、手伝った方がいいでしょう?……荷運びなら慣れてるし。
 依頼でもやることあるし、自分のお店でもあたしが一番力があるし、ね」

遠慮している少女に、大丈夫、とちょっと目立つ胸を張ってみせて。
早速、どれから運んだらいいかしら、と箱の数や様子を見ていれば。
その中から1本差し出された小瓶、受け取ってみればどうやら魔法のポーションのようで。

場所柄、錬金術のギルドの前だし、目前の少女は学生服、となれば何か錬金術を学ぶ最中の学生さんで、箱の中身もやはりポーション類なのだろう、と察する。
自分で作りはしないものの、自分のお店にもポーション類はあるから、見れば何となく価値も分かりそう、と言うもので。

「ん、これ……気持ちは嬉しいけど、今から納品とかじゃないの?減ってたらまずいんじゃ……
 そうでないなら、無下に断るのもなんだし、ありがたくもらっちゃおうかな、とは思うのだけど」

手の上でしっかり持ったまま、ラベルを確かめながら。
あ、運ぶのはどの箱からでもいいかしら、などとそっちも確認しつつ。

ティリエ > 冒険者っぽいとは思ったけれど、自分のお店とか言っているから違うのだろう。
それがどんなお店なのかまでは分からないけれど。

「えと、はい。実は、手伝ってもらえると、すっごく助かります。
 ギルドの人に手伝ってもらおうにも、ここの人たち、私以上に……アレですから。」

ただでさえ後方支援職なのに、年柄年中、研究ばかりしている人種だ。
体力の「た」の字さえない。
そんなものは栄養補給剤(エナジードリンク)で代用可能だというのが、この界隈の常識で。

「あ、だいじょうぶです。ちょっと作り過ぎたので、納品には余裕があるんです。」

ギルドの扉を開いて、「こっちにお願いします」と告げながら。
ちなみに木箱はどれもポーションばかり。
いつもならいくつか種類を納めるのだけれど、何故だか今日はポーションが大量に入用だということで。
重さのほうは、それなりではあるけれど。大剣を振れる腕力が問題ないだろう。
むしろガラス同士が当たって割れないように気を遣う方が大変かもしれず。

イレーネ > ここの人たち、と聞けば改めてギルドの建物を見上げる。
そうね、場合によっては男たちでもあたしより非力そう――などと思ったのは胸の内に仕舞っておいて。
もっと運動したほうが、とは自分の方がもっと女らしくしたほうが、と言われると悲しいからそれも言わないでおく。

「荷運び用の魔道具とかもあったりするけど、それ自体が高いもんねぇ。
 力がつくポーションを毎回がぶ飲みじゃ、やっぱり高くついちゃうし……あ、これも中身は瓶類よね、ちゃんと気をつけておくね。
 うちも魔道具屋だったりして、薬瓶も扱い慣れてるから安心してね」

作りすぎた、と言うのだから、なるほど自作したものなのだろう、と思う。
木箱をひとつ、中身のバランスや揺れ具合を確認するように少しだけ持ち上げてみてから、うんうん、このぐらいなら大丈夫、と。
軽々と言うわけではないけれど、持ち慣れた重さである様子で、開いてくれたドアの方へと運んでいく。

「あたし的には二つ行っても平気だけど……それだと見てて不安かもしれないし、一つずつ行っておくね。
 それにしても……量を作るの、得意なのね。すごいんじゃない?」

短期間で、と言うわけではないのかもしれないけれど。
みっちり詰まっている様子のポーション、それも数箱あるのだから凄いじゃない、と関心したのか。
横を通りつつ、まだある箱の方をちらり振り返りながら微笑んでみせて。

ティリエ > 空けた扉から、身を乗り出して。奥にいるであろうギルド職員に、「納品です!」と声を掛ける。
やはり見るからに健康的なお姉さんは、危なげもなく木箱を持ち上げていて。

「いっそ、最終手段でその手を使おうかと思ってました。
 あ、魔道具屋さんなんですね? どこのお店なんですか?
 あっちのカウンターの方にお願いします。」

ギルドの中は、独特の匂いが立ち込めている。
これが酒場と併設されている冒険者ギルドならば、アルコールの匂いだったりするのだろうけれど。
ここでは、よく分からない薬草だったり、魔獣の臓器だったりと、混沌としている。
ロビーのスペースも、そうした品が雑然と積まれており、客と思しき者は見当たらず。

