2022/12/11 のログ
■リクト > 「…――ああっと?」
若干、現実逃避を仕掛けた矢先に聞こえる諍いの声。
痴情のもつれ的なものであれば勿論手を出すつもりはないが……と思いながらも、紙袋から串焼き追加しつつ視線をむける。
「……やれやれ。」
どうやら痴情のもつれとは違ってたらしい。
多少現実逃避はしたものの、気分良く酒は飲んでたところを水を差されるのも困るということで仲裁に向かっていく――。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2 噴水広場」からリクトさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/冒険者ギルド」にヴァンさんが現れました。
■ヴァン > 日曜大工ならぬ、休日冒険者。
銀髪の男の現状を説明するなら、それが一番だ。
他の多くの仕事にもあるように、冒険者にも専業・兼業がある。
冒険稼業だけで食っていくのが専業冒険者。
日頃関連した仕事をしつつ冒険に出向く兼業冒険者。
盗賊のように、ダンジョン探索のみを行う専業もいれば街中での仕事も行う兼業もいる。
そして、趣味として冒険に出るのが休日冒険者。
大抵は便利屋まがいの危険が少ない仕事を行うため、ギルドも明確に専業・兼業とは区別している。
男は冒険者としては最下級のランクであることを示す装飾品をつけて、掲示板にある依頼を眺めている。
「なるべくなら簡単な仕事にしたいな。コボルト、ゴブリン、オーク退治の類は……山賊討伐でもいいが」
宅配、採集、探索など依頼の種類はあるが、男はどうやら戦うことしか頭にないらしい。
■ヴァン > 退治依頼の紙を掲示板から3枚剥がす。
「モンスターの目撃情報と地形から考えるに、ねぐらの候補はこのあたりと、ここと、ここ…………うん。
このルートを通れば…………夜明けと共に出発すれば、夜には戻ってこれるな」
颯爽とギルドの受付に向かう。依頼とランクのバランスが釣り合ってないと受付から指摘され、実力を証明するのに時間を費やすことになる。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/冒険者ギルド」からヴァンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にジェイクさんが現れました。
■ジェイク > 王都マグメールの平民地区。
富裕層でも、貧民層でもない、名前の通りに平民の多くが生活する地区は、
王都の中でも最も面積が広くて、人口も多い賑やかな場所である。
老若男女、種族も貧富の差もなく大勢の人々が往来する繁華街は
一見すれば貧民街より治安が良く、富裕区よりも便利で、住みやすさを感じさせる事だろう。
衛兵の詰め所も存在する此の地区では、必然的に街中を警邏する兵士の数も多くなり、
行き交う人々の不審な行動には絶えず彼等が目を光らせている。
だが、その瞳が必ずしも治安維持のためだけに輝いているとは限らないのがマグメールの所以でもあり。
「おい、――――そこのお前。少しだけ、良いか?」
なめし革の胸甲を身に纏い、腰に剣を佩いた警邏中の兵士風の男が
繁華街の大通りを歩いている女の後ろ姿へと声を掛ける。
ちらりと覗いた横顔が好みであったのか、或いは、顔見知りだったのか。
口端に滲んだ嗤みは、この後、彼女に降り掛かる災厄を象徴しているようであった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からジェイクさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にリアさんが現れました。
■リア > 商店や飲食店の並ぶ通り。道沿いの街路樹に挟まれたベンチの上に、布や紙製のバッグを下ろして疲れ切った声を漏らす。
「……買い過ぎた」
目深にかぶったキャップと、体の線の出ないシルエットの大きなジャケットで性別は判然としなかったが、声は若い女のもの。
荷物の重さで凝り固まった気のする肩と首に手をあて、前から後ろ、後ろから前までぐるっと一周首を傾ける。
上を向いたときに暗闇から舞い落ちてくる黄色い葉っぱを、ベンチの前に立ち尽くしたまま暫しぼうっと眺めている。
美味しいと噂の流行りのお菓子も、靴も本も何もかも、取り寄せれば済むことだったのだ。
学院の同級生のやんごとなき身分の者は大体そうしている。
ただ、郊外の邸宅まわりの限られた範囲しか知らずに育った娘にとって、平民地区で買い物をする、というのはそれだけで楽しそうに思えたのだ。
■リア > 実際とても楽しかったのだ。
家族も使用人も伴わず、一人で気になった店を好きなだけ見て、高級品志向の父が見れば眉を顰めること間違いなしの、子どもの手作りだといういびつな動物型のキャンドルを買い集めて(重たい)、お祭りでもないのに食べ歩きしている人を真似て串に刺さった飴掛けの果物を買って(べたべたになった手を洗う場所を探すのにとても苦労した)、道端で絵描きに似顔絵を描いてもらって(二割増しで美人に描かれていたので、彼は早晩良いパトロンを見つけるだろう)、楽しかったのだ。
終日楽しんで、体力切れと空腹が一気に襲いかかって来ただけである。
「仕方ない、帰りは馬車かな……」
街の景色を見て歩いて帰るつもりだったけれど、足が棒になっている。
斜め掛けの小さな鞄を開けて財布を探す。
■リア > 「……?」
財布とハンカチくらいしか入っていない鞄の中は探すまでもないはずなのだが、財布が見当たらない。
デニムの尻ポケット、ジャケットのポケット、順番に確認してもどこにも無い。
動きが固まり、逆に頭の中は目まぐるしく回転し始める。
最後に財布を取り出した場所は……
そのあと確かにしまったはずだけれど……
考え始めれば心当たりはいくらでもあって、人ごみで何度もぶつかったりぶつかられたりもした。
落としたのか掏られたかはっきりしないが、唐突に文無しになったことだけははっきりしている。
「嘘でしょ……」
ベンチに座り込んで顔を覆う。
■リア > 自分の隣の大荷物を見て選択肢を考える。
「……換金……? 質屋……は、今からこれを抱えて探すのは無理だし……仕組みがよく分からないし」
無事にこの窮地を脱したら、質屋の予習をしておこうと心に留める。
顔を上げて路面店に視線を移す。酒場から出てくる人の楽しげな笑い声が別世界のもののよう。
「せめて懇意にしている店のあるあたりなら……」
馬車を呼んでもらうなり、家に渡りをつけてもらうなりできただろうが、ほとんど初めて訪れる平民地区でどこに何があるのかろくに知らない。
現実的なのは、家名に頼ることである。爵位を買ってからは表向き綺麗な事業をしているように装いながら、いまだ奴隷売買を主な収入としているマロリー家の名は、その内情を知る者にとって悪名でしかない。それを頼ることしか出来なさそうな現状に、楽しかった気持ちが萎んでいく。
「学生証……だけはあるし」
自己嫌悪に塗りつぶされそうな気持ちを振り払うようにぶるぶると頭を振って立ち上がる。
「よし。商人ギルドかいっそ奴隷市か、そのあたりに行けばどうとでもなるでしょ」
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からリアさんが去りました。