「すごいですね、そんなに軽々と。
 もしかしなくても、私も持ち上げられちゃったりできそう……
 お気遣いありがとうございます。ぜんぜん余裕そうなので、心配してないです。
 量ですか? んー……材料さえあれば、このくらいはすぐ出来ちゃいますよ?」

そんな会話を交わしながら、カウンターへ。
受付の職員に、「ポーション500本+α、納品に来ました。」と告げる。
ひと箱当たり200本詰め込んであるのが、荷車にはあと3箱積まれたままで。

イレーネ > 「ごひゃ……じゅうぶん、凄いと思うわよ――?」

随分多いな、とは思っていたけれど。予想以上に凄い数だったから、驚くと言うより笑いそうになって。
流石に今あんまり笑うと荷物が危ないから、そこは運び慣れている経験からか少しかたかたするぐらいだったけれど。

酒場の匂いには慣れていたけれど、自分のお店の中では薬の作成まではされていないから、やっぱり独特の凄い感じだなぁ、なんて思っている。
錬金術ギルド、のそのものにはそこまで何度も足を運んだ記憶はないから、自分の所ももしかするとこうなる可能性もあったのかなぁ、なんて。
ギルド員であろう人物が、こちらへ置いて、と示してくれる辺りに、一つ目の箱を置き。

「あと3つ、ね。運ぶのはあたしがやっちゃうから、必要な手続きとかしてていいわ。
 ……あたしが働いてるとこは、透明な薔薇、って……ああ、わりと最近付いた名前なんだけどね、個人のお店。平民地区のちょっとへんぴな所にあるわ」

積極的に宣伝はしていない小さなお店だから、知らなくても不思議ではない。
むしろ、オーナーの魔女の方がもしかするとどこかで有名かもしれないぐらい、ひっそりとやっているのだ。
話しながら、外の箱を、二つ目……三つ目、と危なげなく往復していくのは、流石に慣れたもの。

ティリエ >  
「そうなのかな? 確かに材料の仕入れは大変でしたけど。
 慣れたら、そんなに大したことじゃないと思います。」

けろっとした表情で、そんなことを宣う。
確かに運ぶのは手伝ってもらわなきゃいけないくらいだから、そこは大変。
そのくらいの認識で。

「ありがとうございます。お言葉に甘えますね。
 すみません、初めて聞きました。まだこっちに来て日が浅いので。
 今度、営業にお邪魔させてください。」

お姉さんに、木箱を運んでもらっている間に、納品の手続きを終える。
そこで聞いたことには、なんでも砦の方が、色々大変らしくて、補給物資が急遽必要になったらしい。
普段は、そうした依頼は滅多に入って来ない錬金術師ギルドにまで声が掛かるほどだから、相当なのだろう。
多少でもお役に立てればとは思いながら、代金の入った布袋をポケットに押し込み。

「ありがとうございました。ほんとに助かっちゃいました。
 これ、さっき言ってたお礼です。」

ぺこりと頭を下げてから、差し出したのは、ポーションの小瓶が10本。
お値段にすれば、豪華なディナーを食べられるくらいにはなるだろう。

イレーネ > 「制服みたいだし、まだ学生さんなんでしょう?
 それでこの量は凄いと思うけど……たぶん、自信持っていいんじゃないかなぁ」

作るの自体は人任せ、で自分はサポートしているだけだから、大量に用意するのがどのぐらい大変なのかはいまいち実感としては解らない。
けど、やっぱり凄いことなんじゃないかな、なんて思ったから。そこはお世辞ではなく素直にそう言うのだ。

「ううん、知らない人の方が多いと思うし、ちょっと……色々と変な意味の方で凄い店ではあるから。
 うんうん、置いてあるもの思い出してみると、やっぱり変なものばかりで溢れてるから……お互いに得るものもあるかもね」

一般的に冒険者とか、どこかで消耗品として使われるようなものほど意外と置いてない、そんな店だなぁ、と自分のお店を思い浮かべる。
品物を作っている人が変わり者、だからなのはあるかもしれない。だから、こういったギルドに納品するような、ちゃんと真面目なものを作っている子なら、互いに思いつかないものをやり取りできるのかも、と思うのだ。

「……あ、ありがとう! なんだか増えてるけど……うん、変に遠慮しないで、じゃあもらっちゃおう。使うこともあるかもだし、ね」

お礼は一本だった気もするけれど、きっとそれだけ喜んでくれたのだろうし、と笑顔でもらっておくことに。
実際、持っておいたら使うこともあるかもしれないのも本当だったし。

「それじゃぁ……お手伝いの方は、もう大丈夫そう?」

ティリエ > 「はい、学院の……研究室の錬金窯を使わせてもらったので。
 褒めても、何も出ませんよ? 他のポーションは全部納めちゃいましたし。」

照れ隠しに、冗談めかしてそう返す。
修行時代から量だけは作らされてきたから、いろいろ考えるよりも前に身体が作り方を覚えているくらい。
そのことに関しては、自慢?はできるかもしれない。

「変な意味で凄いんですか? なんだかすっごく気になっちゃいます。
 魔道具って変なものも多いですけど……それでも溢れてるくらいって、楽しそう。」

自分自身は製薬がメインではあるけれど、同じ研究室には変わったものを錬成している人も多い。
それこそ金を生み出そうと、宝石を湯水のように窯に投入している人とか。
人造生命を生み出そうと、その素体となる人形造形に一刀入魂している人とか。
だから多少の「変」には慣れている。
どんな変わったものがあるか、興味深そうにして。

「じゃあ、今度お邪魔しますね。
 何か売れそうなものも持って行くので、気に入ったら買い取ってください。

 あ、はい。ひとりだったら強化ポーション使う羽目になってたので、それでも少ないくらいです。
 改めてありがとうございました。

 って、名前も言ってない! ごめんなさい、ティリエって言います。」

再度、お礼を言って頭を下げたところで、名乗ってもいないことを思い出し。
慌てて名乗るという一幕もありつつ。
お店の場所をメモして、「今度伺います」と約束して。
お姉さんに手を振りながら、空になった荷車を引いて学院の方へと戻っていき。

イレーネ > 「ああ、そう言えば名前、言ってなかったわ。お店の名前は教えたのにね……
 あたしはイレーネ。お店の方はもしかすると妹のエネリの方が居るかもだけど、あたしをそのまま小さくした感じの子だからきっと、すぐ解ると思うの」

機会があったら是非、ね。とにっこり微笑んで。
変なものを楽しそうと言ってくれる子なら案外楽しめそうな店ではあるから、自分と妹のどちらが居る時でも、楽しい時間にはなりそう、と思うのだ。

オーナー……はちょっと会ったら気圧されそうだけど。
まさに少女が思っている変わったものを錬成しているタイプの方だし、なんなら本人がヒトじゃない。

「それじゃ、またね。筋肉痛とかにならないようにちゃんとケアして休むのよ?」

そんな風に、学院の方へ向かっているのだろう姿を見送って。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からティリエさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からイレーネさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にヴェルニールさんが現れました。
ヴェルニール > 平民地区に幾つかあるギルドの一つ。
冒険者や傭兵らしい鍛えられた見目の者も見受けられるロビーへと足を向ける人影があった。

屋内へとぐるりと視線をやって――依頼などの貼り出された掲示の前で立ち止まってはみるものの。
手の甲を顎の下に敷いて、肘を片手で支えては物珍し気にそれを眺める様子はどの依頼を受けるか悩むような素振りでもなく。
何ならば劇場前に来週の見世物のお題目でも確認しに来たような面持ちで優雅に視線を滑らせて。

「まぁ…薬草採取に、空飛ぶ大蜥蜴さんの討伐依頼…に…迷子のペット捜し?
…この仔、犬や猫ではなさそうですわね…」

床につきそうな長いスカートの裾は、透け感のある薄布が角度を変えて幾重にもなっており。
窓辺から差し込む日差しと、室内灯の明かりに青から緑色の系統の様々な色味を浮かび上がらせては、ふわりと持ち上がった布地が淡い影を落としている。

そんな恰好で佇んでいれば、暇潰しの見物ならばそこをどけ、と言われてしまってもおかしくはない程度には浮いているかも知れないが。
今のところは掲示を見ている人物はいないので邪魔にはなっていない筈である。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にティカさんが現れました。
ティカ > 弱い犬ほどなんとやら。
見る者にそんな格言を思い浮かばせるのは、人間全てが憎たらしいとばかりに鋭い目つきで他者の接近を拒む小柄な女冒険者。
新入り感丸出しの装備でずかずかと冒険者ギルドに入り込み、ぎろり。
辺りを睥睨―――というにはいささか迫力の足りていない様子で見まわした後、依頼板の前へと歩み進む。

ずずいっと割り込むかの様な不敵な態度で先客たる女冒険者の隣に並び、小さな頭部を持ち上げて、張り出された依頼の数々に紅眼を向ける。

「―――――……ッチ。碌なモン残ってやがらねぇな」

舌打ちと共に吐き捨てるのも張り巡らせた刺々しさに見合う粗暴なセリフ――――なのだけども、元々の声のトーンが高いのと、ともすれば子供扱いされかねない小躯のせいか、人によっては微笑ましささえ覚えるだろう。
また、『あたしは隣の奴の事なんて全く気にしてねーよ!』とでも言わんばかりに先客の存在を無視しつつも、己と同じく女の身でありながら冒険者稼業に身をやつす、後ろ姿だけでも美人な雰囲気が漂う彼女が気になって仕方がないというそわそわとした気配ばかりは全く隠せていないというのも微笑ましさを助長するポイントだろうか。

ヴェルニール > 依頼板の前に佇んではいるものの。
真剣に実入りと割の良さを検分するでもない風貌は、一見すれば余裕がある――ように受け取る人もいるのかも知れない。
面白そうなものでもあれば、退屈しのぎに出てみるのも一興、と云った体の冒険者…なのかどうかはさておき。

「あら、お嬢さんはお仕事探しにいらしたの?ご精が出ます事ね…」

彼女の荒い足音はよく響くものだから、こちらへ向かってくる前に気配を感じてはいたのだが。
威勢良く周囲を見渡し、己を誇示するかのような態度でやってくる姿を横目に、素知らぬふりで観察すること暫し。
小柄な彼女の視線が貼りだされた依頼を嘗め回す隣で、視界を遮らないように、という目的を垣間見せつつさりげなく数歩。
退くのではなく、彼女の背側へと横顔で振り返り、近づいて。

そこでようやく視線を合わせれば、ゆったりと目を細めて会釈するように。

「ところであたくし、依頼というよりは――捜し物をしていますのよ。
目的に沿った物があれば良いのですけれど、なければ此方に依頼してみる方が早いかしら、などと考えていたところですの。」

彼女の目的は先に問い質さず、そんな話を世間話でもするように続けて。

ティカ > 「――――あ?」

自分としては精いっぱいガラの悪そうな声を出し、《お嬢さん》なんて呼び方を向けてくる女冒険者に紅瞳の睨みを効かせる。
その内心では冒険者らしからぬふんわりとした物言いと、耳心地の良い彼女の声音に年下の少女が抱くはにかみにも似た感情を覚えていた。
彼女から続いて何か言ってくる気配も無かったので、ふんと小さく鼻を鳴らして再び掲示物へと目を向ける。
さり気なく移動して己の背後に回り込む美女の動向に、素人だろうとぴりぴりとした感覚を覚えるだろう警戒心を滲ませたまま。
なので、そんな彼女から改めて声を掛けられたなら、思わずびくっと華奢な肩を弾ませてしまうのだけど、そんな事実は無かったかの様に

「――――へぇ、そーかい。………で、その探しモンってのはどんなだよ。話次第じゃあたしがその依頼、受けてやってもいーぜ」

などと頼りがいなど欠片も感じさせない駆け出しのチビが、なんとも偉そうなセリフをのたまった。
実際の所は『受けてやってもいい』ではなく、『あたしにも出来る依頼なら受けさせてほしい!』とお願いする立場なのだが、素直にそんな言葉を口に出来る程生優しい人生は送っていない。

ヴェルニール > ともすれば粗野にも見える彼女の物言いや、やや横柄な態度にも眉一つ動かさずに。
向けられる表情は思春期らしさの残る鋭い――けれどとても繊細な、ともすれば研いだ刃を扱いきれずに身を切りそうにも感じられる、赤々とした炎の燃える瞳。
そんな彼女に一種の眩しさを覚えている事は胸の内にひっそりと隠しつつ。
必要以上に刺激しない程度の笑みを目元だけに浮かべて。

再度声を掛ければ、びくりと跳ねる肩に、想像以上に張り詰めているらしい彼女の緊張度合いを知るのだが、それもまた袖の影で口元をこっそりと持ち上げるだけに留め。

「まぁ。お話を聞いて下さるの?
お嬢さんにお力を貸して頂けたらとても心強いわ。

…うふふ、失礼。依頼する立場ですのに名乗らないのはいけませんわね。
あたくしはヴェルニール、と申しますの。
冒険者どののお名前を伺っても良いかしら。」

一見上品で遜った態度は、人によっては、多少鼻につく――と思われるであろう物言いだが、自分から下手に出る事はないだろう彼女にであれば、逆に断り辛くも感じさせる目的もあり。
胸の前で両手の指を絡めて手を組み、気色を押し出して声を弾ませる。